ガンダムビルドファイターズ アナザートライ   作:慢性睡眠不足

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 二話投稿。


大会へ向けて

 拓也が初めてガンプラバトルの存在を知ったのは小学二年生の時だった。重度のガンダムオタだった兄に連れられていった模型店、そこで行われていたバトルに圧倒され魅せられ、興味を持ったのが切っ掛けである。

 

 はっきり言って今の世においてはよくあるありふれた出会いだったが、少ない小遣いをつぎ込み、兄が放置していた塗装道具一式他を借り受けて自分のガンプラを作りあげ、ほぼ毎日その模型店に通ってはバトルを繰り返すほどに拓也は熱中した。

 

 日々の連戦で操作テクニックを高めつつ、年の離れた兄が持っていたガンダムシリーズのDVDにも手を出し、解説者つきでの視聴によってその知識を深める。また行き着けとなった模型店の店長に頼み込んでその卓越した製作技術を教わり、ファイターとして、そしてビルダーとして拓也は日々精進を重ねていったのである。

 

 誰よりも強く、そして誰よりも楽しく。

 

 明確とは言えないそんな信条の赴くままに、拓也は(小遣いが許す限りの)ガンプラを製作し、バトルの連戦を繰り返す日々を送っていた。

 現在チームを組んでいる綾や賢士郎ともその時期に出会ったはずなのだが、正直拓也はそのことをはっきりと覚えていない。ただ同じようにガンプラを愛し、バトルを楽しむ二人と気が付けば仲が良くなっていた。ただそれだけである。

 

 出会いこそはあまり覚えていないが、三人が明確な意味で仲間となった日のことを拓也はしっかりと記憶していた。あれは春の気配が強くなったある休日、三人で参加したバトルロイヤル戦のことだ。

 

 その日、店長(マスター)の旧友であり世界でもトップレベルのファイターがやってきたため店はかつて無いほど盛り上がっていた。少なくない店の常連が彼に挑戦を求め、ならばと多人数を裁ける6人同時対戦、いわゆるバトルロイヤルで応えようという話となったのだ。

 

 丁度店に来ていた拓也たちも当然参加を希望した。しかし目の前で腕に憶えのある常連達が次々と挑んで行っては彼にあっさりやられていく様を見せつけられる。

 このままでは勝てないと判断を同じくした拓也たちはひそかに協力関係を結び、バトル開始後すぐに一機を撃墜したファイターの隙を付いて三位一体の攻撃を敢行した。

 

 しかし、相手は世界レベル。即席の連携は容易にかわされ代わりに強烈な反撃を返される。

 互いにフォローしあい、しぶとく粘るものの綾が落とされたことで連携を崩され、多少踏ん張ったものの拓也と賢士郎も撃ち落された。

 

 数発の攻撃をくらわせつつも結局は敗北した拓也たちだったが、その試合を見ていたマスターに後日参加を勧められたのが全日本ガンプラバトル選手権、そのチームバトル部門であった。

 

 後に聞いたところ、拓也たちを打ち負かしたその旧友が、その連携攻撃に未熟ながらも光るものを見出したらしく、丁度申し込みが迫っていたチームバトルに参加してはどうかと提案したらしい。

 

これが拓也たちのチーム「アナザートライ」の設立の経緯であった。

 

 

 

 第七回ガンプラバトル世界大会後のシステム暴走事故やそれに続くゴタゴタで一時稼動を停止したガンプラバトル。その後独自のプラフスキー粒子製造技術を開発したヤジマ商事がPPSE社から関連する権利等を引き継いでガンプラバトルを復活させた。

 

 その際過去のレギュレーションを一新すると同時に振興策として様々なバトル形式を提唱し、ガンプラバトルの裾野を広げることを模索する。二機でコンビを組んで様々な障害へ挑むペアバトルや多人数同時参加による妨害、潰し合いありの障害物レースなどが有名だ。その中でもっとも勢力を伸ばしていたのが三人一組で戦うチームバトルであった。

 

 当時は大会が開設されて二年余りで参加人数もさほど多くなく、せっかくだからと年齢無制限の部門に拓也たちは参加を決めたのである。

 

 しかし、大会のレベルは高かった。

 

 一回戦はなんとか突破したものの、予選二回戦目で敗退。圧倒的なまでの機体性能差に僅か開始30秒の敗北であった。

 

 拓也たちはその屈辱と悔しさを糧に、ビルダーとして評判が高い模型店のマスターやその仲間に教えを請い、インターネットを駆使して製作技術関連の見聞を広げ、コンテストで上位入賞したガンプラを小遣いの許す限り片っ端から再現しつつその技術を盗んだ。

 果てはマスターの伝手をたどり、夏休みを利用してガンプラ心形流の合宿にも特別参加者として潜り込んだ。そうして三人はひたすら己の製作技術を向上させたのである。

 

 そして全国ガンプラコンテスト小学生の部で優勝以下上位入賞を果たした勢いをもって迎えた2年前の選手権大会。去年の雪辱に燃える三人は一回戦、二回戦を圧勝し、三回戦も何とか突破した。しかし準々決勝にて連携の隙を突かれて敗北する。

 

 「機体性能は良くとも、連携が甘いんだよ。」と勝ち誇る相手チームにリベンジを誓った三人は、一年かけて古今東西のあらゆる連携やら陣形やらコンビネーションを出来る限り研究、実践を繰り返した。

 同時に2対1、3対1といった数的に不利なバトルを多くこなして相手の連携を封じたり、いなしたりする技術を修練したのである。

 

