調律師が異世界旅行をさせられるようです   作:隠された神話の白狼

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今回、途中で日露戦争について記述がございます。

これは、機功少女は傷つかない内で白狼さんが暴れた軌跡を書いたものです。

本来の歴史では、決着までに500日掛かったと言われています。

それを踏まえてお読みください。

今回の文字数は9000文字となっています。


開幕・そして白狼の実力

部屋の隅にある机に一人の男が座っていた。

 

男は、机の上で一枚の画用紙に鉛筆を使って綺麗な女性が描かれていた。

 

しかし、その女性だけではなく横には同じようなシルエットをした機械だった。

 

男が描いていたのは、自動人形(オートマトン)の設計図だった。

 

 

「さて……(いかづち)の魔術回路を搭載した“震電(しんでん)改二”の設計図はこれいいかな?」

 

 

男がそんな事をつぶやいていると後ろの方にあるキッチンから男を呼ぶ声が聞こえた。

 

 

「白狼……もう半刻が過ぎていますよ~休憩にしましょう」

 

「もうそんな時間かい?分かったよ、いろり」

 

 

白狼は、キッチンの方に目を向けた。

 

そこには、人形じみたシミひとつない肌を持った若い女性が立っていた。

 

その女性……いろりの方を向きながら白狼は、机の上の画用紙を円筒に丸めてひもで軽く縛った。

 

その後、その円筒を持ちながらいろりの方へ歩みを進めた。

 

 

 

 

「今日の仕事はこれで終わり。この後有給取って、イギリスに行くから……飛行機の準備よろしく」

 

「了解しました、白狼。久しぶりのイギリスですね」

 

「久しぶりと言っても四年ぶりだけどね……」

 

「と言う事は……今回もヴァルプルギスの夕べ見に行くんですか?」

 

「そうゆう事だね。自分の後輩が出来るのを、この眼で見たいからね」

 

 

この男は白狼も魔王(ワイズマン)の一人……今代から数えて二代前の魔王の称号を持っている。

 

その時のヴァルプルギスの夕べは異常との一言に尽きる。

 

理由は簡単だ。その夜会は、一日で終了を向かいえたのだ。

 

それも、一対九十九で……

 

 

「さすがに、私の時みたいに早期終結は起りえないだろうけど……面白い闘争劇には、なりそうだからね。

 

「そうですね。入学時から全校生徒にケンカを売っていましたし、あんなことを言えばああなる事は当然の事柄ですからね。」

 

 

なぜ、一対九十九なんて、とんでもない事に成ったのか理由は単純……

 

当時、学院内の一位だった白狼は、待つのはつまらんと言う理由で、自分の位を100位にまで降格させた。

 

そして、それを幸いと他の手袋持ち達は結託して……夜会執行部に掛け合ったのだ……

 

 

あのバカの鼻を圧し折りたいから、我々全員と戦わせろ…さもないと九十九日目まで我々はボイコットする

 

 

と……これに対して夜会執行部は、ため息を吐いて学院長であるエドワード・ラザフォードに掛け合った。

 

もし、九十九日間戦闘が行わなかったら、来賓の方々に失礼であり……学院の名誉に傷がつく可能性がある。

 

まあ、そんな事を考えるラザフォードではないが……それを建前として夜会執行部に了承するように言い渡した。

 

これが惨劇の引き金になるとは、この時はラザフォードと白狼以外知る由もなかった。

 

そしてその時付けられた通り名は、“虐殺の魔王(ザ・アナイアレイト)

 

 

「今回は、私レベルとはいかないが……稀代の天才がいるからそこそこ楽しめそうだよ?」

 

「それは良い事だと思います。」

 

 

白狼といろりは目の前にあるロイヤルミルクティーを飲みながら談笑を続けた。

 

 

 

 

 

 

 

「さてと…そろそろ行かないと虎徹中将にこれを届けないとね……」

 

「分かりました……ではこちらは、飛行機の準備をしておきます……行先はイギリス本土にあるスターカード商会の滑走路でよろしいですね?」

 

「ああそうしてくれ」

 

「では、そうさせていただきます。」

 

「よろしく………じゃあ行ってくるよ、いろり」

 

「いってらっしゃい…アナタ」

 

 

