<シュウside>
『ログアウトボタンが、ない』
そのクラインの言葉を聞いて、俺の体は凍りついたのかのように固まった。
そして、真っ先にこの考えが浮かんできた。
ー そんなことがあっていいのか?、と
すぐさまメインメニューを開き、ログアウトボタンがある場所を開いた。
しかしそこにはクラインの言っていた通り、ログアウトボタンが存在していなかった。
ログアウトボタンが無くなるなど、あってはいけないミスだ。
なぜなら、その意味の通りログアウトができない、この世界から出ることができないのだ。
もしこれが、運営側のミスだとしたら、プレイヤーを強制ログアウトさせるなど早急に対応しなければならない。
しかし、もうすでにサービス開始から四時間以上経過している。
運営が気付いていないわけがない。
俺の頭には、一番最悪なシナリオが浮かんだ。
まさか、な.....
俺は首を横に振り、浮かんだ考えを振り切った。
そんなことが起きるはずがない、起きてはならないと現実から目を背けるようにして ー
息を吐いたと同時にはじまりの街の鐘が響き渡った。
そして俺たちは、青白い光に包まれた。
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光が薄れ、少しずつ目を開くと、そこは始めにログインした時に降り立ったはじまりの街だった。
「強制転移、か」
「そう、みたいだな」
「ったく、なんだよ!早くログアウトさせてくれ〜〜〜 ピザが待ってるんだよ!」
「緊張感無さすぎだろ.....」
こんな事態でも変わらないクラインに俺たちは、揃ってため息をついた。
「どんどん、転移されてくるな」
「おそらく、ログイン中の全プレイヤーが集められているのだろう」
「ってことは.....」
「ああ。多分、ここで説明があるんだと思う」
鐘の音が止まると転移の音も鳴り止む。と同時に空に赤い亀裂が入る。
その亀裂から、体全体を覆うローブをきた巨大な生物が現れた。
姿的にGMのようだ。
姿の生成が終わるとGMはゆっくりと話し始めた。
『プレイヤーの諸君。ようこそ、私の世界へ』
「私の世界.....?」
『私の名前は、茅場 晶彦。この世界をコントロールできる唯一の人間だ』
「な‼︎」
「茅場、晶彦.....」
『諸君も知っているように、メインメニューからログアウトボタンが消えている。しかし、これは不具合では無い。このゲームの本来の仕様である』
「本来の仕様だと.....」
待てよ。これじゃあ、俺が考えてたようなことに.....
『諸君は自発的にログアウトすることができない。また、外部から取り外すこともできない。なぜならその場合、ナーヴギアより出された高出力マイクロウェーブにより、君たちの脳は焼き尽くされるのだから』
!ってことは.....
「あいつ、何言ってんだ。おかしすぎるだろ」
「.....いや、リミッターさえ外せば焼き切ることも可能だ」
「で、でもよ、電源を外せば.....」
「ナーヴギアには内蔵型充電バッテリーが入ってる」
「な!.....でも無茶苦茶だ!なんなんだよ!」
話を聞いていくうちに、どんどん考えていた最悪な出来事、いやそれ以上のものになろうとしている。
『しかしながらその警告を無視し、取り外そうとした例が多くある。それにより、213人が世界から永久退場した』
「213人も.....」
「嘘だ.....信じねぇぞ、俺は!」
『この状態を様々なメディアが報じているため、これ以上の被害は増えないと思われる。安心して、ゲーム攻略に励みたまえ』
「何が安心してだ.....!」
『だが、覚えていて欲しい。今後、あらゆる蘇生手段は存在しない。そして、HPがゼロになった時、諸君らの脳はナーヴギアによって焼かれ、そして、死ぬ』
「「!!!!」」
やはりか.....
