井の中にて空へ発つ   作:中棚彼方

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 話が進まない。でも丁寧に書きたいから負けない。


少年少女、箱庭を往く

   

 

 

 

「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています」」」

 

「だまらっしゃいっ!!」

 

「見え……見え…」

 

「ない。どうなってやがる」

 

「何がですか! 何が見えなかったというのですかええ!?」

 俊敏に繰り出された連撃(ハリセン)が音を鳴らすのを、ジン・ラッセルは我が身にどつかれながら聞いた。

 こんな黒ウサギ、見るのは果たして何時ぶりか。

 事の発端に加担した共犯者が言えた立場ではないと分かってはいるが、どうも今回召喚された御仁は誰も彼も手の付けようのない程に癖の多い様子である。それも一癖二癖の範疇ではない。黒ウサギのストレスが心配だ。当然他人事で悠長に構えてる場合ではないが。

 本当、自分が言えた口ではない。

 

 彼らはこれからこの"ノーネーム"という名も旗印も剥奪されたコミュニティの再建を果たす多大な戦力──(もとい)、仲間になる。関連性は無い訳が無い。

 個々人が未知数の力量を持ち、()()月の兎すら振り回してしまうような彼らはきっと、今の"ノーネーム"を認めないだろう。それは己も例外ではなく。

 恐らく、これから彼等は"ノーネーム"全般にとっての台風の目となり全てを新たに塗り替えていく。及ぼす影響が結果として自分達に()しか()しのどちらを与えるかは、それこそ台風のように神のみぞ知る未来の話だが。

 "フォレス・ガロ"との双方命運を賭けたギフトゲームはその狼煙。ここで終わるようならそこまでだが、終わるとは思わないし、思えない。あの残虐非道の限りを尽くす野郎畜生(ガルド)をこのまま箱庭の天幕の下で野放しにしたくはないと思うこの『想い』に、嘘偽りは塵芥一つとして存在しないのだ。

 怒られるのは覚悟するが、反故(ほご)にするつもりは毛頭無し。迷いは多少あるが、棒には振らない。

 

「そんな難しい顔してんなよ」

 

「え……?」

 

 突然降ってきた静かな声音にピクリと身体を揺らして、ジンは俯いた視線を上へとずらす。

 そこにいたのは何故かフワリフワリと宙を浮かぶ一人の少年。少年とはいえ年齢的差分は彼の方が高いのは目に見えて明らかなのだが。

 

 綺麗な瞳をしているな、と真っ先に思った。

 次いで何で浮いてるのだろうと思った。そこは最初に疑問を持つべきじゃないかと軽く自問するが、周りの様子を見てそういうものだと妥協した。

 灰色の──銀ではなく、燃えかすを頭から被ったような──煤け草臥(くたび)れた髪を(うなじ)の下が見える程度に伸ばしているが、色合いも相俟(あいま)って物悲しく感じる。それに反して瞳は(みが)いた原石のように爛々と(つや)やかで魅入ってしまいそうになる。瞳が印象に残るとは中々珍しい事なのかもしれない。背は高いようだ。

 文字通り声が降ってきたと言う事はやはり彼で間違いないらしい。だが、難しい顔とは?

 

「あの、僕は別に」

 

「話は飛鳥ちゃん達から聞いたけどよ、お前は別に難しく考える必要無いんじゃねぇか?」

 

「……」

 

「ムカついたならやったれやったれ、だ。応援してるよ、俺は出れないけどな!」

 

 随分適当言ってくれるなと少しムッとなりかけるが、その実どうだろうか?

 要は今回の"フォレス・ガロ"の横行に憤慨し飛鳥と耀の成り行きに身を委ねたからこその今回のギフトゲームなのであって、そこに余計な思索は抜きにしてもなんら問題はない。

 これは紛れもない勧善懲悪で、ほっといておけば遠くない未来に矛先を"ノーネーム"に向けていただろう。膨大な居住区画と黒ウサギにはそれだけの旨味がある。そして、一二二人の子供達は……。

 そう思うと、怒りも再燃する。

 背中を推してくれるのなら、迷いだって揺らぐものだ。

 

「単純で良いんだよ。こんな0も1も決めるべくもない話なんてな」

 

