デュエル不平等な王国を平等にする話   作:あしゅき

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その話で一度着けた振り仮名は二度はつけません。
また、オリカに限り②の効果が出ていない場合は次の発動する機会まで伏せます。


儚き花弁

 ディスクから《Battleroial mode》という音声と同時に両者は手首のスナップだけでデッキ(カードの束)から五枚ドロー(束からカードを引く行為)する。ハジメはなにやら格好ついたポーズを決めているが、隊長の男は五枚のカードを見て小さく舌打ちをした。その両者は不動を貫いているがユエル・アリクルは違った、五枚のカードを見て目を鋭くしすぐに動き始める。

 この世界での先行の決め方はどちらがカードに早く手をつけ、宣言したか。この二つの動きで呆気なく決まるものだ。そして速攻で手札に手をつけたユエル・アリクルは二人の手札があまりよくない物と予想した。ハジメは動きを止めており、隊長はじっとこちらを見ている。どんなデッキにせよ、先行を取れるような手札ではないことが確かに分かる。となれば、今やれることは動き出し、万全の布陣で相手の動きをカウンターで阻害する。

 

「私のターン! 先行は貰いました、私は手札から『種子姫(たねがひめ) くらざみ』を召喚!」

 

 双刃剣を模したディスクにカードが滑らかな手付きで置かれる。するとフィールドには一枚のユエルの身長(平均的な成人女性と同程度)と並ぶほどの大きなカードのシルエットが置かれ、そのシルエットから一人の女性が飛び立つ。彼女は華々しい見た目とは裏腹に、染み一つない手に持つのは無骨な剣と鞍馬のような盾。その眼光は鋭く尖っており、二人の騎士を捉えて離さない。

 

「『くらざみ』の効果発動! この子はフィールドに現れた時、美麗なる世界から姫を呼び出す!」

 

『種子姫 くらざみ』

星4 光属性 【植物族/効果】 ATK/1500 DEF/700

『種子姫 くらざみ』の効果は①②のどちらか一ターンに一度しか発動できない。

①:このカードが召喚に成功した時に発動できる。このカードをリリースして、デッキから『姫』と名のついた植物族レベル8モンスターを特殊召喚する。

②:?????????

 

 凜騎士は盾で自らの体を覆い、剣を天へと掲げると、その身を光の粒子へと変えていく。

 ハジメは思う事ががあるのかその光景に表情を歪めるが、隊長の男は違った。どうしようもなく美しく思えた。その身を犠牲にする精神の尊さに、同じ騎士である二人は目の前の光景から目を離すことができない。

だが時は刻々と進んでいく。空に昇った『くらざみ』であった粒子は黒き渦を産み出していき、徐々に別世界へのゲートへと相応しい姿へ転じていく。

 

「自ら生み出し半身の呼び掛けに応じ、出でよ封殺の椿!」

 

 黒き渦から光の柱が下り、森林地帯のやらかめの地面にそれがぶつかると同時に三人の視界は純白に全てを奪われる。その光量に二人の騎士は思わず籠手付きの腕で目を守ろうと自らの身を縮こませる。

その光をじっと見ているのはユエル・アリクル一人のみ。彼女にはこの光量が支配する世界で尚見えている物があるのだ、徐々に根を張り、騎士への反乱の準備を淡々とこなす姫の姿が。

 

「レベル8! 『椿姫(つばき)ティタニアル』ッ!」

 

 場の光を切り裂くように払った者のおかげで、視界は再びほんのり朱さが見える森林地帯へと戻ってくる。しかし、光を払ったのは騎士二人でも、ましてやユエル・アリクルでもない。

まるで神へ祈りを捧げる狂信者のようなそれからは、封殺の名を冠するに相応しい威圧を持ち合わせている。『椿姫ティタニアル』、人外でありながら姫の名を持つ存在、光を封じた正体がそこに居た。

 

『椿姫ティタニアル』

星8 風属性 【植物族/効果】 ATK/2800 DEF/2600

自分フィールド上に表側表示で存在する植物族モンスター1体をリリースして発動できる。

フィールド上のカードを対象にする魔法・罠・効果モンスターの効果の発動を無効にし破壊する。

 

「さらに私は『姫』を迎える応援団員、『種子姫 おおひら』を特殊召喚! この子は『姫』が場に表れた時、特殊召喚される! 私はカードを二枚伏せて、ターンエンドです」

 

 ディスクにカードを叩きつける心地の良い音と共に、フィールドに現れるのは美しいお御足と豊満なスタイル、両手には赤いポンポンを持つモンスター。ハジメはうひょーっと声を上げるが、隊長は全くの無反応。しかし『おおひら』はそんな汚物のことはどうでもいいのか、『ティタニアル』にすりよって猫のように甘え始める。これには威厳をもった姫と言えども苦笑をもらさずには入られなかった。

 

『種子姫 おおひら』

星3 風属性 【植物族/効果】 ATK/150 DEF/400

『種子姫 おおひら』は一ターンに一度しか特殊召喚できない。

①:自分フィールド上に『姫』と名のついた植物族レベル8モンスターが召喚・特殊召喚された場合、このカードは特殊召喚できる。

②:?????????

