感情の無い少女も異世界から来たようです   作:エステバリス

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色々あって更新遅れてしまいました。

美月ちゃんの意外な?一面。




■の、箱■生■

屋敷についた頃は既に夜中だった。月明かりに照らされたその屋敷はまるでホテルのようだ。

 

「遠目から見てもかなり大きかったけど……近くで見るとより一層大きく感じるね。何処に泊まればいいの?」

 

「コミュニティの伝統では、ギフトゲームに参加できる者には序列を与え、上位から最上階に住むことになってますが……色々と不便でしょう。今はお好きな場所を使っていただいて結構でございます」

 

「そう。そこにある別館は使っていいの?」

 

飛鳥はス、と屋敷の脇の建物を指す。

 

「ああ。あれは子供達の館です。本来は別の用途があるのですが、警備の問題でみんなそこに住んでます。飛鳥さん達が百二十人の子供達と同居してもいいなら、使っていただいても」

 

「遠慮するわ」

 

「……子供は慣れないな」

 

飛鳥が即答し、美月も続く。別に二人とも子供が嫌いなわけではないが、流石に百二十人を相手にするのは辛い、御免なのだろう。

 

黒ウサギは『コミュニティや箱庭の詳しい説明はともかく、今はお風呂でもご堪能下さいませ』と言って湯殿の準備を始め……暫く放置されたそれの惨状に真っ青になって大急ぎで掃除に取り掛かっていった。余程悲惨だったのだろう。

 

四人は一通り屋敷を物色(美月はほぼ十六夜についてったようなもの)し、来賓室に集まっていた。

 

『お嬢……ワシも風呂に入らなアカン?』

 

「ダメだよ。三毛猫もお風呂に入らないと」

 

「……ふぅん?話にゃ聞いてたが、本当に動物と会話できるんだなお前」

 

「うん」

 

『オイゴルァ!お嬢にお前とは何様のつもりやワレェ!調子こいとるとオマエのベッド毛玉だらけにしたるぞコラ!』

 

「ダメだよ、そんなことしちゃ」

 

傍目にはニャーニャー言ってるようにしか見えない猫を耀は諌める。その様子が不気味に見えた飛鳥は無粋とわかっていながら耀に話しかける。

 

「その……出過ぎたことなんでしょうけど、春日部さんは元の世界では人間の友人はいたのかしら?」

 

「……いなかったよ。でも三毛猫達がいたからそこまで辛くはなかった……かな。でもやっぱり……ううん、なんでもないよ」

 

耀がその続きを言いにくそうに切る。なにか事情があるのだろう、ということは三人とも理解したが、同時にそれ以上踏み込むことはしなかった。

 

それ以上に耀の声音は三人での詮索を拒むようなもので、そもそも三人はそれ以上口を挟むこともできなかった。

 

廊下から黒ウサギの声がしたのはそれからすぐのことだ。

 

「ゆ、湯殿の用意ができました!女性様方からどうぞ!」

 

「ありがと、ら先に入らせてもらうわよ十六夜くん」

 

「俺は二番風呂が好きな男だからな。特に問題はねぇ」

 

「そうなのか?逆廻が入らないのなら俺は逆廻と一緒に───」

 

「それはダメよ美月さん。それから先は流石に女性と男性の差が生まれるわ」

 

「黙って湯船にGo」

 

「……そういうものなのか?逆廻」

 

「そういうものなんだから先に入ってくれ。流石の俺も同年代の、しかもお前みたいな変な意味で純粋な女と一緒に入る気は起きねぇよ」

 

女性三人が美月を引っ張りながら大浴場へと向かう。美月は少し諦めが悪いように十六夜の後ろ姿を見つめていたが、角を曲がって彼の姿が見えなくなると嘘のように三人に大人しく付いていった。

 

そんな光景を見ていた十六夜は暫く貴賓室で寛いで、

 

「……アイツは俺のどこがそんなに気に入ったのやら。それよりも───外のヤツらと話をつけておくか」

 

◆◇◆

 

