「よいしょ!おじん!ここでいい?」
一抱えもある俵を置くと、彼女は初老の男に言った。
「おお、レナちゃん。いつもすまないな。」
「そう思うなら、早くぎっくり腰直してね!」
そういうとレナは、村の中心部の方へ走っていった。シアカル・レナ。それが彼女の名前である。薙刀では王都の大会でも優勝した実績を持っており、そのため子供たちに剣術を教えている。日からも人並み以上にあり、頼みごとは笑顔で引き受ける。そんな明るい性格のため、村のみんなから慕われていた。
これからも、子供たちに剣術を教える予定であった。そのとき、
「れ・・・レナちゃん。大変だ!」
浜辺のほうから走ってくる人がいた。朝、レナに声をかけていった漁師の爺さんだった。
「おじいさん!?どうしたの?」
「浜辺に死体が上がった!」
「!!!」
その報告を聞き、レナは浜辺へ走った。この村で死体が出る。それは事故などが考えられるが、それよりも恐ろしい可能性があった。
「まさか・・・。モンスターが?」
モンスターがこの村を襲うことはほとんどない。それは若い者がほとんどいないからだ。モンスターは若い人間の体を好んで食べる。若い者があまりいないこの村では、モンスターはあまり現れないのだ。しかし、まったくないわけではない。現に数回、村にモンスターが来たことがあったが、それほど強くなく、レナが打ち倒した。あれ以上のモンスターなら・・・。
「レナ姉ちゃん!これ!」
浜辺に行く途中、剣術を教えている村の子供から木製の薙刀を渡された。レナがいつも使っている薙刀だった。
「ありがとう!!」
それを受け取り浜辺へと急いだ。
浜辺に着くと、数人の村人たちが集まっていた。
「みんな!!」
「おお!レナちゃん!…これなんだけど。」
そういうと、村人は指を指した。そこには、若い男が倒れていた。その男の横には、一緒に持っていたであろう、ずた袋も流れ着いていた。
「…何かにおそわれた形跡はないね。溺れたのかな?」
モンスターの仕業ではないと分かり、少し安心したレナであったが、人が死んでいるということを再度認識し、自分を戒めた。
「このままここに放置したんじゃあかわいそうだから、村で弔ってあげよう?」
そう集まっている村人たちに話すと、みんな一斉に頷いた。そしてレナが倒れている男の肩を抱いて移動しようとした時、
「うっ…」
「…!?」
何か動いたような感じがして、レナは男を横にした。
「どうした?レナちゃん?」
村人が話しかけるが、レナは男の心臓付近にみみをやった。すると、かすかではあるが、心臓の鼓動が聞こえてきた。
「…!この人まだ生きてる!」
「何だって!?」
「急いで村に運ぶよ!みんな手伝って!」
そういうと、村人たちと一緒に男を運ぶことにした。
しかしこの時、レナ達を隠れて見ていた邪悪な視線に誰も気がついていなかった…。