16時少し前─俺はイッセーに伝えた通り、【双児】の力を使って駒王学園の旧校舎近くの茂みに瞬間移動をする。
そこでイッセー、木場君、アーシアちゃんと鉢合わせて彼らと共にリアスさんの下に向かった。
木場君とアーシアちゃんは何故此処に?っと首をかしげていたが─イッセーの奴、話していないな?
いや話せる訳ないか……あんなこと。そこは俺が適当に理由をつけて納得してもらった。
そしてオカルト研究部の部室の前─
「……僕がここまで来て初めて気配に気づくなんて……」
木場君が顔を強張らせる。
確かに─扉の向こう側から別の気配を一つ感じる。
昨日のあの出来事が夢ではなかったと分かっている。
っとなれば─この状況でリアスさんと一緒に居るのはあの【銀髪のメイド】の人だ。
リアスさんが悪魔であり【次期当主】と名乗っていた手前、お嬢様と言う事は分かった。従者の一人や二人居てもおかしくない筈だ。
そして、木場君がここまで来て初めて気配に感づく程と言う事は……相当の手練れだ。
イッセーとアーシアだけが気付いていないようでイッセーが扉を開ける。
中にはリアスさん姫島さんと昨夜の銀髪のメイドさんが居た。 やはりリアスさんの家の者か……。
「人間?……お嬢様、此方の彼は?」
落ち着いた表情のメイドさんは人間である俺が何故此処に居るのかをリアスさんに訪ねる。
当然な話だろうが─此処に居る者は俺以外全員悪魔なのだ。完全なアウェイであることは熟知している。
「イッセー…赤龍帝の兄の【兵藤一星】さんよ。」
「この馬鹿の兄の【兵藤一星】と言います。読みが弟と一緒なのは紛らわしいですがお気になさらず。」
イッセーを指さしながら名乗る。隣のイッセーがひでぇと小声で訴えるが無視した。
「赤龍帝の……お初にお目にかかります。私はグレモリー家に仕える者。グレイフィアと申します。」
礼儀正しく─同時に優雅に名乗る彼女。
立ち振る舞いからしてただのメイドと言う訳ではない…恐らく上流階級の出の人だな。
そして昨夜の事は彼女の中では無かった事になっているらしい。俺だって昨日の事は無かった事にしたいよ。
「それで一星さん。イッセーから聞いていましたけど今日は如何いった用件で?」
「如何いった用件とは─また盛大に惚けるなぁ。リアスさんも俺が何で此処に来たのか分かるだろ?」
そう疑問を疑問で返すと少しムスッとしながら難しい顔をする。
隣の姫島さんはあらあらと苦笑いしているが─グレイフィアさんは無表情で此方を見ている。
やがて、はぁ─溜め息を吐きリアスさんが口を開こうとした時─突如、床に魔方陣が描かれて輝き出す。
「──フェニックス」
「フェニックス?あの不死鳥、フェニックスの事か?」
木場君の呟きに思わず反応する
確か【72柱の悪魔】には同名の悪魔が存在したはずだ。
そしてその悪魔もまた不死と言う意味合いを持つ。
「ふぅ、人間界は久しぶりだな。 愛しのリアス。会いに来たぜ。」
───うわぁ。
まず思ったのがこれだった。
愛しのってこんな臭い台詞今時吐く奴がいるなんて居るとは思わなかったよ。
「で、グレイフィアさん─失礼ながらこの男は誰なんですか?」
さっきからリアスさんに馴れ馴れしくベタベタしてる男についてグレイフィアさんに尋ねる。 イッセーは何かぎりぎりと歯軋りしてるがこいつは自分に正直だなぁ。
「この方は【ライザー・フェニックス】様。 純潔の上級悪魔であり古い家柄を持つフェニックス家のご三男であらせられ、リアス様とは婚約者の間柄になります。」
「つまりお坊ちゃまか。 しかし悪魔でフェニックスとなると─リアスさんのグレモリー家の事も含めてやはり【ソロモン72柱の悪魔】と考えてよろしいのでしょうか?」
「現在はその殆どが断絶してしまい、【元72柱】として魔界を統治しております。」
「断絶か………成程な。」
確かに家柄を残すためには由緒ある家系と婚姻を結ぶのが手っ取り早い。
イッセーも俺達の会話を聞いていたのかかなり驚いている。
それ抜きにしても──あのリアスさんの心底嫌そうな顔。いや、実際に嫌なんだろうな。