女性三人は悩んでいた。この目の前の少女琴之葉 美月に。

 

一言でぶっちゃけるなら彼女はあまりに非常識だ。この場合使われるのは十六夜達のような意味の非常識ではなく、本当の意味で()()()()()。この入浴一つとっても「これはどうすればいいんだ?」だの、「何故脱ぐ必要がある?効率が悪くないか?」だの、「どう洗えばいいのか俺にはわからない」だの……いかに彼女がリアル箱入り娘だったかを裏付けるようなことを素で聞いてくるのだ。

 

「美月……ここはこうやって、表面についた汚れを落とすためにやってるんだよ」

 

と具体的な説明をすればなるほど、そういう意図があったのか。と納得してくれるが、

 

「これはこうするのよ」

 

と抽象的な説明をすればなんでそうしなきゃいけないの?みたいな感じで聞き返してくる。

 

まぁ、そんなこんなで三人がかりでなんとか美月に『身体を洗うこと』を教え、湯船に浸かったのだが……

 

「……なんで湯で洗い流した後に複数人で湯船……?に浸かるんだ?不衛生ではないのか?」

 

これである。よもやここまで面倒くさい……というか常識外れだとは思っていなかった三人は疲れを癒すための湯船で疲労を蓄積させられている有様だ。

 

「いいから浸かって。あったかくて気持ちいいよ?」

 

「気持ち……いい?───引っ張るな春日部。別に俺はここから逃げたりはしな……?」

 

耀に強引に湯船に引っ張られた美月は浸かった瞬間、その口を動かすことを暫くしなくなった。

 

「……美月さん?」

 

心配そうな表情で飛鳥が美月の顔を伺ってくる。美月はそのまま暫く飛鳥の声に応えることなく、黙っていると思えば途端に顔を上げた。

 

「……ぅ、ぅぁ……」

 

「「「え?」」」

 

なんというか、その声はエロかった。具体的に言うと嬌声だろうか。今の今までどこか機械的で感情を露ほどにしか感じさせない口調からは信じられないほど艶やかな声を美月は発していた。

 

「なん、だ……これ。すごい、あつい……からだじゅうほてって……ぅぅぅ……」

 

完全に舌ったらずな声で美月は顔を真っ赤にしながら三人に聞いてくる。が、三人はそんなのよりも湯船に浸かっただけで白夜叉に威圧されても一切揺るがなかった口調に驚きを禁じ得ないといった風だ。

 

「……だ、大丈夫……ですか?」

 

「だいじょぶ、じゃない。あたまぼうっとする……」

 

美月は湯船の上から出している普通サイズほどの胸がぐわんぐわん揺れるほどにふらふらと頭を揺らしている。その光景を見た三人はあれ?と思いまさかの解答を同時に予想した。

 

(((もしかして……のぼせてる?)))

 

美月の口ぶりから今まで一度たりとも湯船に浸かったことがないのであろうことは容易に想像できる。箱庭に来る前は湖や川の近くに住んでいた、とも聞いている。

 

もしかしたら、それらの要因が彼女の中で無意識に水とは冷たいもの、という固定観念ができているのかもしれない。それで突然湯船に浸かれば、その固定観念も手伝って彼女がこのお湯の体感している熱さは実際の熱さ以上に感じているのではないか?

 

無意識にかけていた自己暗示が一瞬で瓦解するとこうなるのか……などと三人は思いながらいまだに湯船に浸かるという独特の感触と熱に翻弄されている美月を眺める。

 

「お、まえら……なんで、そんなにへいきなの……?ぃや、なんかこれ、へんなきぶんになる……」

 

注意、ここで美月の言っているへんなきぶん、とは単純に熱いお湯が身体に常に接触してくる感覚が慣れなくて気持ち悪い、と形容しているのであってやらしい意味はない。決して。

 

が、言葉の足りない彼女の発言は三人を大いに誤解させるのには充分すぎて、ハッとなった三人は急いで湯船から美月を運びだす。これ以上レーティングを上げるような行為をするのは防がなければならないし、なにより下手をすれば湯船が美月が言った通り汚れる可能性だってある。なんで汚れるのかとかはレーティングの都合でお答えできません。

