○山間部のとある民家・居間
天気のいい午後、とある民家の居間。
壁沿いの台の上に置かれた、丸型の古めかしい鏡に向かって髪をとく、十七、八歳の女性。
髪型をしきりに気にして、キョロキョロと首を傾げる。
と、廊下の向こうから声。
母親らしき声「麻衣子、いつまでやってんの! 早くしなさい!」
麻衣子と呼ばれたその十七、八歳の女性「ハイハイ、分かってます!」
麻衣子、ようやく納得してバレッタで髪を固定する。
鏡を覗き込む麻衣子。
と、鏡の中の麻衣子の髪がバサッと崩れ落ちる。
麻衣子「え?」
思わず髪に手を遣る麻衣子。
しかし、髪はしっかりバレッタで止まっている。
今一度鏡を見る麻衣子。
すると、鏡の中のザンバラ髪の麻衣子がニヤッと笑った!
麻衣子「……イヤッ!」
麻衣子、恐怖で体を後ろに倒し、床に尻餅をつく。
と、鏡の中から黒い髪がニューッと飛び出し、麻衣子の首に巻きつく!
麻衣子「あっ……、ウウッ……」
長い髪の束に首を絞められて苦しむ麻衣子。
ポトリと落ちるバレッタ。
そしてついに、麻衣子は髪の束に引きずられるように、鏡の中へと取り込まれていった。
静まり返る居間……。
○同・廊下
母親「麻衣子ったら、遅れるわよ! いい加減にしなさい!」
廊下をバタバタと歩く母親。
イライラした面持ちで居間に入る。
○同・居間
誰もいない居間に入り、部屋を見廻す母親。
母親「……麻衣子?」
ふと、鏡台の少し前に落ちていたバレッタを見つけて拾う。
バレッタを手に、不審な表情の母親。
と、背後の鏡から黒い髪の束が飛び出す!
母親の首に巻きつく髪の束!
母親「ウッ!」
苦しむ母親。
そして、麻衣子と同じように鏡の中へと引きずり込まれていく。
床には、ポトリと落ちたバレッタがひとつ……。
○オープニング曲
○サブタイトル
七之巻『引き寄せる鏡』
○とある山中
フブキ、専用バン・結晶のバックラックの扉を開いた状態で、ノートPCを広げて何やらデータ解析をしている。
フブキ「(カタカタとキーボードを叩いて)……よし、これでOKっと」
と、浅葱鷲が一匹、フブキの頭上に戻ってくる。
フブキ「ご苦労さん」
フブキ、そう言いながら右手の人差し指を差し伸べるが、浅葱鷲はフブキの指には止まらず、その場をグルグルと旋回し始める。
フブキ「……どうしたの?」
浅葱鷲の様子を伺うフブキ。
フブキ「何かあるのね。……案内して」
浅葱鷲、キュイーンとひと鳴きしてフブキに方向を示唆。
再び飛び始める浅葱鷲、そしてそれを駆け足で追うフブキ。
○同・とある民家の近くの林
林の切れ目で、浅葱鷲がストップして旋回。
後ろからやってきたフブキ、浅葱鷲を見上げて、
フブキ「ここ?」
目の前十数メートルのところにある民家に向けてひと鳴きする浅葱鷲。
民家をジッと見つめるフブキ。
フブキ「(腰から音笛をはずして)おいで」
浅葱鷲、空中でディスク化してフブキのもとへと落ちる。
ディスクをキャッチして、音笛に取り付けて回転させるフブキ。
すると、ディスクが無色透明に変化!
