ガンダムビルドファイターズ アナザートライ   作:慢性睡眠不足

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間を空けずに投稿。番外編二話目です。


番外編1 アヤの部活動入門記②

 結局、私は美術部に入りました。アスカさんのお誘いもありましたが、基本的に塗装を筆で塗っている私にとっては道具の扱いに多少は慣れていたことも挙げられます。部員も少なくあまり活動日も多くないため、ガンプラの製作にもさほど影響はありません。

 とりあえず週に2日ほど顔を出しては技法を教わったり、作品を書いたりしながら、家に帰ってからは愛機の製作と習熟に勤しむ日々を送っていました。

 

 

 

 さて大会まで一ヶ月ほどとなった五月のある日のこと、掃除当番だった私はゴミ袋を片手に学校の裏庭を歩いていました。本日は美術部もありませんし、これが終われば家に帰って追加武装と予備パーツの製作です。

 ゴミを捨て教室に荷物を取りに戻ろうとした時、通りかかったガンプラバトル部の部室でなにやら騒動が起こっているのに気が付きました。気になったので窓の外からこっそり様子を伺ってみます。

 

 部室の中で睨みあっているのはバトル部のフミナ部長とプラモ部のミヤガ部長でした。二人ともなにやら険悪な雰囲気です。中には見学でお世話になったラルさんのほかにも二人見慣れない男子生徒がいます。ミヤガ部長の近くにいるのは生徒会長のようですが、フミナ先輩の隣にいる赤毛の男子はどなたでしょうか。もしかしたら新入部員かもしれません。

 

 しかし中高生の部の参加は三人一組が必須、フミナ先輩の言葉ではまだ三人目は見つかっていないようです。生徒会長さんは選手権規定に則ったプラモ部とのチーム戦をもってバトル部の存続の可否を決めるといっていますが、これは人数が足りないのを承知でプラモ部のミヤガ部長が持ちかけたものでしょう。生徒会も絡んでいるためフミナ先輩には断る事は出来ません。

 

 余裕の表れかミヤガ部長はチーム戦のメンバーもその場で公開しました。かれに呼ばれて姿を現したのは先日、アーティスティック・ガンプラ・コンテストでグランプリを取ったコウサカ先輩でした。どこか暗い表情を浮かべており、驚くフミナ先輩とも目を合わせようとしません。この二人過去に何かあったのでしょうか。

 しかしそんな事には気を泊めていないように気分良くミヤガ先輩は帰っていき、コウサカ先輩も何も言わずにそのあとに続きました。生徒会長さんも去り、残されたのは呆然としているフミナ先輩と他一名。そして難しい顔で腕組みしているラルさんだけです。

 

 その一部始終を窓の外から目撃した私ですが、正直プラモ部部長さんのやり方は気に入りません。フミナ先輩の友人である美術部の先輩の話でもかなり強引な手段でバトル部の吸収を目論んでいるそうです。先月の見学の事といい、今回の事といい黙って見過ごす気にはなれません。

 

 これもいい機会です。ここは一つ私が手を貸してあの部長さんに目にものを見せてやりましょう。そう決意すると早速私は行動に移しました。

 

「話は聞かせていただきました。先月の見学会でお世話になった恩もありますし明日一日だけでも私に手伝わせてください。」

 

 突然、窓の外からかけられた声に三人は驚いて私のほうを見ました。

 

 

 

 カマキリ先輩の陰謀によって明日バトル部の廃部を決める試合が行なわれる事になり、私とセカイ君は混乱していた。今の部員は私とセカイ君の二人で三人一組のチーム戦にはまだ一人足りないし、セカイ君はガンプラバトルは素人同然だ。昨日の動きを見れば戦力としていけそうだが、相手チームには小学生のときに全国にまで行ったユウ君がいる。このままだと勝てる可能性は低い。

 

 でも部長の私がいつまでもおろおろしているわけにはいかない。今からだと即席のメンバーを探しに行くよりも、明日の試合に勝つための作戦を考えた方がいいかもしれないと決め、後ろで様子を伺っているラルさんに知恵を貸してもらおうと振り向いたとき、外から声がかけられた。

 

「フミナ先輩、話は聞かせていただきました。明日一日だけでもお手伝いをさせて下さい。」

 

 驚いて声の主を探すと、窓の外から顔を覗かせている女生徒が一人いた。その黒髪と意思の強い目には覚えがある。確か先月の見学会でミヤガ先輩とやりあっていた新入生だ。結局それっきりで入部はしてくれなかったのだがどうしてここにいるのだろう。窓から回り込んで部室の入り口から入ってきた彼女に向かい、声をかけようとする。

 

「ええと、あなたは確か……、」

 

 駄目だ、名前が出てこない。そんな私を気遣うように彼女は言った。

 

「緋川《ヒカワ》です。先月の見学会ではお世話になりました。その恩もありますし、あのプラモ部部長さんのやり方にも思うところはありますので良かったら明日のチーム戦に助力させて下さい。一応、美術部の許しを貰う必要がありますが、ウチの部長はフミナ先輩のお知り合いだそうですし、プラモ部のやり口にも幾分批判的でしたから訳を話せば協力してくれると思います。いかがでしょうか。」

 

 なるほど確かに先月の一件でも彼女はミヤガ部長に面と向かって批判をしていたし、彼女の言うとおり美術部部長のコウノ先輩とは浅くない付き合いだ。プラモ部の引き抜きなどでも何度か相談に乗ってくれたし訳を話せば協力してくれるだろう。とはいえ部員でもない人を参加させるのは気が引ける。

 

「ええと、バトル部に入部はしてくれないの。」

 

 駄目もとで聞いてみるが、彼女はちょっと首をかしげた後で答えた。

 

