昨日の件を母親からこってりとしぼられた俺は次の日の朝
「ようイッセー」
「兄貴、おはよう―で、如何した?」
「いや―昨日の夜更け何処に居たんだ?」
「え?あ、ああ~部活動だよ」
「部活動?お前が?それにあんな夜中にか?」
「ああ―そう。オカルト研究会だから…そういうのは真夜中ってのがお約束だろ?」
「ふぅ~~ん……」
「…………そ、それより兄貴こそ昨日おふくろに怒られて、何したんだよ」
「俺は―夜散歩に出かけたら帰りが遅くなって怒られた。」
「子供かよぉ…」
「言うな……聞きたかったのはそれだけだ、早く行かないと学校に遅れるぞ?」
「へーい」
弟を見送り―俺は再び自室へと戻る。
その何気ない日とあの一件から数日―
また少なからずであるが近況をまとめておくとしよう。
前日の異形の一件以来―俺は独自で夜の見回りを両親には内緒で行うようにした。
大体の悪意と言った類はこの首飾りが知らせてくれるが―それでも僅かに潜み表には出ないものもある。
・・・。
昨日の話になるが―夜中に依然と同じ気配を察知しとある一軒の家を訪ねた。
戸締りはされておらず―だが誰も応答しないのを不審に思い勝手に入らせてもらったが―そこには人の亡骸が転がっていた。
死んだ【彼には】争った跡は見られず思いに切り殺されたと思う―
だが―問題は―他の部屋にて争われた後を発見した―全く別の血痕…つまり生き残りが居る可能性、少なくとも【誰かが争った】後があった。
警察を呼び―周囲一帯を確認したが怪しい者を確認する事は出来なかった。
杞憂であればよかったと思っていたそれは―身近な現実として表に現れつつある。
最悪でも父さん母さん、イッセーだけには危害が来ないようにしなくては―――
「―やはりあの教会か。」
アーシアちゃんが務めているあの教会――前にも思ったが、とても人が扱っているとは思えない廃墟に近いあの場所。
初めて彼女と会い―そして別れた日のあの感覚―忘れもしない、全身を突き刺すような嫌な感覚だった。とても神が負わす場所とは思えない違和感・悪寒―アーシアちゃん自身に毒気など微塵も感じられなかったが―
「………会いに行ってみるか?」
あの教会に―何度か近くまで行ってみたのだが―中にまでは入ってない。
あの日からアーシアちゃんにも会えてないし―会いに来たっと言えば会えるかもしれない。
それに――――聞きたいこともあるからな
「そうと決めたら急げだな」
そこが【善】かは分からないが――そうだ、イッセーも連れて行くか。
アイツなんでか知らんが怪我したらしく学校を休んでるらしい。 部活動の怪我らしいが―大したことないらしいのに部長が休ませたらしい。
ってか―部長一人の権限で生徒一人休ませるってのも凄い話だな。
オカルト研究部―だったか?風の噂だと凄い令嬢が部長としているらしいが―
まあ良い――どうせイッセーの事だ、部屋でエロイ何かでも見てるか読んでるかしてるかだろう。昼下がりに暇でもしてるんだ…何処かに連れて遊びに行ってやるか。
「おいイッセー……イッセー?」
……………………おかしいな返事がない。
さてはまた一人でどこかに出かけてるな?……こっち来てからアイツ俺に内緒で出かけてばかりじゃないか?
つれないなぁ……兄貴に内緒でお出かけかよ。
仕方ない―一人で出かけるか。…………………………ショボーン(´・ω・`)
「………………………………」
昼下がり―外回りに特に異常は無いか。
アーシアちゃんはいるだろうか―扉を開けて中に入ってみる。 内装は―普通だ。
だが―外からの見た目もあり、中もそこそこ古ぼけてはいるが……俺の存在に気付いた神父が近づいてくる
「迷える子羊よ、如何いたしましたか?」
「ああ、人を訪ねに来たんだ―【アーシア・アルジェント】と言う女の子なんだが」
「………………その様な女性は此処には居りません。」
「………何?」
この男――今何と言った?
