ガンダムビルドファイターズ アナザートライ   作:慢性睡眠不足

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 バトル終了。地区大会編開始までは後1、2話かかります。


乱戦決着、そして

 スペリオルドラゴンはSDガンダム外伝シリーズの登場人物である。SDガンダム外伝は2.5頭身から3頭身にデフォルメされたガンダムの登場機体を擬人化して登場人物としたSDガンダム作品郡の一つであり、中世ファンタジーの世界観が特徴のシリーズだ。

 

 スペリオルドラゴンは物語の舞台であるスダ・ドアガワールドの守護神としてその危機に立ち向かい、また各外伝作品の主人公たちに助力するためにもシリーズを通して度々登場した。

 

 目の前のガンプラはそのスペリオルドラゴンを通常のHGとほぼ同じサイズで再現した機体のようだが、長銃など独自のアレンジもなされ、バトルの事を考えて改造が施されているようであった。

 

 その黄金竜(スペリオルドラゴン)は数射の攻撃でクロスディバイダーと赤いHi-νの状態と挙動を確認すると、四対の翼より粒子を放出して急加速を始めた。その視線と進路は武装の大半を失った赤いHi-νに向けられている。

 

 右手の長銃で拓也を牽制しつつ接近する黄金竜に、赤いHi-νは逃げ切れないと判断したのかファンネルで牽制しつつ、背部からビームサーベルを引き抜くと同時に加速して、迎撃にかかる。

 

 それを見た黄金竜は肩部から光弾を放って幾つかのファンネルを叩き落しつつ、右手の長銃を背部のホルダーに戻し右腰より長剣を引き抜いた。

 

 高速のまま両者がすれ違い、同時に剣閃が宙を走る。そのまま二度、三度互いに切りつけ合った後、黄金竜は両肩の砲撃で赤いHi-νの動きを制限すると、その剣身に炎を纏い、背翼の光の輝きを大幅に増して、最大加速で切り伏せにかかった。

 

 その攻撃を受けきれないと判断した赤いHi-νはシールドから円形状のパーツを分離させ、両者の間に残された僅かな距離に無理やり入り込ませる。割り込んだ6基のパーツは円状に並んでその内に粒子シールドを展開すると黄金竜の渾身の一撃を受け止めた。

 

 一瞬の拮抗の後、その範囲を狭めた粒子シールドがその斬撃を跳ね返し、次いで放たれた左の竜砲も弱ったシールドを自壊させることで耐える。

 その衝撃で周囲に散った防御用小型誘導兵器(プラネイトディフェンサー)の一部は黄金竜の後方へと回り込み、捕縛フィールドを形成して相手を閉じ込めようとする。その檻が完成する前に黄金竜は剣を閃かせて至近のプラネイトディフェンサーを二機落とし、後退した。

 

 距離を取って体勢を立て直す黄金竜、拓也が狙っていたのはその瞬間だった。

 

 変形したディバイダーがその内部の残存粒子を全て消費して砲撃を放つ。その光の束は左の赤い翼をもぎ取って消え、右のライフルより放たれた一撃が背部ホルダーに納められた長銃を爆散させる。体勢が崩れた黄金竜へさらに赤いHi-νの連装ビームが放たれてその右肩の竜頭を吹き飛ばし、ビームサーベルの一撃が竜盾の表面に深い傷を残した。

 

 だが被弾した黄金竜も即座に手痛い反撃を返した。外に流れた左盾の竜砲を最大出力で放ちクロスディバイダーの右肩を抉ってライフルごと右腕を吹き飛ばした。同時に左肩から放たれた光弾がその頭部を破壊する。

 

 さらに黄金竜はサーベルの一撃と今の砲撃で限界に達した盾の竜頭部分を切り離すと、それを攻撃をしかけようとする赤いHi-νに叩きつけて爆発に巻き込ませる。

 同時に右手に握られた長剣がその爆炎を裂くように翻り、炎の中に軌跡を残して赤いHi-νの左のシールドに深い傷を残した。体勢が崩れた赤いHi-νを残りの盾の一部が変形した双刃の槍によって追撃し、傷ついたシールドごと左腕を切断すると強烈な蹴りを放って突き飛ばす。

 

