調律師が異世界旅行をさせられるようです 作:隠された神話の白狼
今回の文字数は軽く5000文字程度となっています
「かなり山奥だな………今回の商談場所である料亭は」
私は狭い山道を車で登っていた。
その山道は、元々存在しないかのように、荒れ果て、木々が生い茂って天然の屋根を作っている始末、そしてそんな山道を通る対向車なんて来るはずもない。
「この周辺の村は、過疎が進んで廃村に成っているのがほとんどだな……
そして極み付けに、山の麓にあった最後の村の老人の話では昔は、山頂に料亭はあったがとうの昔に店じまいしたって話だが……」
私は、老人の話を聞いて案内状の内容に頭をひねらした。
案内状にはこう書いてある。
○○○○年九月十六日
九泉商会 総合商会会長 四鬼白狼様
株式会社 シャイン・トラペゾヘドロン
代表取締役 フェイスレス
還暦行事のご案内
謹啓 仲秋の候、四鬼白狼様におかれましては、ますますのご清栄のこととお喜び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
この度は、総合代表取締役のザーダ氏の六十歳の佳節を迎える事となりました。これもひとえに白狼様の尽力があった事を深く感謝しております。
つきましては、還暦行事を行う事となりました。
ご多忙のところ恐縮でございますが、万障お繰り合わせの上ご臨席を賜わりますようお願い申し上げます。
略式ながら書中にご案内申し上げます 謹白
記
日時 ○○○○年九月十六日 十時~十四時
会場 料亭 須弥山神楽
以上
私は、いつもの裏の仕事のための案内状なんだなと、見たときに思った。
理由としては、総合代表取締役のザータ氏の還暦の祝いは何回も行っている。
そのため、この案内状は私を呼び出すために書かれた者だと推測できる。
今回も、表ざたにできない依頼なんだろうなと苦笑したのを覚えている。
「しかし、いつもの場所ではなくこんな山奥にある料亭を指定するなんて……
よっぽどの聞かれたくない内容なんだろうな……気がめいりそうだ。護衛無しで来たのは間違いだったかな?」
車に乗っている男…
半刻が経とうとしている頃………山の天気は移りやすいとはよく言ったものだ。
視界が霧に包まれてしまい一寸先も見えない状況である。
「ここにきて霧か………ついてない。スピードを落とさないと崖から転落しそうだな……
…でももうすぐ山頂だな」
白狼が乗っている車が木の根っこなどで車体が浮いたりしているが、
それを気にする様子もなく白狼は山道を車で登っていく。
そこから四半刻の時間が流れた後、白狼の乗っている車が山頂付近に到着した。
白狼は、車を止め周囲を散策する。
「ふむ……古びた看板がありますね」
白狼は、前方に朽ちかけた看板を見つけた。
風化状況から見て、かなり前に作られたと思われる。
「何々……この先の100m先にトンネル有。それを抜けた先に料亭:須弥山神楽の駐車場。」
やっと着いたのか…まったくなんて場所に呼び出してくれたな依頼主は……まあ私が楽しめればそれでいいのですが…
白狼はにやり顔で舌なめずりをした。
白狼にとっての良質な食事といいのは娯楽と未知の開拓である。
この場合、裏の仕事と言うのは、娯楽と未知が両方ともある状況である。
白狼にとって最高級中華店の満漢全席を並べられたようなもの。
そりゃ舌なめずりもしますよ…人間は最高級品を目の前にして食べたくなるのは世の常である。
「この先か……この依頼……美味しければいいのだが」
白狼は、車に乗り込みエンジンをかけた。
何事もなく車が発進した。
看板の指示通りに進むと、目の前に大きなトンネルが見えてきた。
そこには、須弥山トンネルと書かれた看板がトンネルの上部に付けられていた。
「いかにもってやつだな。しかし山の中にトンネルか……いやな思い出しかないな。」
白狼は、苦笑いをしながらトンネル内部へ車を進めた。
まあ……何か変な事が起こるはずもなくトンネルを抜けた。
そして、白狼さんが目にしたのは…………………
竜宮城を地上に持ってきたと言ったら信じてしまうほどの豪華な料亭が目の前に出現したのだ。
「これはすごい……こんな辺鄙な所にこんな美しく、豪華な料亭があるなんて知らなかったな。
新発見だ……私にこんな場所を教えてくれる今回の依頼者は期待できそうだな!!」
白狼は、店の前で豪快に大笑いをした。
その大笑いは、周りの木々に停まる鳥たちを飛び立出せる程であった。
