中学生の時、こっそり読んでた記憶。懐かしさに浸りながら再読、読破。
……うん、やっぱ名作だわ。……でも、さすがに語れる友達いないな、これは。
「……で、紫吹、これはどういうことなんだ?」
「どういうことって……見たとおりだけど?」
日向美商店街からはるか遠く、県外にひっそりと鎮座するゲームセンター『Blue Moon』
その店主である男――如月 明《きさらぎ あきら》は、自らの息子、紫吹に問うた。
てっきり、男友達を連れてくると思っていたが、こともあろうに息子は女の子――しかも美少女揃いときている――を連れてくるとは。
今まで、女っ気のなかった息子なだけに、親元を離れたほんのわずかな期間のうちに、急変してしまったのではないかと少し心配していた。
「見た通りって、お前な、普通、男友達を連れてくると思うだろ」
「男子三日会わざれば刮目して見よ。ってことだって、三日どころじゃないんだから括目しまくらないと」
「また難しい言葉を……」
しかし、いざ話してみれば、何も変わっていない、自分のよく知る息子そのままだ。と、明は安堵する。
少しばかり、人を馬鹿にしたような態度は変わっていてくれてもよかったのだが。と、同時に、心中で毒づく。
「……それで?」
「ん?なに?」
「いや、誰が本命なんだ?」
「あー……やっぱりそれ聞く?」
紫吹が、苦い顔をして聞き返すと、明は「そりゃな」というふうに頷いて見せる。
「……秘密」
「わかった、後でラインとかで言ってくれてもいいぞ」
「うん、だから秘密」
「はいはい、じゃあ、息子の彼女候補たちに挨拶しとかないとな!」
意気揚々と、明が立ち上がると、これは面倒事になりそうだと感じた紫吹は、早々に弁解を行う。
「……べつに、彼女候補とかじゃないし、バンドメンバーだし……」
「……バンド?」
明の顔つきが変わる。今までとは違う、真剣な表情だ。
「……うん」
「……バンドやってるのか?」
「まあ、一応。……あ、霜月……あの黒髪の子はメンバーじゃないんだけどね」
「……で、お前、楽器とか弾けたのか?」
「特訓したら何とかね。こう……ギターを。我ながら才能あるわ」
紫吹がギターを弾く手真似をして見せる。
「……途中で、やめるんじゃないぞ」
「……もちろん」
そこまで言うと、明は元の朗らかな表情に戻る。
「……ところで、なんてバンドなんだ?」
「え、んーとね、『日向美ビタースイーツ』って名前」
「……!『日向美ビタースイーツ』ね……」
「どうかした?」
「いや……なんでも?……友達を待たせちゃ悪いから、そろそろ行こうか、着替えるぞ」
明は、少しだけ笑って、そう言った。
「――いらっしゃいませ」
仕事着に着替え、ばっちり決めてきた明が、店の奥から現れる。
「キメ声で登場するのやめて……頼むから……」
一歩引いて、同じく、仕事着に着替えた紫吹が次いで出てくる。
父親の年甲斐もない行動に、引かれてないか若干不安になる紫吹だったが、四人は、完全に、凛のやっていたガンシューティングに夢中になっており、聞こえていないようだった。
「……聞かれてなかった……」
「……せ、セーフ……」
そのようなことで一喜一憂していると、四人のライフが既に尽きかけており、息着く間もなく、最後の一ドットまですべて削られた。
「あー!負けたー!」
「はいっ!次、私がやりたいです!」
「お、さきこー……難しいよー?」
すかさずコンティニュー、紫吹が戻ってきたことを四人が知るのは、これから実に三十分後のことであった。
本格的にひなヒスがダメっぽい。
……ああ、フェイスブックの登録しなきゃ…………
ここなつともページ別れたから、手間が二倍だよ、やったね!
……ま、二倍時間つぶせると思えば、多少は大丈夫か。