なお、メキシコではどっかの英国諜報員みたいなロマンスめいたなんかも有ったことが今回の話の原動力になったというのは有名な話だ。◆猥褻これが大好き◆
「アーイイ...凝り固まった身体が解れていく...休むのも任務だから仕方ない...アーイイ...重いんだよなぁ、コレ」
浮力によって湯に浮かぶ二つの豊満を手で支えるように掬い上げ、ドミナントは嘆息した。実際これは金持ち故の苦労めいて傲慢な悩みだった。どれほど多くの女子高生が合格基準バスト胸囲値に足りず、チアマイコの道を諦めたかをドミナントは知っている。だが、一切の同情は無かった。何故ならそのマケグミ共はニンジャではなかったからだ。ニンジャである自分が他の女より遥かに美しく魅力的で、実際強いのはドミナントにとっては当たり前に過ぎる事実なのだ!ブルジョワ!
湯を手で掬って、肩口から腕にかけて塗りたくるようにかけていく。雪のハッコウタ・マウンテンめいた美しい肌だ。そして事実、ドミナントは厳冬期のハッコウタ・マウンテンよりも無慈悲であった。
「激しく前後にー動くー」
肩までお湯につかり、人気アンドロイドデュオであるネコネコカワイイの曲を口ずさむ。ネコネコカワイイとは豪華客船上での発表以来、爆発的人気と一大ブームを巻き起こしたオムラのテックの結晶体の事である。
女子高生の例に漏れず、ドミナントもネコネコカワイイのファンの1人だった。
「ほとんど違法行為ーっと、しかしソニックブーム=サン大丈夫かな...?」
鋼鉄よりも堅いバイオバンブー製の仕切り壁の向こうから漂ってくる殺伐としたアトモスフィア、ドミナントはソニックブームの身を案じずにはいられない!
「ムッハハハ!温泉で飲むサケは格別よなぁ、ソニックブーム=サン?」
「ハイ!」
「この温泉旅行は実際シックスゲイツの忠勤に報いるための旅行。そう硬くならずとも、よい。」
おぉ、ナムサン!ラオモトが右隣にいて硬くなるなというのは実際難しい!
左隣にはラオモト第一の臣下にして、類いまれなるトンファー使い、シックスゲイツ創設者であるゲイトキーパーが控えている。アツカン=サケをラオモトのオチョコに注ぐのも彼だ。
ゲイトキーパーが左隣なのは当たり前にしても、ソニックブームがラオモトの右隣を占めているのは驚きと嫉妬の目をもって迎えられた。しかもラオモトの指示によって隣で湯に浸かっているのだ。
脂汗をかきながらもヤクザビジネスの話でラオモトと盛り上がるソニックブームに対して、ヘルカイトなどは殺意のこもった視線を向けている。そしてラオモトはそれすら楽しんでいる節が有るのだ。
その時だ!邪悪なニンジャ戦士ヘルカイトが仕掛けた!
「ソニックブーム=サン!オツカレサマデス!一杯いかがですか...!」
ジョチュからサケとオチョコを受け取ったヘルカイトがソニックブームに手招きする。もちろん罠だ。この露天風呂の配置上、ソニックブームがヘルカイトのもとに向かうためにはラオモトの前を横切る必要がある。これは実際大変なシツレイだ!
読者の中に、目上の人と露天風呂に浸かった経験がある方はいらっしゃるだろうか。そうはいないだろう。皆さんの疑問は分かる。何故、一度風呂から上がってヘルカイトの居る場所まで半円移動しないのか、という疑問だ。
お答えしよう。それは日本独自にして平安時代の昔から続く伝統的ルールだからだ。一度風呂に浸かったからには、目上の人より先に風呂から上がることは大変なシツレイとなる。故に一流のサラリマンほどショドーやハイクのみならず、チャドーやカラテにも長じていることが多い。のぼせるまで目上の人に付き従うことは、それだけで忠誠心の一種の証明となるのだ。
では、潜ってラオモトの前を通れば良いとの策を思い付く知恵者な方もおられるだろう。確かにそれはこの事態を切り抜けるためのただひとつの方法だ。テヌグイさえなければ。
このシツレイ・トラップは平時であれば、罠を仕掛けた側のヘルカイトも仕掛けられたソニックブームも双方が処罰されかねないアブナイなトラップだ。だが、今はブレイコ状況下にある上にヘルカイトは実際センパイだ。後に残るのはセンパイの誘いに対して失態を犯した後輩だけだ。おぉ、なんという悪辣なフーリンカザンか!
(ざまぁないなソニックブーム=サン!お前の死因はラオモト=サンの逆鱗に触れたことによる憤怒死だーッ!)
ソニックブームの状況判断は一瞬だった。正座姿勢で頭を下げる半ドゲザ姿勢とでもいうべき姿勢を水中で取り、髪を温泉に浸けないようにしながら半潜航したのだ!
(テヌグイ!?テヌグイが消えただと!)
ヘルカイトは驚愕した。先程まで存在したテヌグイが消え去ったのだ。
そして驚愕するヘルカイトの隣にソニックブームが浮上! 同時にソニックブームの頭上にテヌグイが舞い降りた。潜航する瞬間にソニックカラテ頭突きをテヌグイに放ち、テヌグイを空中へ移動させていたのだ!シツレイ・トラップ敗れたり!潜航するソニックブームに意識をとられたヘルカイトにテヌグイを妨害する術はなかった。ゴウランガ!見事なフーリンカザンだ!
「ドーモ、ヘルカイト=サン。杯頂戴いたします。」
実際スルドイすぎる眼光がヘルカイトを貫く!ソニックカラテの達人の制空圏内でトラップを仕掛けるというのはこういうことだ!
「アイエッッ...ドーゾ、オットットット」
「オットットット。ありがとうございます。」
しめやかに飲み干すソニックブーム。
「ムッハハハハハ!二人とも中々の余興であったぞ!ブレイコ状況下でも邪悪さを失わないハングリーさと頭の回転の速さは評価しよう!風呂の時間はここまでだ!この後は宴席の準備が整うまで各自自由に過ごせ。ゲイトキーパー=サンはビジネスの話があるのでついてこい。以上!」
「...てなことがあってなァ。」
「ふぅん。やっぱり大変なことになってたんだね。でも、ボクがいないことに耐えてよく頑張った!感動した!」
宿のソファーに腰かけるソニックブームの肩を揉むのはオニヤスだ。そして隣にはドミナントがトックリを手に微笑んでいる。
シックスゲイツやラオモトに囲まれ極限の緊張下にあったソニックブームの肉体は硬く凝り固まっていた。それを察したオニヤスとドミナントがリラクゼーションを図っているところである。
「いくらヘルカイト=サンが野心を隠そうともしない態度で他のシックスゲイツから嫌われてるといっても、罠にかかっていたら囲んで棒で叩いてくる奴もいたかもしれないからね。本当に良かった...」
アースクエイクやヒュージシュリケンはまさにそのタイプだろう。
そんな話をしていると、宿のジョチュが三人を呼びにきた。
「宴席の準備が整いましたので、二階大広間へお越し下さいドスエ」
「よーし、たくさん食べるぞ!ソニックブーム=サンもシマッテコーゼ!」
ドミナントがネコネコカワイイジャンプを決める。豊満が揺れた。
「あぁ、ドミナント=サンもオニヤスもシマッテコーゼ!」
邪悪ニンジャ戦士存在の宴はまだまだ続く。