フブキ、透明のディスクを宙へ放り投げる。
空中で再びアニマル化するディスク。
フブキ「頼んだわよ」
フブキに小さく合図して、民家の方へと飛んでいく透明の浅葱鷲。
○たちばな・地下作戦室
PCのモニターを見ながら、キーボードを軽く叩くザンキ。
傍らには勢地郎。
ザンキ「……とりあえず、こんなところですかね」
勢地郎「ご苦労さん。……しかし、こいつはじっくり検証してみないといけないデータだねぇ」
ザンキ「ええ。フブキの方でも、別の角度からやってもらってます」
勢地郎「うん。もし何か人的な作用によるものだとしたら、これは相当厄介だぞ~」
深刻な表情の二人。
○山間部・民家の近くの林
腕時計をチラッと見るフブキ。
と、前方から、透明の浅葱鷲が戻ってくる。
フブキ、音笛を腰からはずし、ディスクを受ける形に変えて手前に差し出す。
浅葱鷲、空中でディスク化して真っ直ぐに音笛の上に落ちてきて自動的にセットされる。
ディスクを回すフブキ、その内容を読み取り、ゆっくりと顔を上げる。
フブキ「……鏡?」
フブキ、前へ出て前方の民家を見遣る。
玄関先では、家族と思しき人たちが数人騒いでいる。
フブキ「ふ~む……」
フブキ、その様子を見て少し考え、サッと振り返ってその場を去る。
○柴又・公園通り
並んで歩く右京とすずめ。
すずめ「ええっと……、こっちの方かな」
すずめ、メモを見ながら右京を先導するように歩く。
右京「俺、和菓子ってあんまり好きじゃないんだよなあ」
すずめ「いいじゃん、たまには! どうせフラフラしてんだから」
嫌味を言われて少し顔をしかめる右京。
信号を渡り、角を二つ越え、目の前にたちばなが見えてくる。
すずめ「あった! あそこあそこ!」
右京の手を引っ張って、早足になるすずめ。
○たちばな
店内、レジで紙幣を数えている香須実。
そして、机を拭いているひとみ。
入口の扉がガラッと開き、すずめと右京が入ってくる。
香須実「あ、いらっしゃいませ!」
中に入り、ペコリと頭を下げながら歩くすずめ。
その後ろに、つまらなそうな顔の右京。
ひとみ「(すずめに気付いて)……あ! 工藤さん!」
すずめ「(ひとみに手を振り)こんちは!」
ひとみ、駆け足ですずめに近付く。
ひとみ「来てくれたんですね~」
すずめ「うん! 私、甘いもん大好きだからね~」
香須実も傍へ寄り、ひとみに問う。
香須実「知り合い?」
ひとみ「こないだお世話になった百貨店の呉服売場の方です!」
香須実「あ、そうなんですか! いつもお世話になっております」
すずめに頭を下げる香須実。
すずめ「いえいえ、そんな! 私、まだ新人なんで、全然分かってないんですよ~」
恐縮して同じように香須実に頭を下げるすずめ。
香須実、顔を上げて右京の方をチラッと見る。
香須実「えと……」
すずめ「ああ! お友達の薄葉君です」
右京「あ、う……、薄葉右京です。は……、はじめまして!」
香須実の美貌に照れつつ、ニコニコ笑ってペコリと頭を下げる右京。
横目で睨むすずめ。
右京「(すずめの視線に気付き)……なんだよ」
すずめ「なーによ。さっきまでつまんなそうにしてたクセに」
バツが悪そうな右京。
香須実「……まあまあ! あ、どうぞうどうぞ、こちらに座ってくださいな!」
取り繕うように、二人を席へ案内する香須実。
○同・地下研究室
室内には、みどり、勢地郎、そしてフブキ。
みどり、ディスクを一枚、銀色のドライブにセットする。
モニターを見つめる三人。
と、モニターに古めかしい丸型の鏡が映し出される。
勢地郎「……鏡?」
キーボードをポンポンと叩くみどり。
するとモニターが二分割され、物体のアウトラインを取ったような立体線画像と、レントゲン写真のような物体解析映像とに切り替わる。
