仮面ライダー吹雪鬼   作:三澤未命

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六之巻『落ちる憑依』

○秩父の検定道場近辺の河原

 悔し涙を流しながら立っているあきら。

 そして、その肩に手を遣るイブキ。

あきら「ダメなんです! 焦っちゃダメだって思えば思うほど、頭の中にお父さんやお母さんの顔が浮かんでしまって……。これじゃいけないって、分かってるんです……。でも……」

 涙を流しながらイブキに訴えかけるあきら。

イブキ「(真剣な表情になり)あきら……、それは、怨みの心が甦ってしまった、ということかい?」

あきら「そうじゃ……、そうじゃないつもりです! でも……」

 あきら、ガクッと膝を落とし、その場に崩れ落ちる。

 その様子を、いつになく厳しい顔つきで見つめるイブキ。

イブキ「あきら。……しばらく自宅謹慎していなさい」

あきら「……え!?」

 思わぬ言葉にイブキを見上げるあきら。

 イブキ、無言であきらに背を向け、その場を去っていく。

あきら「イ……、イブキさん!」

 取り残されたあきら、去っていくイブキを見ながらまた涙が溢れ、ガクッと膝をついて地面に両手を預ける……。

 

○オープニング曲

 

○サブタイトル

 六之巻『落ちる憑依』

 

○延竜寺・本堂の外

 テッソの起こした竜巻に吹き飛ばされてしまった吹雪鬼、立ち上がって、再び本堂の中ヘと入っていく。

 

○同・本堂の畳の間

 再び畳の間に入った吹雪鬼。

 しかしそこに既にテッソの姿はなく、あちらこちらに黒っぽい煙が立ち込めているだけだった。

吹雪鬼「逃げたか……」

 

○同・別棟の居間

 煙草を灰皿に押しつける水城の手。

 古めかしい机をはさんで、水城とフブキが座っている。

フブキ「以前にテッソを封印したのは、二十年ほど前だと聞きましたが……」

水城「そうだねぇ……。正確には十八年前になるのかな。ザンキ君……、あ、今のザンキ君の師匠に当たる鬼だが、彼の術によって封印されたんだ。……歴史的に、テッソの怨念ってのは、一度封印すると百年は安全と言われてるんだが……」

フブキ「それがたった十八年で解けたということは……」

水城「う~ん、恐らく何か特殊な力によってその封印が解かれてしまったのだと思うんだが……。とにかく、ザンキ君が来るまでははっきりしたことは分からんなあ」

フブキ「ザンキさんなら分かる、と?」

水城「恐らく……。この術はね、資質がある者に受け継いでいくものなんだ。……そういう意味では、ザンキ君が何故トドロキ君を弟子にしたのかは、ちょっと疑問なんだがねぇ」

 考え込む水城。

 それを聞いて、思わず込み上げる笑いを堪えて少し斜めを向くフブキ。

フブキ「(気を取り直して)……それにしても、ヤツはどうして、さっき私に止めを刺さなかったんでしょうか?」

水城「うむ。テッソは本能的に封印されるのを恐れているものなんだ。だから、鬼とは出来るだけ関わりたくないという思いが働いたんだろうね」

フブキ「知能が高い、ということですね?」

水城「ああ。人間の怨念から生まれているだけに、結構計算された動きをしてくるみたいだね」

 水城の言葉に気を引き締めるフブキ。

 その頭の中では、既に次の接触時の準備が始まっていた。

 

