今日、十二月四日の朝は晴天だった。俺はいつものようにアラームによって半ば無理矢理眠りから覚め、外行きの装備を着てから宿を出る。しばらくしてユキも宿から出て来た。
「おはよ〜ヒッ君!あと二時間で攻略組の集合らしいからさっさと朝ご飯食べて行こうよ」
俺は既に準備は済んでいるので首肯する。それから俺とユキは昨日と同じNPCレストランへと向かった。今日のメニューも一つ一コルの格安黒パン、いい加減飽きているのでとくに味を楽しまず飲み込む。そして俺達が攻略組の所へ着いたのは九時五十分、大半の攻略組メンバーが揃っているように見えた。俺はユキに聞いた情報、青髪の騎士を探そうとしたが目立ち過ぎていて辺りを見渡しただけで見つける事が出来た。せっかくなので俺とユキは青髪の元へ行き声をかけることにした。
「あのー……もしかして攻略組隊長のディアベルさんですか?」
ユキがオドオドと青髪に向かって声を掛ける。
「ん?そうだけど君達は……もしかして攻略組志望かい?」
何と言うべきか迷っているらしいユキを片手で制し、代わりに俺が前へ出る。
「はい、と言ってもまだ装備やレベルが皆さんに届きそうに無いので二層から加えてもらえる様に鍛えている最中ですが」
かなり謙遜気味に、若干嘘を込めて返してみた。ふぅーん、と品定めするかのような視線を俺達に向けた後ディアベルは爽やかな笑顔を作った。
「うん、凄く助かるよ!君達なら一層でも十分通用するとは思うけど……心の準備も必要だろうから二層からは楽しみに待ってるよ!あ、来れそうな時は俺に連絡してくれないか?」
ディアベルは何やら操作を始めた。しばらくすると俺の手元にフレンド登録確認の画面が開く。連絡が出来ると攻略組参加する時に便利だと判断した俺はそれを受諾。ユキ、アルゴに続く三人目のフレンドリストにディアベルの名が入った。
「はい、じゃあ二層攻略の時に準備が出来ていたら連絡します、では御武運を」
「あぁ、二層の前に俺達が一層のボスを倒さなきゃな!じゃあまた」
俺はディアベルに別れを告げ、広場の他のプレイヤーを見ていたユキと共に攻略組の集団から離れた。その直後、後ろから「オレから言えることはたった一つだ……勝とうぜ!」という声とそれに呼応する大勢の叫び声が聞こえてきた。
「…………あの人と以前あった事がある……」
広場から離れるとユキが口を開いた。
「名前も顔も知らないけど……多分≪もう一つのアインクラッド≫で」
つまりユキはディアベルがβテスターだと言っているのか。
「それならあの慣れた感じも納得だな」
それからユキは更に続けた。
「うん、あの人達の中なら多分一番レベルが高いのがディアベルさんだと思う。それか後ろに居た黒衣の剣士か」
黒衣の剣士?そんな奴居たのかと俺は首を傾げた。その様子を汲んでか「私達と同じアニールブレードを持ってた人だよ」と補足してくれた。
「これは予想だけど……あのメンバーの中では将来的に黒衣の剣士、その隣に居たフードを被っていた人、ツンツン頭の関西弁の人がこのゲーム攻略の鍵になると思う」
これには俺も驚いた。
「ディアベルの名前が無いが……」
これにはユキも言いづらそうにしていたが一言だけ、小声で呟いた。
「あの人は……優し過ぎる」
人は人を守る事は出来るが大勢は守れない。全てを守ろうとする者はその前に自分を失うことになるから。
俺はユキが暗にそう言った様に聞こえた。
「……まぁとにかく、俺達は彼らの武運を祈りながら二層への道が開通した時の為に転移門まで行っておくか」
うん、とユキは頷く。俺は密かに二層に行けたら黒衣の剣士とフードを被った人、ツンツン頭の三人に会ってみたいなどと考えながら転移門へと向かった。