馴れ馴れしく肩を抱いてくるライザー(君?さん?まぁどっちでも良いか、特に親しくもないのだし呼び捨てで良いだろう。)の手を払いのけてはまた肩を抱いてくるのに辟易している。
これで昨日の案件の納得がいった。要は彼女本人この婚約が嫌で嫌で仕方ない─だから昨日はあんな暴挙に出たわけだ。
確かに如何に親同士が決めたとはいえ、こんな女に軽薄な奴と結婚なんざいやだろうよぉ。
そしてリアスとライザーを中心にした話し合いが始まる。
内容は当然─結婚にまつわる内容。 とっとと結婚したいライザーと何が何でも断固拒否するリアスさん……まぁ、話は遥か彼方まで続く平行線だろうよぉ。
徐々にヒートアップする二人を遠巻きに眺めるイッセー達。
やがてライザーの表情に陰りが現れ不機嫌の三文字が表に現れだす。
「俺もな、リアス。フェニックス家の看板背負った悪魔なんだよ。この名前に泥をかけられるわけにもいかないんだ。俺はキミの下僕を全部燃やし尽くしてでもキミを冥界に連れて帰るぞ!」
敵意が此方に向いてきたな─こっちが素か。
とにかくこっちに敵意を向いてくるのなら容赦はしない。
イッセーと共にアーシアちゃんの前に立ち彼女を守る。
一触即発の状況。 だが─グレイフィアさんの介入により事無きを得る。
ライザーも怒りの矛を収める以上、彼女、相当の実力者と言う事か。
そのまま彼女ある一つの提案を行う。その内容が─
「【レーティングゲーム】?」
イッセーは聞いたことあるような顔をしているが俺は初耳だ。
そんな俺を察してか、はたまた忘れたって顔をしているイッセーを察してか木場君が説明をしてくれる。
爵位持ちの悪魔達が行う下僕同士を戦わせて競い合うゲームらしい。
下僕にはチェスの駒に見立てた眷属を用いた競技。 つまりはリアスさんを中心にしたオカルト研究部―6人で戦う事になるらしい。
因みに家の弟は【兵士の駒を8つ】で眷属にしたらしく、こいつ以外に兵士はいない。
俺は当然人間の為にこの競技への参加資格は無い──が。
「まさかリアス。ここに居る面子が君の下僕か?」
「いいえ、彼は人間で関係ないわ。」
「これじゃ、話にならないじゃないか?君の【女王】である【雷の巫女】ぐらいしか俺の可愛い下僕に対抗できそうにないな。」
そう言って彼は笑いながら指を鳴らす。
すると彼の周囲に先ほどと同じ魔方陣が複数展開され15人の悪魔らしきものたちが集まる。
──ってか、皆女の子じゃん。 こいつの性根、何かイッセーと似てないか?
弟は弟で何かスゲェ悔しそうな顔して号泣してるし─やれやれっと溜め息が漏れる。
「お前じゃ、こんなこと一生できまい。下級悪魔くん?」
そんな悔しそうなイッセーを挑発するライザーに挑発に乗るイッセーがさらにライザーを挑発し彼の怒りを買う。まぁ、眷属皆女の子ってあたり─こいつの根本は弟と大差ないらしい。
売り言葉に買い言葉の末等々ブチ切れたイッセーが赤龍帝の籠手を取り出し前に出る。
「俺が全員この場で相手してやらぁ!!」
「ミラ。やれ」
勇んで前に出るイッセー、その前にライザーの眷属の少女が出る。
イッセーよりも年下のようだが─動きを止めたイッセーの鳩尾に手に持つ棍を叩き込んだ。
何が起こったか分からないイッセーは少し遅れて床に膝をつく。
本来なら兄貴として止めるべきだったのだが、俺は敢えてしなかった。
これはイッセー自身が売った喧嘩だ。 そこに勝手に首を突っ込む程、俺は過保護と言う訳ではない。
しかもあのバカ─自分より小さい女の子だからと手を抜こうと考えたな。見てれば分かる、一瞬動きを躊躇させやがった。大方手に持つ武器を落として終わらせようとしたのだが─それはハッキリ言って油断だ。
此処はあのバカの頭を冷やすことも含めて敢えて手は出さない。このまま何も言わずこれ以上の事が起こらない事を願いなら静観を決め込んでいたが───
「この神器が不完全であり、使い手も使いこなせない弱者ばっかりだったってことだ!お前も例外じゃない!こういう時、人間界の言葉で葉なんて言ったけっかな。…そうだ、【宝の持ち腐れ】【豚に真珠】だ!フハハハ!そう、【豚に真珠】だ!お前の事だよ。リアスの【兵士】くん!」
