深夜…人が決して近づく事のない夜の廃墟にて響く爆音。
一度ではない…二度、三度…連続で、或いは少し間をおいて町外れにて響く轟音。
「…………さて。」
『グッ…ガハッ……。』
片方は人間。 端正な顔立ちにツンツン頭の青年。
片方は化け物。 人の上半身を持ちながら下半身は獣のような剛毛に覆われた四肢を纏う異形の生き物。
「食べ物を求めてあんな時間に人の領域に入ってきたつもりだけど、残念だったな。」
『くぅ……おのれぇ……』
人間は殆ど無傷…少し余裕を持った様に首の関節を鳴らす。
だが…異形に向ける視線には憎しみが込められている。
対する異形は所々に怪我を負っている。 息を荒げながら憎憎しげに人間を睨み付ける。
「一体何処から沸いてきたのか知らないが運が無かったな。 悪いが被害が出る前にお前には消えてもらう。」
「神器持ちの人間め…折角、自由の身になれたと言うのに…」
「神器…か。 お前はこの力の正体を知っているようだが、それくらいしか知らさそうだな。 見た目も思考も…大よそ秀でているとは思えない。」
「貴様ァアアアア!!!」
雄叫びを上げながら此方に鋭い爪と牙を剥いて向かって来る。
「……【獅子(レオ)】」
首飾りの玉の内の一つが輝く。
人間の右腕が輝き…肩先が消える。
次の瞬間、異形が何かに弾かれるように吹き飛ばされる。
「グワアアアアアアアアアア!!!」
勢い良く壁に叩きつけられずるずると地面へと落ちて行く異形。
だいぶ前から勝負は決していた。
「【ライトニングプラズマ】…速過ぎて、何が起こったのか分からないだろ?」
人間…兵藤一星は冷めた口調でぼろぼろになった異形へと近づく。
既に虫の息の異形に応える余力は無い。
「さて…もう良いな。冥土の土産に教えてやるなら、お前はあの一秒の間に一億回殴られたと思えば良い。………【巨蟹(キャンサー)】」
首飾りの玉の輝きが消え、代わりに別の玉が輝き始める。
怪しい輝きが人差し指に集まりそれを異形に向ける
次の瞬間、最後の抵抗といわんばかりに身体を起こし此方に襲い掛かる異形
「積尸気冥界波」
指先から光が放たれ、異形を包み込み…彼方へと消えて行く。
後に残ったのは人間のみ。
「………終わったな。 帰るか。」
「ふ……ああぁ…」
いかん…瞼が重い。
前日の疲れが抜けきっていないようだ。 根を詰め過ぎるのはよくないな。
おかげで最初の飛行機を乗り逃してしまった。
空港に着いた俺は事前のルートを辿りやっと日本行きの飛行機に乗り込んでいた。
此処からさらに17~20時間の時間を経て日本に到着するのだ。
「それにしても長いな。昨日のあれさえなければ予定通りといったのに…」
俺は昨日のことを思い出していた。
明日に備えて寝ようとしたと言うのに……だが、これで近隣の被害は無害に抑える事ができた。
駒王町は平和だからな…少し骨を休むのも悪くない。
彼是5年は帰っていなかったからな…連絡は取っていたが、直接顔は見せていなかったな。
そういえば、昨日一誠が彼女のことを話してくれていたな…是非ともあって話がしたいものだ。
そう思いながら……俺は昨日の疲れを癒す様に眠りへと堕ちていった。
「………」
さて・・・夢の中と言うわけでは無いが、改めて、俺についての話しの続きをしよう。
改めて俺の名前は【兵藤一星】…日本の駒王町で暮らす兵藤家と言うごく普通の家庭に生まれた。 通称【初代:イッセー】…今の通称は【ホシ】だ。
弟の名前は【一誠】…今は丁度高校2年になっている頃だろう。 今はコイツが【イッセー】と呼ばれて親しまれている。
両親曰く【こっちの方がしっくり来る】らしい。
さて、話を戻そう。
自分で言うのも何だが…俺は昔から頭の良い人間だった。
勉強では学年でも一二を争う秀才だったし、運動神経も良くて良く退屈な時には部活動の助っ人を頼られる時もあった。
今は海外に出て考古学…さらに詳しく言えば【神話・宗教】に関連した歴史や遺跡を調査している。
何故、俺がこんなマニアックな職業を選んだかと言うとそれには深い理由がある。
俺は勉強が出来た。運動も出来た……だが、悲しきかな。 当時の俺には何かに興味を持つ事が如何しても出来なかった。 人間的に少しかれていたのかもしれない。
ただ少し…退屈だったのだ。 そんな俺が出会ったのが神話だった。
古来から人間は宗教やら神話と言ったものを各地へと遺していった。
一体何故、昔の人間は宗教なんて教えを広めたのだろうか?
何故、世界には教えの数だけ神様が居るのか?
何故、世界には神が世界を作ったという話しが複数存在するのか?