「そんな筈は―数日前にこの教会を訪れたシスターの少女だ。」
「残念ですが―心当たりがございません。」
「!…………」
おかしい―間違えるはずはない。何故なら彼女を此処に連れてきたのは俺とイッセーに他ならないのだ。 彼女は確かに此処に居るはずだ―いや居る。
なら何故会わせない?存在を否定する?…………!!
思考を巡らす俺は次に気付いた―この目の前に立つ神父の【目】だ。
嫌悪と嫌疑―この二つの【嫌】と言うものが混ざった眼差しをこの男は俺に向けている………いや、この男だけじゃない。奥から此方の様子を見る別の神父……物陰から此方を見据えているアーシアちゃんではない別のシスター………此処に居る協会の関係者全員が―俺に対してその目を向けている。
何だこの気持ちの悪さは……神への信仰の目ならわかる。本来ならそれを教え広めるのがこの教会と言うものだ。 だが―こいつらの目には【神】は見えていない。薄汚れた人間の汚い部分が目の奥からあふれてやがる………アーシアちゃんのあの目とは全く違う。
此処はおかしい……教会としての第一条件―――神を信じる心と言うものが【無い】。
四方から眼差しで向けられる悪意―中には殺意の様なものまで含み始めたその時だった――首飾りがある一方を示し反応する。
この場所は――近いッ……だとすれば…アーシアちゃんも不安だが、こいつらにかまっている暇はない。
「………失礼した、此方の勘違いだったようだ。」
突き刺さるような視線を無視してその場を立ち去り俺は隠れて【双児】の力を使い次元を曲げてその場に急行する。
近くの自然公園―瞬間移動したのを周囲に悟られないように森の中に転移先を決め、すぐに現場に向かう。
現場には黒い翼で空を舞う黒髪の女―そして、
「!?アーシア……ちゃん、それに………ッ」
金髪の少女―アーシアちゃんを守る様に黒髪の女と対峙するツンツン頭の男―――此処からでも見間違えるはずのない――俺の弟がそこに居た。
何故アイツらが此処に?いや、そもそも何をやっているんだ?!
あまりにも予想外なことに俺の思考は止まり動きも止まってしまう―本来なら、すぐに助けに加わるべきなのに、頭が混乱して如何すればいいのか分からない。
「その子、アーシアは私たちの所有物なの。返してもらえるかしら?アーシア、逃げても無駄なのよ?」
「……嫌です。私、あの教会へは戻りたくありません。人を殺すところへ戻りたくありません。」
!……人を、殺す?そういったのかアーシア
まさか――昨日の夜のあの殺人現場は―あの黒髪の女の仲間がやったとでもいうのか?
そもそも―教会の人間が何故人を殺す?
「そんなこと言わないでちょうだい、アーシア。あなたの神器は私たちの計画に必要なのよ。ね、私と一緒に帰りましょう?これでもかなり捜したのよ?あまり迷惑をかけないでちょうだい。」
「待てよ。嫌がっているだろう?ゆう、いや、レイナーレさんよ、あんた、この子を連れて帰ってどうするつもりだ?」
「……下級悪魔、私の名前を呼ぶな。私の名が汚れる。貴方に私たちの間の事は関係ない。さっさと主の元へ帰らないと、死ぬわよ」
「…………………………」
おい―あの女――イッセーの事を何て呼んだ?
下級……悪魔……だと?如何いう事だ?アイツは――――
もう一度確認する――そう言えば―あの女―以前イッセーが話してくれた天野夕麻と言う少女によく似ている。
何が如何なっている?――何時の間にか、イッセーの左腕に赤い籠手の様な物が装着されているが―次の瞬間、イッセーの腹を光が貫いた。
地面に倒れ伏すイッセー………ッ!
そこで漸く俺の体は動いた―空かさずイッセーとアーシアちゃんをかばうように前に立つ。
「人間?―何でこんな所に?」
「い、一星さん!」
「あ……あに、き?…どう、して?」
「喋るなイッセー!……【白羊(アリエス)】!!」
首飾りの玉の一つが輝く――
「何よあんた?邪魔する気?―いいえ、貴方も神器持ちの様ね。厄介だし―死んどく?」
そう言って彼女の手に光の槍が形成される―さっきイッセーの腹を貫いたのはあれか!
