美月ちゃん、自分探しの巻。
ていうかなんでウチの主人公はメンタル弱かったり思考が超極端だったりするんでしょうねぇ……
後日の、件の"フォレス・ガロ"とのギフトゲームは結果だけで言えば飛鳥達は勝った。だが、それには色々とギフトゲーム初参加故の無理無茶が伴い、耀が大怪我を負うというオチもついている。
無論、美月も慌ただしく動く黒ウサギを見ていた。
「どうした美月。なにもせずに突っ立っているのは実にキミらしいが、それにしては訳ありじゃないか」
「……白鳥、か」
小さく呟く。元々言葉に感情を感じさせない美月の声音は不思議と、いつもより三割増で無愛想に感じた。
「逆廻と久遠、ラッセルは今あの獣に旗を奪われたコミュニティに旗を還しに行っている。黒ウサギは春日部にかかりっきりだ。……こんな状況で、俺はなにをするべきかなんて全く想像ができない」
少し沈鬱そうに呟く。今なにもできない自分自身に彼女なりに思うところがあるのだろう。そんな美月の姿を見た白鳥は露骨に溜息をつく。
「はぁ……よもや、自分はなにもできてないからこの場にいてはいけないのかも、なんて思っているんじゃあないだろうな?」
「よくわかったな。白鳥はエスパーの類いなのか?」
「そんなものキミを見てればすぐにでもわかる。キミはもう少し他人に気にされていることを知るべきだ。それと……自分がこの場に相応しくないなんて考えるのはいくらなんでも早計すぎると思うけど?」
「そうなのか?」
「そうだよ。キミの思考回路の単純さはもう呆れるくらいに酷いな。っていうかやれることがないなら探せばいいだろうに」
白鳥がなんの気なしに呟いた最後の言葉に美月は目をパチパチとする。
「そうか、その手があったか」
「なければ探すっていうのは普通だよ」
完全に呆れたような声は美月にはそこまで強く響かなかった。そうかそうか、と勝手に納得している美月は暫く思案し、やがて白鳥に声を掛ける。
「……やることがないな。できることもない」
「……そうだね」
結局、二人はなにをすることもなくこの非常時を終えてしまったのだった。
◆◇◆
そうしてその後、本拠に戻って来た十六夜、飛鳥、ジンは耀の容態を確認しに行く。その途中で美月と白鳥を見たが、二人はどういうことか「見舞いには行かない」と行ってどこかへ行ってしまった。
ともあれ、"ノーネーム" を襲った魔王は宝物庫にはほぼ手付かずだったため多くのギフトが残っている。だが、それらはこぞって扱いにくいものだらけで、市場に卸すことすら叶わないものばかりなのだ。
見舞いの後になにやら深刻そうな顔をしていた美月に「少し茶飲みでも付き合えよ」と十六夜がふっかけると、フードの犬耳に追加で短パンに尻尾が見えそうになるくらいの勢いで、だというのに無表情で「逆廻がいいなら行く」と即答。そして談話室のソファーで寛いでいた十六夜はやがて呆れたように黒ウサギに呟く。
「春日部の傷は二、三日もあれば治るんだって?流石は神様の箱庭ってことか」
「YES♪ただ出血が激しいので、増血を施しました。輸血となると専門のコミュニティが絡んで、それはもうお高くつきますからねぇ」
「タダで済むならそれでいいだろ。それで、例のゲームはどうなった?」
「例のゲーム?」
「そういやお前らには言ってなかったな。近々、"ノーネーム"の仲間が景品に出されるゲームがあるんだよ。まぁ面白そうだから参加するのもいーな、って思ってたとこなんだが……」
「……ぅ、うう……その、十六夜さん、誠に申し訳無いのですが……そのギフトゲーム、延期になったのデス」
延期、それだけならまだいいかもしれないのだが黒ウサギの顔は沈鬱そうで、その延期がただの延期ではないことはすぐにわかる。
「申請先で知ったんですが……このまま中止の線もあるそうです」
