ガンダムビルドファイターズ アナザートライ 作:慢性睡眠不足
追記:サブタイトル及び本文の一部を変更しました。
チームバトル部門は一機のガンプラで戦うオーブントーナメントとその基本ルールを同じくするが、しかし独自のレギュレーションも存在する。
最大の違いはバトルにおける粒子使用量の制限だろう。オープンのそれに比べ、チームバトル部門ではバトル時の粒子回復量は低く、逆に攻撃などの粒子使用量は高く設定されている。
これはガンプラの制御や攻撃の演出などに使われるプラフスキー粒子の使用可能量を制限することで、バトルが粒子量頼りの力押し一辺倒になることを避け、戦略や連携といったチーム戦の魅力を引き出すためのルールだった。
そのため、サイズの関係で機体に蓄積可能な粒子量と回復量が多い大型
これらの細かい調整はダメージ制限と同様にプラフスキー粒子製造方法の再発見によって可能になったもので、チームバトルのみならず様々なバトル方式の成立に繋がっていた。
拓也達が出場する東京地区大会の西東京ブロックは、参加人数やそのレベルから全国でも上位の激戦区である。今年の参加チームは300を越えたが、全国に行けるのは一チームのみ。つまり地区優勝者だけだ。そして過去三年、その席はチーム〈可能性の獣〉が独占していた。
去年の大会で準優勝だったチーム〈アナザートライ〉は、今大会では第二シード権を得ていた。昨年の地区ベスト4に与えられるこのシード権により拓也達は二回戦まで試合はなく、本日のバトルは一戦のみ。監督役の陸や唯さんもその事は承知しており、応援に来るのは昼過ぎと言っていた。
だが、拓也達はその待ち時間をただ無為には過ごさなかった。同じブロックのチームの偵察や勝ち残り予想はもちろん、他のブロックの強豪チームの観察などやることはいくつもあったからだ。
そのために三人で手分けして会場を回っては、いずれ立ちはだかるかもしれない相手の情報の収集とその対策の構築に勤しんでいた。
幾つかの対戦候補の試合を見て情報を集めた後、一旦席に戻った拓哉は賢士郎と留守番役を交代した綾と共に別のブロックの試合へと向かった。
チーム<ユニバース>、その第一回戦の試合を見るためである。後で賢士郎に見せるためのムービーカメラも忘れてはいない。
「対戦チームは<アストレイズ>か。使用ガンプラはその名の通り、機動戦士ガンダムSEED外伝に登場するAstray系のはず。ガンプラ制作よりも操縦技能に重点を置いているチームだったよな。」
「はい。元々変わった機体とはいえ特に手は加えずただその完成度を高めていく方向性だったと思います。去年の大会では振るいませんでしたが、ベスト8以上を十分に狙える強豪チームに間違いはないでしょう。」
予定の対戦台に着くとすでに少なくない観客が付いていた。地形に合わせて専用の改造ガンプラを使用するチーム<マスプロダクツ>やVガンダム系列の改造ガンプラを好んで使うチーム<ビクトリーファイターズ>などの大会常連チームは全員見に来ているようだ。その中にはあの<可能性の獣>の三人もおり、真剣な顔でバトルの開始を待っている。
両チームが位置に付き、バトルの準備が整った。バトルフィールドは険しい山々が連なる山岳地帯。木や突き出た岩などの障害物が多く、山々を抜ける強風によって空中の機動が制限されるフィールドだ。時折深い霧が発生することもあり、突発的な遭遇も起こりやすい。
舞台の形成が完了し、両チームがガンプラをセットする。濃度を上げつつあるプラフスキー粒子によって命を吹き込まれた六体のガンプラはスタートの合図とともに一斉にフィールドへと飛び出した。
注目の一戦の開始である。
「チーム<アストレイズ>はレッドフレーム改、ブルーフレーム2ndLを前に出て、その後ろをゴールドフレーム天ミナが続く構成か。赤と青の二機が注意を引き付ける間に姿を隠した天ミナの不意打ちで混乱、あわよくば仕留めるって感じか。目立った改造はされてないみたいだけど、性能は去年の時よりも大幅にアップしているみたいだ。」
