「さて、忘れ物ないか?」
いよいよ白兎神社に出発するときに、確認のために紫吹が言う。
「ああ、ない」
「ないです」
もめながらも、しっかりと用意はしていたようで、駆、火花共に即答する。
「じゃあ出発だな」
そう言って、自転車に再びまたがる。白兎神社までは少し距離があり、徒歩では色々と面倒なのだ。
ちなみに、本来、駆の家と白兎神社は逆方向なので、紫吹にとっては同じ道を二回辿ることになる。
白兎神社は、縁結びで有名な神社である。『恋のガトリング砲』の駆にはうってつけの初詣先だろう。と、紫吹が面白がり、案内をわざわざしてまで行かせてみたかったのだった。
「……あの」
自転車で走行中、紫吹に火花が話しかける。
「私が言うのもなんなんですけど、どうしてお兄ちゃんに女の子紹介してるんですか?」
火花からすれば、兄に彼女ができるのは喜ばしいことなのだが、なぜ自らの好感度をも下げてまで、兄に女の子を紹介するのか、火花はそれが疑問であり、だから紫吹に興味を持ち、ついてくると言ったのであった。
「……うーん、なんで、ねえ?そりゃま、友達だしな」
「そこです、なんでこの馬鹿兄の友達なんかやってるんですか?如月先輩にも被害が出てるんじゃないか、って思うんですけど……」
「誰が馬鹿兄だ、誰が」
「別に、そこまでの被害はないよ、何も俺が告白してるわけじゃないしな、ははは」
「いえ、悪名は中等部にまで轟いております」
「……まあ、別にいいや、実害はない」
「今日行く白兎神社って、縁結びの有名な神社ですよね?兄のためにそこまでしてもらってなんだか悪い気もするんですが……」
「いや、好きでやってることだから」
「……まあ、そういうことでいいです、兄がヘンな女の人につかまっても困りますし」
「失礼な!俺は女の子の趣味はいいつもりだ、そんな変な奴に惚れたりしない!」
駆が必死に否定するが、それには紫吹も苦笑いし、火花は冷ややかな目を向ける。
「……実際はどうなんです?」
こっそりと火花が訪ねる。
「……実は、2、3回ほど……」
紫吹が苦笑いしたまま答える。
「……さーて、着いたぞ、白兎神社だ!」
「おお、ここが……」
「……結構混んでますね……さすが有名な神社、お兄ちゃん、早いとこ恋愛成就のお守り買った方がいいんじゃない?」
「余計なお世話だ」
「じゃあ月浦、ほい、これ」
紫吹がポケットから何かを取り出して、駆に渡す。
「なんだこれ……五円玉?」
「そうそう、四十五円分ある、『始終ご縁がありますように』ってな、この前、五十円借りたろ?そのお返しだ」
「五円ちょろまかすなよ」
「今回は『ごえん』がなかった、ってことで許せ」
「うまいこと言ってもダメだ」
「どうでもいいですけど、早く並びませんか?私甘酒飲みたいです」
「はいはい、わかったよ、じゃ、行くぞ月浦」
「五円……」
「……これじゃ、お参りしてもモテる気がしませんね。今年も頑張ってください、如月先輩」
「……うん。……おい、月浦、ほら、残りの五円」
……どうにも、テスト期間中は筆が進む、勉強は進まない。あああ、また数学が終わる……
ま、国語の成績でカバーするけど。
……とか思ってたんですよ、一年の時は。単位落としたら、高校ではマジでヤバいから気を付けた方がいいぞ……下手すりゃ仮進級だ……