空港で出会った少女…シスターのアーシア・アルジェントを連れて俺は5年ぶりに生まれ故郷の駒王町に戻って来た。
「ん~~…懐かしい故郷だな。」
お?あの公園まだあったのか。
子供の頃、良くイッセーやイリナちゃんと遊んだっけな。
因みにイリナちゃんと言うのはイッセーと俺の幼馴染の少女だ。
確か小学生の頃に海外、ヨーロッパの方に引っ越してしまったのを覚えている。
いやぁ、女の子としては活発な女の子だった。男の子と一緒に野球やったりサッカーやったり鬼ごっこやったり探検ごっこやったり…思い返してみるとやっぱり懐かしいな。
っと、行けないな…つい思い出に浸ってしまった。
「えっとそれで何処に行きたいんだっけ?」
「この町の教会に赴任することになったのですが……でも」
「成る程、日本語が難しくて上手く意思疎通が出来ず困っていたって所かな?」
「はうう」
恥ずかしそうに赤らめた顔を下に向けるアーシアちゃん。
ああああ、何だこの保護欲…今すぐにでも自分の妹にしたいくらいだわ。
………こういう事思える辺り、俺も大概だと思うよなあ。
「しかし、困ったなぁ…流石に俺も教会の場所までは分からないな。」
何せ5年だからな……記憶にあるような、無い様な微妙で曖昧な記憶だ。
知っている可能性がある人間は身近に一人居るが…シスター連れて家に帰って両親に見つかればそれはそれで偉い事になるだろうな。
「とりあえず、交番か何処かで聞いてみよう。」
これが無難だ…うん。
一般的かつ常識的な結論だ。
「そういえば、君はずっと一人で来たのかい?」
「はい。でも、私は日本は初めてで…一星さんのような方に会えて良かったです。」
「そうか……全く、教会は何を考えているんだ?こんな可愛らしくいたいけな少女を一人外国に旅立たせるなんて……可愛い子には旅をさせろという言葉を何か勘違いしているんじゃないのか?」
「か、可愛いですか?」
「うん、可愛い…何だったら妹にほしいくらい」
首を傾げるアーシアちゃんを見てからの即答である。
弟も良いけど…どうせだったらこんな感じの妹もほしいと思っちゃうんだよなぁ~~お兄ちゃんは!!
かくいうアーシアちゃんは恥ずかしいのか頬を赤く染めて俯いてしまった。
こういう仕草もまた可愛い!!
……って、なに考えてるんだろう俺?!?!
「………………。」
「あの…如何かしましたか?そんな暗い表情を」
「ああ、気にしないで…ちょっとした自己嫌悪だから。」
駄目だ……首を傾げる仕草がさらに可愛く見える。
…俺も弟の事そんな強く言えないよなぁ。
嗚呼、あの弟ありきてこの兄ありか。
「はぁ………」
そう思うと悲しくなって思わず溜め息を漏らす自分
そしてそんな俺を見て不思議そうに首を傾げるアーシアちゃん。
いや、もうこれ以上考えるのはやめよう…俺自身にしてもアーシアちゃんに心配をかけるのもダメだ。 頭のもやもやを振り払い改めて前を向いて歩を進める
・・・・・・のだが、タイミングが悪かった。
俺は突き当りから現れた人影と正面からぶつかってしまった。
「申し訳ありません、考え事をしてて―」
これでガラの悪い男なら質が悪いというが、その顔は俺がよく見知った顔だった。
「イッセーか?」
「あ、兄…貴?」
それは弟・・・兵頭一誠とのおおよそ5年ぶり以上の再会だった。
「まさか、お前とこんなところで再会するとは思わなかったよ。」
「それはこっちの台詞だよ兄貴、何でこんな所に」
「ああ、俺は困っているこの子を送り届ける途中だったんだ。 っと、そうだ…すまないなアーシアちゃん。紹介するよ、こいつが俺の弟の一誠だ。悪い奴ではないから安心してくれ。」
「は、初めまして…アーシア・アルジェントと言います。」
「は、はは、初めまして!!弟の一誠です!!こちらが兄の」
「俺の紹介は良いだろうが…」
全く、海外を出たことない一誠にとっては生まれて初めての金髪の美少女に緊張するのはわからなくもないが―鼻の下まで伸ばすなよ。