ウサ耳を萎れさせた黒ウサギは口惜しそうに落ち込む。対する十六夜は肩透かしを食らったようにソファーに寝そべった。
「なんてつまんねぇことしてくれるんだ。白夜叉に言ってどうにかならねぇのか?」
「どうにもならないでしょう……どうやら巨額の買い手がついてしまったようなので」
十六夜の表情は目に見えて不快そうになる。それは人の売り買いに関するものではない。
一度出した景品に金を積まれたなんて理由で取り下げるなんてホストとしてはいいことじゃない。
「チッ、所詮は売買組織か。エンターテイナーとしちゃ五流もいいとこだ。"サウザンドアイズ"は巨大な組織じゃなかったのか?プライドはねぇのかよ」
「仕方ないこのですよ。"サウザンドアイズ"は群体コミュニティ。白夜叉様のような直轄の部下が半分、あとは傘下のコミュニティが半分です。今回の主催は"サウザンドアイズ"のさんコミュニティの幹部、"ペルセウス"。双女神の看板に傷がつくことも気にならないお金やギフトがあれば、ゲームの撤回くらいはやります」
「商売、か。昔はやたらと祀り上げられて金づるのような思いをしたが……さて、その仲間というのはなんて思っているのやら」
二人の会話にその仲間の立場を自己投影した美月がぽつんと呟く。
「……まぁ、次回を期待するか。ところでその仲間ってのはどんなヤツだったんだ?」
「そうですね……一言で言えば、スーパープラチナブロンドの超美人さんです!指を通すと絹糸のような肌触りの良さで、湯浴みの時に濡れた髪が星の光でキラキラするのです」
「……湯浴み……」
「へぇ……なんでコイツが湯浴みって聞いただけで震えてるかは知らないしよくわからんが見応えはありそうだ」
「それはもう!加えて思慮深く、黒ウサギより先輩でとても可愛がってくれました。近くに居るのならせめて一度お話したかったのですけど……」
「おや、嬉しいことを言ってくれるじゃないか」
二人ははっとして、美月はうん?として窓の外を見た。コンコンと叩く窓ガラスの向こうで、にこやかに笑う金髪の少女が浮いていたのだ。飛び上がって驚いた黒ウサギは急いで窓に駆け寄る。
「レ、レティシア様!?」
「様はよせ。今の私は他人に所有される身分。"箱庭の貴族"ともあろう者がモノに敬意を払っていては笑われるぞ」
自嘲気味に苦笑しているレティシアと呼ばれた少女を前に美月は「なんで生きてるのにモノなんて言い張れるんだ?」なんて思ったのは心の中にそっと蓋。
「こんな場所からの入室ですまない。ジンには見つからずに黒ウサギと会いたかったんだ」
「そ、そうでしたか。あ、すぐにお茶を淹れるので少々お待ちください!」
久しぶりに仲間に会えたのが嬉しかったのか、黒ウサギは小躍りのようなステップを刻んで茶室に向かう。
十六夜と美月の視線に気づいたレティシアは彼らの目を一身に浴びつつ小首を傾げる。
「どうした?私の顔になにかついてるか?」
「別に。前評判通りの美人……いや、美少女だと思って。目の保養に鑑賞してた」
「気を悪くしたのならすまない。その、すーぱーぷらちな、ぶろんど?の髪を俺のいた場所じゃ見たことがなくてな。初めて見たから少し物珍しく見ていたんだ」
二人はいたって真面目に答えたが、何故かレティシアは心底楽しそうな哄笑で返す。
なんとか笑いをかみ殺し、なるべく上品を装って席に着く。
「ふふ、なるほど……その少年が十六夜か。白夜叉の言う通り歯に衣着せぬ物言いの男だ。……で、そっちが美月か。キミのギフトはまぁ置いておくとして、そっちも話通りの真面目にボケる子……と。しかし鑑賞するなら黒ウサギも負けていないと思うが?あれは私とは違う方向の可愛さがあるぞ」
「あれは愛玩動物だから、鑑賞するより弄ってナンボだろ」
