そして少年は鬼になる   作:謎の亡霊

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入学式すっとばしちゃった。


胸騒ぎ

 端的に言えば、柊真昼のスピーチは凄まじかった。

 校長の長々とした話をなんのそのとガヤガヤしていた騒音がまるで統率された軍隊の如く静まりかえり、全員が柊真昼の言葉を心の底から真摯に聞く。

 もちろん、彼女が柊なのも大きな一因だろう。

 が、これはそれだけでは到底出来ないことだ。家柄なんていう肩書だけではなし得ない魅力。

 それはつまり柊真昼という『個人』がこの現象を引き起こしているということ――――

 

 圧倒的なカリスマ。しかしそれを振り回さない人間性。

 目の前にしてはっきり分かった。この世界に平等なんてないことを。俺が絶対に行きつけない場所。神の領域ともいえるその天才を。

 もちろんスピーチの内容も凄まじいものだ。その声は聞くものに安心感をあたえ、その言葉を認識すれば思わず胸が熱くなるような――――

 

 綺麗な言葉を並べていながら綺麗事ではなく、体裁をとりつくろうという定例文句も一切ない。一字一句自分の言葉でスピーチを続けるするその姿。

 

 ――――手が届かないと心の底から分かり切っているのに憧れてしまう。

 

 だが、入学式にあったのは、そんな綺麗な感動、それだけではなかった。

 

 柊真昼のスピーチを聞くだけで終わればどれだけ良かったのだろう。きっと『アイツ』のことなんて忘れさって晴れやかな気持ちで学校生活をおくれただろうに――――

「下賤な、成績も低い、一瀬のネズミなど、興味ないか?」

 

 ふと――――聞こえてしまったのだ。

 

 別にはっきり聞いたわけではない。まるで空耳のように聞こえただけだ。

 しかもこれがアイツの声かも分からない。

 なにせ俺のクラスは二組、『アイツ』は教室で聞いた話声からすると、一番奥の九組のはずだ。

 

 もしかしたら一瀬ではなく一野とか全く関係のない奴が不貞腐れて言っただけかも――――

 なんて精神的に辛いからか馬鹿すぎる考えが頭の中で恐怖を抑えるために渦巻く。しかしその恐怖は止まらない。

 あの時、『アイツ』の、『一瀬グレン』の目を見なければこんなことにはならなかっただろう。でももうだめだ、見てしまった。感じてしまった。その恐怖は、疑念は膨らんでゆく。

 教室での会話で聞いた。一瀬グレンは弱く、女に守ってもらっているクズだと。やられてもへらへら笑ってごまかして逃げようとする臆病ものだと。膨張や勝手な予想もあるだろう。

 だがそれでも事実は混じるはずだ。そして、一瀬グレンが実は怖い奴だとか、強い奴だとか、そういう話は一切教室の会話から、廊下の立ち話からですら聞こえない。

 

 そして一つの、とても嫌な予想が立つ

 

 一瀬グレンは自分の家を侮辱したこの帝ノ鬼の信徒達を油断させてから皆殺しにしようとしているのではないのか――――?

 

 確証なんてものはない。証拠もない。どうやるかも予想全く予想がつかない、正直そんな疑念を抱く材料がない。

 

 初見の時の気味悪いという感覚と今の入学式の時の空耳、妄想も大概というところだろう。

 

 一端思考を切る。これ以上考えても恐怖が薄れるばかりか更に恐怖に押しつぶされる。これでは意味がないどころか害悪だ。思考を切り替えねば、今やらねばならないことをやろう。

 なにせここは最高峰の呪術学校、勿論入学した後も大変だ。

 学年が上がる毎に、各学期に何度かある選抜術式試験によってこの学校に相応しい生徒か否かを判定されるのだ。

 一年は600、二年が340、三年で160人。実に半分近くが削ぎ落とされる。

 勿論、学年の人数から溢れたものは退学だ。

 まあ退学でも、捨て駒脱却には充分かもしれないが、手をぬいて逆に無能だと思われれば捨て駒どころではなくなる。

 

 だからこの入学式直後にあるという常識外れの呪術試験――――!正直滅茶苦茶嫌だがここでいきなりこけるわけにはいかない!まず目に見えるものを越えなければ――――!!

 

 

 

      ◆

 

 

 

初日の学校が終わり、そして俺はこれから、願わくば三年間お世話になるだろうアパートに向かう。

「さてやるか」

 とひとり呟いて梱包された家具や食器、雑貨品を取出し、部屋のいたるところに設置していく。

 洗濯機やベッド等の大きい物は備え付けのものをそのまま使う予定だ。

部屋はそこそこ広く綺麗で住みやすそうだと素直に思う。渋谷高校の援助がなければオンボロアパートを借りる羽目になっていただろう。

 

まあそうだとしてもこの学校に来るためなら仕方ないことだが。

二時間経過~

「やっと終わったぞ……」

 帰ってすぐに作業にとりかかったはずなのにもう夜の九時前、相当時間をかけてしまった。

 いつもなら夜と朝で少しでも周りに置いてかれないようにするため呪術の自習をするのだが、流石に9時過ぎで夕食も風呂も済ませてないこの状況でやる気にはならない。

 下手に徹夜して学校に遅刻でもすればそれこそ周り明日も早い、さっさと夕食を済ませ風呂入って寝なければ。

 

 

 




とりあえずはグレンから目を離し学校に在学しつづけるためという目標で気を紛らわすわがオリ主
だがしかし理不尽?が起きてぼっこぼこ(主に精神面が)にされるよ!勘のいい原作既読者はもう予想ついてるかもだけど!
 
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