勢地郎「おお……」
みどり「私の新開発、魔化魍解析探知よ。魔化魍特有の細胞構造をディスクアニマルが読み取って、モニター上で解析できるようにしたの」
勢地郎「なるほど……。ここんとこ、妙な現象が増えてきてるからなあ」
みどり「うん。もう既存のパターンだけじゃあ、分析できなくなってきてるのよねぇ」
フブキ「……で、この鏡は?」
フブキ、二人の会話をあまり聞いていないような様子で、ジッとモニターを見つめながらみどりに問う。
みどり「……とね、外観は無機物の状態なんだけど、この中にうっすらと魔化魍特有の細胞が見えるのよねぇ」
そう言いながら、鏡の中心にうっすらと写る影を指差すみどり。
フブキ「つまり、鏡の中に魔化魍が入り込んでいる、と?」
みどり「う~ん、そうかもしれないけど、そうじゃないかもしれない。この鏡自体が魔化魍って可能性もあるわね」
フブキ「既に犠牲者が出ている感じですが、やはり、この鏡の中に取り込まれたと考えるべきなんでしょうか?」
勢地郎に問うフブキ。
勢地郎「う~ん……、こういった例は……」
みどり「鏡よ鏡よ鏡さん、あなたは魔化魍? それとも……」
おどけたような口調でそう言いながら、キーボードを叩いて々と画面を切り替えるみどり。
勢地郎「(モニターをジッと見つめながら)ん、待てよ……、確かどっかで……」
みどり「え?」
勢地郎の方へと顔を向ける、みどりとフブキ。
勢地郎「ちょっと……」
バタバタと部屋を出ていく勢地郎。
みどりとフブキ、顔を見合わせて、ゆっくりと後を追う。
○同・地下作戦室
奥の方の棚から、古い書物を数冊引っ張り出す勢地郎。
机の上にドサッと置くと、辺りは埃まみれ。
パラパラと資料をめくる勢地郎。
と、そこへみどりとフブキが入る。
みどり「(手で目の前を払いながら)ウッ! すっごい埃!」
勢地郎、何冊かパラパラとめくったところで、バッとその内の一冊を机の上で見開く。
勢地郎「あったあった。これだ」
みどり「(古書を覗き込みながら)え~? どこなの~?」
勢地郎「(右ページの真ん中辺りを指差し)ここだ。ほんの数行しか触れられてないが、フルカガミの伝説が記録されている」
フブキ「フルカガミ……」
勢地郎「ああ。実際に退治した内容は記録されていないようだが……。と、奈良か。本部に問い合わせてみるか」
勢地郎、電話の方へと歩み寄り、吉野本部へ電話をかけ始める。
フブキ「(机の上の資料に視線を落としたまま)……無機物に魔化魍が取り憑くとは、考えにくいわね」
みどり「でも、こないだのテッソにしろ、何だか妙な動きがあるのは確かよねぇ……」
この間、電話口では勢地郎が吉野本部にフルカガミの情報を送ってもらうよう依頼している。
話し終わり、電話を切る勢地郎。
勢地郎「奈良から昔の詳しい記録を、後で送ってくれるそうだ。……それより、問題はその鏡をどうやって民家から引き離すかだが」
フブキ「行方不明者が出たってことで、現場は騒ぎの真っ只中ですしね」
勢地郎「何とか外へ持ち出すしかない、か」
みどり「ん~、じゃ、とりあえず急いでレプリカを作ってみるかあ」
勢地郎「そうだなあ。人知れず摩り替えるってのが、一番いい方法かもしれないねぇ」
そう言いながら、チラリとフブキの方を見遣る勢地郎とみどり。
フブキ、溜め息をついて立ち上がり、
フブキ「そうね。私がやるしかないわけね。……忍者属性の私にしか出来ないことですからね」
みどり「そういうことぉ!」
フブキ「フゥ……」
にこやかな勢地郎とみどり、そして諦観顔のフブキ。
《CM》
○たちばな・店頭
右京とすずめのテーブルの傍に寄り添うひとみ。
すずめとひとみ、二人で笑い合う。
店内を見回す右京。
と、奥からフブキとみどりが出てくる。
みどり「じゃ、頼んだわよ」
