ガンダムビルドファイターズ アナザートライ   作:慢性睡眠不足

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連続で投稿。本来はここでバトル終了の予定だったのにまだ続きます。


前哨戦

「よし、これで一機と。」

 

 試作型ディバイダーの砲撃で光に飲み込まれる重装型ゲイツの姿を確認して拓也は一息ついた。周囲に敵影は無く、機体の粒子量もほとんど減っていない。警戒を怠らずに機体の状態をざっと確認してから、もう一度試作ディバイダーの様子をチェックする。

 

 ほんの数時間前に組み上げたばかりで塗装もしていないが、今の戦闘を見る限りではなかなかのものだった。少々重いが関節部にかかっている負荷も予想以上に少ない。長期戦になればわからないがこれなら後一つぐらいは機能追加が出来そうだと拓也は考えた。

 

 現在拓也が使っているガンプラは去年の選手権大会で使用したGXクロスディバイダー、その改良型である。GX(ガンダムエックス)から流用し改造を施したサテライトリフレクターユニットを二基、バックパック左右に装備しているのが最大の特徴だ。

 

 サテライトキャノンこそ装備していないが両肩部に追加された旋回式ビーム砲とビームマシンガン二丁分を材料に作った四連ガトリングライフルを備え、さらにこれまたGXより流用し強化改造したシールドバスターライフルと手製のグレネード弾を左右の腰にそれぞれ追加装備している。

 

 運用面についてはサテライトシステムを通じて供給された大量の粒子をリフレクター及び機体の各部に蓄積し、推力や火力にある程度自在に振り分ける事が可能なっていた。

 

 決勝まで勝ち進んだ強力な機体なのだが、サテライトシステムが使えない場合粒子の蓄積に時間がかかって、機体の長所がほとんど生かせなくなるという問題もある。

 実際、去年の決勝フィールドは昼間の市街地戦であったため、サテライトシステムを使えず苦戦の末に敗退する事となった。

 

 しかし今回のフィールドは宇宙であり、この機体の性能を存分に発揮できる。さっきの一機も開始直後のサテライトシステム起動によるガイドレーザーを利用してわざと居場所を知らせ、相手を呼び込んで撃破したのである。

 

 さて、このまま待つかそれともこちらから探しに行くかと思案する拓也にレーダーが警戒音を鳴らした。見ればこちらへと高速で向かってくる機影が一機ある。どうやら探しに行く必要はなさそうだと拓也は思考を切り替えて次の相手に集中する。

 

 まっすぐにこちらへ向かってくるガンプラは赤いカラーリングが施されたHi-νガンダムであった。元は小説版「逆襲のシャア」に登場する主役機体だが、紆余曲折の内に同名の映画に登場するνガンダムの完成型としての位置に落ち着いた。再充電可能な背面のラックに備えたフィンファンネルが最大の特徴で、その人気も高い。

 

 その赤いHi-νガンダムは背面にもう一対のファンネルラックを追加し、肩や脚部にも何らかの武装を追加しているようで、元のガンプラに比べそのシルエットが大きく変化している。左手の盾の表面には円形状のパーツが6基はめ込まれ、その先端からは二連の砲口が見てとれた。

 

 拓也にとっては見慣れない機体である。果たして常連の新作か、それとも新参の手によるものか。拓也は後者と断じた。この機体(クロスディバイダー)について知っているならば、サテライトキャノンを警戒したその動きはあまり意味を持たないからだ。

 

 射程距離に踏み込んできた相手が速度を緩めて肩や背部から大小無数のファンネルを放出した時、それは確信に変わった。多数の攻撃ユニットを同時に展開して相手を包囲殲滅するのはファンネルを運用する上での基本戦術であるが、拓也には通じない。

 

「罠か、それとも慢心かは知らないが、付け込ませてもらう。」

 

 そう呟くと拓也はディバイダーを砲撃モードにして拡散ビームを数発撃ちながら、背部のスラスターと左右のリフレクターを展開する。そして一気に加速をかけて相手の領域に踏み込んだ。先程の数射でその展開網を乱された赤いHi-νが撃ってくる散発的な射撃を避けつつ、拓也は自身の最大速度を持ってその展開予想領域を縦横無尽に駆け回った。

 

 ファンネルを初めとする遠隔操作可能な機動兵装による数と全方位からの包囲攻撃は確かに一度捕まると対処が難しい。しかしそのサイズと同時運用の関係上、一機当たりの粒子保持量には限界があり、一撃の威力も加速性能も高くはなく、活動可能時間も限られている。

 