○たちばな

 机の上の食器を片付けているひとみ。

 奥から香須実の声。

香須実「ひとみちゃ~ん、そっちのも、もう持ってきて~」

ひとみ「あ、はい!」

 ひとみ、お盆に食器を乗せていく。

 と、入口の扉が開いて、ヒビキと明日夢が入ってくる。

ヒビキ「ただいま~」

ひとみ「(ヒビキの方を向き)あ、ヒビキさん! お帰りなさい!」

明日夢「ただいま戻りました!」

 気取った様子で入ってくる明日夢。

ひとみ「安達く~ん! お帰り!」

ひとみ、持っていたお盆を再び机の上に置いて、明日夢の方へと歩み寄る。

ひとみ「ねえねえ、どうどう? 修行の成果は?」

明日夢「え? そりゃもう、順調って言うか何て言うか……」

ひとみ「ふぅ~ん。(明日夢の体をなめ回すように眺めて)な~んか逞しくなったような感じよね、安達君」

明日夢「え、そう?」

 明日夢、ひとみの言葉にニヤけ顔で頭を掻きながら照れる。

ヒビキ「(荷物を机の上に降ろしながら)明日夢、まだまだこれからだぞ!」

明日夢「……は、はい!」

 思わず姿勢を正す明日夢。

 奥から香須実が出てくる。

香須実「アラアラ、すっかり師匠と弟子って感じね~」

ヒビキ「そりゃそうですよ、香須実サン。まあ、俺もいつガタが来るか分かんないし、明日夢には、早く一人前になってもらわなくっちゃな」

ひとみ「わあ。プレッシャーね、安達君!」

 そう言いながら、明日夢を笑顔で覗き込むひとみ。

明日夢「……が、頑張ります!」

 硬直した表情の明日夢。

ヒビキ「ハハハ。冗談だって、明日夢~」

 ヒビキ、明日夢の背中をドンと叩く。

 つんのめりながら、ちょっとホッとした表情になる明日夢。

香須実「……でも、当面の問題はヒビキさんなんじゃない?」

ヒビキ「え?」

香須実「弟子を持ったってことで、特別遊撃班から外れたんでしょ? 明日夢君が免許取れるまでは、ヒビキさんが不知火を運転しなくちゃいけないんじゃない?」

 ギョッとするヒビキ。

ひとみ「あ、そっかあ! ヒビキさん、ペーパードライバーだもんね~」

ヒビキ「(焦りながら)……いや、ほらあれだよ。凱火でも十分移動できるって。……イブキだって、バイクでやってけてるでしょうに」

香須実「イブキ君はマメだからね~。ヒビキさんに、同じことが出来るとは思えないけど!」

 香須実、そう言い放ち机を拭き始める。

 ムスッとした様子で、ドカッと椅子に座り込むヒビキ。

 目を合わせて、思わず吹き出す明日夢とひとみ。

 と、奥から勢地郎が出てくる。

勢地郎「そのイブキ君とこなんだけどねぇ」

ヒビキ「……あ、おやっさん! ただいま戻りました!」

 立ち上がって敬礼するヒビキ。

 明日夢、ヒビキがおどけているのに気付かず、それに合わせて真顔で敬礼する。

香須実「……イブキ君が、どうしたの?」

 少し不安そうな香須実。

勢地郎「あきらクンを、しばらく自宅謹慎にしたそうだ」

ヒビキ「ええ!?」

 驚くヒビキ、そして、同様に驚いた表情になる香須実、明日夢、ひとみ。

香須実「謹慎って、何でまた……。試験に落ちちゃったから?」

勢地郎「いや、そういうことじゃなくて、どうも親御さんのことが、また悪い形で頭に入ってきてるようでねぇ……」

明日夢「天美さんのご両親、確か魔化魍に殺されたって……」

 驚くひとみ。

勢地郎「うん。……鬼になるのは仇討ちのためじゃないってことは、修行を始めた時にイブキ君が戒めたわけなんだけど、ここにきて、また迷いが出てきちゃったみたいだねぇ……」

ヒビキ「私怨では魔化魍を清めることは出来ない……。分かるな? 明日夢」

明日夢「(緊張した表情で)は、はい!」

ヒビキ「そういう厳しさも、師匠には必要なんだろうな。偉いよ、イブキは」

 複雑な表情の香須実。

 目を瞑って頷く勢地郎……。

 

