<シュウside>
ホルンカで発生するクエスト『森の秘薬』を無事クリアし、報酬のアニールブレードを取得してから数日がたったある日、俺は第1層迷宮区に来ている。
理由は簡単、レベルを上げるためだ。
現在レベルは7。
ここに出てくるモンスターは、レベル6の亜人型モンスター『ルインコボルト・センチネル』を中心としている。
俺は攻撃パターンをだいたい記憶しており、尚且つレベルが敵モブより高いので難なく撃破する事が出来る。
迷宮区ということもあり、第1層のモンスターの中でボス部屋のモンスターの次に高い。
レベリングにはもってこいな場所、というわけだ。
潜り込んでから数時間が経過した。
長く戦闘を続けると判断力が鈍る、そのため一旦安全地帯に行って、一休みしようと考え、『索敵』スキルを使い周りに敵がいないことを確認し、ホッと一息ついて剣を腰に帯剣する。と、
ーーー 視界の右端で光が輝いた。
すぐさま剣を抜刀し、構え、索敵を開始する。
数秒するとまた光が輝いた。
どうやら真っ直ぐ行ったところにある十字路の右方向でプレイヤーがソードスキルを使ったようだ。
その証拠にモンスターが四散した音声が聞こえてきた。
フゥー、っともう一度息ついて、剣を収めた。
その直後、バタン、という音が響き渡ってきた。
反射的に俺の体は、音がした方に向かっていったーーー
音が響いてきた元へと駆け寄ると、そこにはフードプーケを羽織ったプレイヤーがいた。
気絶して倒れた、と言うわけではなかったようだ。
疲れたのだろう、座り込んで荒い呼吸を繰り返している。
また、カーソルを見るとHPはほぼ全快な状態のようだ。
ひとまず安心して、ホッと息をつく。
そして思考。
どうするか、だ。
相手からすれば、傍迷惑な考えであろう。
何せそのプレイヤーはソロプレイを貫いている=自分自身で判断できる。
だがしかし、俺は無視して素通りする事が出来なかった。
ーーー そんな自分に俺は内心、驚いていた。
小学校や中学校では、他の生徒より達観していたため、だいたい一人でいた。
達観している、というのは親に指摘されていたので、自分自身でも自覚していた。
そんないつも一人でいた俺に、そんな気持ちがあるとは思いもよらなかったのだ。
「全く.....俺はこんな性格だったのかよ」
内心苦笑いしながらも、俺は俺自身の本能に従って
「おい、大丈夫か?」
と声をかけた。
帰ってきたのは、鋭い二つの視線だった。
そんな瞳に少々気圧されながらも、こちらも負けじとじっと、見つめる。
きっかり10秒ほど見つめ合っていると、渋々とした様子ながらもそのプレイヤーが口を開いた。
「..........別に問題ないけれど、何か?」
なんとこのプレイヤーは、レアな女性プレイヤーだったのだ。
女性でしかも、ソロプレイヤーであり、なおかつ迷宮区に来ている、という3段重ねの驚きが襲ってきたため息が一瞬詰まりかけたが、何とか持ちこたえて、彼女が発した疑問系の言葉を返す。
「.....いや、だって、そんな状態で町に帰れるのかと思って」
「.....帰り?」
「ああ。君もここまで来ているから知ってるけど思うけど、ここからダンジョンを抜け出して町に行くまで急いだとしても一時間強はかかる。そんなフラフラな状態だとミスも増えて、それと比例するように危険も増える。だからーーー」
「それなら問題ないわ」
と話の途中で割り込んできた。
そして、
「わたし帰らないから」
と言い放った。
「.....は?」
「別に休憩とかは近くの安全地帯で取っているし、ポーションもダメージを受けなければ問題ない。剣も同じのを5本買ってきた」
話を聞いた限り彼女はずっとこもりっぱなしなのだろう、この迷宮区に。
そして、安全地帯を宿舎として寝起きをしているのだろう。
「.....どれくらいやり続けているんだ」
「.....今日を合わせたら、四日。もういいかな。そろそろモンスターが復活しているから」
絶句だ。