 ならば行こう。そして、今を契機に立ち上がって見せよう。

 その適当さに今は感謝し、ジンはそう思う。

 

「……はい!」

 

「ん、良い顔だ」

 

 

 

 

   ###

 

 

 

 魔王。

 極論、『主催者権限(ホストマスター)』と呼ばれるギフトゲームにおいての強制収集権、それを悪用する者の総称がそれだ。そのどれもが天災に等しいとされる程の強大な力を有し、一度(ひとたび)その腕を横凪ぎに振るえば山河は一刀の下に両断される程だという。

 

 秩序に背を向け、箱庭に力を示し己の魂と誇りを賭けてそこに存在──跳梁跋扈する烏合の衆。

 簒奪する者という立ち位置。

 その力のみで箱庭に顕現する事を強制させる、古今元来の強者だ。

 

「──その魔王が"前ノーネーム"をフルボッコしてくれました、と。そっちが聞いた話と差異はある?」

 

「いいえ、特には。全く以て血の気が引くような話よ、怖い怖い。思わず青褪めちゃうわ」

 

「飛鳥ちゃんめっちゃ綺麗な肌してるけど」

 

「あら、ありがとう」

 

「…………ジゴロ?」

 

『タラシやな』

 

「あの、今のは多分皮肉的な意味があったのでは……」

 

「あのなぁ黒ウサギ、アイツがそんな捻りのあるような言葉を言えると本当に思ってんのかよ」

 

「おうおう誰が誰の頭はチリンチリンだってコラ」

 

「なんだよやっぱチリンチリンじゃねーか」

 

「アイヤァァアア!!」

 

「だ、駄目ですよ喧嘩は!?」

 

「大丈夫よジン君、多分これから先もあの光景は私達に付き纏うようになるだろうから。黒ウサギを見なさい、視界に入れようともしてない」

 

「で、でもなんか黒ウサギ、尋常じゃなく震えているんですけど」

 

「シバリング」

 

『「「え゛?」」』

 

「──い、い、いい加減にしてくださいこのお馬鹿様方ああああ!!?」

 

 

 黒ウサギの怒号が二人の男子の動きを止めた。逆立った髪は正に怒髪天を衝いている。十六夜ですら戯れを中断したその怒りは凄まじい。

 因みに満月は宙に浮いていたのだが、怒号を飛ばすと同時に駆け出した黒ウサギの人知を越えたフライングボディアタックにより地面に張り倒されている。

 経緯はどうあれ先に手を出したのが満月ならば因果応報なのかもしれない。

 

 

 

 "フォレス・ガロ"のギフトゲームに関する滞在組と不在組の問答も終息した頃、空は茜色に変わりかけていた。夕暮れが近づいている。

 そんな折に彼等はある所へ足を運んでいた。

 東西南北の数ある区画に配置されている超大手商業コミュニティ、"サウザントアイズ"。限りなく広い範囲に周知されるこのコミュニティ、その内の一つである支店に向かっている。

 何の目的か。

 それは、四人の恩恵(ギフト)勘定があった為である。

 

 

 

 満月の襟を掴んで引き摺っていく黒ウサギと、それに続く十六夜達に加えてジン。

 満月の方をチラチラと見るジンと違い三人は全く気にする様相を見せない。引き摺られる当人も身体を浮かせて衣服に汚れを付けないようにしている為気絶している訳ではないが、黒ウサギが掴んで離そうとしない結果この系図が完成している。

 

「なんで俺が悪いみたいになってるのこれ、てか苦しいんですよウサギさん?」

 

「満月さんを拘束していないといつまでも前に進めないのですよ! 後私は黒ウサギです!」

 

「えーでもあれ十六夜にも非があると思うんですがー」

 

「えーではありません! どうかそのまま大人しくしていて下さい!」

 

 満月を掴んで闊歩する彼女は(さなが)ら風船を掴んでズンズン進んでいく園児のようだ。

 その光景を少し離れて見ていたジンが小さく笑う。

 

「……楽しそうだなぁ、黒ウサギ」

 

「あれをそう見えるって相当だぞ御チビ」

 

「御チ……、いえ、でもやっぱり楽しそうですよ、彼女」

 

