ガンダムビルドファイターズ アナザートライ   作:慢性睡眠不足

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連続投稿。久しぶりの主人公チームのバトルになります。

ちょっとやりすぎたかもしれない。


第五回戦 青い地球を下に

 眼下に地球を、遥か後方に月を望む空と宙の境界。それが<アナザートライ>の第五回戦の戦場だった。

 

 三回戦と同じく四回戦も危なげなく突破した<アナザートライ>の前に立ちはだかったのは大学生を主体としたチーム<地球防衛軍>。「劇場版 機動戦士ガンダムOO」に登場するジンクスⅣにハードポイントの増設等の拡張性を上げる改造を施し、戦場に合わせた装備の即時換装によっていかなる戦場においても安定した力を発揮することができる高い対応力が特徴のチームだ。

 

 今回は高軌道ということもあり、三体とも両肩に大容量粒子コンデンサーを備えた大型スラスターを装備し、隙有らば地に落とそうとする地球の重力にも負けない機動性を確保している。

 

 武装はGNライフル、GNサーベルなどの取り回しに優れ、燃費のいいものが中心だが、<アナザートライ>対策としてか、二体に高出力GNフィールドを展開可能なシールドを、残る一体にはGNソードに換装していた。

 

「SSLシステムがあるとはいえ、ウチのチームは総じて粒子消費量が多い。残量は常に気をつけろ。」

 

「分かっています。どうやら向こうもGNドライブの粒子回復量増加を見込んでの長期戦の構えのようですね。」

 

 戦闘モードの賢士郎の注意に綾が答えた。二人の操るガンプラは高火力の武装が多く、当然粒子消費量も多い。

 

 特に重装甲の闘将シャイニングはその重量の分、通常の機動にも余計に粒子を消費する。そのため常に下方向の重力を感じる戦場と合わせて得意とする突撃離脱戦法が取りにくい。

 

 一方のブラストイーグルもまた脚部のミサイルランチャーを外して大容量粒子コンデンサーに換装しシールドを小型のものに変えたとはいえ、あまり粒子量に余裕はなかった。

 

 微量ながら常時粒子の自然回復量を上げているSSLシステムのおかげでガス欠は避けられているものの、持ち前の火力を制限されたために<アナザートライ>は相手チームを責めきれないでいた。

 

 しかし二人の顔に焦りはない。理由はチームメイトのへの信頼があったからだ。

 

「というわけで今回の主役は拓也さんです。がんばって下さい。」

 

「援護はしてやるから、相手を散々に掻き回してこい。」

 

「俺1人にやらせんなよ!」

 

 その二人の発言に反論しながらも拓也は背のスラスターから光を散らし、右のビームマシンガンを放つ。

 

 月が見えているため追加兵装のサテライトリフレクターを通じて莫大な量の粒子を機体に補充、蓄積可能なGXD2Vは、粒子消費を無視した高速機動戦闘を長時間継続することが可能だった。

 その性質を生かし、拓也は<地球防衛軍>の周囲を縦横無尽に飛び回りつつ、相手を引っ掻き回していく。

 

「左SBSライフル、チャージ完了。残り粒子残存量、148パーセント。よし、使え。」

 

 右手のマシンガンで攻撃を加えて地球連邦軍を散らし、GXD2Vを上昇させた拓也は左腰のライフルを投下する。

 同時に後方からGXD2Vの下を抜けたブラストイーグルがそのライフルをキャッチした。さらに己のガンプラを前進させた綾は右手のバスターライフルの照準を隠れ蓑に手に入れたばかりの武器を使って近くの一体が取るであろう予想進路に撃ちかけた。

 

 鼻先を撃ちかけられたジンクスが一瞬だけとはいえ停滞したところを見逃さず、綾は右手のバスターライフルの照準を即座に修正し、照射モードで発射した。

 

 遅れた動き出しと周囲を丸ごと飲み込むその広範囲攻撃に対し、ジンクスⅣはシールドを構えてGNフィールドを全周囲展開して受ける事を選択した。

 その判断のおかげで、両肩のコンデンサーに貯蓄していた大半の粒子と引き換えにしつつもジンクスはその攻撃を無傷で乗り切ることに成功する。

 

 しかし周囲の光が途絶えた後、その彼の目の前にあったのは左手に握ったディバイダーを盾に、右手に光を集めながら肉薄する闘将シャイニングの姿であった。

 