○延竜寺

 トドロキの専用バン・雷神が境内の砂利道に勢い良く停車。

 運転席からザンキ、助手席からトドロキが降りてくる。

 二人、砂利道を進み、閉め切られた本堂の前に立つ。

トドロキ「(本堂を見上げて)……なんか、寒気がしますね」

 そう呟くトドロキの横で、目を細めて本堂に神経を集中するザンキ。

ザンキ「……イカンな」

トドロキ「え!?」

 と、背後に一つの影が。

フブキ「ご苦労様です」

 いつの間にか二人の背後にいたフブキ。

 振り返るザンキ。

ザンキ「おう」

トドロキ「お、お疲れ様です!」

 直立不動のトドロキ。

ザンキ「……どんな感じなんだ?」

フブキ「もう育ち切った感じですね。何にしても、あなたの力が必要なようです」

ザンキ「そうか……」

 目と目で会話するザンキとフブキ。

 それを興味津津で見つめるトドロキ。

ザンキ「早速準備するぞ」

 ザンキ、雷神の方へと歩を進める。

トドロキ「は……、はい!」

 それを追うトドロキ。

 フブキ、ザンキを見送ると、本堂の方へと向き直り、腕を組んで見上げる。

 どんよりとした重い空気が立ち込める。

   ×   ×   ×

 砂利道を歩くザンキとトドロキ。

トドロキ「……ザンキさん」

ザンキ「ん?」

トドロキ「その……、ザンキさんとフブキさんって、確か同い年ですよね? やっぱ、長い付き合いなんですか?」

ザンキ「そうだな。現場に出たのも大体同じ頃だからな。……それが何だ?」

トドロキ「……いえ! 何でもないんです! すいません!」

 トドロキ、冷や汗をかきながらも、勘ぐるように横目でザンキを見る。

 

○街中

 ポケットに手をつっこんで歩く右京。

 と、建物の壁に寄りかかって携帯電話で喋っている男にふと目を留める。

男「……え? いや、無理なんですってば。今晩納品できないんだったら明日の朝便に乗せてくださいよ。……だってしょうがないでしょ! ……はいはい、じゃ、よろしく頼んます!」

 しかめっ面で電話を切る男。

 と、そこへ右京が近付いて声をかける。

右京「……土井じゃないか!」

土井と呼ばれた男「(右京に気付いて)……おお、薄葉かあ! 久しぶりだなあ。どうしてんだよ、今?」

右京「いやあ、相変わらずさ」

土井「なんだ、まだフラフラしてんのか? ……おお、ちょっと座ろうぜ」

 そう言いながら、目の前の喫茶店へ右京を誘う土井。

右京「いいのか? 仕事中だろ?」

土井「いいのいいの! これが営業の特権ってやつ。ヘヘ……」

 二人、喫茶店へと入っていく。

 

○喫茶店

 向かい合って座る右京と土井。

 スーツの上着を脱ぎながら話す土井。

土井「……やっぱり、まだプロになる気なのか?」

右京「まあ、な……」

 やってきたウェイトレスにコーヒーを頼む二人。

土井「……で? どのくらい実戦こなしてんだよ」

右京「いや、それがまだ一度も……」

土井「(驚いて)ええ!? じゃ、落ちっぱなしってわけか?」

 そう言って水を飲む土井。

右京「いや。……実はまだどこも受けてないんだよね」

土井「(さらに驚き、咳き込んで)な……、何だって!? じゃ、まだオーディションすら受けてないってのか! もう卒業して三年だぞ!?」

右京「……何て言うかさ、なかなか自分の技術に自信が持てないって言うか、納得いく状態にならないって言うか……」

土井「お前さあ、そんなこと言ってたら何も始まんねーぞ?」

右京「納得いかないままじゃ、どこも受けたくないんだよ。受ける時は、即合格!」

 土井、呆れたような表情で椅子の背もたれに上体を倒して溜め息一つ。

土井「ハァ……。何夢みたいなこと言ってんだよ。失敗重ねて成長するってのは、社会の常識だぞ?」

右京「(スプーンでコーヒーをグルグルと掻き混ぜながら)すずめにも同じ事言われたよ。やってみなくちゃ分からないだろうって」

土井「そりゃそうだ。……まったく、すずめちゃんもよく我慢してんなあ。お前、幸せモンだぞ?」

 土井の皮肉を真に受けてニタつく右京。

土井「でもアレだろ? 就職する気はないんだろ?」

右京「うん。それは考えてない」

土井「だったら、なおさらもっとガンガン攻めなきゃいけないんじゃねーか? フリーターの時期が長すぎるとなあ、色んな意味で損だぞ?」

 右京を指差して釘を刺す土井。

 またしても痛いところを突かれ、何も言い返せない右京。

 