「ッ!【クリスタルウォール】!!」
両手を広げ―透明な膜の壁を作り出す。
「そんなものぉ!!」
光の槍が投げられ膜にぶち当たるッ!
だが膜は貫くことなく逆に光の槍を吸収し黒髪の女―レイナーレの方へ襲い掛かる!
「何ッ?!」
予想外の出来事に驚き回避行動を起こすが翼をかすめレイナーレは地面へと落ちる。
「わ、私の翼がッ―」
「イッセー!」
痛がるあの女を無視してイッセーの容態を見る。
腹を貫かれている……早く治療しなくては―――
「わ、私が……」
「!アーシアちゃん……」
彼女がイッセーの腹部に手をかざし、あの時と同じ翡翠色の優しい光が照らされる。
イッセーの傷がふさがっていく。
「兄貴、俺――」
「……イッセー、訳は後で聞く。今は―」
イッセーの事をアーシアちゃんに任せて再び女と対峙する。
「こ、こいつぅ…私の翼をよくも!」
「お前、何者だ?何故彼女を狙う?!」
再び上空へと飛ぶ女―
「チッ…邪魔をしてくれたわね人間。」
「答えろ!お前は何者だッ!!」
「ふんっ――貴方には関係ない―訳ではなさそうね。」
にやりと笑うレイナーレは話を始める。
「私の名前はレイナーレ―天野夕麻って言った方が貴方には通じるかしら【兵藤一星】さん」
「天野夕麻―だと?まさか…いや、やはりか!」
「デートの時も時々自慢げに貴方の事話してたから直ぐにわかったわぁ、そっくりだし―」
「……それで?その俺の弟の元彼女が何の用だ?」
「アーシアの持っている【神器】―私たちの計画にとっても必要なのよ、貴方には何のことかはわからなそうだけど―とにかく、私は彼女さえ此方に渡してもらえればこれ以上貴方達に危害を加えるつもりはないわ。」
「………………。」
神器―以前で会ってきた異形達もそんな事を言っているが、こいつはそれに関してさらに詳しい域まで知っているようだな。
だが―――
「――もう一つだけ、聞くぞ。 お前が俺の弟に近づいたのはなぜだ?」
「ああ―貴方の弟、とっても危険な神器を持ってらしいからさ。上から殺すようにお願いされたのよ―でも、上の勘違いみたい、いざ出してみたら何処にでもある平凡な神器なんだもんだからがっかり――なのに悪魔に転生するなんて最悪よねぇ」
「………………。」
悪魔?イッセーが?
後ろを振り返りイッセーの目を見る―だが、答える訳でもなくただ申し訳なさそうにイッセーはその目を逸らした――――つまり、【肯定】したのだ。
「あら?あらあらあら?何?ひょっとして知らなかったの?あなたの弟、もう人間じゃないの、誰かさんの手で悪魔に転生されたのよ?だから、そこに居るのは人間じゃなくて―悪魔なのよ?」
だが―それよりも
「ッ――――お前が、殺したのか?」
「ええそうよ。だから?」
そうか―だったら、こいつに聞く事はこれ以上ないなァ!!
【クリスタルウォール】を解き、拳を構える
「馬鹿がッ!その膜さえなくせばぁ!!」
再び光の槍が投げ放たれるが――そんな二番煎じな技が通じる訳ねぇだろうが!!
「舞え、星よッ【スターダストレボリューション】!!」
光を凝縮させ無数の光弾として放つ!
光の槍を打ち砕き、レイナーレに襲い掛かる
「何ッ!!ぐあわあああああああ!!!」
真面に食らったレイナーレは滅多打ちに会い地面に落下する
「ば、馬鹿な――今の攻撃は!?」
何が起きたのか理解していない―そんな表情でふらふらと立ち上がるレイナーレ。
だが―如何でも良い
「ただ光弾を放っただけさ―だが、貴様には関係ない。聞く事もない―俺の弟の純情を弄んだ罪は大きいぞ……天野夕麻いや、レイナーレ!」
混乱よりも―何よりも、弟を弄ばれた怒りが俺の頭を支配している。
この女は許さん―叩き潰すッ!!