しかし、話を続けるため、そして重要なことを聞くため、言葉をつなげる。
「.....死ぬぞ、そんな状態で戦い続けたら」
「.....どうせ死ぬのよ、みんな」
周りの温度さえも下げるかのような冷たい声で彼女はその言葉を発した。
その言葉を聞いた途端、彼女の声の質とは全く逆の、まるで燃えているのかのような感覚が俺を襲った。
それは、怒り。
何故自分がそんな感情に陥ったのかははっきりとは分からない。
しかし、これだけは言える。
ーーー そんな考えを許してはいけない
「..........どこでどんなふうに死のうと、早いか遅いかだけのちが」
「いい加減にしろよ」
一瞬、俺の周りに赤い光が迸った。
その勢いのまま彼女の手を取り、来た道、つまりこの迷宮区から抜けるためのルートを進みだした。
「ちょっと、何!離してっ!」
そんな声を完全無視し俺は、いや俺たちは迷宮区を去って行った。
迷宮区外のすぐ近くに木々に囲まれた場所がある。
そこに着くと俺は彼女の手を離した。
始め10分は反抗していたものの、抗えないと分かると大人しく俺に引かれた。
途中、頭がだんだんと冷えてきて、「俺何やってんだ.....」と思ったりはしたものの、気にしたら終わりだと思い込み、突き進んだ。
そんな俺に無理やり連れてこられたその女性プレイヤーは、座り込んでギロリとこちらに目線を向けている。
鋭い眼光に冷や汗を垂らす。
.....仮想世界でも出るのか。
数十秒たったところで、彼女は言葉を発した。
「.....余計なことを。」
自分でやっておきながら思う。
ーーー 全くもってその通りだ。
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<???side>
私は、前三日間続けていたことを今日も実行するため、安全地帯と呼ばれる場所から動き出した。
だった一ヶ月で、二千人も死んだ。しかし、まだ最初のフロアすら突破されていない。
私は諦めた。
どうせ、みんな死ぬと考えて。
もちろん自分自身も入れて。
だから、私はこの迷宮区から出ないと決めた。
どうせなら、ここで最後まで戦い続けて死のうと。
しかしそれは、白銀の髪の毛の人物によって、いとも簡単に崩されるのだった。
少し疲れて、地面に座っていると、通りかかった人物に話しかけられた。
今まで声をかけてきた人物と同じように自論を突きつけ、突き放そうとした。
それでも彼は、食い下がることなく会話を続けようと声をかけてきた。
そして話は終盤を迎える。
私は彼に対して、死んでも構わないというニュアンスを口にした。いや、言いかけたというのが正しいだろう。
「いい加減にしろよ」
そんな言葉に私の言葉は中断された。
刹那、彼がその言葉を発すると同時に彼の
気のせいだったかもしれない。けれど、私の言葉は止まってしまった。
そしてそのまま私の手を引き、下の階へと繋がる階段がある方向に強引に進み始めた。
何が起こったか理解ができず、脳がフリーズし思考が止まる。
しかし、それは一瞬だけだった。
そう彼の意図を理解したのだ。
ーーー 迷宮区を出るつもりだ。
当然、私は反抗した。
誰かとできるだけ関わらないため、そしてこの迷宮区で死ぬために一人でここまで来たのに、見ず知らずの男に覆されるのは絶対に嫌だ。
けれど、彼の力には全く叶わなかった。確か筋力値と呼ばれるものの影響だろう。
だが他の手立てで反抗はできた。
この世界はハラスメントコードなるものが存在し異性に対して過度に触れたりすると触れられた側にアイコンが可視化され、そのボタンを押すと黒鉄宮なるもの、いわば牢屋に放り込むことが可能なのだ。
掴まれたことで発生したのか、私の目の前にはその例のアイコンが出現していた。
そして、彼が掴んできたのは左手。
よって片方の手が空いているため押すことはできる。
しかし私は何故だか引っ張られるのを許してしまったのだ。
何故だろう?
彼の纏っていたオーラに気圧されたのだろうか?