「兼部は禁止されてないみたいですし美術部の活動日もそう多くはありませんから入部してもかまいませんが。選手権大会には参加できませんよ。すでに別部門で参加申請を送っているので中高生の部には参加資格がありません。それでもよければですが……。」

 

 その言葉に私の力が抜ける。なるほどあれほど熱心に話を聞いていたり、展示されていたガンプラを眺めていたのにも関わらずバトル部に入らなかった理由がそれなのだろう。彼女はすでに選手権停会を学生部門以外から出場するつもりだったのだ。つまり彼女の助力を受け入れてもチームメンバー探しを止める訳にはいかない。

 

 だが、明日のバトルに勝てばその時間を手に入れることが出来る。どうやら年齢制限の無いオープン部門に参加するつもりのようだから実力はあるはずだ。ビルドバーニングガンダムがあるとはいえ昨日ガンプラバトルを始めたばかりのセカイ君と二人で挑むよりは勝機がある。正直気は乗らないが、他に手段は無い。

 

「わ、分かったわ。それじゃあ明日のバトルはお願い、ヒカワさん。」

 

 なんとなく悪魔に魂を売った気がしたが、承諾する。

 

「分かりました、こちらこそよろしくお願いします、フミナ部長。それと……。」

 

 彼女はそこまで言って言葉を止めると困ったようにセカイ君のほうを見た。

 

「セカイだ。カミキ・セカイ。この前中等部二年生に編入してきたんだけどよろしくな。」

 

「はい、よろしくおねがいします。カミキ先輩。」

 

 一方のセカイ君は彼女をあっさりと受け入れた。みればラルさんも歓迎している。そういえばその日も彼女との会話を楽しんでいたような気がした。わだかまりがあるのはどうやら自分だけのようだ。

 

「では、さっそくですがお願いがあります。」

 

 彼女はそう言いながらじっと私とセカイ君を見た。なんだろう。

 

「お二人の使うガンプラを見せていただけませんか。それとプラモ部チームについて分かっている限りの事も教えてください。あと他にもいくつか頼みがあるのですが。」

 

 こうして少々の不安を抱えながらも、チームトライファイターズ(仮)は結成された。

 

 

 

 翌日となりました。今日で廃部か存続かというバトル部の運命が決まる事もあり、フミナ部長は緊張気味です。まぁ、即席チームなので不安を覚えるのも当然なのですが。その一方でセカイ先輩はリラックスしてバトルに望んでいます。ガンプラバトルは素人同然と聞いていますが、この様子を見るかぎりかなりの大物のようですね。

 

 まあ、私が気を回しても仕方ないでしょう。私本人はバトル部の存続については特に興味もありませんが協力を申し出た以上、負けるつもりはありません。一応報酬として勝利の際にはお二人が使うガンプラについてじっくりと調べさせていただく約束を取り付けただけで十分です。

 特にセカイ先輩の使うビルドバーニングガンダムはあの世界王者のイオリ・セイさんが残したものらしく、その完成度といい、使われている技術といい興味が尽きません。

 

 さて時間となりました。意気揚々と部室に乗り込んできたプラモ部部長ミヤガ先輩でしたが、私の姿を見て愕然とします。後に続いていた無口な副部長さんもコウサカ先輩も驚きを隠せません。思惑が外れた事に困惑しているようです。

 

「きっ君はいつぞやの見学者の……。」

 

「一年二組の緋川 綾(ヒカワ アヤ)と申します。昨日、ガンプラバトル部に入部いたしました。本日はどうぞよろしくおねがいします。」

 

 うろたえるプラモ部部長に満面の笑顔で答えてやりました。

 

 

 

 自分の思惑をはずされてうろたえるカマキリもといミヤガ部長にアヤちゃんが笑顔で答える光景を見て私は後ろで頭を抱えていた。見学の時や、今の先制攻撃といい、おとなしそうな外見とは違って中身は随分とイイ性格をしている。

 

「むっ無効だ。間に合わせの人員がバトルに参加するなどと。」

 

「あら、入部届けは提出済みですし顧問の先生のサインも貰っています。なにか問題でもありますか。そもそも3対3のチーム戦を要求したのはそちらではありませんか。自分達の言った事にはきちんと責任をもっていただかなければ困ります。」

 

 なんとかアヤちゃんの参戦を阻止しようとするプラモ部部長だったが、彼女は年上相手にも一歩も引かずに堂々と言葉と言い放つ。押しが強いのか、意思が固いのかは知らないが彼女の発言を覆すのは容易ではなく、最終的には押し切られてしまう。敵には回したくないタイプだ。

 

 その彼女に押されてタジタジとなっているミヤガ部長がそれでも何か言い返そうとし時、アヤちゃんはポンっと手を叩いて言った。

 

「なるほど、分かりました。つまりはハンデが欲しいのですね。今のままでは勝負にすらならずに負けるだけだと。では私はあそこに飾られているガンプラを使ってバトルに参加する事にしましょう。おや、それでもまだ足りませんか。しかしこれ以上ハンデをつけてもらわなければ勝負にならないとおっしゃるならばそもそも私たちと戦う相手として力が足りていないと思うのですが。あっ棄権しても誰も攻めませんよ。自らの力量をわきまえて引くのも大事な事だと思いますし、丹精込めたガンプラを頑張って直す手間も省けますから。」

 

 笑みを崩さぬまま述べられたそのあまりの物言いに私とセカイ君は思わず吹き出した。とはいえここまで言われてしまえばもうミヤガ部長が逃げる事はできないだろう。しぶしぶとだが彼女の参戦を認めることになった。

 

 いよいよバトルの開始だ。

 

 




次で番外編は最後となります。
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