仮面ライダー吹雪鬼   作:三澤未命

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五之巻『舞い上がる怨念』

○とある山中

 ウブメと対峙している威吹鬼。

 焦りの表情でそれを見守るあきら。

 威吹鬼、地面に跪きながら、上空のウブメに向けて、音撃管・烈風を構える。

 飛び回るウブメ。

 そのウブメに向け、鬼石を射撃する威吹鬼。

 しかし、肩の痛みからかなかなかうまく当たらない。

威吹鬼「クソッ……」

 威吹鬼、立ち上がり、横の木に寄りかかるように体を支えて、両手で烈風を構える。

 射撃される鬼石。

 ウブメに命中!

 威吹鬼、烈風に鳴風を取り付けて口元へ持っていき、疾風一閃の音色を吹き鳴らす!

 反応するウブメの体!

 そして……、爆発!!

威吹鬼「うっ……」

 威吹鬼、その場に崩れ落ち、顔の変身を解く。

あきら「イブキさん!」

 イブキのもとへ駆け寄っていくあきら。

あきら「大丈夫ですか!?」

 あきら、イブキの肩に素早く消毒綿をあてがう。

イブキ「……ありがとう。大丈夫だよ、このくらい……」

 イブキ、肩を押さえながらあきらにニコリと微笑む。

 少し考え込んでいたあきら、スクッと立ち上がって、

あきら「……イブキさん! 私、次は六段を受けます!」

イブキ「(驚いて)え!? でも、まだ初段認定されたばかりだよ? いきなり実戦までは難しいだろうから、飛び段するにしても三段くらいじゃないと……」

あきら「もう練習ではディスクアニマルも動かせます! 試験までもう少し時間もあるし、それまでには解読だって……」

イブキ「う~ん、でもねぇ……」

 困惑の表情のイブキ。

あきら「お願いします!」

 イブキに頭を下げるあきら。

 その表情には鬼気迫るものが……。

 

○オープニング曲

 

○サブタイトル

 五之巻『舞い上がる怨念』

 

○たちばな・地下作戦室

 机を囲んで向かい合う勢地郎、イブキ、あきら。

勢地郎「(腕組みしながら)う~ん、飛び段試験ねぇ……」

あきら「お願いします!」

 勢地郎に向かって頭を下げるあきら。

勢地郎「まあ、素地はあるから大丈夫かとは思うが……、どうなんだい? イブキ君」

イブキ「僕としては、今回は三段くらいにしておいた方が無難だと思うんですが……」

勢地郎「あきらの決心は固い、と?」

 と言って、あきらを見る勢地郎。

あきら「はい! できます!!」

勢地郎「(少し考えて)……よし! じゃ、なんとか六段試験の枠に食い込ませてみようか」

あきら「ありがとうございます!」

 頭を深々と下げるあきら。

 その姿をにこやかに見つめる勢地郎。

 しかし、イブキは不安そうな表情であきらを見つめる……。

 

○街中

 ウィンドウショッピングをしている右京とすずめ。

 立ち並ぶブティックや雑貨店を覗き込みながら、ゆっくりと歩いている。

すずめ「あ~、なんか久々にゆっくり会えた感じよね~」

右京「そうだね」

 気になるジャケットがあったのか、とある店のウィンドウの前でふと足を止める右京。

すずめ「(真剣な表情になり)……右京君、ホントにどうするつもりなの?」

右京「え?」

 ウィンドウを眺めたままの右京。

すずめ「えじゃないわよ。仕事のことよ!」

右京「ああ……」

 右京、鬱陶しそうな表情で上体を起こして、またゆっくりと歩き始める。

 すずめ、その右京に並び歩き、

すずめ「相変わらず、どこのオーディションも受けてないんでしょ? ホントにそれでプロを目指してるって言えるの?」

右京「しょうがないだろ? 納得できる状態じゃないんだから」

すずめ「そんなの、やってみなくちゃ分かんないじゃない! それじゃ、自分を試そうとせずに引き篭もってんのと同じよ!?」

右京「……そういう説教は聞き飽きたよ」

 ウンザリ顔の右京。

すずめ「だろうね。私も言い飽きてきたよ。……でもね、私、自分が社会人になってみて思ったのよね。仕事って、甘いもんじゃないって。いい加減な気持ちでは、社会人は勤まんないって……」