 また多数のユニットの操作に能力が裂かれる以上、たとえ機能のサポートを受けたとしても本体の操縦が多少なりとも疎かになる問題もあった。これらはあくまでも本体や他のユニットとの同時運用が前提の武装なのだ。

 

 ゆえに中級者以下ならともかく上級者にとっては死角からの不意打ちや広範囲への一斉攻撃を除けば、牽制ぐらいがせいぜいの補助武装に過ぎない。

 

 拓也は展開したスラスターやリフレクターから粒子を吐き出しつつ、相手を中心とした広範囲を飛び回るように移動する。その高速機動によって相手のファンネル郡を引っ掻き回しつつ、右手の四連ガトリングライフルを使って本体へ攻撃をかけた。

 

 たまに本体や進路近くにあったファンネルが撃ってくる事もあったが、散発的な攻撃では、高速で移動するこちらを捕らえる事など出来はしない。逆に射撃によって位置を特定され、肩部のビーム砲の反撃で楽に叩き落される始末である。

 

 そうやって5機ほど撃墜したとき、相手の攻撃パターンが変わったのを拓也は感じた。こちらを直接狙うのではなく、その進路を限定しようとする攻撃に変化したのである。

 

 確かに普通の機体ならば粒子を多大に消費する高速機動はそろそろ限界であろうし、消費を抑えて移動速度が鈍るであろう相手を追い込んで落とすのは難しくは無い。しかしこのクロスディバイダーはサテライトシステムを通じて大量の粒子を供給、保持しているため、その残存量にはまだ余裕があった。

 

 こちらを追い込みにかかった赤いHi-νがその両脚の追加パーツを切り離す。するとそのユニットは緩い弧を描きながらこちらの進路へと接近し、内部に蓄えられたミサイルを一斉に吐き出した。相手のこれまでの攻撃とこのミサイル攻撃から、拓也は相手の罠が設置されているであろう空域に見当をつける。そしてそのまま飛来するミサイルを肩部のビーム砲とライフルで迎撃しつつ、上手く追い込まれているようにその進路を取った。

 

 半数ほどを叩き落した後、牽制射撃をしてくる赤いHi-νとの距離が近づいたのを確認した拓也はライフルを小脇に挟んで右腰のグレネード弾を取り出すと残りのミサイル郡へと投擲する。さらにタイミングを見計らって放たれた肩部ビームがそれを撃ち抜き、爆炎の壁を作り出して追尾するミサイルを飲み込んでいった。

 

 誘爆によるさらなる爆炎によって一瞬の隙を得た拓也はその進路を急転換すると赤いHi-ν本体へ向かう。速度はこちらの方が上のため逃げる事は不可能である。しかし……。

 

「まあ、やっぱりそうだよな。」

 

 高速で相手に迫るクロスディバイダーを出迎えたのは無数のビームの砲撃であった。赤いHi-νの周囲に展開した十を超えるファンネルが、一斉に拓也に向かって光の雨を降らせる。

 

 高速で動く相手を追いかけて捕らえるのが難しい以上、無駄な消費を避けるため自身の周囲に伏せておくのは当然である。その上で数機のファンネルと囮にしてこちらをある一点に追い込むように見せ、罠の存在を疑わせる。

 後は手薄だと思わせた本体の方へ上手く誘導して、のこのこやってきた相手に集中砲火を食らわせてやればいい。大方そんなところだろう。

 

「しかし、それを待っていたのはこちらも同じだ!」

 

 無数のビームの雨を避け、あるいは受け流しながらそう叫んだ拓也はあるスロットを選択する。するとバックパック左右のリフレクターユニットが推進に利用していた粒子の放出を停止し、その基部ごと肩の外側へ張り出すように引き出される。同時にリフレクターの表側も中央から外へと開き、その内部のクリアパーツからなる機構を露出させた。

 

 開かれたクリアパーツが発光し、リフレクターパネルがその展開位置を微調整する。そこに着弾した数発のビームが光に変換されるのを見た赤いHi-νは即座に回避行動に移ろうとするが、拓也がその引き金を引く方が早かった。

 

「なぎ払え、サテライト・ブラスター。」

 

 拓也の叫びと共に展開された四枚のリフレクターパネルがその内部に蓄えられた残存粒子全てを光と変えて放出する。逃げ場など存在しないほどの広範囲攻撃は、赤いHi-νをその周辺ごと一気に飲み込んだ。そして光の奔流の中に無数の小規模な光爆が現れては消えていく。

 

「なんだ、これは。MSサイズのコロニーレーザーとでも言うのか。」

 