「ふむ、否定はしない」
「否定してください!」
紅茶のティーセットをまってきた黒ウサギが口を尖らせてやってくる。温められた紅茶が注がれ、美月は熱い液体、というだけで静かにカップを十六夜のところに寄せるが、すぐに返される。
「逆廻……ダメか?」
「ダメだ。折角黒ウサギが淹れたんだから飲め」
「……無理だったら飲んで」
「それは……役得だな」
ほぉ、と十六夜は頷きながら美月の提案に承諾する。美月は十六夜に言われた通り少しでも紅茶を飲もうとするが、何故か十六夜の言葉が耳に残って飲む気にならない。
「……ふむ、もしや二人はそういう関係なのか?そうであれば私は要件を済ませてさっさと帰るが」
「別にそういう関係じゃねぇよ。コイツが妙に懐いてくるんだよ。そのパーカーと合わさってもうワンコだコイツ」
「俺は犬じゃないぞ。……で、用件はなんなんだ?」
美月の言葉でレティシアはそうだったな、という顔をする。
別にただ会うだけならジンに会っても不都合はないだろう。それでも会わずに、内密に会いに来たということジンには聞かれたくない話では?と推測するが、レティシアはそれを否定する。
「用件というほどじゃないさ。新生コミュニティがどの程度の力を持っているのか確認しに来た。ジンに会いたくないというのは単に会わせる顔が無いだけだ。お前達の仲間を傷つけてしまったからな……」
「……その言い草。"フォレス・ガロ"とのギフトゲームに一枚噛んでたように聞こえるが?」
「その通りだ。実は黒ウサギ達が"ノーネーム"としてコミュニティの再建を掲げたときはなんて愚かなことを……と思ったがね、神格級のギフトの保持者と守護者を打倒する力の持ち主がコミュニティに参加したと聞いてな」
フッ、と黒ウサギに聞いた話に違わない、並みの男なら卒倒しかねないような笑顔を見せる。
「それで試させてもらった。……まぁ、ガルドでは当て馬にもならなかった。参加していた二人はまだまだ青すぎる。
一人くらいは未来が見えたが……断言するにはまだまだ材料が足りないな」
呆れまじれに苦笑するレティシア。存外話にならなかった、という意味なのだろう。
「違うだろ。アンタは言葉をかけたくてここに来たんじゃなくて確認しに来たかったんだろ?古巣のコミュニティがキッチリ自立していけてるのかを」
「……そうかもしれないな」
十六夜の言葉に否定するでもなく、肯定もしない。それは恐らく彼女には不安があるからだ。飛鳥と耀、そしてジンの三人のギフトゲームを見たからこそ。
「その不安を拭える方法が一つある、って言ったら?」
「何?」
「実に簡単、シンプル・イズ・ベストさ。アンタが試せばいい。"ノーネーム"が魔王と戦えるコミュニティなのかどうかをその身で、その力で……俺達を試せばいいんだ」
十六夜の言葉が意外だったのか、レティシアは一瞬面食らったような顔をする。だがやがて彼女は声高らかに笑い出す。
「はははは!確かにそれはそうだ!下手な策など講じずさっさとそうするべきだったよ!」
「ちょ、ちょっとお二人様!?」
「ゲームはどうする?できるだけわかりやすいのなら嬉しいが」
「ふむ……そうだな。ならばこれでどうだ?双方互いに攻撃を仕掛ける。受け止めきれずに傷を負った方の負けというのは」
「地に脚をつけてたもん勝ちってか?随分わかりやすいじゃねぇか」
十六夜がいつもの軽薄な笑みを浮かべていると、「逆廻」と美月が彼を引き止める。
「あん?どうした美月。お前のことだから黒ウサギみたいに止めはしないだろうが」
「いや、止めはしない。だが……このゲーム、俺に譲ってくれないか?」
「理由は?」