右京「…………」

 何も言い返せない右京、唇を噛み締めながら俯く……。

 

○群馬の山奥・延竜寺

 山奥の静かな寺。

 廻りに人影はなし。

 その本堂の廊下を、一人の若い修行僧が歩いている。

 と、その前方に突如現れた四つん這いの女の姿。

 それは、全身が短く黒っぽい毛で覆われ、腰を折った状態で這いずり動く姫であった。

修行僧「な……」

 驚いた修行僧、反射的に後ろを振り返ると、そこには同じく毛むくじゃらで四つん這いの童子の姿が!

修行僧「ひぃぃぃぃ!」

 慌てて近くの障子を開けて部屋に飛び込む修行僧。

 童子と姫、その後を追って部屋の中へ。

 

○同・畳の間

 だだっ広い畳の間の奥の方へと、足元おぼつかぬまま走り倒れる修行僧。

 壁に貼りつき、振り返ると、童子と姫が四つん這いのままジワジワと近付いてくる!

修行僧「……た、……助けて!」

 と、その瞬間、修行僧の真上の天井板がパカッと開き、そこからドスンと三メートルほどの黒い物体が落下した!

修行僧「うわぁ!」

 修行僧を押し潰すように落下した物体、それは巨大な鼠形魔化魍だった!

 鼠形魔化魍は、体中から黒い霧のようなものを発し、それは静かに真下の修行僧を包み込んでいった。

 黒い霧の中でジワジワと溶けていく修行僧の体……。

 そして、修行僧の体が溶けて霧状になったモノが、鼠形魔化魍の体にシュウシュウと吸収されていく。

童子・姫「ウフフフフ……」

 ニタつく童子と姫。

 と、廊下を歩いてきた別の年配の僧・水城が畳の間を覗き、異常に気付く。

水城「な、何者……!?」

 瞬間、童子と姫は素早い動きで水城を突き飛ばすように外へ出ていく。

水城「うわっ!」

 のけぞる水城。

 寺の庭先、木々の間に消えていく童子と姫。

 そして、畳の間の中、鼠形魔化魍のいた場所には、不自然に歪曲した人型の黒いシミが残されていた……。

 

○たちばな・地下作戦室 & 延竜寺

 部屋には、中央の机で本を読む勢地郎とPCでデータ処理をする日菜佳の姿。

 と、電話が鳴り、日菜佳が素早く出る。

日菜佳「ハイ、たちばなです! ……ああ、水城さん! お久しぶりですぅ~! ……ええっ!? は、はい!!」

 日菜佳の声に驚いて顔を上げる勢地郎。

日菜佳「ちょ、ちょっと待ってください! ……父上!!」

勢地郎「うん」

 勢地郎、日菜佳のただ事ではない様子を見て取り、立ち上がって受話器を受け取る。

勢地郎「……はい、代わりました」

   ×   ×   ×

 画面、交互に水城、勢地郎。

水城「やられたよ! 若いのが一人、犠牲になってしまった……」

   ×   ×   ×

勢地郎「どういう……ことで?」

   ×   ×   ×

水城「黒いシミだよ。……もう、ずっと出なかったってのに」

   ×   ×   ×

勢地郎「ええ!? ……じゃ、もうその若い方は……」

   ×   ×   ×

水城「ああ……。残念だが……」

   ×   ×   ×

勢地郎「そうですか……。分かりました。とにかく、すぐ誰かよこします。……はい」

 勢地郎、険しい表情で電話を切る。

日菜佳「(悲しげな表情で)父上……」

勢地郎「まさかもうヤツが出てくるとはなあ……。延竜寺ということは、今近くにいるのは……(と、壁に貼ってある行動予定表を見て)、と、フブキ君か」

 再び受話器を取り、フブキに電話をする勢地郎。

 

