ガンダムビルドファイターズ アナザートライ   作:慢性睡眠不足

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 自分でガンプラバトルをやるならどうするかな、と思って書きはじめたもの。
 現実じゃ動かないし、置く場所も作りこむ技術や時間も無いけれど、せめて話の中だけでは思う存分に動かたいし、作りたい。
 拙い文章ですがどうか気楽に楽しんでいってください。


挑戦者

 ガンプラバトル。それはガンダムのプラモデル(=ガンプラ)を操って行うバトルのことである。

 

 プラスチックに作用して自由な動きを与え、派手なエフェクトを演出するプラフスキー粒子の発見と長い歴史と豊富なラインナップを持つガンプラの融合によって誕生したこの新しいコンテンツは爆発的な人気を博した。

 

 自分で手がけたガンプラを思いのままに操り、互いに競い合う。この魅力に取り付かれた多くの人々はビルダーとして日々その製作技術を磨き、あるいはファイターとして連戦の中でその操作テクニックを向上させ精進した。そうして積み重ねた成果は模型店の片隅から公式大会などのあらゆる場所で披露される。

 

 多くの名バトルが生み出され、同時に生じた興奮と感動の渦は見るもの全てを巻き込んで拡大する。そしてそれは新たなビルドファイター達の誕生へと繋がっていくのだ。

 

 

 

 聞きなれた電子音と共に慣れた手つきで端末を接続するとバトルシステムが稼動を始めた。青い粒子の奔流が降り注ぎ、徐々にバトルフィールドが徐々に形成されていく。この一連の過程は道野 拓也(ミチノ タクヤ)にとって見飽きることの無い大好きな光景であった。

 

 青い空と緑の森に囲まれた市街地のフィールドが形成され、アナウンスに従ってガンプラをセットする。球状コントローラーを握り直し、プラスチックの塊に命が吹き込まれる様を確認すればバトルの準備は完了だ。

 

「タクヤ、GX(ジーエックス)ディバイダー 出る。」

 

 スタートの合図と共に何時もの掛け声で拓也は自機を発進させた。勢いよく空中に躍り出たGXディバイダーは背面のスラスターを展開、さらに加速して森の上空を駆け抜けて市街地を目指す。

 

 GXディバイダーは「機動新世紀ガンダムX」に登場する機体である。高い機動性と火力に加え、条件を選ばずに戦っていける汎用性をも併せ持つ。特に機体名にもなっているディバイダーはシールド、多連装ビーム砲、スラスターの機能を持ち合わせた複合武装であり、様々な場面でその威力を存分に発揮する。

 

 現在、拓也が操るGXディバイダーはその複合武装を前面に押し出しつつ低空で市街地の上を飛んでいる。いざとなれば高度を下げて足元を流れるビル郡に紛れ、あるいはそれを盾に出来るようにするためだ。

 

 警戒を第一に慎重に自機を飛行させていた拓也が敵機の反応を捕らえたのは市街中央を視界に入れた時であった。

 

 敵機の反応を知るや否や、拓也は機体の高度を下げて回避行動をとる。間髪要れずに前方より高出力ビームが放たれ、先程までGXがいた位置を駆け抜けた。最大出力のビームによる余波が機体を揺らし、目標を外れた一撃が後方のビルを斜め上から打ち抜いて崩壊させる。機体の立て直しと崩落からの安全距離を確保した拓也は、手近なビルの影に隠れつつ相手の姿を視認した。

 

 飛来してきたのは鳥のようなフォルムを持つガンプラであった。機首に長大なライフルを備えたその機体は「新機動戦記ガンダムW」に登場するウイングガンダム、そのバードモードである。可変機構に加え、ウイングの名に恥じない機動性と大型のビームライフル「バスターライフル」による火力が持ち味の機体だ。

 

 先程の一撃への返礼を考えた拓也だったが、まだ相手は射程外である。ゆえに時折ビル影からビル影へと移動して距離を詰めつつ、時折姿を晒すことで相手の攻撃を誘う戦術を取る。

 

 大火力のバスターライフルは弾数が少なく、粒子消費量も多いためその攻撃回数は限られている。先程と同クラスの攻撃を後二回も撃てば機体の粒子残存量もほぼ尽きるはずだ。地形を生かして相手の消耗を誘いつつ、こちらに有利な状況に持ち込もうとする拓也だったが相手も一筋縄ではいかなかった。

 

