ガンダムビルドファイターズ アナザートライ   作:慢性睡眠不足

6 / 16
とりあえず大会用ガンプラの登場。いくつか設定の捏造がありますがご容赦ください。


三機の相棒

「私の居ない間にそんな面白い事があったのかぁ。是非とも見てみたかったなあ。」

 

 綾の話に賢士朗はそう言って興味深げに笑った。

 

 あのバトルロイヤルから一週間と少し経ち、暦も四月に入って数日を示していた。三日後には拓也も綾も中学校への入学式を向かえ、賢士朗も新学期を迎える事になる。

 

 しかし3人の関心は間近に迫った新生活の事よりも一ヶ月余り先のガンプラバトル選手権に向けられていた。賢士朗が本日綾の新居にお邪魔したのも、ここでおそらく最後になるであろう製作報告会を開く事になっているからだ。

 

 賢士朗は時間に余裕をもって出てきたため、綾の家に着いたときにはまだ約束の時間まで間があった。

 

 応対に出た綾の家族に挨拶をし、土産を渡すと綾につれられて二階の彼女の部屋に入る。まだ生活感の薄い部屋だが、部屋の一角を占拠するガンプラの飾られた棚とその脇に山積みにされた箱が、なんとも彼女らしいと賢士朗は密かに思った。

 

 部屋の隅から折りたたみ式のちゃぶ台を引き出してきた彼女は、階下から持ってきた飲み物を置いて賢士朗に勧めると、拓也が来るまでの雑談として先日の一件の詳細を語ったのであった。

 

「あの後調べてみましたら、三田村さんとおっしゃった方のチームは去年の全国ベスト8、宇野さんのチームはベスト16まで勝ち残っていました。去年の使用ガンプラも確認しましたが、あそこで使っていたのも調整中かもしくは練習用の機体とみて間違いないと思います。」

 

 賢士朗の発言に綾は拓也と共にこの一週間で調べた事を補足した。

 

「ああ、それで拓也はあんなに張り切っていたのか。ここ一週間の製作スピードが異常に早かった上にさらにあの追加システムの相談だからなあ。」

 チームメイトのここ一週間の変化を訝しく思っていた賢士朗は得心がいったとばかりに頷いた。

 

「全く、あれだけ派手に啖呵をきってしまった以上、無様な事はできないなんて言って張り切ってしまって。これだから男の子は。」

 

 そう言って自身と同い年の男子を笑う綾だったが、その彼女も追加武装の見直しや本体の改良に勤しんでいた事を賢士朗は知っていた。そもそも話を聞く限りでは拓也よりも綾の方が威勢よく相手に挑戦を叩きつけていたような気もするが、無闇に波風を立てない彼は沈黙を選ぶ。

 

「そろそろ、時間だけど拓也はまだこないのかなあ。」

 

 話題を変える意味でも賢士朗は綾にチームメイトについて尋ねる。綾が返事をする前に玄関のチャイムが鳴り、待ち人の来訪が階下より告げられた。出迎えのために立ち上がる綾に賢士朗は言った。

 

「それじゃあ、私は先に準備しておくよ。私の居ない間にどう変わったのかその成果も早く見たいしね。」

 

「はい、それではお願いします。まあ、あれだけ大言を言っておきながら情けないものを持ってきたとしたら、許しませんが。」

 

 笑いながら綾はそう応えると、拓也を迎えに部屋を出て行った。

 

 

 

 ややあって綾の部屋、ちゃぶ台を囲んだ三人はその台上に置かれた自分たちの相棒となるであろう三機のガンプラを眺めていた。まだ塗装も仕上げもしていない状態だが、それでもそこにはこの数ヶ月間の成果があり、感慨もわいた。

 

「おお、これは良く出来ているなあ。これだけ盛っているのにバランスが良い。」

 

「あら、素晴らしいですねお二人とも。予想以上に手が加えられています。」

 

「うわ、よく仕上げたなこれ。この肩シールドとかウイングユニットとか手間が掛かりすぎて大変だっただろう。」

 

 三体のガンプラを前に拓也達は互いに感想を漏らす。そこにはこの数ヶ月のそれぞれの苦労とそれに対する労りが込められていた。

 

 一通りの観察が終わると、自分の相棒の紹介とそれに対する疑問や気がついた点を話し合う。トップバッターは一番遅れてきた拓也となった。

 

 

 

「えーじゃあ、これが俺のガンプラ『GXD2V(ジーエックス ダブルディバイダー)』だ。」

 

 そう言って拓也は自分の愛機となる予定のガンプラを二人の前に押し出した。

 

 そのガンプラは名前の通り二つのディバイダーを両手に装備しているのが特徴であった。機体本体の大まかな形状や全身に付けられた青色のクリアパーツは一週間前と同じだが、肩アーマーが新造されて両端にはディバイダーと同じ回転式サブスラスターが装備されている。