 この機体について知らない観客が疑問と驚愕の声を上げる。もっとも引き起こす現象は似ているが、こちらはリフレクターから特殊な振動波を放出して効果範囲内のある特定のプラフスキー粒子を光と熱に強制変換させるものであり、その原理から異なっている。

 

 本来ならば振動波のための粒子量が足らず、範囲を限定したとしても実用には向かない武装だ。

 しかしサテライトシステムを通じて莫大な粒子の供給を受け、それを機体各部に圧縮し溜め込む事で可能としたのである。

 

 しかし光の終幕と共に現れた赤いHi-νは各部が損傷し、煤けているものの戦闘不能なほどの損傷は無かった。どよめく観客をよそに拓也は冷静にリフレクターユニットを収納し、自分と相手の機体の状態を確認する。

 

 広範囲に設定したこともあってもともとの威力はそれほど高くは無く、また先の高速機動によってリフレクター内の粒子も3割を切っていたため、放射時間も短かった。収束して放ったのならばともかく、先の攻撃では機体本体に致命的なダメージを与えるほどではなかったのである。

 

 それでも並みのガンプラならば戦闘不能にまで追い込めただろうが、完成度の高い相手のガンプラにはダメージが小さかったのだろう。相手にとっては撃墜されなかった事だけを見れば幸運だったかもしれないが、残念ながらそう甘くは無い。

 

「くっ、ファンネルにライフルまで。」

 

 拓也の耳に赤いHi-νのファイターらしき女子の声が聞こえた。おそらく先程気になった彼女であろう。なかなかの相手だが、今の攻撃で周囲に展開していたファンネルは一掃され、攻撃に使っていたライフルなどの主兵装も失っている。機体本体にダメージがあまり見られないのも今までの攻撃で機体内部の粒子が少なくなっている一因のはずだと拓也は判断した。

 

 クロスディバイダーも先程までの攻防でリフレクター内の粒子は完全に使いきり、また冷却が完了するまでサテライトシステムは使えない。本体の粒子もだいぶ減っているが、それでも相手よりは大幅に有利であった。

 

「このまま、決着を着けさせてもらおう。」

 

 弱った相手にさらに畳み掛けるために拓也はクロスディバイダーを発進させる。赤いHi-νは後退しつつ、追い込みに使ったがゆえに先の一撃を免れたミサイルユニットファンネルを間に割り込ませ、残されたミサイルを全て放出し足止めをかけようとする。だが、拓也はディバイダーを変形させ、拡散モードでなぎ払いながら加速した。

 

 そのまま一気にディバイダーの収束砲撃で赤いHi-νを仕留めようとした拓也を、右手から飛来した一筋のビームが襲った。

 

「なっ、この!」

 

 とっさに回避する拓也だったが、完全に攻撃態勢に入っていたこともあって反応が遅れる。宙を走る光はその勢いを落とさずに右リフレクターユニットを吹き飛ばすと彼方へと消えた。

 

 その衝撃で足が止まったクロスディバイダーに対し、好機と見た赤いHi-νがシールド内の連装ビームで追撃をかけ、右手に握った四連ビームガトリングライフルに着弾、爆散させる。

 

 さらに、呼び戻した数少ないファンネルで追い討ちを仕掛けようとした赤いHi-νを先程の一射と同じ方向から無数の光弾が襲った。未知の相手を警戒して赤いHi-νは距離を取り、その隙に拓也も体勢を立て直しつつ警戒する。

 

その時、先程攻撃がなされた方向から一体のガンプラが近づいてきた。大きさは睨み合う二機とほぼ同じ。金色に光る全身と、背にある巨大な赤い翼、そして肩や盾に施された竜の意匠が目を引くガンプラであった。

 

 右手に握られた竜の尾を模した長銃と、左手に装備された竜頭盾の口内から覗く砲口がピタリとクロスディバイダーと赤いHi-νを狙っている。

 

「スペリオルドラゴン、そのリアルタイプか。またなんと物好きな。」

 

 乱入者の姿を認め、左腰からシールドバスターライフルを引き抜きつつ、拓也は呆れたように呟いた。その間にも赤いHi-νへディバイダーを向けて警戒することも忘れない。その赤いHi-νもまた自分の敵たちに対し、残されたファンネルを全て展開し、相対する。

 

「さて少々苦しいが、逃げられる気も逃げる気もしない以上、やるしかないか。」

 

 現在の機体の状況を確認し、拓也はそう呟いた。例えどんな相手だろうと引く気はない。その意思を感じたのか黄金竜が拓也に向かって一射を放ち、その一撃が三者による新たなバトルの始まりを告げた。

 




次回こそはバトル決着から序盤終了まで行きたい。
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