 本来切り結んでいるはずのリーダー機は今、上を取って残ったディバイダーと右手のマシンガンで撃ちかけるGXD2Vによって動きを制限されていた。さらに残った仲間もまた先の一射の直後にブラストイーグルがばら撒いたミサイルの対処に援護ための時間を削られている。

 

 不意をついた相手に対応する隙を与えまいと、自身とディバイダーの分を合わせて限界以上に加速した闘将シャイニングは慌ててサーベルを引き抜こうとするジンクスⅣの展開するフィールドに光を纏った右手を叩き込んだ。

 

 追加手甲によって大幅に威力を高められたシャイニングフィンガーは弱っていたフィールドをやすやすと引き裂くと、盾代わりに投げられたライフルも、振り上げられたサーベルの光も打ち砕き、ジンクスの中心をぶち抜いて後方へ抜けていく。

 

「ようやく一体撃破。だが今のでこっちは粒子切れだ。以後は牽制に回る。ついでにあの剣持ちはしばらくこっちで相手をしておこう。」

 

「分かった。無理はせず適当に抑えていてくれよ。」

 

「その間に私と拓也さんで確実にあの盾持ちにトドメをさしてきます。」

 

 背の長銃を引き抜き引き続きディバイダーで推進力を補ったまま、賢士郎は己のガンプラを相手チームのリーダーに向け、距離を開けた射撃戦に引き込んだ。そして拓也と綾は即座に自分達の役目を果たすべく、残りのジンクスに強襲をかける。

 

 拓也の操るGXD2Vは残ったディバイダーを背に追って、高機動戦闘を仕掛けた。右手のビームマシンガンが火を噴き、左手のSBSライフルが回避機動を限定したところで狙い済ました綾の一撃が相手を襲う。

 

 必死に回避し、時にフィールドを展開して何とか劣勢を跳ね除けようとするジンクスだが、このままでは落とされるのは時間の問題だということは誰の目にも明らかであった。

 

 それは向こうにも分かっていたのだろう。拓也と綾の苛烈な攻撃に追い詰められたジンクスⅣはついに切り札を発動させる。

 

 背より放出される粒子量が増加し、ジンクスの全身が赤く発光を始める。ガンプラ内の粒子を追加放出することで一時的に機体性能や火力、防御力などを大幅に上昇させる『TRAN-ZAM』。GNドライブ搭載機の切り札ともいえるこのシステムは多大な粒子消費量と制限時間経過後の性能低下というデメリットを打ち消すほどに強力で、場合によっては不利な試合を一気にひっくり返すことも可能だった。

 

 しかしそれはあくまでも通常の相手であり、<アナザートライ>にとってはむしろ待ち望んでいたものだ。

 

「!、TRAN-ZAMですか。拓也さん。」

 

「分かっている。焦ったな。」

 

 綾の声が飛び、拓也は叫びと共に特殊兵装を起動するためのスロットを選択した。即座にコマンドを実行したGXD2Vは数瞬で追加兵装のリフレクターユニットを左右に展開し、内部機構を露出させる。

 

 赤く光る粒子で全身を染め上げたジンクスが三倍に跳ね上げられた性能を発揮するのと、GXD2Vの背より開いたリフレクターより莫大な光が放出されたのはほぼ同時であった。

 

 「吹っ飛べ。サテライトブラスター!」

 

 クロスディバイダーのそれと比べ、照射範囲の拡大と発動時間の短縮を成し遂げた改良型サテライトブラスターの光をジンクスは限界機動により間一髪で回避した。しかしそのことに安心する間も与えず、交錯したサテライトブラスターの光と赤い粒子の残ったジンクスの軌道より爆発が生じ、そのまま発生源まで遡っていく。

 

「何だと!」

 

 驚愕し、追ってくる爆発から高まった限界以上の加速で逃げようとするジンクス。だがそれを実行する暇すら与えられずに爆発の連鎖は一気に高濃度粒子の放出源へと到達した。

 そしてジンクスを捕らえるや否や、一気にその全身を飲み込み、大爆発を起こす。

 

 部品一つ、チリ一つ大気圏に落とすことなく消滅した僚機の最後に動揺し、隙を生んだリーダー機に綾による狙い済ましたバスターライフルの収束砲撃が穿たれた。

 次いで左手のディバイダーの内部砲口を展開する闘将シャイニングが頭上を取った時点で勝負は決した。

 