 一端距離を取った両者が体勢を立て直す間に、拓也はディバイダーを背面に戻すと放り出されたライフルを回収して左手に装備する。赤いHi-νはシールド先のビーム砲で黄金竜を狙いつつ後退しつつ、数の減ったファンネルとプラネイトディフェンサーを呼び戻して展開させた。

 

 一方黄金竜は防御を固めた赤いHi-νに関わる事を止め、クロスディバイダーに狙いを定めたのか拓也のほうに向かってくる。それを見た赤いHi-νも粒子がほとんど尽きた誘導兵器郡を回収すると少し遅れてその後を追った。

 

 右手に炎の長剣、左手に双刃の槍を持ってやって来る黄金竜に対し、拓也もライフルをシールドに変形させて手甲に固定し、背部よりハイパービームサーベルを引き抜いて迎え撃った。両者の左肩から放たれた光が交錯し、振るわれた光と炎の剣が互いを切り刻む。

 

 肩部の損傷が響いて鈍くなった右手の長剣を手甲のシールドで受け、左の剣槍は手首を回転させたサーベルで弾き飛ばす。ついで蹴り上げた右足は深い切れ込みと引き換えに長剣を彼方へと弾き飛ばすが、同時に放たれた黄金竜の蹴りが右のフロントアーマーを砕きながら、クロスディバイダーを突き放した。

 

 一端空いた距離を利用して後退した黄金竜は背後より切りかかってきた赤いHi-νに左の剣槍を振るって互いに傷を刻んだ後、左腰から引き抜いた長剣を振るって突撃してきた拓也の攻撃をいなす。

 

 離れては切りあう三者の戦いは、足を切り飛ばし、その肩を抉り、身を砕く壮絶なものとなった。その攻撃の嵐はダメージの蓄積と共に頻度が減り、一撃の威力が落ちることで勢いを弱めたもののその闘志に一切の陰りは無い。

 

 その勢いに圧倒され静まり返った観客が見守るなかで繰り広げられた戦いは制限時間終了(タイムオーバー)を告げる声によって強制的に終わらされるまで続いた。

 

 

 

 バトルシステムが停止してフィールドが消失すると、宙に浮かんでいたガンプラも落下する。ダメージレベルがBに設定してあるとはいえ、かなりの損傷が見て取れた。

 

 目前のディスプレイに今のバトルロイヤルの結果が映し出され、拓也の名前を挟んで知らない名前が二つ並んでいた。男性名と女性名、共に撃墜数は同率だが、システムの判定によればあのスペリオルドラゴン使いのファイターが勝利者となったようだ。拓也は二位で、三位は赤いHi-νの女の子だろう。名前からそう判断して拓也はバトル台に近づいた。

 

 酷く損傷したクロスディバイダーとそのパーツ一式を回収しがてら、相手を確認する。赤いHi-νのファイターはやはり例の女の子であった。彼女は広範囲に散らばった武装やパーツなどを回収しながらも、きつい視線を拓也ともう一人に向けている。

 

 そのもう一人は背の高い男子であった。拓也よりも三つほど年上の、おそらく高校生ぐらいだろうか。手入れをされた髪と清潔感のある服装から一見するとやや外見に気を使っている普通の若者に見えるが、その落ち着きぶりと顔に浮かんでいる不適な笑いが、強者特有の雰囲気を感じさせる。

 

三田村 真人(ミタムラ マサト)だ。強い奴がいると聞いてやってきたんだが想像以上に楽しめた。またどこかでやりあいたいもんだ。それも出来れば大会(全力)で。」

 

 そういって愉快そうに笑いながら彼はスペリオルドラゴンを拾い上げた。他に二機に比べればその損傷は少ないようで、手早い動作で自身のガンプラを回収すると次の試合の邪魔にならないようにその場を後にする。どうやらマナーもしっかりしているようだ。

 

 拓也も赤いHi-ν使いの少女も自身のガンプラの回収を終えると彼を追ってその場を次のバトル参加者たちに明け渡す。その後ろを綾が付いてくるのが見えたが拓也は何も言わなかった。

 

 三田村と名乗る男子は修理用の作業スペースにいた。折りよくテーブルは空いている。拓也は彼の近くに座るとこちらに気が付いた彼に声をかける。

 