白狼は、優しい顔でいろりの頬に軽くキスをする。それを受けたいろりはその白い肌を真っ赤にして顔をパタパタした。

 

それを見た白狼は、いたずらっ子の顔をしつつ工房を後にした。

 

 

 

 

 

 

工房を後にして白狼は日が陰りつつある帝都を、陸軍が所有する軍事施設に向かっていた。

 

その道中、珍しい人物に出会った……西の花花柳斎(かりゅうさい)だった。

 

花柳斎は、自身の真作…雪月花の雪のいろりに傘を持ってもらってこちらに向かってきていた。

 

 

「これは珍しい…西の花をこんな所でお会いできるなんて思いもしませんでした。」

 

「それもそうね。私は、工房に引きこもるばかりの生活をしているもの……

 

貴方が、会いに来ることが無い限り会う事はないわ……東の刕」

 

「そうですね。私もこの用事が無ければ工房から出る事は少ないですからね……

 

まあどっかの誰かさんみたいに、人形を一体作ってその後音沙汰なし人間に比べればまだ外に出ていますよ“私は”」

 

「あらそうかしら?そんな人物は、私は存じ上げておりませんが……他国に渡って大暴れしている人と同じ人ではありませんか?」

 

 

二人とも青筋を立てながら、睨みあう。

 

花柳斎の後ろでは雪のいろりが、右往左往していている。

 

喧嘩腰の二人の周りに野次馬が集まる。

 

白狼は、周囲を見て深呼吸をする。

 

「まあ、こんな大衆の面前で大喧嘩を始めるのはお互い得策ではありませんね……

 

このままだと憲兵どもにしょっぴかれそうですね……」

 

「そうね……毎回、貴方とけんかをすると周囲の建物に被害でないとは限らないからね」

 

 

二人は、漏れ出していた魔力を抑えて世間話を始める事にした。

 

野次馬は、ケンカしないのか…つまらないと言う様子でその場を後にした。

 

 

「さて、西の花……キミの所の坊主がイギリスのヴァルプルギス王立機功学院に行ったらしいな」

 

「ええ、坊やは先月出たばっかりよ…ちょうどヴァルプルギスの夕べが始まる前に着くよ

うに、計算してね」

 

「ふむ…坊主も参戦するつもりか……今回の夜会も楽しめそうだな」

 

「あら、東の刕は見に行くつもりかしら?それなら、私も連れてってもらえないかしら?」

 

「う~~ん……いいけれど軍部には話はつけているのかい?」

 

「いいえ……私は貴方と違って軍に所属しているけどお抱え人形師だもの勝手に休んでも構わないわ」

 

「それもそうか……わかった。ただし、私の飛行機とは違う飛行機に乗って貰うから、そこは了承してくれ」

 

「わかったわ…場所はいつもの発着場ね?」

 

「ええ、妻のいろりがいますので事情をつたえれば用意してくれるはずです。」

 

「ふふふ、ありがとね。白狼」

 

「どういたしまして……花柳斎」

 

 

おろおろしている雪のいろりを無視して二人はその場を後にしようとした。

 

 

「そういえば、東の刕…坊やの順位を予測できるかしら?」

 

「ああそれならできるな……どうせ、最下位かその一個上だろうな……人形師の才能が有っても知識がないのは論外だからね……

 

手袋のダッシュ走るだろうな……坊主は」

 

「そっ」

 

お互いに振り向かずに言葉を交わし離れていった。

 

 

 

 

 

 

白狼は歩いて、陸軍が所有する軍事施設………機功師団本部の前まで来ていた。

 

そして、門を守っている憲兵に話しかけた。

 

 

「そこの君」

 

「私の事でありましょうか?」

 

「ああそうだ。すまないが中に入る許可が欲しいのだ……

 

たぶん、中にいるであろう虎徹中将に伝えてくれ“東の刕が前話した、震電の改良案の設計図を持ってきた”とね……

 

分かったらさっさと行くことだな……」

 

「ひ、東の刕!!すいませんでした。すぐにお伝えいたします!!」

 

「そうだね…急いだ方がいいさもないと私が起こるかもしれないからね?」

 

 

若い憲兵は大急ぎで中に入って行った。

 

もう一人の憲兵は必死に私に目を合わせないようにしていた。

 

 

 

数分後、さほどの中に入った憲兵が一人の将校を連れて来た。

 