○喫茶店の前

 扉が開き、中から出てくる右京と土井。

土井「……ま、とにかく頑張れよ。俺たち諦めたもんからしたら、未だに夢を捨てないで頑張ってるお前はある意味スゲェ奴だと思うしな。……ああ、もし就職する気になったら、俺んとこ口きいてやるぞ? 結構人手不足みたいだからな」

右京「ああ、ありがとう」

土井「じゃーな」

 手を振って去っていく土井。

 右京、土井を見送って空を見上げ、一つ溜め息をつく……。

 

《CM》

 

○たちばな

香須実「ありがとうございました!」

 会計を済ませた客を見送る香須実。

 と、奥からヒョイと勢地郎が顔を出す。

勢地郎「香須実。そろそろ替えの作務衣、注文しといてくれよ」

香須実「そうか! もうそんな時期だね」

 香須実、レジの後ろの棚を開け、ゴソゴソと何やら探す。

 そこへ机を拭いていたひとみが近付く。

ひとみ「仕事着、変えるんですか?」

香須実「ううん、同じなんだけどね。毎日着てると傷みも早くてね。定期的に注文してるのよ。……と、これだこれだ」

 数枚の伝票を取り出す香須実。

香須実「近くの百貨店なんだけど……。ひとみちゃん、ちょっと行ってきてくれる?」

ひとみ「(笑顔で)分かりました!」

香須実「じゃ、これが前の伝票なので、同じように……」

 ひとみに説明する香須実。

 それをにこやかに見つめる勢地郎。

ひとみ「じゃ、ちょっと着替えてきます!」

 そう言って、奥の居間へ入っていくひとみ。

 勢地郎、香須実に近寄り、

勢地郎「ひとみちゃんがいてくれると、助かるねぇ」

香須実「ホント、よくやってくれてる。でも楽しそうなんで、良かった」

勢地郎「ああ」

 奥から、私服に着替えたひとみが出てくる。

ひとみ「それじゃあ、行ってきます!」

勢地郎「ああ、行ってらっしゃい」

香須実「……あ、ちょっと待って!」

ひとみ「え?」

 扉の前で立ち止まるひとみ。

香須実「……あきらクン、誘ってもらえるかなあ?」

 思わず香須実を見遣る勢地郎。

ひとみ「あ……、はい! ……でも、いいんですか? 謹慎中なのに……」

香須実「修行とは別の話なんだから、大丈夫大丈夫! ねぇお父さん?」

勢地郎「(ちょっと困り顔で)え、まあ、そのくらいなら……」

ひとみ「分かりました! じゃ、誘ってみます!」

香須実「頼むね」

ひとみ「はい! 行ってきます!」

 軽やかに店を出ていくひとみ。

 

○街中 & あきらの自宅

 携帯電話で話しながら歩くひとみ。

ひとみ「……どう? 出られる?」

   ×   ×   ×

 画面、交互にあきら、ひとみ。

あきら「……でも、私、今謹慎中ですから」

   ×   ×   ×

ひとみ「立花のおじさんがいいって言ってるんだから、大丈夫だよ!」

   ×   ×   ×

あきら「でも……」

   ×   ×   ×

ひとみ「気分転換になるし、ね?」

   ×   ×   ×

あきら「……分かりました」

   ×   ×   ×

ひとみ「じゃ、百貨店の前で待ってるから。それじゃね!」

 電話を切るひとみ、笑顔で歩き続ける。

   ×   ×   ×

 携帯電話を切って、しばし考え込むあきら。

あきら「……ふう」

 あきら、溜め息をついてスクッと立ち上がる。

 

○延竜寺・本堂

 ゴクッと生唾を飲みながら、本堂の扉を開けて中へ入るトドロキ。

 そして、フブキ、ザンキもそれに続く。

 

○同・中央の広間

 中を歩み進む三人、中央の広間へ出たところで、不気味な邪気を感じて立ち止まる。

 と、天井から重々しい声が!

声「シツ……コイ……ゾ」

トドロキ「出やがったな!」

 音撃弦・烈雷を構えるトドロキ。

 天井を破ってドスッと降り立つテッソ。

 目をギラつかせ、体中から黒っぽい煙を沸き立たせている。

 トドロキ、手首の音錠を鳴らして真っ直ぐ上に突き上げる。

 その横では、フブキが音笛を吹く。

 稲妻と吹雪が同時に巻き起こり、トドロキとフブキが鬼に変化!