「そうなの?」

 

 飛鳥からの質問にハイと応え頷く。

 端から見れば怒っている様に見えるのかもしれない。しかし、それは今を切り取った視点からの話。以前を知っているジンだと視野が変わってくるのだ。

 

「少なくとも、彼女があなた方を迎えに行くその時までよりかは全然素を出していると思います。子供100人以上という大所帯で切り詰めて生活していた中で皆が少しでも楽になるようにと頑張ってくれていた黒ウサギは、僕らに心配させない様に振る舞う素振りがよく見られましたから。……あの、貴方は──」

 

「逆廻十六夜だ、気軽に十六夜様とでも呼んでくれていいぜ御チビ。それと安心しな、そこら辺の話は黒ウサギを尋問して聞いてあるからよ」

 

「尋問!? ハハ……そう、ですか。……そっか、話せたんだ黒ウサギ……」

 

「奪われた名と旗印を取り戻す為に魔王を打倒する──、ロマンがあって良いんじゃねえか?」

 

「ロマン……ですか」

 

 ジンの顔に翳りが差す、認識の相違だ。

 箱庭を以前から知っているジンからしてみれば、これは言うなれば戦争に近い。

 生きる希望も糧も奪い奪われ地位を確立していくこの世界は決してロマンを求めるような優美な造形はしていない。もっとおどろおどろしい五里霧中の生存競争を織り成す、歪んだ形をしている。その形がそのまま魔王打倒に繋がって行くのだ。

 そう思うからこそ、十六夜の言葉は軽く感じる。だがその価値観をそのまま箱庭に来たばかりの彼等に押し付けるのは不順である。それが分かっているから故に、翳りが相手を前にして出てしまう。

 

 十六夜自身ジンの変化に気付いていた。そして、それを隠しきれない少年の未熟さにも。

 

 何も考えずに口にしたのではない。黒ウサギからリーダーだと聞いていたからこそ、ジンの潜在意識を試したのだ。

 

 やはり年齢相応の子供らしさを持っているらしい。しかしリーダーとしての人格も持たなければならないという意識の鬩ぎ合いからなる葛藤(ジレンマ)が、少年の徹底を阻んでいるようだ。

 

 正さなければならないだろう。

 その甘さも迷いも、何よりその臆病な認識を。

 

 叩き込まなければならないだろう。

 お前の側に立つ者がその認識を根底から打破する事を可能にする強大な力を持っている事を。

 

 一騎当千を地で行く十六夜だからこそ、そう思える。

 

「(──てめえは分かってんのか? 黒ウサギの前じゃ大口叩いていやがったが、問題は山積みみてえだぞ)」

 

 

 

 

 

 

 

『──そうだな、解決してみせるよ。

 

 

    きっとじゃない。絶対に、だ』

 

 

 

 

 

 

 

 トリニトスの大滝で一人の少女に向けてそう断言し、 その少女の耳を目の前で撫で回している男を見ながら思考する。

 今も滅茶苦茶やりつつ戯れてはいるが、あれでも洞察力については中々いいのを持っているのだから面白い。

 だからこそ、掴み所がない。認めた今だから言えるが、あれだけの能力を有していながら飄々とする姿はどこか()()()()()()

 

 確固たる足場がなく、常に宙に漂っているかのような不安定さを持つが、その存在は確かに観測できる有形。彼自体は雲や霞を連想させる。だがそれらはどちらも無形である筈なのに、出会った当初と変わらずフヨフヨと浮遊しているその有り様はまさにピッタリで────

 

「────────アん?」

 

「? どうかしたのですか?」

 

「……いや、なんでもねぇ」

 

 何だ。

 何だ。

 今の違和は、何だ。

 ねっとりとしたうすら寒い今の身震いは、一体何に対する違和の発露だ。

 何がそうした。

 何の思惑が呼び起こした。

 

 

 何 だ ? こ れ は ?