みどり、そう言いながら丸い風呂敷包みをフブキに手渡す。
フブキ「あんまり気乗りしない仕事ね」
右京、フブキに気付いて、
右京「フブ……、あ、いや、不動明先生!!」
右京の声に驚く他の者たち。
フブキ「(ウンザリした顔つきになり)……ここでは、フブキでいいわよ」
香須実「え? お知り合いですか? フブキさん」
フブキ「音大の後輩よ。昔、臨時講師した時の教え子だったの」
香須実「へぇ~、奇遇ですね~」
香須実、改めて右京をジロジロと見る。
照れる右京。
フブキ、みどりに目で合図。
みどり、右京が以前聞いた弟子志望の教え子だと察知する。
フブキ「何故あなたがここに?」
厳しい顔つきで右京に問うフブキ。
右京「いやその……、こいつに連れてこられまして……」
右京、そう言ってすずめを指差す。
ひとみ「ああ! この方、工藤すずめさん。作務衣を注文している百貨店の呉服売場の方なんです」
フブキ「……なるほどね。じゃ、行ってきます」
出入口の扉へと歩を進めるフブキ。
右京「フブキさん!」
フブキ「悪いわね、仕事なのよ」
振り返ることもなく右京に返事し、そのまま外へ出ていくフブキ。
ひとみ「へぇ~、フブキさんに教えてもらってたんですかあ。……どんな先生だったんですか? フブキさん」
ひとみ、無邪気に右京に問いかける。
右京「(静かに腰を下ろしながら)あ……、ああ、そうだね。いい先生だったよ」
すずめ「え? 不動明先生でしょ? フブキさんって……」
バツの悪そうな顔をする右京とひとみ。
香須実「あ、ああ! その……、愛称なのよ! あの人、すっごいクールだから、何かそんなあだ名がついちゃったのね」
すずめ「なるほどね~。確かに吹雪!って感じですね~」
香須実「そうでしょ? アハハハ……」
不自然に笑い合う香須実とひとみ。
みどり、その様子を遠巻きに腕組みしながら見つめる……。
○同・地下作戦室
電話しながら、PCのモニターを見つめる勢地郎。
傍には日菜佳。
勢地郎「……ああ、来ました来ました、これですね。(キーボードとトントンと叩いて)……はあ、無機物との合体の裏は、やはりコレでしたかあ……。ってことは、今回のも……、ですよねぇ。こりゃ厄介だ」
勢地郎、受話器を持ったままPCから離れ、中央の椅子に座り直す。
勢地郎「……はい、そうします。ただ、こちらの手駒では……。あ、そうですか。ありがとうございます。……はい、では」
受話器を置く勢地郎。
日菜佳「な~んか、またヘンなのが出てきましたね~」
勢地郎「ああ。どうやら自然発生じゃなみたいだから、こりゃホントに面倒だよ」
日菜佳「自然発生じゃない? ホントに魔化魍なんですか~?」
勢地郎「(PCのモニターを見ながら)この本部から送られてきたデータ、かなり古い文献から構成したもののようだが、当時、魔化魍を独自に研究して悪用した者がいたようなんだな」
日菜佳「なんと!」
勢地郎「無機物に魔化魍を融合させる、というとんでもない悪事が行われたらしいね」
日菜佳「それがこのフルカガミってわけですね~?」
勢地郎「ああ。どうやら今回もその時と同じ手口と考えられるねぇ……。内部事情を知る者の仕業か、或いは当時の犯人の
関係者か……」
日菜佳「その犯人ってのは、どうなったんスか?」
勢地郎「それは本部のマル秘事項だ。我々には分からないところだね。ただ、今回、当時の事情をよく知っている鬼を派遣してくれるということだから、後で話を聞いてみよう」
○猛士関西支部の駐車場
銀色のバンのサイドドアをバタンと閉める、背の高い男。
男「……よっしゃ! 行こか」
運転席へと向かう男。
女「ハイハ~イ」
細身で、長い髪を器用に頭上でまとめ上げた女性が、書類をパラパラとめくりながら助手席へと向かう。
