調律師が異世界旅行をさせられるようです 作:隠された神話の白狼
まあ、理由としては向うの執筆に追われたり、この話の次の世界の執筆を行ったり、まったく関係ない物を書いていたりと、執筆活動だけはしてましたはい…………
今回のようにこちら側は、でき次第投稿すると言う形を取っていますので、完全に不定期です……半年以上開くかもしれませんが、お待ちいただけると幸いです。
今回は、7000文字程度です。
機功都市リヴァ―プル端の一角にある古びた豪邸があった。屋敷の壁には蔦が自由に伸び、ガラスには蜘蛛の巣が張っていた。それらが、この館が古びた館なのだと教えてくれた。
白狼は、蔦が巻き付いた鉄格子の門を開け、門の上についている紋章を見た。
紋章を入り口から見ると、イギリスの騎士が持っている盾の紋章が見える。
その盾の紋章は、下地は青、模様は黒色で塗りつぶされた六芒星と六芒星の頂点に黄色で塗りつぶされた五芒星が描かれている。
しかし、この紋章には続きがあり、
逆に出口から見ると、下地は黒、模様は外周部に十二芒星が黄色の線で書かれており、中央にはこれまた黄色の船で六芒星が描かれている。
その紋章の形が、盾型ではなく円型をしていた。
そんな外装をしている館を白狼は、見つめながら門をくぐる。
「しっかし……たった四年ほどほっといただけで、こんなことになるのかね。
まあ、人がいないと言うわけではないのだが…………先にイギリス入りをしているメイドが掃除をしているはずだが……」
白狼が屋敷の庭を歩きながら、埋め込まれている術式を確認して行く。
「正常に動いているようだな…………」
白狼が屋敷の玄関まで来ると、中からどたばたと、せわしなく動き回る人間の足音が聞こえてくる。
その足音の数は、一人、二人ではなくかなりの人数がいる事が分かる。
「はあ……一週間前に出たはずの彼女がまだ掃除しているのか…………そんなにこの屋敷は広かったかな?」
白狼はその事を気にも留めず屋敷の玄関を開けた。
白狼の目に飛び込んできたのは、使用人の女性たちがせわしなく屋敷を掃除している所だった。
「はあ……本当に片付いていないだね……そこのナンバー88、いろりと咲夜は何処にいる?」
ナンバー88と呼ばれた少女は、作業の手を止めて白狼の方を向いた。
「おはようございます、ご主人様。
「そうかい……ありがとうね、ナンバー88……ちょっとまってね」
白狼は、ナンバー88の頭を、手でやさしく撫でながら、書斎の場所を思い出していた。
思い出した後、白狼はナンバー88の頭から手を離した。
ナンバー88は、それを名残惜しいな顔をした。
「さて、ありがとうナンバー88。じゃあ、お仕事がんばってね」
白狼は、そう言い終わると掃除している使用人の間を縫うように中央階段を登って二階に上がる。
白狼は、その後も使用人にねぎらいの言葉を掛けながら廊下奥の書斎の前まで足を運ぶ。
「さて、最初はただいまからだな……あとは流れに乗って……とよし」
白狼は、慎重に書斎のドアを開けた。
「おっ帰り~~アナタ~~」
白狼は、瞬時にドアを閉めた。すぐ後に、ドアに何かがぶつかる音とずり落ちる音がドアの向こうから聞こえた。
それを確認した後、白狼がそのドアを開けると綺麗な白銀色の髪を腰まで伸ばした綺麗な女性が顔面から倒れていた。
その女性は、白狼の妻のいろりさんである。
どうやら、さきほどドアにぶつかったのは、いろりさんだったようだ。
白狼は、それを気にすることなくいろりの髪と体を踏まないように避けながら書斎に入る。
書斎の室内と言っても、本がぎっしりある本棚ばかりではなく、自動人形の図面が描かれた設計図の束がそこらじゅうに置かれていた。
これは、白狼の一族が蒐集してきた世界各地の自動人形達の図面である。
これを解析できれば、世界中の自動人形を知ると同じ事になる。
当然、禁忌人形(バンドール)の設計図まである……これには、白狼も先祖のコレクターぶりに頭が下がる。
とはいえ、白狼自身もこの書斎の強化にいそしむ毎日である。
さて肝心の書斎の室内にいる人間は、いろりのほかにも給仕をしている女性がいた。
髪は、銀色の髪のボブカットに、もみあげ辺りから三つ編みを止めるのに緑色のリボンを付けている。
瞳の色は、 青色。
とまあ…………ここまで書いて、先ほどの白狼との会話で思い当たる人も多いだろう。
東方プロジェクトの十六夜咲夜さんその人である。
まあ……ここの咲夜は、とある世界から連れて来た少女の一人である。