『脱出するためにはこのゲームをクリアすれば良い、この全百層からなるアインクラッドを』
「できるはず、ない.....」
「無理だろ!ろくにβテストの時も上がれなかったんだろ!」
『では、最後に、諸君らのアイテムストレージに私からのプレゼントを配布した。確認してみたまえ』
俺たちは、アイテムストレージを開いた。
「「「手鏡?」」」
じっと、鏡に映る自分を見ていると、青白い光に包まれた。
光が止み、目を開けると鏡には先程とは全く違う顔が写っていた。
「こ、これは.....」
銀がかった白髪に、少々中性的な顔立ち。
間違いなく現実世界での俺だったのだ。
右を見ると、中くらいの長さの黒髪の中性的な少年と、少し赤がかった短髪の少々ワイルドな青年がいた。
おそらく、キリトとクラインだろう。
その二人は、お互い名前を確認していた。
「お前、誰だ?」
「お前こそ.....」
「ってことは、キリトとか!」
「じゃあお前は、クラインか!」
そして、二人はこちらを向いてきた。
「「シュウ、なのか.....?」」
予想通りの反応につい苦笑いが出た。
驚くのも無理もないだろう。
何せ、変わる前のアバターとはまっっっったく違うのだから。
「そうだ。俺はシュウだ。顔が違いすぎて悪かったな」
「白髪だったのか.....なんで、黒髪に.....?」
「それはおいおい話すよ。」
「待て待て!なんで、現実と同じ顔になるんだ?」
「恐らくスキャンだろうな」
「そうか.....ナーヴギアは顔をすっぽりと覆っているから、顔の形を再現することができる」
「じゃあ、身長や体型はどうなんだ?」
「キャリブレーションだ」
「キャリブレーション.....ああ!あの最初にペタペタ体を触るやつな」
「それで再現したんだろうな」
「ああでもなんでだ!なんでこんなことをしたんだ!」
「どうせすぐに.....」
そう言って俺は、GMを指差し、
「あのGMが答えてくれるだろう」
『諸君らは、なぜこんなことをしたのか、と思っているだろう?すでに私の目的は達せられている。私は、この世界を創り出し、鑑賞するためにソードアート・オンラインを創った』
「くっ!」
『以上で、正式サービスのチュートリアルを終了する』
『諸君の健闘を、祈る』
ー 予想していた最悪の出来事、いやもっともっと酷いことになってしまった。
ー 嘘だと思いたい。けれどこれは現実だ。
ー ここで死ねば、現実の俺も死ぬ。
ー この世界から逃げ出したい、逃げ出したい。けれど、この箱庭の世界からは誰も出ることができない。
ー なら生き抜くしかない。
ー 生き抜いて、生き抜いて、そして、全100層をクリアする。
〉誰のために?〈
ー 己のために。
ー 俺のような異質な存在を大事にしてくれた家族のために。
ー この世界でできた
〉なんのために?〈
ー 夢と俺の関係。
ー 剣を初めて握った時のあの感覚。夢と繋がっていると直感で思った。
ー ならば、ここで確かな答えを見つけ出す。
〉では、達成するためには?〈
ー 前に進み続け、強くなる。
ー さあ、答えは出た。あとは動き出すのみだ。
「キリト、クライン」
そう言って俺は、二人を振り向かせる。
「俺は前に進もうと思う」
二人の顔に驚愕の表情が浮かんだ。
当たり前だろう。ビギナーである俺が、あの話を聞いた後なのにもかかわらず進もうとしているのだから。
「だからこれでさよならだ。けど、またお前らとは会う気がする。だから.....」
そう言って、俺は拳を突き出した。
「またな」
「お、おう!またな!」
クラインが拳を突き出して当ててくる。
遅れてキリトも、
「あ、ああ。またな!」
と言って、拳をつけてきた。
こんな状況なのにもかかわらず、俺たちは自然と笑みがこぼれた。
そして俺は、次の村に向けて走り出した。
はいどうも皆さん、こんにちは!ドライグです。
主人公シュウの過去は徐々に明かしていきますのでお楽しみを。
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ではまた!