○とある山中 & たちばな地下作戦室

 ベースキャンプを張っているフブキ。

 折り畳み椅子に座って、ディスクアニマルの手入れをしている。

 と、そこで携帯電話が鳴る。

 電話に出るフブキ。

フブキ「はい、こちらフブキ。……お疲れ様です」

   ×   ×   ×

 画面、交互に勢地郎、フブキ。

勢地郎「すまないけど、すぐに延竜寺の方に廻ってくれないかなあ。ちょっと厄介なことになっていてねぇ……」

   ×   ×   ×

フブキ「厄介?」

   ×   ×   ×

勢地郎「ああ。詳しい事は追って連絡するので、とりあえず水城さんのところまで行ってくれるかなあ」

   ×   ×   ×

フブキ「分かりました。では……」

   ×   ×   ×

勢地郎「あ、ちょっとフブキ君!」

   ×   ×   ×

フブキ「(切りかけた電話を耳元に戻して)え、はい?」

   ×   ×   ×

勢地郎「すまないねぇ。ここんとこ、全然休み取ってないのに……」

   ×   ×   ×

フブキ「(笑顔で)いえ。これまでご迷惑かけた分のお返しだと思ってますから。……では、行ってきます」

 電話を切って、キャンプを片付け始めるフブキ。

   ×   ×   ×

 静かに受話器を置く勢地郎。

日菜佳「(心配そうな表情で)フブキさん、大丈夫なんでしょうか? ローテーションでちゃんと休み入ってるのに、自分で予定入れて、シフト表送り返してきちゃうんですよね……」

勢地郎「う~ん……。彼女なりに、今までの償いをしようとしているみたいなんだけどねぇ……。ま、今回の事が片付いたら、強引に休ませてみるか」

日菜佳「(PCの方へ顔を向けながら)へぇ~。父上、あの人にそんな事言えますかね~?」

勢地郎「え!? ……いや、その……。あ、そうそう! 魔化魍のデータデータ!」

 勢地郎、話をごまかすように後ろの棚に向き直り、古い書物を探る。

勢地郎「ん~っと……、これだ」

 棚から一冊抜き取り、中央の机の上に広げる勢地郎。

 日菜佳もそこに歩み寄る。

日菜佳「(広げたページを見て)……テッソ……ですか?」

勢地郎「そうだ。昔から古い寺なんかによく出没したんだが、人間の強い怨念が、そこに巣食う小動物にとり憑いて、魔化魍の元を作ると言われている」

日菜佳「魔化魍の元……」

勢地郎「うん。一時、本格的な浄化活動が行われてから、ここ二十年ほどは出てなかったんだがなあ……」

 腕組みする勢地郎。

 日菜佳もつられて腕組み。

 