それもある。あるけれど.....
ーーー けれど私は、そんな彼の瞳の奥に隠れていた悲しい表情を見てしまった。
何故、他人にそれも今日初めてあった赤の他人とも言える人に対してそんな顔が悲しい表情を浮かべることができるのか、と。
そんな疑問が私の頭の中をぐるぐると回り続ける。
一時間が経過し、私は彼に引っ張られた形で迷宮区を出た。
始めは強引な感じで引っ張っていたが、途中から力も緩まり、何処と無く申し訳なさそうな気配が漂っていた。
迷宮区を出ても、彼はそのまま私の手を引き、近くにあったの木々の少し開けたスペースに進み、ようやく手を離した。
そして私は彼の方を向き、一拍開けて一言。
「余計なことを」
そんな私の言葉に彼はなんとも申し訳なさそうな表情を浮かべた。
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<シュウside>
「申し訳ない。俺の勝手な行動に付き合わせて。いや、違うな。無理やり連れてきて、だな。ごめん」
正直に心の内を話すと、少しは此方のことも汲んでくれたのかコクンと頭を少しだけ縦に振ってくれた。
数秒経った後、彼女は不意にこう問いを投げかけてきた。
「.....何故、今日合ったばかりの赤の他人に対してこんなことをしたの?」
ごもっともな質問だ。
一瞬適当に誤魔化そうかと考えたが、彼女のハシバミ色の瞳がジッと此方を射抜いていた。
これは誤魔化しようがないなと考え正直に答える。
「分からない」
と。
そんな答えを聞いて彼女は眉をひそめた。
俺は言葉を続ける。
「君が死んでも構わない、みたいなニュアンスを言った途端、こう、なんか、カッときて、それでだ」
案の定彼女はその言葉に目を丸くした。
しかしまだ俺の言葉は続く。
あの時感じた気持ちを伝えていないから。
「けど、これだけは言える。自分の命をそんな無下にしないでくれ」
綺麗事だ。けれど伝えねばならない。この自分から湧き出た感情を。
「綺麗事だとは分かってる。分かってる!.....けど、けど、ダメなんだ。そんなことは絶対に」
男らしくない悲痛な声が木と木の空いたスペースに響く。
自分自身でもよく理解が出来ていない。
何故、こんなにも『死』ということに敏感なのか。
何故、赤の他人にここまで言えるのか。
何故、
何故、何故、何故.....?
木々の葉と葉がこすれあう淋しげな音が辺り一面に染み渡る。
顔を伏せそんな思考に嵌っていると、
「.....分かったわ」
理解した、という返事が帰ってきた。
下に向けていた顔をガバッと上げて、彼女の顔を見る。
出会った時のピリリとした雰囲気はほんの少し、和らいでいるように感じた。
「あなたの言った通り、それは綺麗事。はっきり言ってあまり私はそういうのは好きじゃない。上辺っぽく感じてしまうから。けれど、あなたにそう言われると少しだけ響いたわ。何故だかはよく分からないけれど」
俺は改めて目を見開く。
そんな俺を尻目に彼女は言葉をつなげる。
「だけど、私は止まっていたくないの。止まっていると身も心も腐ってしまいそうだから。だから.....」
ハシバミ色の瞳をこちらに向けて、
「次にどうすればいいのか、教えてくれる?」
と訪ねてきた。
いきなりな質問だったが、彼女を引っ張って来たというのもあり、頭をフル回転させ、とある情報通から受け取った情報をもとに最善の答えを導き出す。
そしてこう告げる。
「進み続けるのならば、この先の層を攻略し、上へ上へと登るしかない。その一歩として、明日第一層攻略会議が行われる。どう?この世界の最前線で戦ってみない?」
と。
はいどうも皆さん、こんにちは!ドライグです。
今回は例の
主人公との初めての出会い、ですね。
オリジナル感は出せたかな?
ではまた!
あ!活動報告書いたんで良かったら閲覧ください。
読まなくてもなんの問題もありませんが。
ただ、ドライグの悲しい嘆きが綴られているだけです.....