「しぶぶー……まだつかないめう……?」
「んー……多分もうちょっとだな……」
電車に揺られて一時間半、めうがもう待ちきれないとばかりに文句を言う。
紫吹の実家がゲームセンターということで、気合が入っていためうは眠ることもできず、ただただ暇な時間を過ごしていたのだった。
「そ……そのもうちょっとというのはどのくらいなのかしら……?」
すぐ横で、凛が顔を真っ赤にして、ゆでだこになりながら言う。
顔が真っ赤な理由は、恐らく、凛の横に座っているまり花が、早々に眠りにつき、凛の肩にもたれかかっている形になっているせいである。
咲子やイブに何とかするように頼もうにも、二人も既に眠りについている。なすすべなく凛はゆでだこになるしかないのであった。
「さあ、ここに来たときはずっとゲームしてたからいちいち時間とか見てなかったなあ、やたら遠いのは覚えてたけど」
「…………」
「……起こせば?」
「さっきから何度もやっているわ……すぐに眠りについてしまうから無意味なのよ……」
「じゃ、霜月もがんばって寝ればいいだろ、寝不足なんだったら目をつぶってたら知らない間に寝てるぞ」
「……一応、やってみるわ」
「…………」
十数分後、凛は何とか眠りにつく。
すると、突然めうが立ち上がった。
「……ふっふっふ、ついにこのときがやってきためう……!しぶぶ、お礼を言うめう……」
「何だ突然。……ものっすごい悪い顔してるけど」
「しかたないめう、りんりんせんせーを寝かしつけてくれた恩があるめう、ちょっとだけめうの秘蔵コレクションを見せてあげるめう!」
めうはスマホを取り出し、写真フォルダーの中身を紫吹に見せた。
その中には、明らかに隠し撮りと思われる写真たちがおさめられていた。
「とくにこの写真のりんりんせんせーのおみあしは一見の価値ありめう……!」
ご丁寧に、めうによる各写真の解説付きである。
「それじゃ、おしごとをはじめるめうー!」
電車だからという意味での配慮か、それともばれないようにするためか――おそらく後者だが――シャッター音の鳴らないカメラアプリを起動し、イブや咲子、本命の、お互いにもたれあっている形になっているまり花と凛の写真を重点的に撮っていく。
少し見下ろしたところから、ローアングルぎりぎりのところから、さまざまな視点から激写を続ける。
「むっきゅん、いい写真が取れためうー!」
めうは、満足するまで写真を撮り終えると、早速撮った写真を物色し始める。
一方の紫吹はというと、我関せずといった様子で、持ってきた携帯ゲームに興じていた。
同性のめうは許されるだろうが、異性の自分が盗撮などやろうものならば、確実に軽蔑される、というか、事案が発生する。
さすがの紫吹も、通報は避けたかったのだ。
もちろん、興味はあったので、先ほどのめうの秘蔵コレクションはバッチリ見たわけではあるのだが。
「こ、こりは……ものすごい破壊力めう……なんだかえろてぃっくめう、あだるてぃっくめう……」
「え、どれどれ?」
が、抵抗むなしく、折れた。
後ほど、盗撮がばれためうは、画像データをすべて滅ぼされたのだが、それはまた別の話である。
かなり前に見た『あたしンち』で、電車で寝ている人の動きが鳩みたいだ、と言っていたのを、なぜか妙に覚えています。ああ、たしかに鳩だなあ、と、通学するときに乗る電車内で寝ている人を見て、改めてそう思います。