 

 バックパックも新たにパーツが追加され、その形状は横から見ると潰れた太いYの字のようにも見える。その各部には本体のものよりも大型なクリアパーツが付けられていた。

 

 さらにその両脇にはクロスディバイダーのものを改良して強度を上げた四連装のビームガトリングライフルと弾数が増し内部の発射機構を改良して二点射が可能となったハイパーバズーカが懸架されている。

 

 両サイドアーマーにはクロスディバイダーのものに大型ビームサーベルを追加したSBS(シールド・バスター・シース)ライフルが据え付けられ、ハンドグレネード弾のホルダーは新造したバックパックの下部へと移された。

 

 バックパック下部のエネルギーポッドも新造に伴い構造が変わり、粒子蓄積量に優れたクリアパーツを強度に優れるプラ版で挟みこんで接着されている。そのプラ版の表面には無数のスリット郡が追加され、ポッドの先端部には上部と同じ展開式のスラスターを新たに装備した。

 

「改めてみるとかなりごてごてしていますわね。これに肩部の換装装備と追加装備が加わるとさらにボリュームアップですか。」

 

「ディバイダーはバックパックと手持ちに一つずつ振り分けるのが、基本だっけ。そのディバイダーにも小型エネルギータンクが追加されいたり、中央周りのフィンの裏に小型ビームシールドが仕込まれていたりといろいろ細かいなあ。」

 

 それぞれ忌憚の無い感想を述べる二人に拓也はさらに説明を続けた。

 

「肩のハードポイントには旋回式ビーム砲の他に、GXのショルダーバルカンや小型ミサイルポットが装備可能にしてある。やや重量はあるけど各関節部分はしっかり強化してあるし、負荷も想定よりかなり下だったから問題ない。ディバイダーも特定機能を強化したものを開発中だから、場合によっては試合直前に選択もできる。サテライトシステムはクロスディバイダーと同じものをとりあえずオプション装備として準備した。とりあえずはこんなところだ。」

 

拓也はそう言って説明を締めくくった。特に質問も無いようなので隣にいた賢士朗にバトンをタッチする。

 

「じゃあこれが私のガンプラ、『闘将シャイニングガンダム』だ。」

 

 そう言って賢士朗は自分の相棒候補を指差した。

 

「機動武闘伝Gガンダム」の登場機体であるシャイニングガンダムをベースに武者風の改造を施したもので、胸部や脚部に追加された装甲や、肩にアームで接続された大型の多層式盾が完全装備した鎧武者を連想させる。またその各部にはD2Vと同じように菱形状のクリアパーツが追加されており、黒く光るそのパーツが機体全体から受ける無骨な印象を和らげていた。

 

 背面は原型よりも大幅に変更され、大きい箱型の推進器を二基備えられているのが目を引く。また他にも兜飾りを意識した大型のアンテナや、装甲が重ねられて大型化した手甲など機体本体にもかなり手が加えられていた。

 

 武装は出力を強化した大小のビームソードを右腰に移し、左腰には耐久性に優れた肉厚の大刀を装備している。

 また火縄銃のような外見を持つ縦列二連の実体銃を一丁と伸縮機構を持ち実体刃とビーム刃を両方備えた薙刀を箱型推進器の外脇にそれぞれ装備していた。

 その上、原型にあったシャイニングフィンガーも威力が強化されて使用が可能となっている。

 

 一通り説明を受けたところで拓也は賢士朗に尋ねた。

 

「なあ。こいつのスーパーモードはどんな感じになったんだ?」

 

「ああ、それはね。ここをこうして、それでこうやって……。」

 

 拓也の疑問に賢士朗は各部を引き出し、パーツを付け替えて超閃将形態へと変形させた。その一変した外見に拓也と綾は驚きの声を上げる。設計案は二人とも見ていたが、賢士朗はそれにさらに磨きをかけていたのだ。

 

「随分華やかになりましたねえ。一気に印象が変わりました。」

 

 とは綾の弁であるが、拓也も同意見であった。

 

 それからしばらく超将形態について聞き、幾つかの戦術などについて話し合った後で綾のガンプラに話が移った。

 

「では、最後にトリを努めさせて頂きます。これが私のガンプラ『ウイングガンダム改』となります。まだ名前を決めかねているのでとりあえずは仮称ですが。」

 

 そういって綾が自身の製作したガンプラについて紹介を始めた。

 

 ウイングガンダムを素体とし、追加武装を粒子消費が少ない実体弾系にする事でバスターライフルの運用を第一に考えた構成である。

 

 その主力となるバスターライフルも砲身を延長して太くし、基部やカートリッジの配列にも手が加えられていた。

 威力上昇のほかにライフルの砲身基部近くに付けられたターレットを切り替えることによって異なる性質を持つビームを撃ち分ける事が可能となっている。

 