 その後ろでは、ザンキが様子を伺い身構えている。

テッソ「フヌーーーー……」

 呻き声を上げながら、全身の毛を逆立て始めるテッソ。

轟鬼「オラーーーッ!」

 轟鬼、そのテッソに向かって突進!

 吹雪鬼もまた、フルート型音撃管・烈雪を胸の前で構えて剣化させ、走り出す!

吹雪鬼「ハッ!」

 

○とある百貨店・入口

 あきらを待ち、入口のドア付近で立っているひとみ。

 と、あきらが暗い表情で現れる。

あきら「……すいません、持田さん。お待たせしました」

ひとみ「(あきらに近付いて)あ! ……もう、何暗い顔してんの! ……行こ!」

 ひとみ、笑顔であきらの手を取って、百貨店の中へと入っていく。

 

○同・呉服売場

 ひとみとあきらが、恐る恐る売場に入ってくる。

ひとみ「うわあ……。私、着物の売場なんて初めて来ちゃった!(周りに陳列してある着物をキョロキョロと眺めて)へぇ、綺麗なんだあ……」

 あきら、無言で後ろに続く。

ひとみ「……あ、あの人に聞いてみよ?」

 ひとみ、商品整理をしているすずめの方へ近付く。

ひとみ「すいませ~ん、注文したいのがあるんですけど」

すずめ「(パッと顔を上げ)あ、いらっしゃいませ! ……えと、どういった……」

ひとみ「いつもここで作ってもらってるんですけど……」

 ひとみ、そう言いながらバッグから伝票を取り出してすずめに見せる。

すずめ「(ひとみから伝票を受け取り)作務衣一式……、と、すいません、少々お待ちください!」

 すずめ、近くにいたベテランの女性店員に話しかける。

 伝票を見て、笑顔で頷く女性店員。

女性店員「(ひとみ達に近寄り)大変お待たせいたしました。いつもありがとうございます。ご注文承りますので、どうぞこちらへ……」

 ひとみとあきらを接客テーブルへと案内する女性店員。

すずめ「どうぞ!」

 すずめも、笑顔で二人に椅子を勧める。

ひとみ「ありがとうございます!」

 笑顔ですずめを見返すひとみ。

 あきらの表情はまだぎこちない……。

 

○延竜寺・本堂の大広間

 テッソに烈雷で斬りかかる轟鬼。

 しかし、体に似合わぬ素早い動きでこれを避けてジャンプするテッソ。

 今度は、吹雪鬼が着地せんとするテッソに照準を合わせて烈雪剣を振り下ろす。

 三日月型の白い刃が宙を走るが、間一髪テッソの動きの方が速く、またしてもこれを避けてジャンプ。

吹雪鬼「……速いわね」

轟鬼「ええ……」

 テッソ、逆立った体毛を針のように硬化させて発射!

 避けた吹雪鬼と轟鬼だが、数本かすって血が吹き出る。

轟鬼「ウッ!」

 少し後ろに下がった吹雪鬼、烈雪のソードモードを解除して、ベルトから誘撃鬼針を取り出して烈雪に詰める。

吹雪鬼「轟鬼君!」

 轟鬼に合図する吹雪鬼。

轟鬼「……は、はい!」

 察知した轟鬼、再びテッソに向かって突進する。

 轟鬼の攻撃を避けて宙を舞うテッソ。

 そのテッソに向け、烈雪を口に当てて狙いを定める吹雪鬼。

 テッソの飛び回る軌道を計算し、鬼針を吹射!

 鬼針は、テッソの背中をかすめた後、グイッと軌道を変えてテッソに向かう!

 続けて鬼針を吹射する吹雪鬼。

 素早い動きのテッソに対して放たれた誘撃型の鬼針が前から後ろから命中!

テッソ「グエッ!」

 ドサッと床に落ちるテッソ。

 吹雪鬼、烈雪を横に持ち替えて口元へ。

吹雪鬼「音撃射・流麗縛身!」

 烈雪でフルートの音色を奏でる吹雪鬼。

 テッソも負けじと体中から黒い竜巻を起こす!