「………………。」
今のライザーの言葉に俺の頭の中で少し何かがキレた。
「黙って聞いてりゃぁ随分家の弟けなしてくれるな、おい」
「あ?」
ライザー達の視線がこっちに来るが気にせず倒れこんでるイッセーの近くに行く。
「あ、兄貴…」
「馬鹿者、そうやって油断するからそんな目に合う。前回の戦いでそれを経験したろうが……」
首根っこを掴み後ろに放り投げる。
「悪いな、アーシア、そいつの痛み少しだけ和らげてやってくれ。」
「は、はい!」
「───さてっと。」
イッセーの事はアーシアに任せて─俺は正面からライザーを睨み付ける。
「何だテメェ、人間が俺に何の用だ?」
「確かに良い大人ならあの手の話には口は挟まないのが筋だろうが…あそこまで家の弟を馬鹿にされれば兄貴として気分わりぃんだよ。」
「何だお前、そこの赤龍帝の兄貴かよ。おいおいリアス、下僕の兄ちゃんをペットにしてるのかい?」
「ッ!!テメェ、兄貴を─」
「黙っていろイッセー!」
止めに入るイッセー達を一喝して黙らせる。
明らかに此方を見下している目などお構いなく、俺は正面から啖呵を切る。
「さっきから黙っていりゃ、弟の事を随分貶してくれるじゃねぇかよ。」
「ハッ、だったら何だってんだ?赤龍帝のお兄さん。」
「今の言葉を撤回しろ。イッセーも神器の事も含めてだ、アイツは馬鹿とスケベで出来上がっているが生きている生き物としての最低限の筋は徹底している。金持ち甘ったれて育てられた何処ぞのぼっちゃんとはちげぇんだよ。」
「………ミラ。こいつを黙らせろ。」
隣に待機していたイッセーを倒した少女、ミラが飛び出す。
「一星さんッ!」
「兄貴!!」
リアスさんとイッセーが止めに入ろうとするが─
「……【天蠍(スコーピオン)】」
玉の一つが輝き、突き出された棍を正面から指一本で受け止める
「なっ!?」
「……………フッ」
一撃を指一本で受け止められ驚愕するミラと呼ばれた少女の反応をお構いなく力を込めて棍を粉々に打ち砕いた。
「ッ?!」
空かさず後ろに飛び退くミラだが─
「そこに立っていると危ないぞ。」
「何を──ッ!」
彼女のすぐ背後の壁が粉々に打ち砕ける。
「ッ!貴様何をした?!」
「【スカーレットニードル】。深紅の衝撃だ─本来はこういう使い道はしないのだが、力を加えて放てば壁に穴開けるくらいの威力は出せるんだよ──で?俺を如何するんだって?」
「ッ!?」
自身の眷属を一蹴された事、さらに自身への挑発からライザーの顔から侮蔑は消え、代わりに怒りが現れる。
「たかが人間如きが調子に乗るなぁ!!」
背中から炎を吹き出し此方を威圧する。その炎に後ろの彼の眷属達も後ずさる
グレイフィアさんが止めに入ろうとするが俺はそれを手で制する─この手の輩を黙らせる方法は分かっている。
「調子の乗ってるのは貴様の方だ、不死身と最強を履き違えてあの神鳥と謳われる【フェニックス】とは思えないな。何ならテメェをこの場で【指一本】であの世に送ってやろうか?」
「ッゥ!!やれるものならやってみろ!それが出来なきゃテメェを消し炭にしてやる!!」
挑発に対して挑発に乗るライザー頭に血が上って冷静な判断が出来ないと踏んだ。
「一星さん、止めて下さい!フェニックスの不死身は本物です!ライザー!!」
「平気だ、不死身と言う概念が如何いうものかは俺も学んでいるさ─なら、こいつが手っ取り早いんだよ。【巨蟹】!!」
ライザーに向けて指を突きつける。炎が周囲を取り囲む中、俺は臆することなく技を放った。
「【積尸気冥界波】ッ!!」
指から放たれた積尸気─魂と肉体を分離させ、あの世【黄泉比良坂】へと落とす技。
怒り狂うライザーは肉体と魂を分離され、【不死身の肉体】を残してあの世へと旅立った。
──炎が消え、その中心にいた周りが視認できるようになる。
焦燥しきった顔のイッセー達、ライザーの下に駆け寄る彼の眷属達─
「一体、何をしたのですか?」
グレイフィアさんは比較的冷静なようだが、その目には驚愕の色が含まれている。