胸についている黄色と赤の縞々で星は三つ……大佐の地位の人間が付ける階級章だ。

 

 

「これはどうも……四鬼白狼少将閣下この度はご足労いただき大変ありがとうございます。」

 

「いやいや、ついさっき完成したばかりの設計図を虎徹中将に見せに行きたいと思いここに来たのですよ…それで虎徹中将は現在おられますか?」

 

「ええ、奥の執務室で資料とにらめっこしております…案内しますのでついて来てください」

 

「了解しました、赤城大佐どの」

 

「恐縮であります」

 

 

白狼は、赤城の後ろに付いて行きながら周囲の様子を見る……突然の来訪者に驚くもの、どんな人物か興味を示したもの、畏怖の念を持ちながら敬礼する者までいる。

 

それだけで白狼が、この八年間でしてきたことの大きさが分かると言う物である。

 

 

 

さて、白狼が少将まで上り詰めた理由は、先の戦争…日露戦争が主な理由だろう。

 

日露戦争の開戦時に、ロシア太平洋艦隊に対して人形による奇襲戦を行うと今でも考えられない事を東郷中将は、立案してそれを実行した。

 

当時、魔王に成り立ての白狼が軍部に呼び出されたところから始まる。

 

会議場に到着するやいなや、拒否権は貴様に無いと言われ作戦を言い渡された。

 

内容はすごく簡単だ……人形を十二体用意して、旅順口区にいるロシア太平洋艦隊を奇襲しこれを殲滅せよと……今聞いてもとんでもない話である。

 

それだけ、魔王と言うのに期待したのだろう。

 

白狼はため息を吐きながら了承した。

 

理由は、旅順口区には、戦艦7、巡洋艦10、水雷巡洋艦2、水雷艇25、砲艦7の計51艦の大艦隊が、常駐している。

 

それをたった12体の人形で、これを殲滅せよだ…とんでもない話である。

 

当時の話を聞いてみると、これは失敗前提の作戦で……後方にそうそうたる戦艦たちが連合艦隊として置かれていたらしい。

 

それから、作戦実行の日……白狼が用意したのは百鬼国の歴代の人間が本気の時のみ使う十二人形たちだった。

 

白狼はエンジン搭載の小型船を一隻借り、日本海を進んだ。

 

出発したのが二月五日で、一日かけて二月六日に、小青島付近に到着、七日に旅順に到着先制攻撃を開始

 

格殺(かくさつ)冥刀(めいとう)剣竜(けんりゅう)の三体の人形による攻撃と無人艦に成った船を影桜(かげざくら)の影に放り込んで視界確保…さらに白楯(はくじゅん)による小型船の防御を行った。

 

これが半日をかけて、旅順港にいる艦が無くなるまで続けられた。

 

その後、写真付きの報告書をからくり鳩に持たせ飛ばし、すぐさま南東へ針路を向けた。

 

七日の夜に、厳戒態勢の仁川港に突撃を掛ける。

 

同じように人形戦を仕掛け、完勝を収めた。

 

八日の16:40頃にやってきた日本の戦艦に引き上げてもらい、白狼は久しぶりのまともな食事にありつく。

 

ここまで戦闘行為により、ロシア太平洋艦隊は全滅に近い打撃を受けた。

 

そして日本連合艦隊は、無傷で旅順の近くに行くことが出来た。

 

ここまでの戦いを魔王の汽笛戦と呼ばれ、日本にいる魔王の実力が後世まで語り継がれた。

 

 

白狼がここで終わるはずもなく、次は陸軍からの命令で独立遊撃部隊と言う名目で、ロシア陸軍へ攻撃せよと命令が下った。

 

これをしぶしぶ了承した白狼は、大量の食糧を貰って進軍を始める。

 

二月十日、白狼は単独行動を行った。

 

その後、九連城周辺の常駐していたロシア軍の全員が消える事件が発生…この時、死体すら見つからなかった。

 

白狼はその後、大日本帝国海軍に船を借りて激戦区となっている遼東半島に進路を向けた。

 

二月十四日、金州城・南山に進路を向ける前日に、白狼は到着した足で、陸軍司令部に足を運んだ。

 

奥保鞏司令官に、金州城及び南山にいるロシア兵の殲滅を依頼される。

 

これを白狼は了承した。

 

