「これで……八十八」
さっきまで大きな蜂の形をしていたものが青い光となって四散する。しばらくすると空中にさっきと同じ大きな蜂≪ウインドワスプ≫が沸いてくるのでこれを斬り捨てる。この作業の繰り返しを始めてから約二時間。俺は百の大台を目指して剣を振り回していた。
スタン効果を警戒して丁寧に攻撃を避け、振り向きざまに渾身のソードスキル「スラント」をお見舞いする。斜めを描く軌道が空中を漂う敵に相性が良いからだ。
「……ッ八十九!」
次に沸いてきたワスプはあろうことか三体同時に出現した。三体同時に突進されると回避は難しくたとえ回避出来たとしてもカウンターを入れる事が出来ない。
「(どうする…………))
その時、三体のワスプが一列に並び、遂に突進を敢行してきた。
俺は後ろへ飛び下がり剣を構える。狙うなら俺を攻撃する為に低空飛行をする一瞬だけ……!
俺は空から強襲を仕掛けてきたワスプに向かいソードスキルで対抗する。スラントとは違い、真横に水平に薙ぎ払う剣技「ホリゾンタル」で三体のウインドワスプを攻撃。攻撃に蜂が怯んだ一瞬の隙に再び後退し、三体の連携が崩れた所を一体づつ連続攻撃。
「九十、九十一、九十二!後八!」
気合いを入れるための叫び声に呼応するかのように次のワスプが現れる。右手のアニールブレードを握りなおし、俺は再び「スラント」の構えに入る。
気付けば辺りは暗くなっていた。今日は街を飛び出てからウインドワスプを百体狩り、アニールブレードの耐久値回復の為近くの小さな圏外村へ赴いた。その後今度は見た目は完全に牛の≪トレンブリング・オックス≫を乱獲。それだけで飽き足らず奥地で≪レッサートーラス・ストライカー≫達と剣の耐久値ギリギリまでの戦闘を行っていれば時間などあっという間だ。
「冷静に考えたらよく生きてたな俺……」
思わず一人呟く。普段は敏捷力極振りのユキが敵を翻弄し、敵の反撃を俺の筋力値極振りを活かした重い斬撃で弾くというスタイルをとっていた。しかしユキがいない今は筋力値極振りというのは戦場で動き回れないので不利だと思う。いや正確には思っていた、だ。実戦に出てみると動き回れない分コンパクトなステップだけで敵を捌く事で効率的にダメージを蓄積させる事が出来た。とは言え普段使っていない量の集中力を長時間要求された体はもう限界なようで圏外村の宿に戻り次第熟睡してしまいそうだった。そりゃ、今日は普段修業していた量の三倍くらいをソロで倒したのだから。経験値の入り方はおそらく鳥肌物だろうがレベルは残念ながら上がらなかった。
「……明日もやるか。≪アレ≫がどんなものかも試さなければいけないし」
気付けば辺りはすっかり日が落ちて真っ暗となっていたが不思議と俺の心は明るかった。