「先程はどうも。道野 拓也(ミチノ タクヤ)です。こっちも随分楽しめた。俺も全力でやってみたいですが、オープントーナメントでも学生部門でもなく無差別のチームバトル部門に出るつもりだから残念ながらそれは無理です。まあやりあいたいなら店長に頼んでみますが?」

 

 その言葉に三田村と赤いHi-ν使いの女の子は軽く驚いたようだった。ガンプラを補修する一度手が止まり、拓也に視線が集まる。

 

「へえ、そりゃまた奇遇だな。俺も今年のオープンチームバトル部門に出るつもりなんだ。もっともこの地区じゃないから、戦うにしても全国でってことになるが。」

 

 その言葉と共に視線の勢いが増した。興味深い相手から立ちはだかるかも知れない障害へと認識が変化したらしい。それも二つ。一つは目の前の男子だが、もう一人は例の女の子からである。しかもこちらの方が強い。

 彼女は手を休めずに三田村と拓也に顔だけ向けると静かだがよく通る声で言い放った。

 

「残念だけど、それは無理。この地区のチームバトルの全国出場権は私たちが頂くから。」

 

 きっぱりと言い切った彼女に拓也は驚きの視線を向けた。どうやら彼女もチームバトル部門に、それもこの地区から出場するつもりのようだ。その彼女の発言を補強するかのごとく、別の男の声が重ねられた。

 

凛歌(リンカ)の言う通りだ。この地区の優勝は我々が獲らせてもらう。」

 

 そう言って会話に参加してきたのは彼女と一緒にいたあの男子であった。どうやら彼が彼女のチームメイトの一人らしい。乱入者の顔を見た三田村が意外といった表情で問いかける。

 

「おや、誰かと思ったら宇野 啓太(ウノ ケイタ)じゃないか。君は去年は長野地区の代表だったと記憶しているんだが、なぜこの西東京地区にいるんだい?」

 

「なに、つい先日この近くに引越してきただけのことだ。埼玉代表どの。悪いが今年は我々が全国をもらう。」

 

 どうやらこの二人は知り合いのようだ。それも会話の内容から判断すると去年のオープンチームバトル、その全国出場者らしい。互いに譲らず火花を散らす二人の間に聞き慣れた涼しげな声が割り込んだ。

 

「残念ながら、そちらのお二人の望みは叶いませんわ。この地区の優勝も、全国の頂点も両方頂くのは私達ですから。」

 

 男子二人の視線の先にいたのはやはり綾であった。澄ました表情でその視線を受け流し、微かな笑みを口元に浮かべながら彼女は言葉を継いだ。

 

「多くの言葉は要りません。自分の言葉の正しさはバトルで証明すればいい。それがファイターというものでは?」

 

 戦うならば言葉ではなく、ガンプラでけりを着けましょうと堂々と言い切った綾に男子二人も同意を示す。

 

「そこのお嬢さんの言うとおりだな、<三本足>。あとはバトルで示せばいい。最もこの地区にはそちらのお嬢さん方に加えて、去年全国でベスト8まで勝ち残った〈可能性の獣〉もいるから、下手をすればその機会は無いかもしれないが。」

 

「誰が立ちはだかろうと関係ない。上を目指すならば襲いか早いかの違いだけだ。そういうお前こそうっかり予選で敗退なんてことにならないように気をつけるんだな。」

 

「あらあら、もう勝った気でいるんですか。寝言は寝て吐くものですよ。起きながら言うものではありません。」

 

 三者ともかなり盛り上がっていた。先程の言葉で語るよりもバトルで示す発言も忘れ去り、かなり激しい舌戦を繰り広げている。その勢いにすっかり乗り遅れた拓也は仕方なくクロスディバイダーの補修を進めた。細かいところは無理でもある程度のところまではやっておかないと持ち運びがしにくいのである。

 

 見れば、先程凛歌とよばれた少女も舌戦には加わらず、黙々とガンプラを直している。手際のいい動作とやさしい手つきで瞬く間に補修を終えた彼女はスペースを片付け終わると、拓也の方を向いて声をかける。

 

宇野 凛歌(ウノ リンカ)。つぎは勝たせてもらう。」

 