 ぶつかり合う烈雪の波紋とテッソの黒い竜巻!

 互いに押し合う二つの力、懸命にフルートを奏でる吹雪鬼。

 徐々に烈雪の波紋が黒い竜巻を飲み込んでいき、ついにはテッソの体を覆った!

 体内に伝道する流麗縛身の音撃波動!

 テッソ、その場で小刻みに震えながらもついには動けなくなる。

ザンキ「今だ、轟鬼ィ~~!!」

轟鬼「はい!!」

 轟鬼、ジャンプしてテッソの背中に飛び乗り、グサリと烈雷を突き刺す!

轟鬼「音撃斬・雷電激震!」

 烈雷を縦弾きする轟鬼。

 テッソの体中に伝道するその波動。

 そして……、爆発!!

 と、四散したテッソから、一つの青白い光が浮き上がる。

ザンキ「ムッ!」

 ザンキ、両手を胸の前で複雑に組み重ね合わせ、目を瞑って呪文を唱える!

 ザンキの呪文に呼応するように青白い光はユラユラと揺れながら部屋の天井角へと上昇していく。

ザンキ「……ハッ!!」

 勢いよく右手を前へ押し出すようにかざして叫ぶザンキ。

 と、青白い光はバッと砕けて紋章のような形となり、天井角にピタッと貼りついた!

 そして、その紋章は徐々に色を薄くしていき、ついには天井板と同色になって消えていった……。

ザンキ「ふぅ……」

 汗だくのまま、思わず力を失って床に手をつくザンキ。

 轟鬼が、顔の変身を解きながらそこへ駆け寄る。

トドロキ「ザンキさん! 大丈夫ですか!?」

ザンキ「……ああ。お前こそよくやったな」

 吹雪鬼も、顔の変身を解いてそこへ歩み寄る。

 顔を上げるザンキ。

 見つめ合って微笑むザンキとフブキ。

 その光景を見て、ちょっぴり顔をしかめるトドロキ……。

 

○百貨店

 呉服売場を後にして、通路を歩いているひとみとあきら。

ひとみ「終わった終わった! ……ねえ、なんか飲んで帰ろうよ」

あきら「え? いいんですか?」

ひとみ「ふふ~ん。実はねぇ、帰りに休憩しといでって、香須実さんに貰っちゃったんだ!」

 そう言って、商品券を数枚あきらに見せつけるひとみ。

あきら「……アハ」

 少し笑顔になるあきら。

 二人、店内の喫茶スペースへと入っていく。

 

○同・喫茶スペース

 ひとみとあきら、二人でクリームソーダをつつく。

 と、そこへ仕事を終えた私服のすずめが入ってくる。

ひとみ「あ!」

 すずめを見つけて声を出すひとみ。

 すずめも二人に気付き、手を振って近付いていく。

すずめ「ああ! ……その、先程はありがとうございました! ……私、まだ新米なもんでご迷惑かけちゃって」

ひとみ「何言ってるんですか! 親切にしていただいて……」

 にこやかに話すひとみ。

 あきらも、ぎこちない笑顔でペコリと頭を下げる。

ひとみ「あの……、良かったらご一緒しませんかあ?」

すずめ「あ、ありがとうございます。じゃ」

 ひとみ、すずめに隣の席を勧める。

 すずめ、少し遠慮気味に座る。

すずめ「……お客さんと一緒って、なんか緊張しますね」

ひとみ「え~、敬語なんて使わないでくださいよ~。私たち、年下なんですから!」

すずめ「でも、お客さんですから……」

ひとみ「じゃ、今はお友達ってことにしませんかあ? ねぇ、天美さん」

あきら「……え? ……ええ」

 急に振られて焦るあきら。

すずめ「じゃ、そうしよっかな! では、お姉さんに何でも聞きたまえ!」

 笑い合う三人。

 ウェイトレスにアイスコーヒーを注文するすずめ。

ひとみ「……あの、こういうお仕事って、大変ですよね」

すずめ「ん……、私はまだ新人なんでよく分かんないんだけどね。……でも、今までの自分の甘さを思い知ったって言うか、社会の厳しさ……みたいなもんが分かってきた感じはするかなあ」