○とある森の中

 音笛を吹くあきら。

 目の前に並べられたディスクが、次々と鈍色蛇に変化していく。

 あきらの周りで小躍りする鈍色蛇たち。

 と、その内の一匹が輪から外れてスルスルと離れていく。

あきら「あ……」

 あきら、その鈍色蛇に向かって音笛を吹いて呼び寄せようとする。

 離れていった鈍色蛇、グルグルとその場を動き回ったかと思うと、ポーンと宙に浮いてディスク化。

 そして、あきらのもとへと飛んでいく。

 ディスクをキャッチするあきら。

 しかし、ディスクは完全な円形になっておらず、ちょこっと尻尾が飛び出している。

 あきら、苦い顔をしながら、手動でそのディスクを円形に形どる。

 と、前方から一匹の黄赤獅子が駆け込んでくる。

 あきらの目の前でピョンと飛び上がってディスク化し、それをキャッチするあきら。

 そのディスクを音笛にセットし、クルクルッと回す。

 目を閉じてディスクを読み取るあきら。

 しかし、目を開けると、その表情は一転険しく。

 一旦ディスクをはずし、もう一度音笛にセットして回してみる。

 今一度読み取りを敢行するが、またも険しい表情で眉をひそめる。

あきら「(傍にある木を右手で叩き)……くっそっ! こんなところでモタモタしている場合じゃないのに……」

 苛立つあきら。

 そして、その光景を数メートル離れた木の陰からイブキが見守っていた。

イブキ「あきら……」

 思いつめたような表情であきらを見つめるイブキ……。

 

《CM》

 

○延竜寺・本堂から離れた別棟

 本堂とは少し離れたところにある、小さなお堂。

 フブキ、そこに歩み寄り、少し開いた扉を引きながら中に入る。

フブキ「ごめんください」

 奥に座っていた水城、フブキに気付いて立ち上がる。

水城「おお、フブキ君だね? よく来てくれた」

フブキ「関東支部のフブキです。……この度は、ご愁傷様です」

 頭を下げるフブキ。

水城「ああ……。もう大丈夫だと思ってたんだがねぇ……。ま、とにかく現場へ行ってみるか」

フブキ「はい」

 水城、扉から外に出て、その後ろからフブキも続く。

 

○同・境内の砂利道

 水城とフブキが並んで歩く。

水城「テッソは建物にとり憑いた怨念が元なので、本堂に入らなければ問題ないんだ。……しかし、ずっとこのままってわけにもいかんのでねぇ」

 水城の言葉を神妙な面持ちで聞いているフブキ。

水城「ここだよ」

 目の前に大きく構える本堂。

 フブキ、建物全体を不気味に包み込む邪気を感じ取って身震いする。

 

○とある海岸 & たちばな地下作戦室

トドロキ「ネズミ……ですか?」

 携帯電話で話しているトドロキ。

   ×   ×   ×

 画面、交互に勢地郎、トドロキ。

勢地郎「そうなんだ。フブキ君の方にもさっき説明したんだが、テッソってのは建物に残った激しい怨念が鼠にとり憑いて魔化魍と化したものなんだ。小動物系なら本来管の攻撃が有効なんだが、このテッソってやつは成長すると三メートルくらいの大きさになるんでねぇ。やっぱり弦の攻撃も必要になってくるんだよ」

   ×   ×   ×

トドロキ「なるほど! それで自分の出番ってわけですね!?」

   ×   ×   ×

勢地郎「ああ。ちょっと遠いだろうが、そっちが片付き次第、延竜寺へ向かってくれないかなあ」

   ×   ×   ×

トドロキ「分かりました! 任せといてください!!」

 右手で胸をポンと叩くトドロキ。

 そこへ、ザンキが近寄ってくる。

   ×   ×   ×

勢地郎「あと、ちょっとザンキ君に代わってもらえるかな」

   ×   ×   ×

トドロキ「は……、はい! (携帯電話をザンキの方へ向けて)ザンキさん、事務局長が……」

 トドロキ、そのままザンキに携帯電話を手渡す。

ザンキ「うむ」

 携帯電話を受け取るザンキ。

ザンキ「ザンキです。……おやっさん、鼠ってことは、もしかして……」

   ×   ×   ×

勢地郎「ああ。もう出てきちゃったみたいだねぇ……。君の師匠の封印で、しばらく大丈夫だと思ってたんだが」

   ×   ×   ×

ザンキ「そうですか……。一応会得できてはいますが、まあ何しろ実戦は初めてですからねぇ……。とにかく向かいます。……はい」

 携帯電話を切って、トドロキに返すザンキ。

トドロキ「ザンキさん、どういうことなんですか?」

ザンキ「ああ。テッソってのは、音撃で個体を始末しても、建物にその怨念が残ったままでは、また別のテッソを生み出してしまうんだ。それを封印するためには、ある術を使わねばならない」