 他に武装として両腕部の手甲にカバー展開式のマシンキャノンが連装で追加され、その基部は旋回可能となっていた。

 また肩上部と脚部側面にはホーミングミサイルを収めたランチャーポッドが備え付けられる。サーベルもシールド内からサイドアーマー上部へと移され、その下にはバスターライフルのカートリッジホルダーが着けられていた。

 

 バックパックはウイングと本体の接続部分にスラスターユニットが中継ぎされ、ここにもミサイルを収めたランチャーポッドが搭載されている。

 

 そのウイング自体も大型し、稼動部分の追加とビーム翼の展開によって翼面積やスラスターの向きを細かに変化させる事が可能となっており、機動性の強化が図られている。

 

 機体本体には形状こそ長方形で色も赤いが他の二機と同じようなクリアパーツと小型のスラスターが全身に追加されている。

 バード形態時は小型化したシールドやバスターライフルの懸架位置の変更などで見るものにシャープな印象を与えるようになった。

 

「ちょっと重そうだがスラスターはこれぐらいで大丈夫なのかい?」

 

 一通りの説明を聞き終えた賢士朗が質問するが綾は問題ないといって否定した。その時、設計案と換装用装備を見比べていた拓也が疑問の声を発する。

 

「あれ?案に出てたガトリングガンとバズーカが見当たらないぞ。おまけにこれはウイングゼロのツインバスターライフルの改造銃じゃないのか。」

 

「ええ、一度試作はして試しに使ってみたのですが、どうも使い勝手が悪くてしっくりきませんでしたので止めにしました。バード形態でも機動の邪魔になりましたから手持ちの武装はバスターライフル系のみに絞ろうかと。」

 

 綾はそう答えを返すが、そこに賢士朗が質問を重ねた。

 

「ちょっと待って。それだとバスターライフルを失ったら一気に中、遠距離への射撃能力が落ちないかい?ミサイルだけだと大雑把になるし、せめて大型のライフルぐらいは持っていたほうが良いと思うけど。」

 

 慌てたような賢士朗の問いに、しばし綾は考え込んだ。

 

「一応ガトリング内臓のシールドも製作中なんですが、それでもちょっと短いでしょうか。でもまあ、いざとなれば拓也さんの機体からディバイダーやライフルを貸してもらえばいいかと思いますし。」

 

 綾はそう言って拓也のほうを見るが、視線を向けられた拓也は肩をすくめて答える。

 

「一応、D2Vは武装供給も考えてはある。でも最初からそれを当てにするのはちょっと問題だろ。」

 

 拓也の反論に綾は仕方なく考えを変えた。

 

「分かりました。一応折りたたみ式か収納式のライフルを考えてみます。シールドかリアアーマーに収められればMS形態でも邪魔にはならないでしょうし。」

 

 一通り問題点や改良点などが話し合われた後で、賢士朗が提案した。

 

「そろそろGミューズに移動しようか。予約の時間には早いけど遅れるよりはいいから。」

 

 Gミューズはお台場にある大型のガンダムアミューズメント施設である。ガンプラやガンダム関連グッズの販売店のほかに、作品ギャラリーや大型バトルシステムも備えている。また料金はかかるがバトルシステムの時間貸し出しも行なっており、自前のバトルシステムを持たない大会出場者の調整の場としてよく利用されていた。

 

 拓也たちも組み上げたガンプラの動きや実際の使い心地の確認のために数ヶ月前から予約を取っていたのである。この実働テストの結果でこのまま完成を目指すか、それとも別方面に改造するかを最終的に決めるのである。

 

 賢士朗の言葉に同意を示した綾だったがふと思い出して言った。

 

「そういえば、先週マスターの作品がギャラリーに展示されているとお聞きしました。気分転換に見に来るといいと入場券も頂きましたし、ついでに見に行きませんか。」

 

「ああ、そういえばそんな事を言っていたような。ずっとコイツの製作にかかりきりですっかり忘れてた。確かかなりの力作ぞろいだと言ってたし、見に行くものいいかもしれないな。」

 

 拓也も今思い出したとばかりいってガンプラホルダーのポケットから先日買い物ついでに貰ったチケットを二枚取り出すと賢士朗に一枚渡した。みれば綾も手帳に挟んでいたチケットを確認している。

 

「じゃあ、せっかくの好意だしテストが終わってから行ってみようか。」

 

 賢士朗がチケットを受け取りながらこの後の予定を決め、チームリーダーに賛同した拓也と綾はさっそく荷物をまとめにかかった。

 

 

 




これで準備編は終了。予定では次から地区大会編に入ります。ただもしかしたらトライ本編と絡ませた番外編を入れるかもしれません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。