「咲夜、すまないが紅茶を貰いえるか?」
「はい、かしこまりましたマスター」
咲夜は、何事もなくワゴンの上からテーブルの上にティーカップを置いた。
ティーカップの中に白狼が好きなロイヤルミルクティーを入れた。
その間に、白狼はすでに湯気が立ってない紅茶が入ったティーカップが置いてある席の向かい側に座った。
「うん……ちょうどいい時間だよ咲夜。やっぱりゴールデンタイム直後のロイヤルミルクティーは美味しいからね」
「はい、もったいないお言葉です」
「そんなにかしこまらなくても、もっとリラックスしていいんだよ……あといろりちゃん?いつまで寝ている気かな?そろそろそのはしたない恰好はやめてくれないかな?」
「あ……は~い」
いろりは、ゆっくりと立ち上がり体や服に付着した埃を落として、髪に手を通して撫でた。
「はい、完了っと」
いろりは、自分の姿を整えて白狼の向かいの席、湯気が立ってない方のティーカップの席に座った。
いろりが座ったの感知してか、いろりの前の紅茶は湯気を立ち昇らせた。
「まったく、使い勝手いいわね、その能力」
「いえいえ、まだまだ未熟者です。世界をゆっくりにできる時間はまだ30秒も行っておりません」
「ふ~ん。さすがに、まだそのぐらいか……練習内容を増やそうか?」
「いえ、マスター。この能力はじっくりとのばしていきたいと思います。それよりも、お腹がすきました……マスター少しいただいてもよろしいですか?」
「そうか……そろそろ昼食の時間か、わかった。いろり、君の部下の六六六死節団に休憩と人形専用の昼食を作らせろ。私は、君達ようの食事を作ることにしよう」
「分かりましたわ、アナタ……」
いろりは、近くにある伝声管の一つを開けて、声を吹き込む。
「 六六六死節団に告ぐ、現在の時刻は12:55分だ。13:00から休憩時間とする……ただし、今日の食事当番であるα・β・γ部隊は、調理室に向かい料理を開始せよ。ただし、調理場には四鬼白狼も入るくれぐれも、粗相がないように、
繰り返す、13:00から休憩時間とする……ただし、今日の食事当番であるα・β・γ部隊は、調理室に向かい料理を開始せよ。ただし、調理場には四鬼白狼も入るくれぐれも、粗相がないように、
分かったか!!」
廊下の方から、「分かりました、マイマスター」と掛け声が聞こえる。その後忙しく、掃除道具を仕舞に走る音が館に響いた。
「さて、あと五分ほど待って私も作りに行きますか」
白狼は、一つの紙束をそこら辺の机の上に置いた。これも、白狼が蒐集した自動人形の図面である……厳密には、白狼が描いた震電改二である。
「高速機動用震電の最新モデル、震電改二ですか。またとんでもない自動人形を作りましたね」
「まあね……ただ、航空機型としてはまだ完成品じゃないだよね…………そこまで、遠隔操作ができないからな……」
白狼は、自動人形を大まかに分けたシリーズ、それをさらに用途ごとに分別して、その分別したのを型と呼んでいる。
今回、出て来た航空機型は、艦隊シリーズと呼ばれる現代までに存在した艦名や航空機などの兵器の特徴を人形に持たせたものと言われています。
航空機型の特徴は、人形遣いを空母と見立て、そこから飛び出して、遠距離の敵を撃滅させると言うのが航空機型の一番の特徴なのだと言われています。
戦闘機型の魔力を受け取れる範囲(戦闘行動半径)は、震電改二の場合70Kmだと言われています。
航空機型のほかにも、
艦隊シリーズの中でも高出力の戦艦型、
戦闘機型の指揮官にして魔力を蓄えられる空母型、
出力は戦艦型に劣るが高機動の巡洋艦型、
地面に潜る魚雷等の特殊兵装を積んだ駆逐艦型、
地面に潜ることが出来る潜地艦型
なんてものも存在している。
「70㎞で十分だと思いますが……マスター?」
「70㎞では小規模の戦場では行けるが、大規模の……世界大戦なんて事になると足りないからね」
白狼は、咲夜の言い分を聞いて苦笑いをして席を立つ。そのまま、書斎の出入口の扉の方に歩いて行った。
「今日の昼の献立は、冷製ポタージュに仔牛のステーキ、赤ワインで主食にパンにしようかな……それでいいかいいろり、咲夜」
「それでよろしいかと……ただ、マスターは学園から呼び出しが来ているのであまりお飲みになりませんようお願いします」
「そうですね、アナタ。なにやら学園で事件が起こっているみたいですよ」
「ふ~~ん。まあいいでしょう……それなら、酒の量を減らさなければいけませんね」