 

 

 

 

「成る程な。」

 

 光の雨に飲み込まれ、爆発する<地球防衛軍>の最後のジンクスを見て宇野啓太は呟く。彼の脳裏には数ヶ月前の前哨戦と先ほどのバトルで使われたサテライト武装がもたらした二つの異なる結果が浮かんでいた。

 

「前見たときには威力を犠牲に攻撃範囲を広げたサテライトキャノンの応用武器の未完成品かと思っていたが、違ったな。あれは攻撃武器ではなくブースト殺しのカウンターが本来の用途だったのか。」

 

 数ヶ月前の凜花とのバトルでは攻撃範囲が広いだけで威力も低く、粒子消費量も多いだけの武装でしかないと思っていた彼は素直に自分の見識を改める。すると隣で観戦していた女性、大野美鳥が正解というかのように語りだした。

 

「ああその通りだよ、”三本足”。実際に去年の地区準決勝であの武装が使われ、結果としてあの子達はその戦いを勝ち抜いている。決勝の舞台は日中の市街地フィールドだったからサテライトシステムの関係であの武装は使われなかったが、もし使われていたらなかなか面倒なことになっていたかもな。」

 

 言外に結果は変わらなかったと臭わせつつ、昨年の地区優勝チーム筆頭は言った。しかしその反対側で腕を組んで試合を完成していた彼女のチームメイト、遠野 真里が呆れたように茶々を入れる。

 美鳥よりも頭一つ半は低い身長と幼い顔だちから可愛らしい印象を与えるが、その性格も闘い方も外見を大きく裏切っている女性だ。

 

「でもみーちゃん、決勝のフィールドが決まるまで対策どうしようって頭を抱えていなかったっけ?それにフィールドが昼に決まったとき密かにガッツポーズをしてたでしょ。」

 

「去年のことさ。忘れたよ。それに今年は対策も一応練ってきてはあるしな。あれについては問題ない。ただ……。」

 

 チームメイトのからかいを澄まし顔で流して見せた美鳥だが、ふとその言葉の語尾を濁した。そして心中にある懸念に端正な顔を少し歪ませながら言葉を再開する。

 

「ただ、問題はあの子達が何を隠しているかだ。去年の大会でもギリギリまで手の内を隠して勝ち進んでいた。それなのに今年は初戦から粒子回復システムや広域波動照射を使ってきている。それはつまり……。」

 

「つまりその二つは見せ札に過ぎず、さらに奥の手をいくつか隠し持っているってことだろうねぇ。」

 

 仲間の言葉を引き取り、のんびりとした口調でその続きを明かしたのは最後のメンバー、猫山 始であった。穏やかな顔に眼鏡をかけたこの青年はチーム<可能性の獣>の参謀であり、今も録画した先ほどのバトルを手元の端末でリプレイしながら会話をこなしている。

 

 ひなたぼっこ中の猫のような雰囲気を持つどこかとぼけたような青年だが、昨年の全国大会で啓太は彼の無造作に見えてその実狡猾な弾幕攻撃に追い詰められ、落とされていた。

 

「今までのバトルを見たところだと、もう重装型ウイングやディバイダー改造機にはこれ以上の隠し玉はなさそうだなあ。問題はあの武者風シャイニングだけど、その切り札も大体読めるし。それでもまだ隠しているとすると後は……。」

 

「追加の武装か補助パーツ。違う?」

 

 後ろで取った録画を確認していたはずの凜花と正弘がいつの間にか戻ってきて会話に加わった。どうやら啓太を呼びに来たついでに会話を耳に挟んだようだ。

 

 凜花に自分の考えを当てられた始は苦笑しながら、さらに見解を付け加えてその言葉を肯定する。

 

「多分、そうだろうね。お嬢さん。僕としては後者の方を押したいかなぁ。単なる武器だと今の武装とのバランスがイマイチになるだろうし。」

 

 一同はその見解に同意しつつ、<アナザートライ>の方を見る。彼らの視線の先では勝利を喜びつつも、さりげなくこちらの視線から隠すように自分達のガンプラをホルダーの中にしまい込む少年達の姿があった。

 

 御そろいのパーカーの上袖に縫い付けられたチームエンブレムを見つつ、美鳥が笑う。

 