 

「も、もうやだ……これ。水に……冷えた水を、あびさせて……」

 

湯船のからなんとか上がり、グロッキーになっている美月を見た三人はバシャ、と冷水を美月にぶっかける。すると見る間に美月の身体は元の病的な白さを取り戻していき───

 

「……感謝する。見苦しいところを見せた」

 

いつも通りの彼女に戻ったのだった。

 

「……俺はさっさとここから退散したいが、ここから出てもなにをすればいいのか全くわからない。だから暫くここでお前達が満足いくまで待っていることにする」

 

「「「………」」」

 

えー、と三人揃っての呟き。結局三人は真後ろから突き刺さる美月の視線が原因で軽い話しかできずに早々に湯船から出てしまった。

 

◆◇◆

 

その後お風呂から上がった女四人はパジャマ代わりに用意されたネグリジェを着たまま、明日からの着替えのため黒ウサギの部屋にやって来ていた。特に飛鳥は正装のまま箱庭に来てしまった都合、普段着が一着もない。耀と美月は依然としてシンプルな服を適当に選別していたため問題はなかったが、飛鳥はどうにも納得がいかなかったようだ。

 

「せっかくこんな素敵な世界に来たのだもの。相応の衣装を普段着にしても問題はないでしょう?」

 

「それは勿論でございます。しかし、黒ウサギの衣装棚に飛鳥さんの気にいるようなものがあるかどうか……」

 

ゴソゴソと衣装棚を漁る黒ウサギを尻目に美月はふ、と耀に質問を投げかける。

 

「なぁ春日部。黒ウサギは何故あんなに大量の衣類を持っているんだ?衣服なんて普段身につけるものがあれば充分だろう?」

 

「……え゛」

 

「……美月さん、まさかその服って……」

 

「年中アレだ。流石に祀られる側としては色々気にしなければならない時もあるから匂いとかは面倒だが気にしていた」

 

「え、じゃあその服の匂いの対処とかしていた時は?」

 

「ああ、それは勿論なにも───」

 

「黒ウサギ!急いで美月さんの分も見繕って!私のより優先してもいいから!放っておいたら彼女、この屋敷を全裸で闊歩しかねないわ!」

 

「比較的早く、美月に似合うのを」

 

「イ、YES!承知いたしました!」

 

「……おい、なんでそれがいけないんだ?着るものは一着で事足りるし、それがなければなにも着ないのは自明の理だろう?それなら」

 

「ダメよ!仮にこの屋敷にいるのが私達だけなら百歩譲っても構わないけど、いまここにはケダモノがいるのよ!」

 

「そもそも事足りてないよね、それ」

 

全く理由がわからない、という風に頭に疑問符を浮かべまくってる美月を尻目に黒ウサギは急ぐ必要もないのにピッチを上げて棚を漁る。美月の性格上なにを渡しても「それで構わない」の一言で受け取りそうなのだが、勿論そんなことさせない。ここまで疎いと徹底的に叩き込みたくなるのが生き物のサガである。

 

超似合いそうなの見つからないな……と思った黒ウサギが改めて美月の姿を見繕うために再確認していると、ふと彼女達の後ろのクローゼットに目が行った。

 

「そう言えばあのクローゼットには依然白夜叉様に渡された衣装が色々とあったのでした……!」

 

失礼します、と三人の間を抜けてクローゼットを開ける。そこには見るだけで目がチカチカしそうになる、と形容するようなコスチュームの数々が並んでいた。

 

「美月さん……一応伺いますが、衣類の好みなどは?」

 

「ない」

 

「デスヨネ。では質問を変えましょうか。着るとすればどのようなデザインの服がよろしいでしょうか?」

 

「そうだな……なるべく着やすいのがいい。個人的に上と下が別れていると着るのが面倒だ」

 

「却下よ。さっきまでの服と変わり映えしないわ」

 