「でも、兄貴…この子を一体何処に連れてく気なんだよ?」
「ああ、教会なんだが…俺はこの町に戻ってくるのも久方ぶりだからな。 交番を利用しようと思って―!そうだイッセー、お前教会の場所はわかるか?」
「あ?あ、ああ…分かるけど」
「なら、話は早いな―この子を送り届けるのを手伝ってくれ。……って、如何した?」
珍しくイッセーが浮かない顔をしている。
お世辞抜きでこんな可愛い子を連れて歩けるのに……あ
そうか、イッセーには今、彼女が居るんだったな。きっと、その子の事を気に掛けているのだろう。何とも、スケベではあるが一途で優しい男になったものだ。
「……ああいや、忘れてくれ。やはり俺が送り届けるよ、変に気を使わせ悪かったな」
「いや!そんな事ねぇよ…分かった、俺も途中までなら送り届けるからさ。」
「良いのか?」
「ああ!……途中までなら大丈夫途中までなら大丈夫」
? 最後何て言ってたんだ…まあ、良いや。
これですぐにアーシアちゃんを送り届けることができる。
俺はイッセーとアーシアちゃんの身に何が起こっているのかまだ何も知らず、一人安堵するのであった。
それにしてもイッセーの奴、いつの間にあんなに英語をすらすらと喋れるようになったんだ?
「うわあぁぁぁぁぁん」
教会に向かう道中、近くの公園にて子供の泣き声を聞きそちらに駆け寄る
如何やら転んだ拍子に膝を思いっきり擦りむいたようだ。
「…結構大きく擦り剥いているな」
「参ったな、絆創膏なんて持ってないし…」
「大丈夫ですよ。」
俺とイッセーが困っていると、アーシアちゃんは優しく子供の頭をなでながら優しい言葉を投げかける。そして、怪我をした膝に手をかざすと彼女の掌が淡く優しい緑の輝きを放ち、傷をふさいでしまった。
「「え?」」
あまりの事に俺は茫然とし、イッセーは驚いた表情を浮かべていた。
子供を見送った後、アーシアちゃんは呆気に取られる俺達に振り向く
「治癒の力です………神様からいただいた素敵なものなんですよ。」
そういった彼女の笑顔を儚げでとても悲し気な雰囲気を感じさせた。
そして、俺はこのことに深くは聞いてはいけないことを何となくではあるが感じた。
その後は特に会話をする事は無くその公園から少し歩いた先に教会を見つけた
アーシアちゃんは俺とイッセーに深くお礼を言うと教会の中へと消えていった。
また会える…そう約束をした。
「さて、俺達も家に帰るかイッセー」
「おう、兄貴。」
何処となく顔色の悪いイッセーにそう言ってその場を離れる。
その時だった。
「ッ!!!…………………」
唐突に首飾りに電流のような痛みが生じる。
顔を顰めると十二の玉の一つ……【処女(バルゴ)】の玉が淡い輝きを放っていた。
とっさにそれを懐の中に深く隠す
「?兄貴?」
「何でもない、さぁ家に帰ろう。」
怪訝な表情で此方を向くイッセーを諭し先に行かせる。
先程の痛みは消えている…だが、如何にも嫌な感覚を拭う事は出来ない。
「……………。」
もう一度、アーシアちゃんの入って行った教会を振り返る。
古く…そして不気味さを漂わせるそこに神聖さは感じる事は出来なかった。
「………何事もなければいいが」
「おーい!兄貴ぃ!!」
「ああ、わかってるよ!!」
手を振るイッセーの元に駆け寄り家路へと着く
「そう言えばイッセー、彼女とのデートは如何だったんだ?」
「え?…あ…あぁ……………。」
「…………………そっか、残念、だったな」
「………ごめん兄貴、糠喜びさせちまって」
「そんな事は無いさ―俺だってまだ彼女いないんだ、まだまだこれからさ。」
「………………………うん。」
顔を下げ僅かに肩を震わせるイッセーの頭をわしわしと撫でてやる。
イッセーだから大丈夫、きっともっと素敵な女性と巡り会えるさ。
その後、家に着いてから同じ学校の先輩と【裸】で寝ていたと言う事が発覚し、俺からの説教と言う名の【修羅場】が起こるのはまた別の話だ。