白狼は、いろりと咲夜の双方から酒の量を減らせと言われたので、地下二階にあるワインセラーから秘蔵の赤ワインを出すのをあきらめて自家製の赤ワインのみにしようと落胆しながら書斎の出入口の扉を開けた。
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いろり視点
「さてと、彼が料理を作るまで時間があてしまいましたね咲夜」
「はい奥様。では、先ほど中断されてしまった学園で起こっている出来事についての話を再開するのがよろしいかと」
「そうね……小悪魔とパチュリーは地下一階の大図書館で本の整理しているからお邪魔するのも気が引けるし、かと言って地下三階の闘技場で練習している十二人形の顔を見るのもなんか微妙だしね……そうするしかないか」
私は、ゆっくりと息を吐いて先ほどの話の記憶を呼び起こした。
今朝、屋敷に一人の女性……学院長秘書官アヴリルが訪ねて来た事が事の発端である。
いろりと咲夜が、二階のいろりの私室で紅茶を飲んでいる時に、ドアをノックする音が聞こえた。
「咲夜、すまないがでくれないか?」
「はい奥様。何の用ですか?」
咲夜が、部屋のドアを開けるとそこには、可愛らしいメイド服に身を包んだ、赤髪のメイドが立っていた。
「ナンバー10……あなたの仕事は、玄関周りの掃き掃除のはずでは?」
「はいメイド長。私めが玄関を掃除してますと、学園からの使いだと言う方が来られまして白狼様のご来日前に話して起きたい事があるそうです。
現在、客間にて紅茶を出している所です」
「分かりました。いろり様にお客様の様です……
一階の客間に御通ししているので、お会いになますか?」
「そうね……いいでしょう、学園との小競り合いするつもりはありませんし、これを利用して借りを作るのも面白いですからね」
いろりは、すまし顔でそう答えた。咲夜はその言葉を聞いて入り口から離れて一礼をした。それと同じく、ナンバー10も部屋の外で一礼をする。
いろりはそれを気にする様子もなく、この部屋の出入口の一つのドアから外へ出た。
応接室の前まで来たいろりは、扉を開け中に入る。
応接室の内部は、ヴィクトリア朝の室内で、家具は全て最高級品と言った贅沢な室内である。
その椅子には、黒眼鏡に金髪、腰にはサーベルを付けた女性が紅茶を飲んでいた。……学院長秘書官アヴリルである。
「ようこそ、スターカード商会の別荘の一つ人形の館へ歓迎しますわアヴリル秘書官殿」
「ああ、時間が惜しいのでいきなりだが本題に入らせてもらう」
「ええかまいませんよ」
「それでは、この資料を見てくれるか?」
「拝見させてもらいます」
いろりは、紙の束をめくり中の資料を見る。内容は、去年の10月から起きている自動人形が破壊されている。
「これは?」
「
「魔術喰いの逮捕又は、殺害ですか…………」
「ああ、貴様たち……スターカード商会が持つ自動人形の資料から
これに合致する自動人形を見つけそれを持っている人形遣いを逮捕又は殺害してほしいと商会長伝えて欲しい」
「それぐらいなら、請け負いますよ。ただし、最終決定するのはうちの主人ですからそこは悪しからず」
「ああ、それぐらいはわきまえている」
「それでは、主人が到着し次第この事を伝え、判断を仰ぎます」
「お願いする」
アヴリス秘書官は、立ち上がり鞄をもってドア向かって歩き出す。
いろりは、自分の前に出された咲夜に入れてもらったロイヤルミルクティーを優雅に口にする。
そして何か思い出したように、手を叩く。
「そういえば、言っておかなければいけない事を忘れていましたわ」
「ほう……それは今言わなければなら事か?」
「ええ、それはもう…………言っておかなかければ、八年前の再現が起こりかねませんもの」
「…………」
八年前と言うと、白狼が魔王となった茶会が開かれた年である。
「学院長にお伝えください。夫からの伝言です…………
”愚者が地下に埋まっているはずだから、それを近々拝見しにまいりたいので邪魔をしないでもらいたい。”
だそうです」
「愚者ですか……私には何の事だか分かりませんが…………学院長には伝えておきます」
「ありがとう。さて、お客様がお帰りよ。お見送りをお願いね」
「分かりましたいろり奥様」
ドアの前に待機していたメイドがアヴリル秘書官に一礼をしてドアを開ける。
ドアを開けた先には、ランプを持ったメイドが立っており、入り口までの道案内を行った。
「アヴリル様、早朝から起っている霧がまだ残っておりますので門までお連れします」