 ピクッと反応するあきら。

ひとみ「ふぅん……。そんな事言ってたら、私なんかまだまだだなあ」

すずめ「ハハ……。私ね、小さい頃、事故で父親亡くしてるの。だから、自分は人より苦労してるんだみたいに思い込んでたところがあったのよね。でも、考えてみたらそれが甘えの元だったのかもしれないなあって……」

あきら「(身を乗り出して)どうしてなんですか? どうしてそれが甘えになるんですか?」

すずめ「ん~、結局そういう考え方って、独りよがりなのかもね。いざ社会に出てみると、苦しいのは自分だけじゃないってことを思い知らされちゃった」

あきら「……その、事故を、怨んだりはしなかったんですか?」

 ストレートなあきらの問いにドキッとするひとみ。

すずめ「(少し微笑んで)人を怨んじゃったらさあ、必ず自分に返ってきちゃうもんなんだよね。私も子供の頃はすっごく事故を怨んだりもしたけど、高校ん時の先生から『憎しみからは何も生まれない』って言われてハッとしたのね。憎む心を持って生きるほどつまんないものはないって……」

 沈黙するあきら、そしてひとみ……。

すずめ「……あ、ゴメンゴメン! なんか話が重くなっちゃって!」

ひとみ「(バタバタと手を振って)いいえ! とってもいいお話です!」

 微笑み合うひとみとすずめ。

 そして、うつむいて唇を噛み締めるあきら……。

 

○たちばな

 店内で談笑する、勢地郎、ヒビキ、香須実、日菜佳。

 と、入口の扉が開いてイブキが入ってくる。

イブキ「こんにちは」

香須実「あ、イブキ君。ご苦労さん!」

 と、続け様に、今度はひとみとあきらが帰ってくる。

ひとみ「ただいま~」

香須実「あ、ひとみちゃ~ん! おか……」

 言いかけた香須実、ひとみの後ろのあきらに気付き、ハッと口を押さえてイブキをチラ見する。

 イブキ、あきらを見て驚く。

イブキ「あきら! 自宅謹慎だと……」

香須実「ああ、イブキ君! わ、私が頼んだのよ! 作務衣の注文に行ってくれって。……それくらい、いいでしょう?」

 慌ててあきらを庇ってイブキに説明する香須実。

イブキ「そう……ですか……」

 あきら、厳しい表情でイブキに近付く。

あきら「イブキさん」

イブキ「え?」

あきら「テスト用のディスクを、お願いします!」

 そう言ってイブキに手を出すあきら。

イブキ「(表情を引き締め)……ああ」

 イブキ、ウエストポーチからテスト用のディスクを取り出し、あきらに渡す。

 あきら、ディスクを受け取って練習用の音笛にセットし、クルリと回転させる。

 目を瞑ってディスクを読み取るあきら。

 固唾を呑んで見守る他の者たち。

あきら「(目を開いて)RG、六四三、EFNの三一三八九……、マホロバ」

イブキ「(表情を緩めて)あきら……」

勢地郎「……よ~し! これで追試は大丈夫だねぇ」

あきら「(首を横に振って)いえ。……次は安達君と一緒に、二段を受けます」

イブキ「あ……」

 安堵の笑顔となるイブキ。

あきら「イブキさん、これからもよろしくお願いします!」

 そう言って深々とイブキに頭を下げるあきら。

 笑顔になる他の者たち。

ヒビキ「まさに憑き物落ちたり……って感じだな。……明日夢、負けんなよ!」

 そう言って、明日夢の背中をポンと押すヒビキ。

明日夢「は、はい! ……おっとと!」

 ヒビキに押されて、つんのめるようにあきらの近くに飛び出す明日夢。

明日夢「が、頑張ろうね! 天美さん!」

あきら「……はい!」

 笑顔で応えるあきら。

 明るい空気が、関東支部のメンバーたちを包み込む……。

 

○六之巻 完

 

○エンディング曲

 

○次回予告

 研究室で話すみどりとフブキ。

みどり「鏡よ鏡よ、鏡さん……」

 作戦室で話す勢地郎と日菜佳。

日菜佳「な~んか、またヘンなのが出てきましたね~」

 銀色のバンの中で、スピーカーに向かって話す男。

男「ご無沙汰しております」

 七之巻『引き寄せる鏡』

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