「はあ、はあ……ゲホゲホ…笑いすぎた。まったく調子に乗るといつもこうだ。
自嘲しないといけないのにいつもやりすぎて喘息になる……はあ………」
白狼はため息を吐いて目の前の料亭の入り口の扉の取っ手に手をかけ、開いた。
山の麓の老人が廃業して廃墟に成っているはずの料亭が、綺麗になっているなんて疑問がわかないぐらいに白狼は興奮していた。
「ごめんください……シャイン・トラペゾヘドロンで予約しているものですが……」
奥から、黒色の和服を着た少女が歩いてこちらに向かってきた。
「シャイン・トラペゾヘドロンですね……はい、承っております。
失礼ですが……お名前を教えて頂きたいのですが……」
「九泉商会の四鬼白狼ですが……」
「九泉商会の四鬼白狼様ですね……承っております。
奥の座敷へお連れいたします。私の後をついて来てください」
和服を着た少女は綺麗なターンをして奥へ歩いて行った。
それを見て白狼は慌てて靴を靴箱に収めて、和服を着た少女の後を付いて行った。
古びているがしっかりとした廊下を二人はゆっくりと歩いている。
「そう言えばあなたの名前を聞いていませんでしたね。」
「私の名前ですか……名乗るほどの者ではありません、白狼様」
「そんな事はないよ?私の知的好奇心を埋めて欲しいだけだよ……」
「そうですか……では、私の事は
「黒衣さんですかいい名前ですね。綺麗な方にはいい名前が付くものですね」
「あら、その事は褒め言葉として受け取っておきますね」
「本心からの言葉ですが……まあ、黒衣さんの場合美しさよりその磨かれた肉体から漏れ出している力が黒衣さんを際立たしているのでしょう」
「見えていらっしゃるのですね?うまく隠したつもりなのですけど」
「いやいや……いくら隠そうとも黒衣さんが持っている威圧感は消えませんよ。それこそ神格級の威圧感ですよ……黒衣さんはどこかの神格なのでしょうか?」
黒衣は、それを聞いてクスリと笑い質問を質問で返すような言い方で……
「主人から聞いていましたが……白狼様は、知的好奇心を埋めないと気が済まない人みたいですね。」
「ふむ…そのとおりですね。貴女の主は、私のことをよく知っているようだ。キミの主が今回の開催主かい?」
「ええ、今宵の行事をする幹事でございます。そしてこの店のオーナーでもあります。」
「へ~だからこんな店を知っているわけだ。これで私の知識も広がります。」
「白狼様の未知を埋められて私は喜ばしい事だと感じております」
黒衣がそう切り返すと白狼はしてやられたと言う頭をしながら頭をかいた。
完全に黒衣のペースである。白狼はそれを良しとは思わず、流れを変えるには話題を変えるしかないなと言う結論に至った。
「しかし、立派な料亭ですね。しかしかなり古い……創業何年ですか?」
「私の主からは、創業は今年で千年を数えるみたいですよ」
「創業千年ですか……それはすごい!!千年たっても色あせないていない柱や床の木材の色は芸術品ですね」
「それはありがとうございます。私の主の先祖もその点は注意したみたいですよ」
先祖と来たか………神格級の人物の主が世代交代制と言う事はあまり聞かない。
さらに、その祖先が千年以内に世代交代をしているか……職業柄、神格連中と関わることが多いがそんな話聞いた事が無いな……
「へ~今じゃあ珍しい世代交代制を取り入れているのですね。ここの主人は……」
「ええ、ここら辺の土地は昔から争いが絶えず繰り広げられています。
そのため、戦死する人も多い…必然的にここの主も戦場へ駆り出されます。
そこで、戦死してしまう事が多かったと私の主から聞いております。」
「なるほど…この土地の事を私はあまり知らなかったようですね」
そんなわけあるか!!!ここ最近大きな戦争と言えば、とある神話形態の上位体の二人が部下を使って戦争していると言う話だけ……
ここら辺が戦争地域に成った話なんて聞いた事ないぞ…しかし、まったくの嘘をついているようには見え無い……まあそこら辺の事情は会場に付いたら分かるだろう。
しかし、長いなこの廊下………いつまで続くんだろうな………
「そう言えばどれぐらいで奥の座敷に付くのですか?」
「あと少しですよ。この料亭……一種の魔境と化していますから中の構造が刻一刻と変化しているので道に迷う人も多いらしくて……」
「ほんとですか?それは参った……そんな事ならもう少し早くつけるように時間を合わせるべきでした」