「ああお願いする」
「はいかしこまりました」
メイドが一礼してアヴリル秘書官の前に出る。そのままメイドが歩き出して、アヴリル秘書官その後ろを付いて行く形になった。
玄関を出ると、メイドか言っていた通り、早朝から発生していた濃い霧が人形の館の庭一面に漂っていた。
メイドは、その状況に慌てず手元のランプに火を入れた。
「お離れにならないようについて来れられますようお願いいたします」
「ああ、分かった」
ランプの燃料はガスなのだろうか……ガス灯と同じくらい発光しているが、色が白ではなく青色をしていた。
その青が、霧に溶け込んで幻想的な青色を作り出していた。
そんな様子を眺めていると、アヴリル秘書官は門の近くまでついていた。
「到着しました……では、またのお越しを心からお待ちしております」
メイドは、青色に発光するランプを持って一礼をした。アヴリル秘書官はそれを気にすることなく外で待たせていた馬車の業者に、学園まで戻るように指示してこの場を離れた。
メイドは、馬車が見えなくなったのを確認してガス灯の火を消して玄関の掃き掃除に戻った。
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咲夜視点
私は、いろり奥様の話を聞いて頭に疑問が横ぎった。
「質問よろしいでしょうか?」
「ええ、いいですよ」
「では僭越ながら………………なぜ、いろり奥様とマスターがイギリス入りした時間がずれているのでしょうか?
たしか、いろり奥様の飛行機に搭乗していたはずの花柳斎様が、マスターが乗っていた列車に乗り合わせていたはずでは?」
「ああそれですか……離陸したのは、同じ飛行場ですが……乗っていた機体が違うのよ。
白狼の事だから、機内で設計図でも引いていたんでしょ」
「それでは、一週間のずれに説明が付きません」
「なるほど……咲夜は、なぜ一週間も花柳斎が、この地に来なかったを知りたいのね」
「ええ、その通りです」
「ふ~ん……そこに疑問を持っちゃうか。
まあいいけどね。花柳斎が一日の間、スターカード商会の領地にとどまったか……私の想像だけど聞く?」
「はい」
私は、縦に頷く。
いろり奥様は、目を細めてこちらを見る……その表情からは、面白いと言う感情が見て取れた。
「まず、前提条件として……
・スターカード商会は、世界有数の人形生産を行っている大企業である。
・当然のことながら、スターカード商会の商館の地下には、人形を整備する工房が存在する。
・イギリスは、スターカード商会の生誕の地であり、あの飛行場がある領地はワンハンドレットデーモン卿である初代が王国から賜った土地である。
この三つ……ここまではいいかな?」
「ええ、大丈夫です」
「当然のことながら、その土地にも大規模な商館がある……俗に言うスターカード商会の総合本店……まあ総合本店の前に旧がつきますがね。
ですが、商館としての機能は生きていて……そこで働いている人もいます。
総合本店の機能は、本島の商館に移していますがね」
「へえ……そうなんですか」
「そうなのよ……本題の一日の間、何故花柳斎はその地に居続けたのか……答えは簡単……スターカード商会の最大の人形工房を見つけるためでしょうね。
旧総合本店とはいえ、他の商館と比べられないほどの大規模な人形工房があの商館の地下に眠っているのは人形師の中では有名な話。
それを見つけて、秘術を紐解けば……神性機巧のヒントにぐらいは、なるはずって言われているの」
「ですが…………マスターの周囲には、神性機功なんて存在しませんが……」
「そっ、その噂話は真っ赤なウソ……あの地下に眠っているのは、白狼が作り上げた出来損ない達が眠っているの人形の墓地みたいなもの。
ゆえに、探しても意味が無い……そんな事は花柳斎なら知っているはず……だから私の予想の範囲から出ないのよ」
「なるほど……あの商館そんな物が有ったのですね…………では、その出来損ないは、日の目を見る事は無いと……」
「まあそうなるよね……だだし、あれを人形と呼んでいいのならね」
「え?」
「あそこにあるのは、人形のパーツの中でも壊れて使え無くなった物だけを保管している共同墓地。
その点だけ見れば宝の山よね……」
いろり奥様はさみしそうな声色で話を締めくくった。
後半は完全にぐだってしまっていました。
いろりと咲夜の掛け合いは、完全に蛇足ですね……伏線でも何でもありません。
さて、次回からは、本格的に機功少女は傷つかないの世界に干渉して行きます。