 GXディバイダーの姿を見つけるや否やウイングは機首を起こすと一気に上昇を開始した。突然の相手の行動に移動を止めて、ビル影に潜む拓也。だがすぐに相手の行動の意味に気がついた。

 

「不利な市街戦を避けて、上空から火力で押しつぶす気か!」

 

 死角が多く、崩落の危険から大火力を使いにくい市街地戦を避け、火力と機動性を存分に生かせる空中戦を選択するのは当然といえば当然だ。仮に拓也が乗ってこなくても粒子残存量に気をつけつつ高高度から真下にその火力を叩き込んで頭を抑え、こちらの動きを制限することが出来る。

 

「いいだろう、空中戦ならばこちらにも分がある。」

 

 そう呟いた拓也はすぐさまディバイダーをバックパックに装備し、上昇を開始する。だが先程の回避で高度を下げていたのに加え、相手のほうが加速性能は上であるため、すぐに距離を離される。もっとも拓也も追いつけるとは元々思っていない。大事なのは見失わないことである。

 

 バード形態は加速性能は高いが小回りは効きにくく武装も機首のライフルのみ。MS形態でも高い機動性を誇るウイングだが、高機動モードのGXディバイダーの方が機動性は上である。火力はあちらが、機動性はこちらが勝っている。そして相手の武装と弾数は決して多くは無い以上、上をとられてもまだこちらが有利のはずだと拓也は計算していた。

 

 一方、上昇を続けるウイングは一瞬の加速で稼いだ距離を使ってMS形態へ変形し、同時に減速する。両者の距離があっという間に縮まり、拓也が次の反応を見せる前に右手に持ったバスターライフルを下に向け発砲した。

 

 咄嗟に射線上から退避する拓也だが、その隙を付いてウイングは背部のスラスターを全開に下降を開始した。推力と重力を味方に加速するウイングは追加の一撃で相手の動きを制限しつつ一気に距離を詰める。

 余波を受けて回避のタイミングを逃した拓也はそれに対しビームマシンガンで迎撃することを選択。無数の光弾が落下中のウイングへと迫り、逃げ場の無い弾幕が爆炎の花を咲かせる。

 

 だが相手は撃ち尽くしたバスターライフルを投げて盾にした。射線上に放られたライフルが被弾し、わずかながらも残されていたライフルの残存粒子と反応して爆発。小規模だがその爆炎は一瞬とはいえ拓也の視界を塞ぐには十分すぎた。

 

「なっ!」

 

 ライフルの爆発を裂いて肉薄したウイングは、シールドによる打突を敢行し右腕ごとマシンガンをもぎ取る。同時に爆発の間に右手で引き抜いたビームサーベルを一閃、GXディバイダーを両断した。

 

 

 

 バトル終了の合図と共に、フィールドが粒子へと還元され周囲の音が戻ってくる。真っ先に聞こえてきた観客の声援を受けた勝者は優雅な動作で一礼した。

 

「応援ありがとうございます。」

 

 よく通る声で感謝を伝える緋川 綾(ヒカワ アヤ)に観客が一層のエールを送る。

 

 同年代と比べても小柄な体格に色白の肌と艶やかな黒髪を後ろにまとめた彼女はこの古びた模型店ではちょっとしたアイドル的な存在である。大人びた物腰と丁寧な言動から相手に古式ゆかしい日本人形のような印象を与える彼女だが、その内面は苛烈でことガンプラバトルに関しては人一倍負けず嫌いだということを付き合いの長い拓也は知っていた。

 

 現に今も綾が拓也に向けた目には勝ち誇った感情が透けて見えた。そのまま綾は勝利の余韻に浸るようにゆっくりとした動作でガンプラを回収し舞台を降りていく。一方の敗者拓也も手早く散らばった自身のガンプラのパーツその他を回収すると足早に後を追った。

 

 次のバトルへの歓声を背に、拓也が向かったのは店の一角に据えられた作業用スペースである。作業スペースといっても年季の入ったテーブルが一つあるだけなのだが、八人掛けの半数はすでに埋まっていた。

 

 早々に自分の席を確保した綾は、工具ボックスを脇に、先程盾にしたバスターライフルの補修を行っている。慣れた手つきで作業を進める綾の隣に腰を下ろした拓也も自身の工具ボックスを取り出すと修復作業を開始した

 先程は派手にやられたものの、それほど手はかからない。元々、展開機構を追加したディバイダーとそれを支えるために間接部を多少強化した以外には、簡単な墨入れをしたぐらいでほかは手を入れていないのだ。手がかかるといえば色落ちした部分をマーカーで塗ることぐらいである。