 

「レズビアンかよ……。あ、俺のターンか。バトルロイヤルルールでは全員の先行でドローはできないっと」

 

 ハジメの第一声に『おおひら』は言葉では表現しつくせないほどの意味をその視線に持たせて睨むが、当の本人はデュエルに集中していて気づいていないようだ。隊長だけはその視線に気づいていたが、これもどうでもいいのかハジメに声をかける。

 

「ハジメ。攻撃も出来ないことを忘れるな」

「へいへい、わかってますよ。隊長さんは心配症なこって」

「貴様が何故昨日婚期を逃したか――」

「その話はもういいんだよっ! あーっくそ、俺のターン!」

 

 怒りの衝動に任せて初手の五枚のうち一枚を乱暴に引き抜く。その愚かな姿に『おおひら』は豚を見るような目で嘲笑をしていたがすぐに『ティタニアル』に叱られ、ショックのあまりそのポンポンを地面へ落としていた。

 

「俺は永続魔法カード『W(ホワイト)W(ウォリアーズ) スリップブリザード』を発動! このカードは、①と②の二つの効果を持つが、俺は①の効果、デッキから『WW』モンスターを手札に加える効果を選択!」

 

『WW スリップブリザード』

永続魔法

『WW スリップブリザード』は一ターンに一度しか発動できず、①②のどちらか一つしか発動できない。

①:一ターンに一度、デッキから『WW』モンスターを手札に加える。

②:???????????????

 

 突風とも吹雪とも言える凍てつく程の寒冷も持った風がフィールドに吹き荒れる。緑葉は一枚一枚凍りつき、地面には霜が浮かび上がる。そんな中でハジメは吹雪に呼ばれデッキから飛び出したカードを冷静に取り、手札に加える。ユエル・アリクルは『ティタニアル』が出す不思議な力によりその極寒からなんとか逃れていた。『おおひら』は風で飛ばされたポンポンを回収しに森へと走り出し、先程と同じように『ティタニアル』を苦笑させる。

 

「そして俺は『WW 鉄槌のヘイル』を召喚!」

「まだだ! 『WW』モンスターが場に出た時、『WW 天槍(てんそう)のアイシクル』は特殊召喚される!」

 

 ハジメの怒声とも言える宣言は吹雪を巻き起こし、カードをフィールドに上表させる。そのゲートから飛び出してくるのは二人の純白の戦士、ヘイルとアイシクル。その手に持つのは眼前の敵を殺める物だが、彼らが天使族であるのは違えようのない事実だ。

 

『WW 鉄槌のヘイル』

星4 光属性 【天使族/効果】 ATK/1800 DEF1600

このカードが相手モンスターを戦闘によって破壊した時、フィールド上に存在するモンスター1体を破壊する。

 

「レベル4のモンスターとレベル2のモンスター……」

「なんとなく察してるみたいだが、そう慌てるな。まずは『天槍のアイシクル』の効果発動! このカードが自身の効果で特殊召喚に成功した時、相手の伏せカードを一枚破壊する! 《トリックアウト》!」

「対象を取らない効果……っ!」

 

 ハジメの声が一枚の伏せカードへと向けられた時、『アイシクル』は軽く頷き、その白き槍を構える。するとその槍には冷気が集約していき、少しずつ氷を纏いはじめ、氷が新たな刃と変わっていく。ユエル・アリクルは『アイシクル』がぐっと全身の筋肉に力を入れた所を見て、来ると確信したところで、セットカードは砕かれた。

そのあまりにも速い動作を見切り、被害が出ないようにバリアを張ったのは『ティタニアル』だけ。『おおひら』は何が起こったのか理解すらしていないようだ。

 

『WW 天槍のアイシクル』

星2 光属性 【天使族/効果/チューナー】 ATK/700 DEF/200

『WW 天槍のアイシクル』は一ターンに一度しか特殊召喚できない。

①:『WW』が召喚された時に発動できる。手札のこのカードを特殊召喚する

②:①の効果で特殊召喚された場合に発動する。相手フィールド上にセットされたカードを一枚破壊する。

 

「ッ! 『棘の壁(ソーンウォール)』が……」

「『棘の壁』だって? 椿に棘はないと思っていたのに、恐い恐い……」

 

『棘の壁』

通常罠

①:自分フィールド上の植物族モンスターが攻撃対象に選択された時に発動できる。相手フィールド上に攻撃表示で存在するモンスターを全て破壊する。

 

「さてと、容疑者さん、あんたが危惧してたことを見せてやる」

「俺はレベル4の『WW 鉄槌のヘイル』と、同じく『WW』のレベル2、チューナーモンスター、『天槍のアイシクル』でチューニングッ!」

 

 霜が溶けはじめ、ますます柔らかくなった地面に、『ヘイル』が鉄槌を叩きつける。液状の泥が跳ね飛ぶ音と一緒に、地面の奥まで響く音をたて、気合いを入れた所で武器をその手に宙へ舞う。『アイシクル』はそれより前に空中へとその身を投げ出し、自慢の槍を自身を中心に振り回しはじめる。『アイシクル』の体は半透明になっていき、最終的には『アイシクル』のエネルギーが込められた二つの輪となって空を駆ける。

ここで飛んだ『ヘイル』と『アイシクル』の輪が合流し、重なりあう。

 

「光天よ。無知なる穢れし時代に終末を与えよ!」

 

 宙に浮かぶ人と輪、一筋と重なる時。閃光が走る。

 

「シンクロ召喚ッ! レベル6、吹き荒れろ! 『WW 墜病のハンセン』ッ!」

 

 儚き椿達の前に、天に見放された人間が降臨する。デュエルまだ先行二ターン目、まだまだこれからだ。

 

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