夕飯を終えた俺とユキは宿へ帰ってきた。時間は既に八時を回っていたが狩場の帰り道で情報屋アルゴへ例の狩場情報を今夜譲るという内容のメールを送っていたためまだ今日は終わらない。
今回何を思ったのかユキが「この狩場情報は無料で提供しない?」との提案があったことで今回は珍しく慈善事業である。
「じゃあアルゴには俺から渡しとくよ。おやすみなさいユキ」
隣の部屋へ入ろうとするユキへ声をかけ、ユキが「うん、おやすみー!」と言ったのを聞いてから自分の部屋へ入る。
「さて、二層へ行けるようになった時の為に準備しとかないとな」
俺は手持ちのアイテムメニュー開き、不足が無いかを確認する。幸いPOTは十分量あるので買い足す必要はなさそうだ。
とその時、突然ドアをノックする音が聞こえた。
「ヒー坊、俺っちダ」
この変なあだ名と一人称を使う人物は俺の知る限り一人しか居ない。
「あぁ、今開けるよアルゴ」
がちゃりと鍵を開けると頬に変な模様の付けた女性が入ってきた。この頬の模様と凄まじい敏捷力から彼女は「鼠のアルゴ」と呼ばれ人々からはある時は情報の正確さを頼りにされ、ある時は畏れられている。「≪鼠≫と五分間雑談すると、知らないうちに百コルぶんのネタを抜かれているぞ。気をつけろ」と噂になる程彼女は情報収集能力に長けており今までも随分お世話になってきた……がその分俺達の情報も抜かれていると思うのでまぁフェアトレードだ。
「にしても珍しいナ!ヒー坊が狩場の情報を、しかも俺っちすら掴めていない効率の良い狩場の情報を無料でくれるなんてナ。明日は雨でも降りそうだヨ」
「まぁ無料ってのはユキが決めた事なんだがな」
アルゴは更に驚いたような顔をした。
「まさかのユーちゃんの差し金かヨ!これは更にビックリだヨ。いつもは一コルすら負けてくれないユーちゃんがまさかナ。こりゃ明日は雨じゃなく文字通り雪が降るかもナ!」
俺はメニューウィンドウを操作しアルゴへMAPデータを渡す。
「ここは前調べた気がするけどナ……明日に裏をとりに行ってくるヨ。じゃあなヒー坊」
MAPデータを受けとったアルゴは素早く確認しドアを開けて出ていった。
「……よし、これでもう今日のやることは終わりだな。寝るか……」
ランプの明かりを落とし俺は硬いベッドへ入る。その日の夜は、例えるなら小学生の時の遠足の前日のような興奮を覚え、俺は中々寝付く事が出来なかった。