鳴り響くエンジンの音。
そして、フロントガラス越しに見える、男と女の顔。
男は、長身で肩幅の広いガッチリした体型に、こだわり感が漂う赤フレームの眼鏡をかけた三十代半ばくらいの風貌。
女は、まとめ上げた黒髪が特徴的な二十代半ばくらいのエキゾチック美人。
男「ゆっくりドライブ、といきたいとこやけど」
女「はよ行かんと、結構ヤバいですよ」
関西イントネーションで話す二人。
その二人を乗せ、うなりを上げながら発車する銀色のバン。
○たちばな・地下作戦室
日菜佳「え? 本部から派遣されてくるんスか?」
子犬のような顔つきで勢地郎に問いかける日菜佳。
勢地郎「その事情を知っている鬼ってのは、本部からだね。あと、関西支部からも応援をよこしてくれるということだ」
香須実「……ってことは、もしかしてミカヅキさんが!?」
いつの間にか階段のところにいた香須実が声を上げる。
勢地郎「大当たり。本部からはね、フルカガミ事件のあらましを知っているというホウキ君が来てくれるそうだ」
日菜佳「ホウキさん?」
勢地郎「彼女は本部駐在の鬼で、普段は開発の方を中心に活動しているらしい。話によると、彼女のご先祖がフルカガミ事件の関係者らしいんだな」
香須実「へぇ、どんな人なんだろ」
と、みどりも階段を下りて部屋に入ってくる。
日菜佳「あ! みどりさんなら知ってますよね? 本部のホウキさん」
みどり「ん? ああ、蛍ちゃんかあ。あのコは、若いけどいい腕してるわよ~。本業は和裁士なんだけどね~」
ホウキの本名は幌宵蛍(ほろよい・ほたる)といい、本部開発室では鬼であることを隠して本名で勤務している。
日菜佳「へぇ~、副業許されてるなんて、まるでフブキさんみたいデスネ!」
みどり「鬼としての手ほどきはね、実はフブキさんがしていたのよ」
日菜佳「なんと! フブキさんも、弟子とってたんデスカ!?」
日菜佳とともに、香須実も驚いた表情でみどりを見る。
みどり「ああっと……、まあ、弟子って言うか何と言うか……、ねぇ?」
みどり、話を勢地郎に振る。
勢地郎「まあ色々あったみたいだねぇ。……ところで、和裁と言えば、さっき呉服担当の人が来てたんだって?」
みどり「そうそう! それがなんと、彼氏がフブキさんの教え子だったのよ~。世間って狭いもんよね~」
香須実「(誤魔化されたが、まあいいかって感じで)……ホントねぇ。あ、そう言えばさ、あの二人、なんか明日夢君とひとみちゃんに似てなかった?」
みどり「あ、言えてるぅ! 男の子がリードされてるっぽいとことかがね」
軽く笑い合う四人。
勢地郎「……さてと、ミカヅキ君とホウキ君は今日中に到着するってことだから、フブキ君の方にも連絡しといてくれ」
日菜佳「ハイ!」
いそいそと電話口へと行く日菜佳。
香須実「久しぶりだなあ、ミカヅキさんに会うの」
みどり「あの人、ちょっと変わってて面白いもんね」
にこやかに話すみどりと香須実、それを微笑んで見つめる勢地郎、そして、フブキに連絡を取っている日菜佳……。
○とある山間部の林
夜も更け、静かな山中にフブキの専用バン・結晶が止まっている。
サイドドアが開き、黒装束を身に纏ったフブキが出てくる。
フブキ、髪を後ろでくくり、キリッとした目つきで静かに歩き出す。
○事件のあった民家の前
物陰から民家の様子を伺うフブキ。
足音もなく駆け寄り、庭先の窓から中を覗き込む。
誰もいないことを確認し、針金を巧みに使って窓の鍵を開ける。
そっと窓を開け、素早く中へ潜り込むフブキ。
○同・窓から続く廊下
手にレプリカの鏡を携え、居間へと歩を進めるフブキ。
周りの様子を再度伺い、襖を開けて中へ入る。
○同・居間
古めかしい鏡を前に、一層表情を引き締めるフブキ。
と、鏡がガタガタッと揺れ出す!