その日は、目袋の中で就寝する。

 

二月十五日、行動開始、五日をかけて金州城及び南山付近に到着。

 

二月二十一日、金州城攻略戦開始と同日に、金州城陥落。ロシア軍、南山陣地へ撤退。

 

二月二十二日、南山陣地から降伏文書が金州城に届く…これを白狼は無視して攻撃を開始する。

 

同日に南山陣地陥落

 

二月二十五日、第二軍が金州城へ到着…陥落していることを確認。

 

二月二十六日、奥保鞏司令官が旅順要塞への攻撃を白狼に指示。

 

これを白狼は了承。

 

二月二十七日、白狼は五日をかけてゆっくりと行軍。

 

三月三日、旅順要塞に到着と同時に攻撃開始

 

三月六日、旅順要塞陥落、写真付きの報告書を付けたからくり鳩を飛ばし、白狼は進路を北の遼陽の方へ歩みを進めた。

 

三月二十日、遼陽のロシア軍を攻撃開始のち、これを殲滅する。

 

三月二十一日、これを見かねたロシア軍の主力を沙河に投入して白狼を攻撃開始しました。

 

三月二十二日、これを逆に殲滅し、その強さをロシア軍に見せつけた。

 

四月三日、血の日曜日がロシアに発生。

 

同日、白狼は奉天に攻撃を開始し、これを殲滅する。

 

四月五日、白狼から、大日本帝国へロシアと講和せよと呼びかけをする。

 

大日本帝国は、これを了承させられた。

 

四月二十一日、講和条約大網決定

 

五月一日、講和斡旋

 

五月九日、講和勧告

 

六月十日、ポーツマス会議開始

七月一日、休戦議定書調印

九月五日、日露戦争終結

 

のちの半年戦争である。(別名魔王戦争)

 

その後の、人形遣いと人形師の育成に世界中が取り組むこととなった戦争

 

と言う事があった。

 

え?何故こんなことを書いたかって?この世界だと、白狼さんが強いぞあまりアピールが出来ないからだ!!

 

 

 

 

 

さて作者の思惑の外にいる白狼は、虎徹中将の部屋の前に来ていた。

 

 

「四鬼白狼少将です、入らせていただいてもよろしいですか?虎徹中将閣下」

 

「ああ、入りたまえ」

 

「失礼します」

 

木製のドアを開けた先に窓を見ていた細身の人物が立っていた。

 

虎徹中将だ。白狼は、そこに居るだけで威圧感を出す虎徹を視界にとらえながら会釈をする。

 

「そこまでかしこまらくていいよ…白狼」

 

「いいえ、日露戦争を生き抜いた、生きた英雄である貴方に対して畏怖の念を感じているだけです」

 

「プッハハハハ、だめだ。いくら威厳のある風にしても君の前ではボクはまだまだ子供だと思えてしまうよ」

 

「そうだな、まったく私の元上司とはいえ虎徹…まだ君の方が位は上なんだからしっかりしてくれよ。」

 

「うるさいな……君が望めば、大将の地位だって手に入れられたはずなのにそれをわざわざ蹴るかね」

 

「私は、世間に出るのははばかれるからな……日露戦争では暴れすぎた。

 

ロシア帝国で私がなんて呼ばれるか知っているかい虎徹?」

 

「ああ知っているとも、全てを破壊する者(オール・デリート)だろ。

 

いい名前じゃないか?」

 

 

呑気である……そうゆう虎徹も樺太作戦で、私の作った震電を使って攻撃を行ったではないかと心の中で笑う白狼だった。

 

 

「私は、その名前は気に入っていないけどね………

 

創造の中に破壊はあるけれど、私は破壊だけを振りまく魔王ではないのだけどね……

 

そこら辺が、ロシアの人々に伝わってないのだと思うと悲しいかな」

 

「ぬかしなさい。彼らから見ると破壊と言う一面しか見せていない君に、いい感情を持つはずはないでしょ?」

 

「それもそうか……まあそれでこの生き方をやめるつもりはさらさらないが」

 

「やっぱり君は、大将になるべきだったんだよ。

 

そうすれば、武力による世界平和につながるとおもんだけどね」

 

「虎徹その意見は拒否させてもらうよ。

 

なぜらな、あんなトンデモ作戦を立案して執行するおかしな連中の頭なんてやりたくもない。

 

悪戯に兵士を死なせるだけだよ」

 

「そうゆう物かな?