 そうして多種多様な状況に対応できるコンビネーションとどんな相手の連携をも封じる対応力を引っさげて挑んだ去年の大会では、準々決勝にて前年に敗北したチームに対し見事雪辱を果たした。

 

 鮮やかなコンビネーションといやらしいまでの連携妨害で完勝し、「バカなー」といって爆散した相手に拓也たちはドヤ顔×3を返して勝ち誇った。

 「覚えてろ、来年は地獄を見せてやる。」などと捨て台詞を残して去る相手チームを下した勢いのまま拓也たちは決勝へと初めて駒を進めた。

 

 決勝の相手は前年度の優勝チームであり全国大会でもベスト16に入った強豪チームであった。最有力の優勝候補相手に一進一退の激戦を繰り広げる拓也たちだったが、最後の最後で敗北する。観戦していたマスターの言によるとほんの少しの技量の差が勝敗を分けたらしい。

 

 後一歩のところで全国を逃したその瞬間を拓也達は今でも時々夢に見ていた。

 

 その敗北からこの一年は、サーベル1本のみでバトルや射撃武器のみ使用可能といったシチュエーションを限定したバトル、または最低性能のガンプラを使っての素組みバトルなどを重点的に行って個々の操縦技術を精錬させた。たまに「反撃不可!ファンネルの嵐を乗り切れ」や「頼れるのはナイフ1本、己の未来を切り開け」といった若さと無謀さに任せた特訓や面白がった協力者たる兄発案の無茶な訓練も混じっていたが。

 

 そういった訓練を全て乗り越え、個人の能力を高めて再度連携を見直し、不利な状況をひっくり返す地力と根性を伸ばす事に日々を費やす。

 

 新旧の友人たちや馴染みの客の協力も得て、思いつくこと出来ることは全てやった。今年こそは全国へ、そして世界へと三人は誓いを胸に抱きながら大会までの日々を過ごす。だがまだ最後に解決しなければならない最大の問題があった。

 

 

 

 二月に入り、世間一般がバレンタインデーで浮かれ始める頃、最後の問題を解決するため三人は拓也の部屋で難しい顔で額を突き合わせていた。テーブルの上はびっしりと書き込まれたノートや様々なメモで埋め尽くされ、床まであふれている。彼ら一同を悩ませているのは大会用のガンプラ、その最終設計であった。

 

 今年中学に進学する拓也や、同じく中学進学に合わせて少し離れた郊外へ引っ越すこととなった綾、春休み中に入院した祖父の見舞いに遠方へ行く賢士郎といった具合に三人とも春休みの大部分を潰すことになると予想したため、本来ならば年明けにはガンプラの製作を始める予定だった。

 

 しかし拓也と賢士郎が以前から共同で開発を試みていたあるシステムの実装に昨年末成功したため、設計の見直しが必要となったのである。

 これがあれば世界でも戦えると思いを共有したものの、すでに八割方完成していた設計をほぼ全面的に直す労力は並大抵のものではなかった。

 

 それでも綾のウイングガンダム改(仮称)や拓也のGXディバイダー2(これも仮称)の設計は完成し、あとは多少のアレンジを加えつつも製作するだけの段階までは来ていた。実際、綾はすでに一昨日から製作に取り掛かっている。問題は賢士郎のシャイニングガンダムS(当然仮称)である。

 

 チームの役割として綾が後衛、拓也が中衛、そして賢士郎が前衛を担っていた。最前線で相手と戦う前衛には高い中、近接能力と防御力が必須で、また機動性もおろそかに出来ない。その上に例のシステムの搭載もあってこの一ヶ月、設計案を前に三人は頭を悩ませ続けてきたのだ。

 

 あーでもない、こーでもないと長い議論を重ねたことも合ってようやく本日、最後の設計が完成したのだが……。

 

「なあ。これ、作れるか?」

 

「何とか、頑張ってみるさ。駄目そうだったら早めに連絡するよ。いざとなったら手伝ってくれると助かる。」

 

 苦心の設計案を眺めていった拓也の問いに賢士郎は自信なさげに答えを返した。そのやり取りにを見ていた綾が一つの案を示す。

 

「大会の開始は6月の始め。機体の調整と習熟期間を考えて、三月の下旬から四月の半ばばには機体の完成に目処を付けておきたいです。そこで完成が間に合いそうだったら、そのまま進めましょう。もし完成が見込めない、あるいは十分な習熟期間が取れないと判断したら、一度開発を中断しましょう。賢さんはとにかく機体本体の完成を最優先にして、武装まで手が回りそうに無かったら旧来の流用でしのぐというのはどうでしょうか。」

 

 綾の提案に拓也と賢士朗も頷いた。その二人に対し綾は言葉を続ける。

 

「お互いの開発状況は出来れば毎日報告しあうことを忘れないで。何か問題が発生したらすぐに知らせてください。この二点は絶対守ってくださいね。」

 

 やさしい口調で殊勝な言葉を重ねる綾だが、拓也と賢士朗にはその本心が容易に読み取れた。すなわち「破ったらどうなるか分かっていますね。」の意である。

 

 表の気遣いと裏の脅しをしっかりと受け取って1つ年下の少女に引きつった笑みを返す賢士朗に対し、拓也は自分の製作をなるべく早く終わらせて彼のサポートに入ろうと密かに心に決めた。




 ちょっと年齢設定が低いかも。もしかしたら後で変えるかもしれません。まあ本編の彼らも中学生なんですが。
 できれば今週中にもう一話あげたい。
6/17 時間に関して一部を修正。
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