「さぁ―止めだ…喰らえ【スターダストッ!!」
「おやおやおやァ?随分と苦戦してるじゃあありませんかぁレイナーレ様ァ?」
背後から殺気!?咄嗟に再びクリスタルウォールを展開させると何かがこちらに激突する。
新手か―?!
「あららら?なんか変なのに止められちった?うぜえええですねえ殺していいですか。」
何だこいつ―?
白髪の少年―服装は神父と同じだが―言動が明らかにおかしい。狂っている。
だが―手には銃と剣を持っている―ついでに殺気を隠してすらいない。
敵か―しかも挟み撃ち。
「フリード!良い所に来たわ、手を貸しなさい!!」
「えぇ~~アーシアたん捜すのがドウシテコーナッタ!何か知らん奴に俺っちの上司さんがフルボッコされてるみたいだしぃ?ま良いや他のお仲間もこっちに近づいてきてるしぃ?とっととそこのツンツンダブルを殺してアーシアたんと楽しいことしましょっか!」
「チッ…下品な野郎だ。」
だが―仲間が来ているだと…まずいな。
【白羊】には防御技はあっても―瞬間移動は出来ない。 クリスタルウォールもずっと展開させることも俺にはできない。
このまま囲まれるのでは―ジリ貧だ。 だが―だからと言って
「!……ねえアーシア、二人を助けたい?」
「え?」
レイナーレがふらふらと立ち上がりながらアーシアに提案する
「貴方が私の所に戻るというのなら此処にきている仲間たちを引き払ってあげるわ―孤立無援のようだし、二人を見逃してもらえると考えれば最善の道だとは思わない?」
形勢不利からの増援を傘にした提案かよ―要は俺達が人質かふざけやがって……ッ!
「!貴様……」
「くっそ―お、お前ら何かにッ!」
「わかりました。」
だが―アーシアは彼女の提案を受け入れた!
「ッ!駄目だアーシアちゃん!罠かもしれないんだぞ!」
「一星さんあの時は助けていただきありがとうございました。イッセーさん。今日はとても楽しかったです。」
「アーシア待てよ!俺達友達だろう!!」
「はい。こんな私と友達になってくれてありがとうございました。」
「良い子ね―アーシア。」
自らの方に歩み寄るアーシアを見て自身の思惑に笑みを浮かべるレイナーレ
止めようとクリスタルウォールを解除すれば後ろのフリードと呼ばれた男が襲い掛かってくるだろう。
「駄目だ、待つんだ!アーシアちゃん!!」
「お、俺が…俺達がアーシアを!」
それでも―声を張り上げて彼女を止めようとする
だが―彼女は笑みを浮かべて
「さようなら」
その一言だけ伝えるとレイナーレの翼の中に隠れる
「この子のおかげで命拾いしたわね―退くわよフリード!」
「ええ?!こいつら殺してからじゃダメですか!?」
「殺そうと思えば何時でも殺せるわよ、早くしなさい!!」
「チエェ、おいクソ悪魔!透明壁男!次会ったらマジで殺すからナ!!」
そう言ってレイナーレはアーシアを連れて空の彼方へ、神父は森の中に紛れて姿を消した。
後に残ったのは―俺とイッセーの二人だけ。
「ッ~~!クッソォ!!」
石柱を思いっきり殴りつける。
イッセーも傷を癒して完治してもらえたが、自身の無力さに地面を何度も殴る。
嫌な予感だと分かっていた…分かっていたはずなのに、後手に回った結果がこれかよ!!
異形を圧倒できる力を持ちながら―俺はあんな健気な女の子一人助けられないってのかッ!!
いや―悲嘆にくれるのは後だ。
まだ間に合う――そうだろ?兵藤一星……。
「…………イッセー、立てるか?」
「……………ああ。」
「アイツの言っていたことだが―」
「………。」
「………詳しい事は夜にでも聞かせてもらうからな。」
「俺……何も……」
「言うなイッセー………まだ間に合う、まだ、終わりじゃねぇ。」
次回!
一星兄さんが【激おこぷんぷん丸】で手始めに堕天使3人ぶちのめします。