 

 

「……まあでも、確かに楽しそうに見えなくもないわね。いつの間に仲良くなったのかしら、あの二人」

 

「ちょっと卑猥かも」

 

『駄目やでお嬢、ワシには分かる、あれは俗世で言う所の(メス)の顔って奴や! 見たらあかん! そしてあの兄ちゃんに近づいたらもっとあかん、お嬢にはまだ早い! 何よりワシが認めん!』

 

「ねぇ春日部さん、その子は何て言ってるのかしら?」

 

「まだ早いって言ってる」

 

「そ、そう、……何が?」

 

 傍らの少女二人(と一匹)の会話を耳に入れつつ、もう二人の方──正確には一人の男を凝視する。

 既に違和は感じられないが、しかしその余韻は感覚として残っていた。信じられない事だが、どうやら自分は瞬きの合間より短い時間とはいえ『未知への不可思議』に対し恐怖を抱いていたらしい 。

 スッと目を細める、端からそれは睨んでいるようにも見える。

 

 小さく呟く。

 

「……鷲……いや、烏か?」

 

「はい?」

 

 聞こえていたのか疑問符を浮かべ反応するジンへとニヒルに頬を崩し、もう一度何でもねえよと応えた。

 

 取り留めのない余韻に身を浸しながら。

 

 

 

   ###

 

 

 

「いぃぃぃぃぃやっほぉぉぉぉぉおお!!! 久しぶりだ黒ウサ────何ィッ!!?」

 

 待ちわびた少女の声が聞こえ、サウザントアイズの支店にて業を煮やし飛び出した白い和装ロリ。

 そこで彼女は見た。なんと、あろうことか人の形をした物体がジャイロ回転をしながら此方へ突貫してくるではないか。ウサギ耳の少女の事で頭が一杯だったこの幼女、マクラーレンF1の最高速より速く死角から飛び出したのもあって回避が間に合わない。

 

 メコォッ、とおおよそ生命体が発してはいけない音が支店前の舗道に木霊する。

 ゴロゴロと転がる和装ロリと飛来物カッコ人型。組んず解れつ乱れあいながら(ようや)く静止したそこには、幼女を押し倒した格好のなんとも背徳感漂う艶かしい光景が。

 

 そして幼女の左胸には自分のではない掌が!

 

 果たして、人型の正体は!

 

「いってぇ……、蹴られたり投げられたり踏んだり蹴ったり良い事な────ん?」

 

「……、(さか)っておるのか? 小僧」

 

 

 小僧でした。

 

 

 目の前の男から視線を外した幼女がその背後を見やると、顔を真っ赤に息を荒くして服を(はだ)けさせ、何故か全力で投擲した後のポーズのまま此方を見て固まるいやらしい劣情の塊のような少女が──黒ウサギがいた。隣では自分の部下が無表情で呆けるという高度な技術を披露している。能力の高さが窺える一幕だ。

 ダボダボのローブを羽織った少年──ジン・ラッセルもいる。

 

その近くには顔覚えのない三人の少年少女がなんとなしに此方を見ている。もしかしたら件の召喚されたギフト保持者なのかもしれない。其処らの有象無象とは一つ二つ抜きん出た才覚が滲み出ている。

 

 だとすれば、目の前の男も──。

 

 

「……、あー」

 

「……、」

 

「……し、死なば、竜巻(たつま)く灰とならんッ!」

 

 ムニュッ(何処がとは言わない)

 

「ぁんっ、こ、こら、おんしどこを──」

 

「何してやがるんですかこのお馬鹿ぁぁああああッッッ!!」

 

「お前のせい!!!」

 

 いつの間にか真横へ接近していた黒ウサギのサッカーボールキックが男の腹部を直撃した。我が愛玩乙女ながら見事な弧を描いた蹴撃だと目を見張る。人に当てていいものではない。

 高々と舞い上げられた少年が街道の向こうに流れる水路へ水飛沫を上げて飛び込むのを見送ると、白い少女は土を払いながら立ち上がる。隣には服を正しながら沸騰したヤカンのようにフンフン上気する黒ウサギ。

 奥では五人の内の一人の少年が腹を抱えて笑い転げている。他四人も頭を抱えたり傾げたりオロオロしたり微動だにせずと忙しない。

 

「白夜叉様、どうしてここに?」

 

「何、黒ウサギが来る気がしてな。やれやれ、出鼻を挫かれた気分だ。折角久しぶりにおんしのデカ(ちち)を思う存分堪能してやれると思うておったというに、逆に堪能されてしまうとは」

