くやしいなぁ、くやしいなぁ、書けないなんて……くやしいよぉ……
日向美ビタースイーツ結成から一日――メンバー全員がシャノワールに集まっていた。用件は、これからの活動方針はどうするか決めるのと、もう一つ、紫吹に、日向美商店街をもっと知ってもらおうと、みんなで商店街を案内する。ということだ。本当は、ラジオも撮る予定であったが、急にラジオ、といってもこまるだろう、ということで、少しだけ延期になった。
「――それではっ!日向美ビタースイーツの活動方針を決めちゃいますっ!」
「つっても、バンドって何をやるんだ?」
「あんたそれわかってなかったの!?」
「まあ、ライブ……はわかるけど、他は何やんの?」
「そりゃあ、自分たちで曲作ったりとか?」
「俺、できる気がしないんだが」
そこまで言うと、まり花が、ふふん、と自慢げに鼻を鳴らす。
「ふふん、なんとなんとっ!私!もう曲を作ったんだよっ!」
「どんな曲名めう?」
「聞いて驚けっ!なんと、『恋とキングコング』だよっ!」
「恋と……キングコング?」
「あ、そっか、紫吹さんは知らなかったっけ、あのね、私、チャスコのことをキングコングって呼んでるんだよっ!」
まり花が補足で説明すると、紫吹は数秒考え込んで
「じゃあそれ……チャスコの歌なのか……?」と、聞いた。
「うん、日向美商店街とチャスコのお話さんだよっ!」
まり花が自信満々に返す。
よくもまあ、商店街の商売敵であるチャスコのことを歌にするなあ、とあっけにとられた紫吹だったが、まり花の顔を見て、特に何も言わなかった。
今度のラジオで発表するらしく、その時を楽しみにしよう、と紫吹は思った。
それから少しの間、恋とキングコングの話題で持ちきりになった店内だったが、やがて本題に戻ると、日向美ビタースイーツのこれからの方針について話あった。しかし、もともと商店街の活性化という目的で始めたバンド、それが活動方針だった。
「……なんか、思ったよりサクサク終わっちゃったし」
イブがどこか不満そうに言う。
「まとまらないよりはいいんじゃないかな、音楽性の違いとか起こらないほうがいいだろ」
「バンドにありがちな解散理由めう?」
と、めうが反応すると、イブが「すでに音楽性が違ってそうな奴がここにいるけどね」と笑った。
「心配ないめう、しぶぶも電波系めう!……それよりもー?ここではギャルのちゃんねーのほうがめずらしいのだーっ!」
紫吹が目をそらす。
「ぐ……反論できないし……」
「ところで、この商店街を案内してくれるとかいう話だったと思うんだけど……」
めうの言った、電波系のことをほじくり返されないうちに紫吹が急いで話題を切り替える。
「そうでした!それではこのシャノワールから……」
咲子が、現在地――シャノワールの説明から始める。
「――天神川の水でコーヒーを……」
あらかた説明が終わると、今度は外に出て商店街を見て回ることになった。
「……で、ここが石川のおじちゃんがやってるおもちゃ屋。次は――あそこかぁ……」
外に出て、商店街を案内する日向美商店街の面々だが、イブが次の店を紹介しようとすると、少し顔をしかめた。
その店は、まり花の実家――サウダージの横の本屋――霜月書林だった。
「あー……あのさ、あそこに住んでる娘、ちょっと気難しいんだけど、気にしないでね」
「知ってる、同じ高校だから」
ああ、そういえば、と、イブが手を叩く。
でも、凛の性格からしてほとんど他人とかかわってないだろうし、少し心配だな。とイブは思いつつ、霜月書林の中に入る。
「いらっしゃい――」
――偶然にも、店番をしていたのは凛であった。
「……よ、よう、霜月」
「………………」
商店街の面々と一緒にいることで、なぜか、前回よりも肩身が狭いというか――接しづらいというか――紫吹は、とてつもなく息苦しい感覚に見舞われたのだった。
最近、オリ作品を書き始めたんですが、一人称で書くと、凄まじく地の文がすすむなあ、そう感じました。ただ、どうしても限界があると思うので、何とか三人称でうまいこと書けるようになりたい……