トドロキ「それって、もしかして先代のザンキさんがやったっていう……」

ザンキ「そうだ。音撃とともに俺もその術も受け継いではいるが……、まさか本当に使う日が来るとはな」

 ゴクッと生唾を飲むトドロキ。

ザンキ「とにかく、こっちをサッサと片付けてしまうぞ!」

トドロキ「……は、はい!!」

 

○延竜寺・本堂

 暗い畳の間。

 冷たい空気とともに、明らかに存在する邪気を感じて緊張するフブキ。

 奥の方の畳に残った黒いシミ。

 フブキ、そこにゆっくりと近付いてしゃがみ込み、そのシミにそっと手をあてがう。

 と、その瞬間!

 襖を破って飛び出してきた童子と姫!

 身構えるフブキ。

姫「オ、鬼ィ~~~!」

 姫、その場に丸くなるように屈み込む。

 と、全身が毛むくじゃらになっていき、頭部に二つの光が。

 姫は、まるで一匹の小動物のようにその姿を変えた!

フブキ「ネ……ズミ?」

 跳ねるようにフブキに突進する鼠化した姫!

 転がり避けるフブキ。

 フブキ、しゃがんだ体勢のまま、音笛を腰からはずして口元へ。

 暗い室内に響き渡る音笛の音。

 そして、フブキの全身が吹雪に包まれる!

吹雪鬼「ハッ!!」

 真っ白な吹雪を手刀で割り斬って、吹雪鬼見参!

 一方、鼠と化した妖姫の横で、童子もまた鼠型の怪童子へと変化!

 吹雪鬼に飛びかかる二匹の妖怪鼠。

 吹雪鬼、チョップで二匹を払い除けるも素早い動きで何度も何度も飛びかかってくる。

 フルート型音撃管・烈雪を腰の後ろからはずした吹雪鬼、烈雪を額の前で真横に構えて精神統一する。

 すると、周りの空気が瞬時に凍ったように烈雪にまとわりつき、それは真っ白な剣と化した!

 静かに烈雪剣を構える吹雪鬼。

 襲いかかる妖怪鼠たち!

吹雪鬼「イヤッ!」

 吹雪鬼、迫る妖怪鼠たちの軌道に烈雪剣を振り下ろす!

 すると、空中に三日月型の真っ白な刃物のような残像が浮かび上がり、それは二匹の妖怪鼠たちを斬り裂いた!

怪童子・妖姫「グギャーーー!!」

 真っ二つに割れ、そして四散する怪童子と妖姫。

 と、背後に黒い影を感じた吹雪鬼。

 素早く前方に体を移す!

 振り向くと、そこには三メートル程の巨大鼠の姿が……!!

 その足元では、黒い煙がシュウシュウと音を立てて広がっている。

吹雪鬼「……こいつか」

 

○秩父の検定道場

 椅子がいくつか並べられた長い廊下。

 その一つに、あきらが険しい表情ながらも落ち着いた様子で座っている。

 向かい側、窓際にはイブキが心配そうな表情で立っている。

 近くの扉が開いて、一人の若い男が出てくる。

男「次! 天美あきら!」

 顔を上げるあきら。

あきら「はい!」

 あきら、立ち上がって男の立っている扉の方へと歩く。

 扉の前で立ち止まり、大きく深呼吸して表情を引き締め、中に入る。

イブキ「あきら……」

 相変わらず曇った表情のイブキ。

 

○延竜寺・本堂の畳の間

 物凄い存在感を醸し出すテッソの前で、身構える吹雪鬼。

 ジリジリと間合いを取るが、テッソは微動だにしない。

 烈雪剣を斜めに構える吹雪鬼。

 と、その瞬間、テッソの周りに黒い竜巻が湧き上がり、それが大きく部屋中に広がった!