 短いが固い決意が込められた声で自身の名とその意を告げると彼女はその場を後にした。

 

「おや、お前の妹だったのか、<三本足>。そういえば顔立ちも似ているな。でも去年の全国では見た記憶が無いが。」

 

「人の顔じゃ無くてガンプラしか見てないからだろう、お前は。あいつも去年の全国にいたぞ。もっともチームバランスの関係で補欠だったから出る前に終わってしまったが、実力はある。」

 

 三田村の疑問を一蹴した宇野兄は少し離れた位置で兄を瀬線で急かして来る妹にため息を一つついてこの場を切り上げた。

 

「まあいい、俺たちはそろそろ帰る。次に合うときは大会でだ。そこの二人との対戦も楽しみにさせてもらうとしよう。ではな。」

 

 その言葉を残し、宇野兄は妹の向こうへ向かった。その様子に三田村が「あいつシスコンだったのか……」と小さく呟くのが聞こえたが拓也も綾も聞かなかったことにする。

 

「さて、そろそろ俺も行くか。それじゃあお二人さん、今度は全国で。最もあいつは強いからどうなるかは分からないが。まあ、俺は大宮駅のヨツバ模型クラブ辺りを縄張りにしているから戦いたくなったら来るといい。連絡をくれたらいつでも相手をしてやるよ。」

 

 そう言って立ち上がる三田村に対し、拓也も返す。

 

「全国に行けば戦えるんだから、わざわざ電車代使って会いに行く気は無い。」

 

「なかなか言うじゃないか、拓也君もそこのお嬢さんも。そういえばお嬢さんの名前は聞いていなかったな。良かったら聞かせてくれ。」

 

 うっかりしていたという風に聞いてくる三田村に対し綾も応えた。

 

「私は緋川 綾ですわ、三田村さん。ナンパはお断りですがバトルならば受けて立ちましょう。」

 

「口の達者なお嬢さんだ。まあ、全国での楽しみが一つ増えたと考えれば気にする事も無いか。それじゃ綾ちゃんに拓也くん、全国で会おう。」

 

 最後に気取った風にそう言い残すと彼も店の外へと出て行った。意外とユーモアのセンスもあるようだ。

 

「なかなか変な、もとい面白い人たちでしたね。」

 

 そう言って綾が同意を求めてくるが間違いなく向こうもそう思っているだろう、と目の前のチームメイトを見つつ適当に相槌を返す。取り合う気も無かったし、他に考える事もやりたい事も出来たからだ。

 

「そろそろ、俺も帰るよ。こうなったら急いでガンプラを仕上げて改良しないと。綾はどうする?」

 

 強敵に会って心が沸き立ち、いまにも走り出しそうな拓也に若干呆れたような視線を向けながら綾は応えた

 

「私はもう少し、バトルを見ていきます。それではまた来週。集合時間に遅れないようにしてくださいね。」

 

「ああ。それじゃ、また来週。」

 

 はやる心の勢いのまま、返事を置き去りにした拓也は店の駐輪場に止めてあった自転車に飛び乗ると駆け出した。

 

 大会を勝ち抜くだけならば、飛び越えるハードルは低い方がいいだろう。しかしそれならば学生部門にでも参加すればいい。学生部門のレベルは決して低くは無いが、それでもオープンチームバトルに比べれば落ちる。

 

 だが拓也達が求めているのは勝利だけではないのだ。それは全力を出しても乗り越えられるか分からないほどの強敵とのバトルなのである。

 ハードルの高さに嘆くよりもいかにそれを乗り越え前に進むか。無論ひとたびバトルともなれば場合によってはからめ手もだまし討ちもするが、それとて全力の一端である。

 

「よーし、ディバイダーを含めて今週中には稼動テストまで持っていくぞ。」

 

 勢いのままハードスケジュールを決めて、拓也はさらに自転車の速度を上げた。

 

 

 

 春のうららかな陽気を切り裂くように、拓也は一心に前へと進む。

 

 

 




 なかなか良い非ガンダム系の改造ガンプラが思いつかなくて悩みます。そのせいで本編もガンダム祭りに。なにせ今のところ思いついたのはネタチームとかませがほとんどだし。
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