俺にはそれがとても不思議に思えて…またとても惹かれるものがあった。
俺は知りたい…自分の頭がどれだけそれを理解できるのか試してみたいと心の底から思った。
親からは何度も説得されたが、俺の意思は変わらなかった。
弟も珍しく親と言い争いをする俺を心配するような目で見ていたが、俺は一歩も譲らなかった。
それだけの覚悟があったし、幼い頃に弟に教えてきた言葉を俺が覆すわけには行かなかった。
【男が一度こうと決めたのなら、それは最後まで貫き通せ】
イッセーもこの言葉を守ったようだ。
…………………あまり喜ばしくない方向で。
いや、別に・・・男がそういうことに走るのを決して否定はしないぞ?
ただ………なあ。
とにかく、俺は神話学を学ぶ為に大学に進学した。
それ相応の成績を収める俺は教授に気に入られてその助手として抜擢された俺は後学の為にとギリシャにて見つかった遺跡の調査員の一員として教授に抜擢されてギリシャに旅立った。
そして・・・忘れもしない悲劇と共に、俺はこの首飾りと出会い、この不思議な力を手に入れた。
金色の鎖によって繋がれた十二の不思議な輝きを放つ玉…玉には記号が記されており、それぞれが西洋占星術のサインである事が分かった。・・・まあ、つまり十二星座の事だ。
なし崩し的にも俺が今所有することになってしまったが……あの時起きた悲劇を俺は忘れない。
遺跡の調査開始から一日も経たない夜。 俺達調査隊は遺跡の中で異形の化け物に居襲われた。 獣でもない、人間でもない…強いて言うならその両方。
獣のような下半身・人間の上半身の化け物…訳も分からず殺され、食われていく仲間達を目の当たりにして、俺には如何しようもない。 トラウマとして記憶に刻み込まれるのには充分過ぎる非現実…違う、現実だった。
逃げ回る中で偶然見つけたこの首飾り…祭壇のような場所に飾られたこの首飾りに惹かれるように、導かれるように俺はそれを手に取った。
そして、追いかけてきた異形を俺は倒した。
生き残れたのは俺一人だったらしい。
その後長い救助された俺は入院する羽目になったが、直ぐに退院…それから暫く、この首飾りを調べる為に調査を続けて5年間を費やした。
・・・今でも、この首飾り。 そしてこの力の正体は俺にも分からない。
何か分かれば良かったのだが…な。
さて、語りはこれくらいにしよう。 日本に着く頃だ。
・・・・・・・・・・・・・・・あ、お土産買うの忘れてた。
空港に着いた。
俺はバスへと向かう。 時刻は大よそ午前の6時くらいか。 バスに乗れれば昼前には駒王町に行く事ができる。
……ん?
ふいに…キョロキョロと空港を見渡す少女が目に入った。
輝く金色の髪…翡翠の様な綺麗な緑色の瞳の可愛いシスターの少女。
日本は初めてなのだろう、場所が分からず混乱しているのだろう。
当然、女好きの弟を持つ手前、俺も困っている女性を見過ごせる人間ではない。
「お嬢さん、何かお困りかな?」
「え?」
振り返る少女…思わず見惚れてしまった。
何というか…綺麗な少女だ。 見た目だけじゃない、彼女の目は口以上に彼女の優しい性格を物語っていた。
一切の曇りが無い…暖かく、そして優しい瞳のまなざし。 まさしく【聖女】に相応しい少女の眼だと思った。
「あの、如何かされましたか?」
「!ああ、いや…すまない。」
因みに俺は今きっちり英語を話している。
海外暮らし長いの舐めるなよ!!五ヶ国語くらいぺらぺらだ!!
「何か困っているようだったからね。何処へ行きたいんだい?」
「はい。駒王町と言う町に行きたいのですが…」
「駒王町?それなら丁度良かった。俺もその町に行くんだ。案内するよ。」
「そうなのですか。ああ、これも主の導きですね。」
人目もはばからず天にお祈りをささげる少女を見て思わず苦笑いしてしまう。
だが、あそこには教会などあっただろうか?確かに都会と言うほどではないにしろ何やら色々ある町だった筈だが…
「俺は兵藤一星と言うんだ。君の名前は?」
「私は、アーシア・アルジェントと言います。 よろしくお願いします、えっと…イッセーさん。」
「ああ、此方こそそれと出切る事なら俺の事は【ホシ】と呼んでくれ…その愛称は弟と丸被りなんでね。」
それがアーシア・アルジェントの出会い。
そしてこれから弟達と訪れる駒王町での波乱に満ちた障害の幕開けだという事を俺はこの時、予想もしていなかった。
獅子座と蟹座の技炸裂です。
設定としては一星一人で十二星座の技全てを扱う事ができます。
それより、喰らった相手を問答無用で冥界に叩き込む冥界波ってメッチャ強いですよね。
何であんな技持ってるのに……かに座って……