「む……なら比較的布面積の多いものがいい。あまり日に肌を当てられるのは好きじゃない」

 

「暑いのが苦手なのですね……それでしたら、と。耀さんのような短パンとタイツがいいでしょうか。美月さんにスカートを履かせるのは正直怖いですし」

 

いや、でもレギンスとブーツというのも……とブツブツ呟きながら黒ウサギは下を物色する。

 

結局、ヒップラインが強調される白い短パンと黒いタイツ、足の爪先を隠して外脛骨などの側面を露出したサンダル状の靴、というカタチで下は議決。そして上に移って───

 

「……おお、服、というのはこうも生き物の関心を唆るモノだったのか?俺は今素直に感動しているぞ」

 

なんと意外なことだろうか。美月は服に関心を持った。

 

「なんというか……月並みな感想だが、生まれ変わったような感覚だ。生まれ変わった、というのがどんな感覚なのかは知らないが」

 

すごいな、なんて呟きながら履き替えた下を堪能していたが、その前に来ていた服がネグリジェなのもあって、わかりやすく言えば今の美月は半裸だ。それには流石に口を挟まずにはいられなかった飛鳥が美月に話しかける。

 

「ほ、ほら美月さん下だけじゃなくて上の服も沢山あるから、噛み締めるのはきちんと上も着てからにしましょう?」

 

「そうだな。飛鳥は賢い」

 

お世辞みたいな言い方をされても困るのだが、と飛鳥は思いながら美月の意識を黒ウサギのクローゼットに向ける。多分美月はお世辞抜きで言ったのだろうが。

 

「そ、そうです!美月さん、上の色はどのようなものがお望みでしょうか?」

 

「……黒「却下」紫のパーカー、というやつを」

 

「パーカー……ですか。はて、黒ウサギにはこのステキ耳がありますから、渡されているのかどうか……おや、一着だけありますね」

 

美月のリクエストに沿って探していると、すぐに紫のパーカーが出てきた。まるで魔法のようだ、と黒ウサギは関心していた。

 

「こういうの。俺が思ってたヤツだ」

 

「欲しいのが見つかってよかったね」

 

耀に賛辞の言葉を送られながら美月はパーカーを着込む。しかしそこには四人とも予想だにしていなかったものがあった。

 

「ぷふっ、美月、さん……それ、パーカーだけど、犬の耳がついてるわ……!」

 

「犬耳、パーカー……ぷふふ」

 

「と、とてもお似合いで……くくく」

 

「……なにがおかしいんだ?」

 

別におかしくはない。犬耳パーカーな事以外。だが問題はそれが似合いすぎてるということだ。とてもすごく。

 

まず、紫のパーカー。これまで黒という重めの色を選んでいた彼女のイメージを一転させる、紫陽花のような色のそれは美月の落ち着いたイメージとはギャップを感じさせる。

 

次に、白の短パンとタイツ。さっきまでおおよそ活動的とは呼べないようなワンピースから真逆、運動的な軽装であると同時に、美月の、本人は気にしていないが女性としては普通ほどの胸囲をカバーするように臀部の艶かしさが現れている。

 

まぁ服装なんてどうでもいい。問題はパーカーのフードの部分、その犬耳。

 

何故かはわからないが超似合っている。あれか、彼女は既に十六夜のワンコみたいなものだからなのか。

 

そう考えると何故か三人は同時に、妙に納得がいった。

 

「なんだその目は。それよりも久遠の服じゃなかったのか?俺なんかにかまけていてよかったのか」

 

「……あ!そ、そうでしたそうでした!」

 

結局、飛鳥の洋服探しは美月が荒らしに荒らして深夜まで続いたのだとか……

 

 




と、いうわけでこれからの美月ちゃんの正装はこれになります。流石に祀られるのに真っ黒ワンピースとかいうゴスロリはどうかと……みたいな感じで。

え?だったら祀られるのにそんなワンコファッションどうなんって?知らん、そんな事は俺の管轄外だ。

ということでツンデレ狐に次ぐ動物主人公、逆廻ワンコ爆誕。

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