 

まあ君がそう言うならこれ以上口を出すのはやめておこう」

 

「ありがたいね。さてそろそろ世間話をやめて、今回の用事を済ませようか。」

 

「震電改二の設計図だったよね。」

 

「ああ、出来立てのね……

 

雷の魔術回路による、高出力電気モーターと魔力炉による混合原動機を搭載は、前回の震電改同様搭載。

 

それに、一日に一定量の魔力を使用者から徴収して、魔力圧縮炉に放り込み液体化させる。

 

これを魔力炉に放り込む事で、いつもの出力2倍以上の出力を発揮させます。

 

ただし、代償として魔力が焦げ付く可能性があるので、切り札として用意しました

 

これぐらいでしょうかね……あとは、機体の軽量化や魔力炉の出力の上昇などですね」

 

「それで十分だろうね……これだけの作業をほんの数日で完成させてしまうとは……魔王って恐ろしいものだね」

 

「いえいえ……私クラスの魔王は、そうそういないと相場が決まっております。

 

もしいましても、私自らそこへ出向き解決する所存です」

 

「その意気込みよし……ではこの設計図を制作班に渡しておく」

 

「ありがとうございます。

 

それでもう一点あるのですが……よろしいですか?」

 

「ああ言って見ろ」

 

「はい。イギリスで開かれるヴァルプルギスの夕べを見るためにイギリスへ行きたのです。

 

そして、ついでにたまりにたまった休みを貰おうかと……召集には応じるつもりですが」

 

「そうだな……白狼少将はここ最近働きすぎだと制作班から、言われていてね……

 

丁度休みを言い渡そうと思ったところだ」

 

「そうですか!!ありがとうございます。」

 

 

白狼はニッコリ笑顔で虎徹の方を向いた。

 

この部屋に入った時から広げていた影がこの部屋を飲み込もうとしていた。

 

 

「さてそろそろ……影の結界の完成かな?」

 

「ほぼ完成と言っていいほど、君の影がボクの執務室を覆っているよ

 

ここらでやめた方がいいのでは?」

 

「そうだね…これだけ影で侵食できれば中で起こった事は外に漏れる心配はないだろうな」

 

「そうと決まれば……」

 

 

虎徹はおもむろに胸元から布を引き抜く……そして軍服の胸元にあるボタンを幾つか外す。

 

そうすると……大きな胸が強調された軍服に成った。

 

「私が、言うべきなのだろう……もう少し恥じらいを持ってほしいな……」

 

「いや…あんたには嫁さんがいるでしょ?こんな生き遅れの相手なんてすべきじゃないかな?」

 

「え……真理(マリ)と私は、同い年のはずなのだがね……」

 

「そうだっだけ?

 

……誰かさんがやった起こした衝撃的な学院生活のせいで記憶が飛んでしまっていてね」

 

「私も、101位の|四十九院(しじゅういん)さんの事なんて覚えていませんよ?」

 

「あの頃の私の人形の質が低かったからね……夜会に出られる実力がありますよ!!」

 

「夜会と言う事は、私と正面対決できるね」

 

「あ………そう考えると、人形の質が低くてよかった!!」

 

「……………………………」

 

 

私ってそんなに嫌われているなんて思いもしなかったと……白狼はいじけている事を隠すために、ポーカーフェイスにアレンジを加えた顔を前面に押し出すようにして感情を隠した。

 

 

「人形云々の話は冗談として、イギリスにあるヴァルプギス王立機巧学院であんたが臨時教授として勤まっているかが心配でね。

 

一応、イギリスとは同盟関係にある我々大日本帝国の恥に成っていないか、上の方々は心配でね」

 

「そこら辺は大丈夫ですよ。

 

学院長のエドワード・ラザフォード氏には、特別待遇で招かれています。

 

講義の方も、希望者が多いので上々かと私は考えます」

 

「それならいいのだけど……ただでもさえ、ロシア相手に一方的な虐殺を行った魔王として有名ですから…あんたは」

 

「いやいや……あれは、あの時の上官たちが無理な命令を下して私を殺そうとしたせいですよ……それを私が利用したと言う点は否めませんが」

 