だが─冷静さを失ってはいないのか、彼女は俺に尋ねる。 当然だろう─不死である存在を【殺して】みせたのだから。
「【積尸気冥界波】─この【巨蟹】が持つ技。この技を食らった相手は積尸気に包まれ、死後の世界【黄泉比良坂】へと落とされる。要は即死技だ。」
「積尸気─しかし、それではライザー様が亡くなられた理由には─」
「簡単だ─俺はこいつの魂のみを引き抜いて【黄泉】に送ったのだからな。この技は相手を肉体ごと送る事も出来れば、【肉体】と【魂】を引きはがして送る事も出来る。つまり─今そこに倒れているライザー・フェニックスは、魂の抜けた言葉通り【抜け殻】っと言う訳だ。」
グレイフィアさん達は理解したのか今度こそ驚愕の表情を浮かべる。
そりゃそうだ─相手を問答無用であの世へと突き落とす技なんて知れば誰だって驚く。
「よくもッ!ライザー様の仇を!!」
彼の眷属達が怒り、俺に敵意を向ける。
俺も何時でも積尸気を練り、放てる状態にする。
木場君達もいざと言うときに備えて僅かに構える
「…………………。」
だが、俺は大人のつもりだ─こんな子供じみた喧嘩の後始末をこんな形で終わらせようとは思わない。
「ライザー眷属の女王、それとこの場で中立の立場であるグレイフィアさんに提案がある。さっきも放った積尸気冥界波で今、ライザー・フェニックスの魂は黄泉比良坂を彷徨っている。俺の能力を使えば、ライザーの魂を連れ戻すことができる。俺が提示する2つの条件─これを飲んでくれるのならば、ライザーの魂を連れて来よう。」
「!本当、なのでしょうね?」
「嘘は吐かんさ。まず一つ目─部外者だと思い口を挟まなかったが、そのレーティングゲームとやら、いささかリアスさんとライザー氏の間には差が大きいと感じられる。そこで─リアスさんに対して5日……では流石に短いな。切り良く10日の猶予を与えてほしい。それが一つ目の条件。」
「…………良いでしょう。」
主を殺され怒り心頭であろう頭で冷静に考えた女王は承諾する。
「次に─このゲームに対して、俺、【兵藤一星】のリアス陣営への助っ人として参加を飲んでもらう」
「!?人間である貴方が、このゲームに参加すると?」
「別に不思議ととらえる必要はあるまい。【不死をも殺す男】─これ以上ない助っ人だろ?それに散々弟を侮辱されてこっちもイライラしてるんだ。これが俺が掲示する2つ目の条件だ─。」
「………………………………。」
暫しの沈黙─その後、承諾と言う意味で首を縦に振るのを確認する。
俺は自らに積尸気冥界波を放ち、約束通りライザー・フェニックスの魂を連れ戻してきた。
「…ハッ?!、…、…、」
何が起こったか分からない、と言う表情のライザーに眷属達が群がる、
これでもそうとう慕われているのだろうな。眷属の子達に感謝するんだな。
「おい、お前─名前は何だ?」
「【兵藤一星】だ─弟が【一つの誠】と書くのなら俺は【一つの星】だ。」
「………その名前、覚えたぞ。この屈辱は忘れん、ゲームで必ず晴らす良いなッ!!」
怒り─そして目に僅かな怯えを宿したライザーはそのまま眷属達を連れて帰って行った。グレイフィアさんも準備をするのかその場から去ってしまった。
残ったのはオカルト研究部の面々─少し熱くなって勝手に話を進めてしまったことも含めて謝罪する。
「─っと言う訳で、すまない。勝手に話に割り込んでしまった。」
「良いんです。でも、良かったのですか?」
「心配な。柔な鍛え方はしてないよ─それに貴方には、弟とアーシアの命を救ってもらった借りがあります。ただ、それを返したいと思っただけです。」
「……ありがとうございます。聞いたわね皆、期限は10日─その間に出来る限りの事をするわよ!」
「「「はい!」」」
期限は10日─1週間と3日の間でどれだけ底上げが出来るかが問題だ。
俺自身も此処まで踏み込んだ以上中途半端は許されない。改めて気を引き締める。
オカルト研究部の部室はフェニックスが残した熱気とは違う確かな情熱と言う名の熱気に包まれていた。
積尸気冥界波放つのは予定通り
そういえばLCでもマニゴルドの初戦の相手ってCV子安なのですよねぇ~これは果たして偶然か?