フブキ、慌てることなく黒い大きな特殊布で鏡を覆い、レプリカと摩り替えてその場を離れる。
と、抱えた鏡が布の中からフブキに衝撃を与える!
思わず壁の方へ吹っ飛ばされるフブキ。
激しい物音に家の者が起き出したのか、バタバタと足音が聞こえてくる。
フブキ「……ハッ!!」
フブキが布越しに何やら念を与えると、スゥーッと静かになる鏡。
そして、目にも止まらぬ速さで居間を出て、そのまま風にように外へ出ていくフブキ。
○とある山間部の林
黒い布包みを抱えて走るフブキ。
と、布からバチバチッと火花が散ったかと思うと、ビリビリッと布を破って外に飛び出すフルカガミ!
またしても、衝撃で弾き飛ばされるフブキ。
フブキ「ウッ……」
外に飛び出したフルカガミは、地面をポンポーンと跳ねながら、大きく膨らんだり小さく縮んだりと、無機物らしからぬ妙な動きを繰り返す。
起き上がって身構えるフブキ。
と、フルカガミの鏡面から、黒く長い髪の束が飛び出してフブキに襲い掛かる!
迫りくる髪の束を手刀で弾き落とすフブキ、隙を見て高々とジャンプし、大木の枝に飛び乗る。
そして、腰から音笛を抜いて口元へ。
夜の闇に響き渡る音笛の音色、そして沸き起こる吹雪!
吹雪鬼「ハッ!!」
大木を覆う白き風を突き破り、鬼と変化した吹雪鬼がフルカガミに向かって飛び降りる!
中空の吹雪鬼に向かって、なおも襲い掛かる黒髪の束!
吹雪鬼、それを手刀で切り裂きながら、二メートル近くの大きさになったフルカガミにキック一閃!
しかし、カキンという金属音とともに跳ね返されてしまう。
吹雪鬼「グッ……」
倒れ込む吹雪鬼。
その上空では、浅葱鷲が旋回して何やら信号を送っていた。
○銀色のバンの中 & 林の中
山道を走る銀色のバン。
その運転席では、真剣な表情で眼鏡の男が運転している。
と、助手席前に設置された通信機がピーピーと鳴る。
ボタンを押す助手席の女。
スピーカーから聞こえてきたのは、勢地郎の声。
勢地郎「(スピーカーより)あー、立花ですが」
男「ご無沙汰しております」
表情を変えぬまま、スピーカーの声に答える男。
勢地郎「(スピーカーより)やあ、ご苦労さん。吹雪鬼の浅葱鷲から信号が出始めたようだが、そろそろだね?」
男「もうすぐですね。とりあえず、吹雪鬼さんがうまいこと合流ポイントに誘い出してくれたらいいんですが」
勢地郎「(スピーカーより)うむ。とにかく急いでくれ」
男「了解」
助手席の女、通信機を切り、その指で隣のナビゲーションシステムを操作する。
女「ポイントまで、あと二キロです」
男「おし!」
ギアチェンジして加速する銀色のバン。
画面、左右分割して、左側に運転する眼鏡の男、そして右側に、ゆっくりと起き上がる吹雪鬼の姿が……。
○七之巻 完
○エンディング曲
○次回予告
フルカガミと戦う吹雪鬼と甕月鬼(みかづき)。
甕月鬼「大丈夫ですか!? フブキさん!」
作戦室で話す猛士メンバーたち。
日菜佳「こ、殺し屋って……!!」
廃墟と化した旧家を調査するフブキら。
フブキ「今度は何です?」
八之巻『漂う魔女』