「チーム<ユニバース>の方は啓太さんがバックパックを大型に換装した黒いZガンダムの改造機、
開始と同時に航海された両チームのデータと飛翔するガンプラの様子から拓也と綾はそれぞれのチームに対する分析を口にする。
両チームともまだ接敵には少し時間があった。こういった隙間の時間を利用して戦況の分析や勝敗予想を行いつつ、試合状況の推移によってそれを修正していくのが拓也たちの観戦スタイルである。
観客が見守る中、まず動きを見せたのはチーム<ユニバース>、その先頭を行くZ・レイブンであった。急加速したかと思うと突如その身をバラバラに分割した黒いZに観客から驚きの声が上がる。宙に放られた四肢やバックパック、テールバインダーなどの複数の部位はしかし個々に変形を行いつつ先に射出されたフレームへと接合していく。
やがて数瞬ののちに完成したのは鋭角なシルエットを持つ巡行形態。
「差し替え変形を利用して、各形態での耐久性を向上させる、か。前見た時よりも変形完了時間がさらに短縮されている気がするな。」
「芯となるフレームに各部位を同時に接合していくことで変形箇所を少なくすると同時に完了までの時間を短縮したのでしょう。あの短さだと事前に察知していなければ、変形時を狙い撃つのは厳しそうです。」
拓也と綾が互いに感想を交換する中、遅れがちだった進行速度を上げた〈ユニパース〉は相手を求めて前へと進む。
両チームが激突したのはフィールドのほぼ中央、少し開けた盆地であった。険しき山々の合間にぽっかりと空いたようなその空間は天然の闘技場のようにも見える。
そこに最初に到達したのはチーム<アストレイズ>の方であった。一方のチーム<ユニバース>は足の遅いフルバスターZZを巡行形態のZ・レイブンが運んでいるとはいえ、少し遅れて到達する。
わずかとはいえその先行した利を<アストレイズ>は無駄にはしない。
それから数秒の後、直前でフルバスターZZを投下したZ・レイブンが盆地へと突入してくる。すぐさま待ち構えていた二機が構えていた攻撃を叩き込もうとした。だがそれよりも早く、黒いZはスラスターをふかしてその高度を上げると、その後ろから大量のミサイルが盆地のあちこちへと降り注ぐ。
爆砕された木々の破片と巻き上げられた土砂の嵐から逃れるためにレッドフレームはバックパックを再接続すると推進機能を開放して上昇。腰の二刀を抜刀してレイブンへと接近する。
一方のレイブンは人型への変形を利用してその上昇を止めると、接近してくる赤いアストレイに右手の二連装ビームライフルと左手の三連ガトリングカノンで迎撃。両手の火器から放たれた攻撃は的確にレッドフレームの進路を妨害し、その足を鈍らせた。
突撃の勢いを落とした仲間を援護すべく、ブルーフレームが上昇する。だがミサイル攻撃の余波の間に盆地へと侵入を果たしたフルバスターが下から攻撃を加えた。先の攻撃の残りとはいえそれでも十数本のミサイルがレッドフレームを襲い、回避軌道を取らせることでわずかながらも二機を分断する。
仲間と引きはがされたブルーフレームに接近したのはレイブンであった。赤い僚機をミサイルの爆炎と急降下でかわして自由落下よりも早く接近してくる黒いZに即座に腰のナイフ、アーマーシュナイダーを抜き放って迎撃にするブルーフレーム。
だがその二閃が届く直前、黒いZはスラスターを吹かして落下を上昇へと転じさせその頭上を取った。同時に背面の多関節テールバインダーにマウントされた三種目のライフルが火を噴く。
その大口径の砲撃は爆炎より抜け出したレッドフレームの右足を吹き飛ばす。そして同時に下へ向けられた左手のガトリング砲が至近距離よりブルーフレームを襲った。
とっさにバックパックを大剣へと変形させ、盾代わりにと上段へ突き上げるブルーフレームだったが、その突きを軽く身をひねってかわしたレイブンは逆にその剣身を蹴り飛ばす。
態勢を崩し落下するブルーフレームをレッドフレームを牽制していたフルバスターの砲撃が襲う。