「さっき考えてた。俺には春日部のように咄嗟に人を庇うことも、久遠のように勇気を振り絞って挑むことも、黒ウサギのように逆廻達をサポートすることも、逆廻のように智謀を巡らせながら暴れることもできない。……だから、俺にできることがなんなのか、みんなギフトゲームでそれを発揮していたから俺もこのゲームでそれを知れたら嬉しい……と思う」
これが理由だ、と抑揚がないが饒舌に告げる。十六夜は彼女らしくないと感じてしまうほどの言葉の多さに暫く驚いていたが、それもやがてなくなってやれやれと呟く。
「そんだけ言っておいて『と思う』かよ……まぁいい。お前がやりたいって思ったのならお前がやれよ」
「感謝する」
そう言うと美月とレティシアは同時に窓を飛び出し、中庭に降りる。
だが、降りると言っても地に脚をつけたのは美月だけだ。
「……なるほど、吸血鬼というのは空を飛べるのか」
「不満か?」
美月とは違い、黒い翼を翻してその足は中に浮かべている。美月を試すように微笑むレティシアに対して、美月は首を横に振る。
「いや、ルールにはそんなものはない。それに箱庭とはできない方が悪いんだろう?」
それがこの箱庭のルール。飛べと言われて飛べなければそれは飛べない方が悪い。極端に言ってしまえば不死身の者を殺せと言われても殺せなければそれは殺せない方の不手際。
それこそがギフトゲームの根底、ギフトゲームの理不尽さ。
「悪いが……先攻は譲らせてもらうぞ」
「構わない」
二人はそれぞれ文脈だけなら互いにどちらともとれるほどに似たような口調で、だがしかし実際に聞けば違いなど一目瞭然の話し方で会話をする。
レティシアが自身のギフトカードから長柄の槍───ジャベリンを取り出す。
「レ、レティシア様!?そのギフトカードはっ」
「下がれ黒ウサギ。力試しであろうとこれは決闘だ」
「ああ……決闘開始と洒落込もうじゃないか。満足させてくれよ?」
何故かニヒルに微笑む美月を見てレティシアも表情をふっと変える。
ゆっくりと息を吸い……その一投を美月の頭部に向けて寸分違わず投げつける───
「ハァッ!!」
レティシアの投擲したジャベリンは摩擦によって熱を帯び、一直線に突き進む。それが美月の手前に辿り着いたところで美月も動き出す。
「"隆"」
自らの"言霊"を乗せた一文字を紡ぐ。すると手前の地面から突然地面が隆起してジャベリンの行く末を遮る。だが、しかし───
「……やはり、土壌が悪いか」
苦虫を噛みしめるように呟く。美月の言葉が指し示す通り、槍を受け止めていた土はやがて貫かれ、再び美月を襲う。
「"返"」
今度は地面がめくれ、さながら畳返しのように受け止める。だが魔王との戦いの影響で土が劣化していたことは先程の隆起した土の壁が破られた時点で察していた。
だが、彼女にはこれしかない。今壁になるものは土と木だけ。砕けてもまだ使える土と砕かれれば生命体としての役目を終える木。どれを使うべきかなんて美月にも想像は容易だ。
「───"守"!」
もう目の前にまで迫っていた槍にはもう壁を呼ぶ暇もないと悟ったのか、美月は自らの持つ防御能力を"言霊"で引き上げる。これは自分の持っている力をそれ以上に発揮する行為。ぶっちゃけリミッターを外したようなものだ。
「───ぐっ、ぅぅうううう……………!」
「どうした、お前の力はそんなものか?」
「……答える義理は、ないっ」
レティシアの挑発に乗って少しだけ意識をそちらに持って行ってしまう。そしてそれが彼女の運の尽きだ。
その一瞬で美月の守りを強引に突破したジャベリンは一瞬だけ美月と共に吹っ飛ぶが、まるで何事もなかったかのように再び美月に狙いを定めて飛ぶ。
「美月さん!?」
「───、」
答えは、見つからないのか。諦めるように、だがそれが当然というかのように美月は呟いた。だが彼女の表情にはまるで死に対する恐怖心というものを感じさせない。