「やれやれ、なかなか抜け目の無いちびっ子達だな。」

 

 二つのチームに目を向けてくる<アナザートライ>に手を振りつつ、美鳥はなんでもないように言った。

 

「まあいい。どうせあと数試合で決勝だしな。例え何か隠し持っていたとしても軽々と超えていってやるさ。」

 

「そうだね。それじゃ私たちはそろそろ次の試合を見に行くから。みーちゃん、行こうよ。」

 

「うん。では<ユニバース>の皆さん。準決勝でまた会いましょうか。」

 

 王者の余裕を見せ付けつつ、<可能性の獣>はその場を去っていった。その姿が人ごみに消えるのを待ってから啓太はチームメイトに話しかける。

 

「あいつらも気になるが、まずはあっちの猛獣達のほうを何とかしないとな。」

 

 そう言った啓太の目は鋭かった。先ほどの発言で<アナザートライ>もその前に当たるであろう<ユニバース>も下すと宣言したのだ。当然、それを実現させてやるつもりは彼には無い。

 

「正弘。お前の考えた連中対策の作戦案。もう一度見落としが無いか後で確認してみよう。」

 

「ああ、念には念をいれとこう。それじゃ、俺達も行こうか。」

 

 そう言って次の場所へ歩き出した啓太と正弘。しかし凛花は最後に振り返り、バトル台から離れる<アナザートライ>の最後尾の少年を見据える。

 

「あなたへの借りはかならず返させてもらう。」

 

 小さくも強い決意を込めた言葉を残し、彼女は仲間の後を追って人ごみに入っていった。

 

 




ちょっとやりすぎたかもしれない武装の登場。詳細は下に。

【チーム・ガンプラ解説】


<地球防衛軍>

【チーム紹介】

 汎用性と適応を重視したチーム。汎用性の高い量産機をベースにさらにハードポイント増設によって拡張性を上げ、フィールドごとに設定した武装を装備することで戦場を選ばずに戦うことを目的としている。また当然それらの装備を十全に扱うためにファイターの技量も高い。

【機体紹介】


◆ジンクスⅣ

 「劇場版 機動戦士ガンダムOO 」に登場する。TV版に登場した主力量産機ジンクス系列の最終機といってもいい。量産機ながら一時的に機体の能力を大幅に上げるトランザム機能を備えている。また拡張性にも優れ、武装のバリエーションも豊富。
 その原型の優れた拡張性をさらに上げ、幾多のバトル結果から見出した武装パックを装備することでいかなる戦場でも高い戦績をはじき出す。



[補足説明]

<アナザートライ>

◆サテライトブラスター

 サテライトシステムを利用した特殊兵装。複数の振動数を持つ粒子光を重ね合わせて照射することでガンプラを動かすプラフスキー粒子に干渉し、強制的に爆発を演出する粒子へと変換する。

 もともとはガンダムダブルエックスの熱を光に変えて放出するラジエータ機構が元。この反応を逆に利用してソーラーシステムのような広域照射武装を作れないかという思いつきに端を発する。

 その後の紆余曲折と幾多の迷走を経て、何とか求める反応を引き起こすことには成功するも、今度は変換効率の低さが問題となり、攻撃兵装としては使えないという結論になる。
 しかし開発の過程で発見された連鎖爆発性や粒子濃度に比例しての威力増大などを利用し、高濃度粒子放出を利用したブーストや大量の粒子チャージなどに対するカウンター兵装として実装された。

 高濃度粒子を利用する攻撃やブーストに対し文字通りの一撃必殺を可能とする兵装だが、粒子消費量が多く、サテライトシステムの利用が前提。
 また照射タイミングや範囲の関係から使用が難かしく、場合によっては味方を巻き込む可能性もあるために、切り札というにはやや心もとない。



 要はトランザムだろうがRGシステムだろうが次元覇王流だろうが、当てさえすれば問答無用で火達磨にすることが可能というかなりえげつない武装です。

 ただし通常の場合だと表面の塗装をはがすのがせいぜいなので役に立たず。もしブースト機能等を封印して純粋な技量と性能で挑んできた場合は真っ向勝負を受けて立つしかなくなります。
 また相手の切り札を封じるという利点はあります。ただしそのためには発動分の粒子を常に確保しておかなければいけないという欠点もあり。
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