背より放たれたその砲撃を大剣を盾に受けるブルーフレーム。一発、二発と耐えた大剣だったが、三発目で限界となり、四発目で右の剣身が失われる。
だが吹き飛ばされた大剣の後ろにはすでに何もなかった。
大剣と隠れ蓑に、後方に離脱中のレイブンを追ったブルーフレームは再び両手に握ったナイフを煌かせ、接近戦へ持ち込もうとする。
襲い来る光の弾幕をかわし、あるいは粒子変容塗料を塗布したナイフで弾いてレイブンへと肉薄するブルーフレームは少なくないダメージと引き換えに相手の懐まで接近すること見事に成功した。だがその直前にレイブンのバックパックよりこぼれ落ちた何かがその目論見ごと機体を切り裂く。
爆炎の中に消えるブルーフレーム。その中から黒い烏と共に現れたのは六基の白いユニットであった。
「あれはまさかスターレインのファンネル、いやファングか。」
「おそらくこの空間に突入前、レイブンに張り付けておいたのでしょう。離脱のタイミングが遅かったのも相手を誘い込む罠でしたか。中々の食わせ物のようです。」
拓也の驚きにそう返した綾の視線は砲撃を続けるフルバスターの後ろに回り込んだ天ミナの攻撃が展開された粒子シールドにむなしく阻まれる様へと向けられていた。
おそらく以前拓也と対戦した折にみた
先ほどから六基のフィンファンネルと共にレッドフレームを牽制していたスターレインだったが、すでに仕込みは済ませていたようだった。今も再び姿を隠して離脱しようとする天ミナを伏せておいた小型ファンネルが追撃している。
右盾より槍、ランサーダートを射出してそれらを射抜き、離脱しようとした天ミナを太い光が飲み込んだ。フルバスターの頭より放たれたハイメガキャノンは一瞬で相手を蒸発させ、周囲の地形をも焼き尽くす。
最後に残ったレッドフレームはその機動性をフルに発揮し、両手の刀を振り回して抵抗を試みる。だがすでに勝負は決していた。
最後はファンネルとミサイルの空間爆撃で追い詰められたところをレイブンの大口径ライフルによって射抜かれて爆散し、同時にバトル終了が告げられる。
試合はチーム<ユニバース>の勝利に終わった。チーム<アストレイズ>は決して弱いチームではないが、その彼らを全く寄せ付けず、まざまざと観戦者にチームの力を見せつける結果となった。
だがその場にいた強豪と呼ばれるチームのメンバーには驚きは少ない。それどころかすぐに戦術の対策を立てたり、隠されているであろう手札を予測したりと余念がない。勝ち続ければいずれ自分たちと当たることを彼らはしているし、その時に向けて勝つための準備を怠ることは彼らの頭にはないのだ。
「ふん、<アストレイズ>が敗れるとはな。だが奴らはこの大会の中でも中堅レベル。我々の敵ではない。なあ、道野 拓也。」
そう言って話しかけてきたのはチーム<エデン>のリーダー、
まあ実際は言動とは裏腹に相手を侮らず、分析や対策もしっかりと行っている。その証拠にチーム<ユニバース>を侮るような言葉とは違い、目は真剣そのものであった。
「強いのはわかっていたさ。前に少し戦ったこともあるからな。でもまあ、お前らが彼らと戦うことはないさ。チーム<ユニバース>がこのまま勝ち進めば準決勝でチーム<可能性の獣>当たるし、お前たちが勝ち進んでも準決勝の相手は去年と同じチーム<アナザートライ>、つまり俺たちだからな。心配なんてする必要はないだろう。」
拓也の言葉に天原は不敵な笑みを浮かべた。本人としてはかっこいいとおもっているのだろうが、拓也からしてみればどこか小物くさい印象をぬぐえない。演技でやっているならば大したものだが、これまでの経験からおもうにこれが素なのだろう。
「ふん、去年とは違うということを思う存分思い知らせてやろう。覚悟しておくんだな。」
そう言い放って天原はその場より離れた。おそらく次の試合を見にいくのだろう。拓也たちも動画を撮影していたカメラをしまい、賢士郎のところまで戻る。
まだ一回戦だが大会の熱気は既に空調でも抑えられなくなりつつある。だがそれもいつものことであった。
次回は近日中に上げる予定。とりあえず主人公たちの初戦になります。