これを見てくださっている方には不要とは思いますが一応説明しますと、この小説は川原礫先生のノベル「ソードアートオンライン」シリーズの二次創作です。原作を知らない方にも分かりやすいようにと心掛けているつもりですがなにぶん素人なもので出来れば原作を読んでからこちらを読んで頂けると幸いです。
最後に、タイトルの最後についている『β版』が気になった方もいると思うので説明しておくと、誤字やおかしな設定等があった時修正する為です。なのでそれらを見つけたら教えて頂けると助かります。
別の世界の夢を見た。
そこの俺は毎日「学校」へ通い勉学に勤しみながら友人達と機械的なまでに繰り返される同じような日常を送っていた。朝になり、色々あってまた夜になりまた朝になる。仮に自伝を書くならば俺の日常など二行もあれば十分書き切れてしまうだろう。そんな当事者からすれば退屈そのものであるはずの普通の日々も今は夢の中にしか存在しない。
俺が寝ていたのは安っぽい宿屋の一室。一泊三十コルの格安の宿だ。もちろん寝心地も値段に比例してかなり貧しいのだが今はそんな贅沢を言える程懐が温かくない、むしろ昨日買い物に出かけた分普段よりか頼りないくらいだ。
俺は時間を確認するためにメインメニューウィンドウを開く。普段は八時には起きて宿を出る事にしているのだが…
「十時…て、しまった寝過ごした!!!」
最近寝不足が続いていたせいか昨夜はアラームを設定する事すら忘れて倒れ込んでしまったらしい。慌てて寝間着から普段着である茶色のコートに着替える。扉を開けて飛び出し階段を一段飛ばして駆け降り宿の外、「世界」へ飛び出す。
街には活気が溢れ、大勢の人が行き交っている。朝市は流石にやっていないが数々の店が軒を連ねている。重そうな金属の鎧を着た巨漢や布地の身軽そうな見た目に似合わぬ大きな両手剣を背負った若者など行き交う人々も多種多様だ。
そう、ここは現実の世界では無い。浮遊城アインクラッド第一層にある街「はじまりの街」、ソードアートオンライン通称SAOというゲームの中である。
その時突然、宿屋のドアが開いた。中から色白の小柄な女の子が出てきた。彼女は矢作雪美、SAO内では「shirayuki」という名の俺の幼なじみであり現在はコンビを組んでいる。装備は俺と同じ少し大きな片手剣アニールブレードを愛用している。
「やっと起きた!遅すぎるよもう!」
朝一から不機嫌そうな顔(朝一気分なのは自分だけだが)をしているパートナーに向かってとりあえず謝罪をする事にした。
「あーすまん雪…じゃなくてシロ、アラームをセットするのを忘れていた!」「だからそんな犬みたいなあだ名で呼ぶなっていつも言ってるでしょうが!」
手加減無しに蹴られた、ここが圏外なら一ドット程HPが持って行かれてただろう。雪美は敏捷力極振りのはずだが…。
そんな事を考えながらも街中であまり派手に吹っ飛びすぎると悪目立ちするので急いで何事も無かった風を装う。
「あぁすまなかったな。えっと、たしかユキって呼ぶんだったよな。じゃあユキ、今日もよろしくな」
「まぁ分かってくれたなら良いけど…今度言ったら斬るからね」
まさかユキも圏外で切りかかってくるとは思えないが一応気をつけなければと内心震えながら気分を改める。
「とりあえず…今日の目標はレベル一上げる事だよな。朝飯…というかブランチは軽めにして例の狩場に二時には着きたいよな」
俺達は一週間程前に湧出頻度が多いレベル上げには格好の狩場を見つけた。第一層は直径十キロメートル、面積は八十立方キロメートルもするというおそらくはアインクラッド最大の階層だそうだ。だそうだ、というのはこの話は情報屋のアルゴから他の情報を買った時にオマケとして無料で貰った、まだ噂の範疇から出ない話だからだ。
その広大さゆえにこのゲームが始まって既に三週間以上が経過した今でもまだ未開拓の地がある。勿論危険性もあるがそれ以上に夢があるので俺とユキの二人もいくつかの土地を開拓してきたのだが、先週新しく見つけた狩場というのが特に珍しいようで情報屋すら掴めていない場所、そしてβテスターですら見つける事が出来なかった場所らしい。開拓した土地の情報を情報屋に売って金にしてきていた俺達だがこの情報だけはまだ売らないと決めている。よってその狩場は最近一週間程俺達の専用狩場となっているのだ。とは言え情報の、特に有用な狩場の情報の出し惜しみは褒められた事ではないのでそろそろアルゴに売ろうかと相談していたりする。
「うん!あと少しでレベルアップするはずだから頑張ろうね!…とまずは食事をとらないと。いつものNPCレストランに行こっか!」と今日も朝から元気なユキと共に歩きだす。歩きながら向こうの世界の印象と540°違うこっちの世界のユキを見て、ふと昔の事を思い出していた。