吹雪鬼「うわっ!」

 黒い突風に吹き飛ばされ、扉を破って外に放り出される吹雪鬼。

吹雪鬼「(上半身を起こしながら)……やってくれるわね」

 

○とある海岸

 ベースキャンプ地のザンキ、テーブルや地図を片付て、トドロキの専用バン・雷神のバックラックに手際よく積み込んでいる。

 そこへ走ってくる、顔だけ変身解除したトドロキ。

トドロキ「ザンキさん! 終わりました!!」

ザンキ「よし! じゃ、早く着替えろ。すぐ出発するぞ!」

トドロキ「あ、もうこのままでいいッスよ」

ザンキ「バカ! 延竜寺まで百キロはあるんだぞ。変身体では負担が大きすぎるだろうが!」

トドロキ「……は、はい!」

 トドロキ、頭を掻きながら、慌しく雷神のバックラックからバッグを取り出して助手席へ入り、着替えを始める。

 

○秩父の検定道場・入口付近の木陰

 イブキ、木にもたれながら、気を揉むように何度も腕や足を組みかえる。

 道場からあきらが出てくる。

イブキ「あ、あきら!」

 あきらに駆け寄るイブキ。

イブキ「あきら、ど……」

 言いかけたイブキ、顔を上げたあきらの悔しげな表情を見て思わず黙り込む。

 あきら、無言でイブキを振り切って走っていく。

イブキ「……あ、あきら!」

 イブキ、走り去るあきらを追って走りかけて、ふと立ち止まる。

イブキ「これは……」

 イブキ、振り向いて道場の入口へと走っていく。

 

○同・道場の廊下

 息を切って走るイブキ。

 と、前方に、手に持ったファイルを見ながら歩く教官の一人を見つけ、近付いていく。

イブキ「……あの」

教官「(顔を上げて)あ、イブキさん。どうも」

 軽く会釈する教官。

イブキ「あの……、あきらのことなんですが……」

教官「ああ、天美さんですか。……どうなんでしょう? いくら実績があるからって、一旦リセットした状態から短期間で六段ってのは、やっぱり無理があったんじゃないですかね?」

イブキ「……ということは」

教官「ええ。ディスクの操作も解読も、かなり不安定でしたね。……あれではどうしようもありません」

イブキ「そうですか……。ありがとうございました!」

 イブキ、教官に深々と頭を下げ、振り返って小走りに外へと向かう。

 

○検定道場近くの河原

 目に涙を溜め、歯を食いしばって立ち尽くすあきら。

 と、後ろからゆっくりとイブキが近寄ってくる。

イブキ「……あきら」

 イブキの声に振り向くあきら。

 あきら、右袖で溜まった涙を拭い、真っ直ぐイブキの方を見る。

あきら「……すみません、イブキさん。せっかく無理言って受けさせていただいたというのに……」

イブキ「(あきらの肩にポンと手を置き)まあ、またチャンスはあるさ。焦らずに頑張ろうよ」

 あきら、下を向いて唇を噛み締める。

 そして、カッと目を見開いてイブキを見上げ、

あきら「ダメなんです! 焦っちゃダメだって思えば思うほど、頭の中にお父さんやお母さんの顔が浮かんでしまって……。これじゃいけないって、分かってるんです……。でも……」

 涙を流しながらイブキに訴えかけるあきら。

イブキ「(真剣な表情になり)あきら……、それは、怨みの心が甦ってしまった、ということかい?」

あきら「そうじゃ……、そうじゃないつもりです! でも……」

 あきら、ガクッと膝を落とし、その場に崩れ落ちる。

 その様子を、いつになく厳しい顔つきで見つめるイブキ。

 

○五之巻 完

 

○エンディング曲

 

○次回予告

 延竜寺で話すフブキと水城。

フブキ「ザンキさんなら分かる、と?」

 たちばなに入ってくる明日夢。

明日夢「ただいま戻りました!」

 百貨店の喫茶室で話すすずめとあきら。

すずめ「人を怨んじゃったらさあ、必ず自分に返ってきちゃうもんなんだよね」

 六之巻『落ちる憑依』

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