 

 それは綾のウイングも同じで、早々に作業を追えた彼女は席を後にして壁際に据えつけられたベンチへと向かう。長々と場所を占拠するつもりも無い拓也も自分の作業へと集中した。

 

 直したガンプラを片手に拓也がベンチへ向かうと、綾は友人である土浦 賢士郎(ツチウラ ケンシロウ)と共にデジカメの液晶画面を覗いていた。その賢士郎は拓也が近づいてきたのに気が付くと笑みと共に出迎えの言葉をかける。

 

「おつかれ、なかなか派手なやられっぷりだったよ。」

 

 涼しげな声でそうのたまう賢に拓也も言い返す。

 

「まあ、ここ数戦は勝ち続きだった。今回はうまくしてやられたってとこさ。」

 

 軽い口調で余裕を見せたものの、綾の浮かべた含みのある笑顔と肩をすくめた賢士郎の仕草を見れば拓也の悔しさなど見透かされているのは一目瞭然であった。

 次は勝つと拓也が視線に意思を込めれば綾も同様に返事を返してきた。

 

 現在拓也たちが行っているのは操縦技術向上のための訓練である。ほとんど手を加えていない低性能のガンプラを使うことで基本となるガンプラ操作技術の向上を目指す。

 

 また場合によっては使用する武装を制限したり、開始からダメージを追った状態での戦闘などといった制限を課すことで状況への判断力や対応力を鍛える訓練にもなる。

 

 さらに次の愛機となるベース機体を最低性能で連戦を繰り返すことによって、その機体特性を十二分に理解し、長所短所を頭と体に叩き込んで製作に生かすことも目論んでいた。

 

 なので勝ち負けはそれほど重要視するべきではないのだがやはり拓也たちにとって勝てば嬉しいし負ければ悔しいのである。

 

「仲がいいのは結構だが、次は私とのバトルなので忘れないように。」

 

 目前で繰り広げられた視線の応酬を止め、賢士郎はデジカメを拓也に渡して言葉を続けた。

 

「順番までまだ多少の時間があるから、今の内にさっきのバトルについて感想を書いておこうか。」

 

 そう言ってノートと筆記用具を下のカバンから取り出した賢士郎に習い、拓也と綾も自分が感じた問題点や反省などを自分用のノートへと書き出していく。戦術の選択や行動の可否はあとで検証するとしてとにかく戦闘直後の印象や感覚で気になったことを記しておく。なるべくバトル後の印象や精神状態も後で見返せるようにとの店長のアドバイスを取り入れた結果だ。

 

 簡単な感想みたいなものなのでそれほど時間はかからない。それでも敗者の拓也が一番書き終えるのが遅かったようで綾も賢士郎もバトルを見に行ってしまった。次の賢士郎と綾のバトルまでには間があるはずだが、他人のバトルも勉強になる。彼らに遅れて荷物を持って歩き出した拓也だが途中、店の一角で足を止めた。

 

 

 

 店の壁に貼られた一つのポスター。そこに告知されているのは全日本ガンプラバトル公式大会、そのチームバトル部門であった。

 3人一組のチームバトルは近年勢力を伸ばしており、かつてガンプラバトル世界大会と呼ばれていたオープンリーグと同じく、世界規模の大会も設置されている。その出場権が上位入賞者に与えられる大会であり、拓也が綾や賢とチームを組んでここ数年挑み続けているものだ。

 

 学生の部のように年齢制限がなく、そのレベルは非常に高いが、去年、拓也たちは地区大会の決勝まで進んでいた。

 残念ながら後一歩のところで敗退し、全国へはいけなかったものの、着実に力をつけている事は感じていた。

 

 去年の決勝戦の激闘を思い返しつつしばしその場に佇んでいた拓也だったが、後ろから肩を叩かれたことで現実へと引き戻される。後ろを振り返ると綾と賢士郎が揃って待っていた。どうやら拓也が来ないのを不思議に思って呼びに来たらしい。

 

 待たせた上に呼びに来てくれた二人に感謝の言葉をかけ、その場を後にしようとする拓也は最後にもう一度、ポスターを眺めた。拓也にならったのか二人も同じようにポスターを注視する。

 

(今年こそは必ず全国へ、そして世界へ)

 

 言葉は無くとも思いは一つ。その誓いを新たにして拓也たちはその場を後にした。

 




 一応主人公は拓也です。しょっぱなから負けていますが。
5/14 バトルの稼動シークエンスを直しました。
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