ハイスペックな俺の姉貴が恋をしました。   作:碧兎

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おはこんにちばんわ!碧兎です。
お待たせしました、最新話ですよ!
え?待ってない?
そんなつれないこと言わないで
ゆっくり読んでって下さいね♪


シングル

正直、姉貴の好きな"人"(じゃなかったけど)が普通だとは思ってなかった。

すごい変わった"人"(じゃなかったけど)だろうっていうのは想定してた。

だけど人間じゃなかったのは流石に弟である俺にも予想外だったわけで。

俺はうずくまって膝を抱え、「まじかぁ……。」という言葉だけを発する機械になっていた。

 

「五十鈴さん、本気だよ。毎日来てるんだ。」

恭は知っていたらしく、ぼそっと俺に呟いた。

「まじかぁ……。」

姉貴は相変わらず恍惚とした表情で、

並んだ魚達を見つめている。

「……お前ら、なんか色々末期だな。」

 

こんなことなら恭を好きになった方が良かった。

女たらしだけど魚よりはましに決まってる。

でも姉貴は本気なんだ……。

本気の恋を止める権利なんて俺にあるのか……。

そもそも誰が魚を好きになっちゃいけないなんて決めたんだ?

そんな決まり……ないはずだ。

良いんじゃないだろうか、初恋が魚でも。

鯖でも鮭でも鮪でも鮎でも良いだろう。

なんなら鱈子でも問題ないじゃないか……。

愛が……全てなんだ……。

「俺、姉貴の名字が鈴木じゃなくて(スズキ)になっても姉貴を自慢だと言い続けるよ。」

「真、頼む。戻ってきてくれ。」

 

とりあえず帰ろう……。

このままだと更に暴走してしまいそうだ。

それに眠い目に港独特の磯の香りが痛い。

「恭。俺、そろそろ帰るわ。姉貴、ほらもう帰ろうぜ……。」

「帰りたくない……っ。」

せっかく俺が恭に別れを告げたというのに

姉貴がキャラに似合わず駄々をこねてきた。

「私、まだこの人と別れたくない……っ!」

「いや人じゃねぇよ?!魚類だからね?!」

 

今日は帰ろう、と半強制的に魚から引き剥がす。

「絶対また……来るからね……。」

瞳にうっすら涙を浮かべる姉貴……って何故?!

「もう……意味解らねぇ……。」

「あれだな。恋は盲目ってやつだな……。」

「いや盲目とかそういうレベルじゃねぇからな?!

盲目どころか意識不明の重体だからな?!」

俺は、そんな"恋は意識不明の重体"な姉貴を

急かしながら家路を辿り始めたのだった。

 

この港に着いたのは午前05時35分。

いつの間にか時計の針は07時10分を指していた。

バスの座席に座って窓の外を眺める。

「はぁ……。さっき会ったばかりなのに……

もう今すぐに彼に会いたくて会いたくて……。」

「震える?」「やめなさい。」「うぃっす。」

そんな馬鹿な会話をしていると、バスはすぐにバス停の前に停車した。

 

「腹減った……朝飯食いてぇ!」

「あー……今日、まだなにも準備してないです。」

「嘘だろ……?!佳奈もいるのに……。」

神崎 佳奈(かんざき かな)は俺の妹。

ちなみにうちは父子家庭の4人家族。

姉貴が家事全般をこなしてくれている、いわゆる"母親代わり"というわけだ。

佳奈は反抗期真っ盛りの中学生。

勿論、姉貴の手伝いなんてするはずがない。

朝飯は暫くおあずけの様だ……。

 

「「ただいまー。」」

ドアを開けると、玄関からでも判る程の良い匂いに包まれた。

父さんはもう仕事に出ているはずだ……。

ダイニングに続く扉が開いて、顔を出したのは佳奈だった。

「お。姉ちゃん、シングル、帰ったか。」

「悪かったな!!シングル言うな!!

てか姉貴もシングルだからな?!」

「え、姉貴と一緒に出来るとでも思ってんの?」

「……ごもっとも。」

確かに俺は非リア歴=年齢だよ。

確かに姉貴は理想高いだけだよ。

確かに君は彼氏いるよ。……泣きたい。

「そんなことより、僕、朝飯作ったんだ。」

食うか?と笑う佳奈。

今の俺には果てしなく嬉しい言葉だった。

意外性も相まって感極まる。

「え?!なんでシングルは泣いてんの?!

そんなに御一人様こじらせてたの?!」

「阿呆か!そんなんじゃねぇよ!」

「真は佳奈の成長が嬉しいのよねー?」

「え、シングルきもい(笑)」

「兄に向かってきもいとはなんだ、おい。」

 

やはり俺の妹は反抗期真っ盛りだった。

もしかして、と思った俺が馬鹿だった。

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