自分が死ぬことを認知していないのか、死なないという絶対の自信があるのか、あるいは……自分の死に対して、他人事のように思っているのか。
だが、その一瞬も瞬く間に終わりを告げる。だがそれは美月の死を以って終わったのではない。
「……コイツが」
「"物質液状化現象"のギフト……!?」
十六夜と黒ウサギの声が響く。そう、彼らの言葉通り件のギフト"物質液状化現象"が発動したのだ。
「……………………」
しかしギフトを発動させた本人である美月はまるで無感動に立ち尽くしていた。やがてスライム化したジャベリンだったものが美月の身体に襲いかかり、美月はそれに反応するでもなくスライムのカタマリを一身に浴びる。
だが、流石の美月でもこんなことをされてなんの反応もないというのは流石に奇妙に思ったのだろう。黒ウサギが恐る恐る彼女に声を掛ける。
「……美月、さん?」
「……"物質液状化現象"」
次の瞬間、美月は今まで以上に抑揚のない声で、適当にそう言っているとでも言うかのように吐き捨てた。美月の身体に付着していたスライムは次々と集まり体形を成し、やがて先程のジャベリンと同じカタチになる。
「"冷"」
言葉通り冷酷に、静かに発せられる言葉。それはカタチを成した槍を凍てつかせて氷のジャベリンとして形成され、作られてからコンマの時間差もなく射出された。
「っ!?」
ほぼノーモーションで放たれたそれに驚愕しながらレティシアは腕を交差して防御の構えをとる。
だがそれは"砕"の言霊で散弾銃の弾丸めいてレティシアの全身に突き刺る、その直前───
「───レティシア様!」
それらはレティシアを守るべく跳んだ黒ウサギによって一蹴された。思わずレティシアは黒ウサギを抱きとめて地に落下し、翼を畳むが、それと同時にレティシアの焦りの声が聞こえてくる。
「く、黒ウサギ!何を!?」
黒ウサギはほぼ反射的にレティシアのギフトカードを奪っていた。そして彼女のギフトカードに記された恩恵を見つめ、やがて震える声で向き直った。
「ギフトネーム・
「っ……!」
「……なんだよ。まさか他人に所有されればギフトまで奪われるってのか?」
「いいえ、魔王がコミュニティから奪い取ったのは人材であってギフトではありません。武具などはともかく、神仏や精霊から授かる奇跡であるギフトを合意なしに奪うのは例え魔王でも不可能です」
「そうか。まぁ、なんだ。話があるなら取り敢えず屋敷に───?おい、美月?」
「───ゥ、ァゥッ、ギィ、グ……!」
十六夜が美月にお疲れと一言言おうとした十六夜だったがすぐさまその落ち着いた声が消える。
「……………来、ル。ナニカが、来る!こわ、い!嫌───!!」
叫ぶ、叫ぶ。叫ぶ叫ぶ叫ぶ叫ぶ。こないで、いやだ。そんな"言霊"を狂ったように一心不乱に叫び続ける。叫んで叫んで叫んで、ビクンッ、と大きな痙攣を起こして一瞬美月はその身体を前のめりに倒し、それを思わず十六夜が抱きとめる。
美月は抱きとめられて五秒とかからず目を覚ました。暫くはなにがあったのかわからないといった風に辺りを見渡していたが、やがて一人で勝手に納得したように十六夜から離れようとする。
「……見苦しいところを見せた。すまない、俺のことは気にしないで……?」
動かない。美月は自分の身体が全く動かないことに疑念を抱いていた。別に十六夜が抱きしめているわけでも美月が十六夜を抱きしめているわけでもない。
だというのに、美月の身体はまるで金縛りに遭ったかのように言うことを聞いてくれない。
「……これ、怖い……ていうのか?」
美月の呟きが小さく、しかし三人の耳にハッキリと残るように響いたのだった。
これサブタイの文字全部埋まるまであと二話だけど間に合うの?って言う人がいらっしゃると思います。
大丈夫だ、問題ない。策ならある。