 

「堪能するとかそんなこと考えないで下さい! 全く……。い、いくら満月さんのお触りが耐えられなくて投げ飛ばしてしまったのは黒ウサギの落ち度だとしても、あんなねっとりと……、しかも、白夜叉様にまで」

 

「ほほう、月の兎をねっとりと嬲るとは中々の胆力を備えた小僧よ。私とて己の貞操を危惧する日が訪れようなど、考えもせなんだ。──ふむ、黒ウサギ。彼奴らが?」

 

「あ──、ハイ! 彼らが我が"ノーネーム"の新しき同士達でございます!」

 

「おお、そうかそうか」

 

 輝かんばかりに表情を好転させた黒ウサギを見て、白夜叉と呼ばれた改造和服を着た白髪の少女も同じく表情を崩した。

 

 

 腹部を押さえながら水路から上がってきた全身ずぶ濡れの小僧──満月は、相変わらず地に足は着けずによれよれと十六夜達の方へ向かう。

 

 近づいてきた満月に対し、此方も同様に腹を押さえていた十六夜が苦し気に対応する。笑いすぎて腹筋が辛いようだ。

 

「はぁー……クッソ笑ったわ。良かったじゃねえか、水も滴るいい男になってよ」

 

「うっせこんにゃろう笑い事じゃないっての……。うぇ、吐くかと思った。オマケにビショビショになっちまったし」

 

「自業自得よ、もう。いくら黒ウサギが私達の愛玩動物とはいえあれじゃ()でるというよりは(ねぶ)っているようにしか見えないわよ。後、許可なく異性の胸を触るのは女の敵ね」

 

「びしょ濡れ……これで皆お揃いかな?」

 

『せやな。──あ、ワシはノーカンやでお嬢』

 

「うん、分かってる」

 

「み、皆さん満月さんの心配を──」

 

「有り難う俺の癒し。にしても、お揃い? ……ああ、そうか。これで全員仲良く箱庭の洗礼を受けたってことになるな。だが飛鳥ちゃんはちょっと待ってほしい。そうは言うけど黒ウサギの方だって嬉々として撫でられて────」

 

「ません! もう一度言います、断じて嬉々として撫でられてなどおりません! 大事な事なので二度でも三度でも言わせていただきます! と言いますか誰が愛玩動物ですか、黒うさぎはどなた様の愛玩動物にも属してなどおりません!!」

 

「なんと!? おんし、属しておらんかったのか!?」

 

「属してません! 何故白夜叉様が驚くのでありますか!?」

 

 と、そこへ会話を続けていた黒ウサギともう一人が歩み寄ってくる。どうやら二人は旧知の仲で、黒ウサギの口振りからしてこの少女は上役に値するようだ。

 バツが悪そうに満月が前に出る。再三言うが地に足は着けていない。

 

「あー……、あれだ、悪かったな。つい発情しちまった」

 

「あれ、おかしいですね? 今とんでもない事をサラッと口走ったのを黒ウサギの素敵耳が傍受したのですが」

 

「ふふん、良い良い黒ウサギ。私のこのワガママボディが男の心を鷲掴みにしてしまうのも、おんしが心を奪われてしまうのも詮無き事。何とも罪な肉体美、我が身ながら恐ろしい。先人として、それを許すのは必然よ」

 

「と、和装ロリが申しております 」

 

「何か申したかそこの金髪」

 

「いーや、別に?」

 

 挑戦的な笑みを浮かべた十六夜がそう(うそぶ)く、隠そうとする素振りは見られない。

 対する白夜叉も同じ笑みを向け、扇子で口元を隠した。

 

「ふむ、揃いも揃って面白い(わっぱ)が集っておる。したらば、用件があるとみてこの黒ウサギの飼い主であ「違います!!」──(もとい)、"サウザントアイズ"の幹部であるこの白夜叉がおんしらの話を聞こう」

 

「よろしいのですか? 彼等は──」

 

「良い。身元は私が証明するし、ボスに睨まれても私が責任を取る」

 

