これは……固定読者の予感!
あと、ちょっとしたおわびです、おととい、ほぼ徹夜したせいで昨日寝落ちしました。ので、更新できませんでした。これからは変わらず毎日更新です。ごあんしんください。
「一緒にバンドやりませんか?」
その言葉が、紫吹の頭の中で何度もリフレインする。
彼は、元々音楽に興味はない。嫌いではないが、いちいち音楽番組をチェックしたことなど一度もないし、CDも買ったことはなく、スマートフォンに入っている音楽も、すべてゲーム関連の音楽のみだ。
「…………」
―やってみたい。紫吹はそう思った。
自分が、今日、わざわざシャノワールに演奏を聞きに行ったのも、彼女たちに何かを感じたからではないか。そう思うと、どうにもやらなければならないような、使命感というか、なにか得体のしれないような感情が膨らむのが自分でもわかった。
「めうは大賛成めう!」
めうが言う。
そうだ、自分も音楽をやれば、もしかしたら彼女に追いつけるのではないか?最強のゲームプレイヤーという、自分の失われたアイデンティティ、それを取り戻し、そして……
―違う、自分のためではない。
彼女たちのために、いや、あの商店街のために何かしたいのだ。彼女らが応援する、あの商店街を。-思えば、あの曲は案外、自分のために演奏させたのではないだろうか?
……死にゆく商店街を救う、いいじゃないか。
「わかった、やろう」
―そう、言いかけた。
しかし、彼は見た。一瞬、咲子が浮かべた表情を。
それは、充分に、彼の言葉を遮るに値していた。
「―――ッ!……すこし、考えさせてくれ」
「はいっ!……あ、そうだ、私たち、フェイスブックをやっていて、そこで活動報告とかしてるんです!よかったらそこも見て決めてください!」
「そうさせてもらうよ、なにしろ、今まで楽器なんか、ピアニカとリコーダーしかやったことないからな」
紫吹は、なんとか笑いながら軽口をたたくが、実のところ内心穏やかではない。
―突き止めなければならない、あの一瞬見せた表情の理由を。
「……芽兎、悪いけどもう今日は帰るわ」
「おっけーめう、また今度めう!」
「おう」
紫吹はチャスコを後にした。まだ時間に余裕はあったが、あれ以上、あそこにはいられない、そんな気がしたからだ。
「ねえねえイブ、紫吹さん、私たちのバンドに入ってくれるかなっ?」
紫吹が立ち去った後で、まり花が言う。
「それはわかんないけど、まりか、あんた、ほとんど初対面の人バンドに誘うって……ちょっと呆れたし……」
「う、でもでもっ!あれだけギター上手なんだから、入ってくれたらもっとバンドがすっごくなるよっ!それに、同じちくパ好きだし!」
ちくパ好きは関係ないし、とイブは言おうと思ったが、よく考えれば、めうはそれでOKだったのだから、言い返すことができなかった。
「めうは、たぶん入ると思うめう」
「なんで?めうめう?」
「まだ日も暮れてない時間からしぶぶが帰るのはめずらしいめう。こーゆーときは、家でなにか練習するときめう!」
「何か、って?」
「おそらくギターめう、顔をみるに、なかなかノリノリだったなりよ?」
「そっか!入ってくれると嬉しいね、めうめう!」
「さきちゃんもそう思うよね?」
「………………」
しかし、返答はない。聞こえていなかったかな、と、まり花がもう一度声をかける。
「さきちゃん?」
「……えっ!?は、はいっ!とってもとっても、いいと思います!」
その顔には先ほど紫吹に見せた陰りは既になく、いつもの屈託のない笑顔だった。
「………………」
紫吹は、チャスコを離れ、自宅―といっても叔父の家だ―に立ち寄り、もう少し出かける旨を伝え、心もとない所持金を補給した後、もう一度、日向美商店街に向かった。
そして今、彼は霜月書林の前で立ち尽くしている。
「また今度、買いに来るよ」と言ったその日の―ましてや、三時間もたたないうちに、もう一度来る、というシチュエーションは、いささか彼を店内に入り辛くしていた。
しかし、今はそんなことをしている場合ではない、と、覚悟を決め、店内に足を踏み入れようとする。
「……何を、しているのかしら」
不意に、店内から声をかけられる。声の主は、つい三時間ほど前、別れを告げたばかりの彼女―霜月凛であった。
「うわっ!……霜月か、脅かすなよ」
「脅かすも何も、ここは私の家なのだけれど」
至極まっとうな返しが入る。
「……確かに、そりゃそうだな。あー、で、何をしてるかって聞かれても、本屋ですることと言ったら一つしかないだろ?」
ちょっとした意趣返しに、とばかりに、もっともな答えを返す。
「そうね、なら早く入りなさい、いつまでも店の前にいられても迷惑だわ」
しかし、凛は特に反応するでもなく、あくまで冷静に返した。
「……面白味の無ぇやつ」
「なにか言ったかしら」
「いえいえ、なんにも」
紫吹はまず、ギターの本を探すことにした。ネットでギターの弾き方を調べるのもいいが、やはり、本に勝る情報があるとも思えない。さらに、この霜月書林にはたくさんの音楽関連の本があるのだから、きっと丁度いい本が見つかるに違いない。そう判断してのことだ。そして、理由はもう一つある。
「……なあ、霜月、俺、ギターをやろうかと思うんだが、おすすめの教本はないか?」
これだけの音楽本があるのだから、凛本人も音楽には詳しいはずだ、という希望を込めて、紫吹は凛に聞いた。
「そうね、これがおすすめかしら」
そう言って、凛は数冊の本を取り出した。もれなく全冊、エレキギターの本だ。
「……霜月、なんで、俺がやるのがエレキギターだと分かった?」
「別に、初心者ならエレキをやりたがるだろうと思っただけよ」
凛が眉一つ動かさずに言う。
「嘘だな」
「貴方に嘘をついて私に何の得があるのかしら?」
「あるからつくんだろう?」
紫吹に、凛が嘘をついているという確証はなかった。しかし、もしも、嘘をついているのならば、二つ目の目的も達成されると、紫吹は踏んでいた。
「……アコギの本もだ、アコギの本も貰うよ。あと、ドラムの本もだ」
そう言うと今度は凛は少し驚いたような、呆れたような顔をした。
「貴方、そんなに一気に楽器ができるわけないでしょう」
「同じギターだ」
「違うわ、そんなに甘くない」
「……でも、やらなきゃ駄目だ」
「そう、勝手にしなさい」
そういうと、凛は、二、三冊の本を取り出し、手渡す。アコースティックギターと、ドラムの本だ。紫吹は懐から財布を取り出し、代金を払う。手痛い出費だ、しばらくちくパも、音ゲーも休みだろう。あげく、目的は一つしか達成していない。紫吹は失意のまま帰ることを余儀なくされていたが、帰り際、彼女にある質問をした。
「……なあ、霜月、お前、この商店街のこと、どう思ってる?」と。
「……滅べばいい、そう思っているわ」
凛はそう答えた。
「……なるほど、充分だ。ありがとう」
紫吹は、静かに家路についた。
最近、これ以外にも何か上げようかな、そう思います。
……あれだ、さすがにモチベが保て……るんだけど、けど、けどね……?
ええい、ひなビタがもっと人気出りゃ閲覧数もふえるんだがなあ……
批評がないと伸びないんじゃあないか、そう思うと不安なのです。
……いっそのこと、出版社にオリ書いて投稿してやろうかしら。添削してくれるかは知らんけど。