「いえ、その事をお知らせしなかった私の主の責任です。白狼様が謝ることではありません。」
「そう言って貰えると助かります。」
「あ……白狼様そろそろ奥の座敷に付きます。」
黒衣がそう言うと、前方に綺麗な和紙で整えられた障子が見えてきた。
「ふう……ここまでの道案内ありがとうございました黒衣さん」
「いえ、これが私の仕事なので……」
「そうですね。では。仕事終わりに一つ質問があるのですが……いいでしょうか?」
「はいなんでしょうか?」
「黒衣さんは、休暇の日などのお休みの日には何をして過ごしているのですか?答えてくれなくても結構ですよ」
「それぐらいならお答えできます。
主や知り合いが連れて来た音楽家の演奏を聴きながら寝る事ですね。」
「あら、意外な趣味をお持ちで…しかし、貴女に似合う趣味ですね」
「あら私を口説こうと言うのかしら?」
「いえいえそんな事はありませんよ。さすがに私も命が惜しい」
「あら、私の正体が分かったのですか?」
「ええ……最後の質問とあなたのその血なまぐさい神気おかげでね。
まさか、今回の依頼人があの狐とは思いませんでしたけどね」
「あら意外ですか?」
「ええ、いつもならあのバカは私の意見を聞かずに送り込むようなことをしますから……」
「そうですね。しかし今回の依頼はそうはいきません。
ある程度、選択の自由を与えないと他の方から文句が出てしまうので………」
「なるほどそれほど重要な案件ですか……それはそれで楽しみですね」
「ではいってらしゃいませ」
「ああ行ってくるよ」
白狼はにやり顔で、襖の扉に手をかける。そして………そこには、
一人の男がカウンターを挟んで佇んでいた。
「いらっしゃいませ…四鬼白狼様」
「あれ?あのバカは?」
「ああ主ですか……ここには来ません。依頼内容は俺から説明させてもらいます。」
「そっか……食事は作ってもらえるのかな?」
「ええそれはもちろん。何を作りましょうか?」
「そうですね…………………………山菜の天ぷらうどんと鶏のから揚げをお願いします。」
「分かりました」
料理人は注文を受け取ってすぐさま作りに掛かる。
綺麗な包丁さばきで山菜や鶏を捌いて行く。
「では、依頼の方を聞きたいのですが……よろしいですか?」
「はい。今回主からは、一つの世界を開拓してほしいと言う話です。」
「ふむ…それは大仕事ですね」
「ええ、故に白狼様のようなある程度知識がある方が適任だと思いまして………依頼のためにお越しいただきました。」
「ふむ……それで私以外に依頼した人物は?」
「!! はい……あと三名ほど……名前をお教えいたしましょうか?」
「いいや、結構だよ。興味はないからね……その三人とは干渉しあわないようにしたいね」
「そうですね……」
一連の質問の間も料理人の腕は止まっていなかった……しかし、流れ作業と言う感じは白狼自身受けなかった。
「さて、完成です。山菜の天ぷらうどんと鶏のから揚げおまちどおさま」
出て来たのは透き通るような琥珀色のスープに白色の太麺…山菜がそれをアクセントに置かれていた。
鶏のから揚げは、綺麗なきつね色をして今にも肉汁が溢れ出さんとしているかのように見えた。
「うん、これはおいしそうだ……では、いただきます。」
白狼は最初に、レンゲでスープをすくい飲んだ。
味は控えめでだが、確りとした山の幸の味がした………
「あれ…これってうどんに使う出汁じゃない?これは…フランス料理のコンソメ?」
「正解です。コンソメを作る要領で作成しました……お気に召しませんでしたか?」
「いいや……これはこれで美味しいよ出汁を絡ませるのには十分だよ」
白狼は麺にスープを絡ませて食べ始める。
そして数分後
スープまで飲み切った白狼の姿がそこにあった。
「ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした」
「さて依頼の方ですが………お受けしますよ」
「それはありがとうございます……ではあちらの扉から出て頂きたい」
「分かりました……では、また会ったらその時はまた作ってくださいね」
「ええ、またの来店をお待ちしております」
白狼は手を振りながら奥の方にある黒の扉を開けてその中に入った。
さて、次回から異世界旅行ものみたいに事情説明が始まります。そしてレオが書いたスター
ゲイザーと何なのか(あっち側ではもう書いてますが)が分かるかもしれませんね(冷や汗)