 問いかけた女性店員に対しキッパリと言い切る。

 実は白夜叉が飛び出すまで"ノーネーム"とこの女性店員の間に一悶着が起こっていたりする。

 その際に旗を持たない"ノーネーム"という身元不明のコミュニティを問答無用で追い払おうとした彼女への叱責も含まれた上司の言葉に、店員は口を(つぐ)んだ。

 超巨大商業コミュニティである故にルールはシビアだ、客も選ばないといけない。

 柔軟な対応ではなかったとは言え、"サウザントアイズ"の規定に倣って動いた彼女からすれば納得のいかない言葉なのかもしれない。拗ねたような表情を露見している。

 

 各々が店内に足を踏み入れていく中、満月は案内する女性店員の隣を陣取った。

 然り気無く謝罪を入れる。上司である白夜叉は問題ないと言っていたが、応対する頻度が多い相手は彼女のような下で働く者達である。不和があって大手コミュニティに目をつけられるのは今後の生活において障害になりかねない事を危惧しての予防措置でもあるが、何より己の行動理念に関わる。

 

 良い関係を築いていたいと思う相手は、何より笑っていてほしい。

 そんな王道(ベタ)な子供じみた理念が、彼には至高の財産だ。

 

「悪いな」

 

「──、」

 

「でも、そうして滞り続けたくないからさ、俺達"ノーネーム"は」

 

「──そちらの都合など知りません。……ですが、此方の対応に不備があったのも事実です。ここで私一個人がごねて"サウザントアイズ"全体の支障になるのは望ましくありません。…………不本意ですが、此方からも謝罪を述べさせて頂きます。申し訳ありませんでした」

 

「…………お、おう」

 

「……なんですかその反応は」

 

「いや、別に」

 

「…………ただ、一言言わせていただきますと──」

 

「?」

 

「──上司の胸を触った貴方は個人的に敵です。もしかしたらもっと有志が集うかもしれません」

 

「勘弁してください」

 

「嫌です」

 

 上司思いで何よりである。

 "サウザントアイズ"の女性は皆こうも逞しく、強かなのだろうか。だとしたらこれ程怖いものはない。

 

 ざまあみろと言わんばかりに口にほんのり笑みを見せる彼女をジト目で視認しながら、満月は満足げに戦慄した。

 

 不思議な語呂だが言い得て妙で、的を射ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 蛇足

 

「……何故浮いてるのですか」

 

「さー何故でしょう?」

 

「分かりません」

 

「……興味無い?」

 

「全く有りません」

 

「……、」

 

 

 なら聞かないでしょ普通とは言わなかった。

 

 大人だな俺。

 

 

 




 立体交差平行世界論は犠牲になっ(ry
 補足を入れますと、一応この立体交差平行世界論の説明は支店に向かう途中でされている設定です。作中の都合で書かずに省いちゃいましたが。
 この場合は十六夜達が原作通りに疑問を出したのを聞いた黒ウサギが主人公の手によって言い様に玩具にされながらも健気に説明するのをジンが補足するという形態になっています。ジンはこの為も含め連れてきました。因みにイメージだと、

「そ、それは、ンッ、み、皆様はァ、それぞれ違う世界か──ハァンっ!」

「どしたの黒ウサギ(すっとぼけ)」

 的な感じです。微エロだよ微エロ(白目)。もしかしたらその内幕間で総集編で書くかもしれない。消されないかが現状の一番の問題である。
 立体交差平行世界論はこのオリジナルにおいても重要な役割を担うキーワードでもあるので後日改めた説明は入れる予定です。

 後この作品の久遠飛鳥は大財閥の令嬢だけあって世辞なんて聞きあきています。チョロくないです。ニコポナデポホメポなんて何のそのです。もしかしたら今作品最大の強敵かもしれません。でもヒロイン枠。

 黒ウサギはその見た目同様淫乱担当。天使かな?天使だな。

 春日部耀は癒し担当。でも遠くない未来に拳が猛威を奮うかもしれない。だってヒロ(ry

 逆廻十六夜は青春担当。拳と拳で分かり合う男の関係。男の関係♂。
 ジンも混ざって皆幸せだね。赤飯炊こう。

 最後の蛇足については本当に蛇足なので気にしないでください。ただ店員さんが好きなだけなんです(切実)。


 それでは、次回もお楽しみに!
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