「そりゃね……あの戦争の前でも軍上層部から目の敵にされていたのは、あんたは気付いていたんだろ?」

 

「ええ……禁忌の研究ができる資格である魔王となったのはいいが……軍の勧誘を蹴りまくった私ですから……」

 

 

白狼が言った軍の勧誘を蹴ったのは間違いない。

 

理由は至極簡単、入隊条件が気に入らなかった……ただそれだけである。

 

 

「欲しかった条件である

 

特殊な鉱石レアメタルの定期的に渡す事、

 

大規模な戦争などで出た死体を私に提供する事、

 

高級将校クラスの席を提供する事

 

の三つだそ……無理難題を押し付けたか?」

 

「いや十分酷い譲歩だぞそれ……あの西の花である花柳斎だってそこまで言わないと思うぞ」

 

「あんな失敗作を作ったヤツと比べて欲しくはないな……………………………

 

作り手(おや)に望まれずに産まれてきた人形(こども)がかわいそうになるぜ……

 

 

 

白狼の最後の方の言葉は、ひどく小さくそして悲しい声がしていた。

 

真理は、その言葉が聞き取れなかったようで、首を傾げた。

 

 

「白狼最後の方の言葉が聞こえなかったけれど……今関係ある事かい?」

 

「いいや真理。何の関係もないよ……ただ西の花もかわいそうだなと言っただけさ」

 

「ふ~ん……それならいいけど」

 

 

意味深な言葉をこちらに向ける真理………それをどこ吹く風のごとく無視する白狼と言う図ができていた。

 

 

「そうそう、その花柳斎で思い出したのだが……あいつもイギリスに連れていくから上にそう伝えておいて」

 

「理由は?」

 

「自分が作った人形が神性機巧(マシンドール)になるところを見学したいらしい」

 

「ああ……そう言えばあの赤羽の小僧が連れている人形が、神性機巧になる可能性があるて……あの榊の爺さんが言っていたのを小耳に挟んだな」

 

「さすが…と言っておきましょうか。人形に関する話は、大体耳に入っている様ですね」

 

「まあ………人形師のみで構成された部隊“第13特殊機功師団”の師団長ですもの人形に関する話は全て私の耳に入ってくるもの」

 

「いや……そう言えばそうでしたね……すっかり忘れていました」

 

「は~く~ろ~う……あんたっていう人は、どうでもいいって事から目を背けすぎだ私は思う!!」

 

「はいはい…説教はまた今度……そろそろイギリス行の飛行機に乗り損ねるので私はここらでお暇させてもらいます」

 

「ちっ………まあいいだろう。今回は私も後でイギリスに行くからその時はよろしく頼むぞ」

 

「はっ!!仰せのままに」

 

 

白狼は、虎徹の方に向かって敬礼をして退席する。

 

それを、見守りつつ布を再度巻きつける……虎徹の姿があった。

 

 

 

 

 

その足で工房へ向けて歩いた白狼は、頭の中でとある人形に関する構想を膨らませていた。

 

重装甲にようる高防御力と遠距離の敵に当てられるほどの遠距離用の砲を兼ね備えた人形に使う魔術回路の事だ。

 

「従来の一個の魔術回路だったら無理だからな……しかし、二つ以上の魔術回路を持たせると魔活性不協和の原理が邪魔をするし……

 

あれ?今影にいる影桜達の魔術って二つ同時使用じゃなかったけ?」

 

 

白狼は、頭の中で自身の知恵を引っ張り出しているふりをして、自身の能力を使って完成している技術を使い次の人形を作成すると決めたようだ。

 

 

「設計図自体は、家の書庫を探せば見つかるだろうから……

 

これは、四鬼家の秘密にしておこう……私が作ろうと思う人形の設計図は、飛行機の中で書けばいいから何の心配はないな

 

さて次は、それに付ける名前だな……………………京都にある山の一つ神山(かもやま)と名付けようかな?」

 

 

白狼のポーカーフェイスが崩れ、ポーカーフェイスの裏に隠れていた悪魔の微笑みみたいな顔をのぞかせながら帰路を歩いていた。

 




お読みいただきありがとうございます。

さて……白狼の実力は分かって貰えたと作者は思っております。

次回からは、いよいよ白狼が、イギリスの地を踏みます。

お楽しみください。
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