素晴らしきこのヘルサレムズ・ロットにて   作:無花果Ⅱ

1 / 5
素晴らしきこのヘルサレムズ・ロットにて

 異界。と聞けば何を思い出すだろうか?人間の使い魔と魔法が使いえない少女が活躍する小説?デジタルなモンスターと子供たちが共に戦うアニメ?それとも、執拗に首おいてけというサムライ達が活躍する漫画?

 3年前ならオレもそう答えていただろう。しかし、今現在、ソレを問いかけられたら迷わずこう答える。

 

                『ヘルサレムズ・ロット』

 

 □ ■ □ ■ □ ■ □ ■

 

「うぅ.........」

 

 気絶。とは違う何かから復帰しつつ、周りの状況を確認し、途切れた記憶を補填しようとする。

 まず最初、今日はバイトも休みだったので、昼まで寝て過ごしていた。

 次に朝食(昼食)を食べるために行きつけのジャンクフード店へ来た。

 次、隣に座っていた少年が音速猿という生物に何かを盗られ、サルを追いかけ走り去って行った。

 ここら辺から曖昧だ。たしか、HL稀代の怪人[堕落王フェムト]が真っ二つパーティがどうとかって...。

 そして.........

 

「行き成り店がバラバラになって。.........あっ!ビビアンさんと親父さんは!?」

 

 取り敢えず全体を見渡す。瓦礫の下敷きになってたりしたら最悪通り越してberry badだ。...?同じ意味だったかな。

 

「...ううう」

 

 背後、もっと詳しく言うと下の方から声が聞こえた。男性の、それも人間の声だ。

 傷ついて痛む体を無視して、声の方へ駆け寄る。

 

「親父さん!ビビアンさんも...!!今助けます!」

 

 2人の上に乗っている大きな瓦礫をどかそうとするも非力な人類の力ではビクともしない。だが、ここで何とか持ち上げなければ、何時また真っ二つパーティとやらが開始されるか解ったものではない。ポリスーツが都合よく近くを通ってくれないだろうか?

 そんな無駄な思考をしていると親父さんが口を開く。

 

「...小僧...か......何やってる...早く...逃げろ...。半神がどこかに行った気配はない!!いつまた戻ってくるかわからないぞ」

 

 そんなことは解っている。でも、見捨てられないのだこの街に来て右も左もわからな

かった頃、助けてくれたのは親父さんとビビアンさんだ。

 

「オレは、親父さんやビビアンさんには借りがあるんですよ。返すまで老衰も許しませんからね!ああ、クソッ!!瓦礫が大きすぎる!」

 

 悪態をついていると後ろから何かが駆け寄ってくる音がする。半神か!?と思い恐怖しながらも振り返ると、其処には猿にカメラを盗られた少年がいた。

 

「あなたは確か僕の隣に座っていた...!」

「糸目の少年か!手伝ってくれ!2人を瓦礫から出――」

 

 この先の言葉は紡ぐことができなかった。何故なら、半神が、すぐ其処にいて、刀を振って、少年を殺

 

「え」

 

 せなかった。突如現れた白髪の男性が少年を抱えて半神の刀をガードしたのだ。だが、少年と男性は弾き飛ばされ吹っ飛んでいく。

 

「少年!!」

 

 ここで大声を出したのがまずかった。半神は声の主であるオレを見据えて(目は無いが)、刀を振り降ろした。

 

 □ ■ □ ■ □ ■ □ ■

 

 目が痛い、腕が痛い、足が痛い、体が痛い、内臓が痛い、心臓が痛い、頭が痛い。オレは死んだのだろうか?だとしたらこの痛みも納得だ。あの世で罰でも受けている最中なのだろう。

 

「辞世の句も言えないなんてな......」

「残念だが、主は死んではおらぬぞ」

 

 ...幻聴。はたまた同じ受刑仲間だろうか?おっさんのような声がする。

 

「下だ。目を開けて、そのまま下を見ろ」

 

 言われるがままに、目を開き、下を見る。

 そこにあったのは本。表紙に人の顔が書かれた真紅の本。

 

「小僧。我と契約しろ」

「契約?」

「そうだ。このままでは刃は振り下ろされ、我も死ぬ。だからこそ、我の力を使う権利を貴様にくれてやろう」

 

 ある意味、悪魔の誘いにも見えるこの言葉。だが命の危険さらされてる今、迷いなどない。

 

「契約する!するから半神ぶっ飛ばせるだけの力をくれっ!!」

「いいだろう。然らば読み上げよ」

 

 本が開き、ページが幾枚も捲られる。そして、その動きが終わった時、其処に書かれていた言葉の意味は

 

「ブルートグリモワール式血戦魔術」

 

 全てを貫き、ねじ込む、聖なる血の槍。

 

聖血槍(ハイリゲンブルートシュペーア)!!」

 

 □ ■ □ ■ □ ■ □ ■

 

『少年!!』

 

 そんな言葉が聞こえたのは僕とザップさんが吹き飛ばされた直後だった。

 まずい。そんな言葉だけが頭の中を錯綜する。どうするか考える暇もなく、半神は刀を振り下ろした。

 

「は?」

 

 が、見えた物は真っ二つに切り裂かれた人間ではなく、腹に何かを突き刺さらせながら宙を舞う半神だった。

 

「えええぇぇぇぇぇ!?」

「んだありゃあ...?」

 

 ザップさんまでもが目を見開いている。何でも起こるHLでもこのような光景はお目にかかれないようだ。

 

「どうだ今の!中々上手かっただろ!」

「形成は十分だが、消費量が多いな。もっと少なくできれば早くスムーズになるぞ」

 

 そんな会話と共に立ち上がったのは、さっきの男の人と...本?ほ、本が喋って

る...。

 目の前に起こっている驚愕の瞬間に目もくれず、ザップさんは僕に話しかけてくる。

 

「おい!もうすぐ次の解放だ。半神が戻ってくる前にさっさと行け。俺は半神が戻ってきたら足止めする」

「...............」

「大丈夫だ…失敗してお前が死んだら、次の手を考える」

「...............」

 

 覚悟を決める。あの人が作った好機を無駄には出来ない!

 

「何だよ...覚悟決まってるみたいじゃねえか。いい顔になってんぜ」

 

 ザップさんが立ち上がり、半神が吹き飛ばされた方へ顔を向ける。僕も同じく顔を向けると、半神がいた。早い!もう戻ってきたのか!

 

「チッ...さすがに早えな」

 

 口角を上げながらザップさんは懐から何かを取り出す。...アレは...ジッポ?

 

「タイミング逃すなよ...いくぜ...斗流血法」

 

 ザップさんはジッポを握りしめる。

 

「刃身ノ壱 焔丸」

 

 現れたのは...血でできた太...刀...!?ザップさんもまさか...。

 ザップさんは逆手の太刀をすぐさま持ち替え、半神の攻撃を防ぐ。幾度も振り下ろされる半神の刀を弾き続ける

 

「きゃあああああああああ!?!?」

「...ぐへ!...!やっぱ...スゲエな!だがな!!何度も受けてるうちによ...見えてきちゃってんだわ...太刀筋...。旦那に比べると、やっぱちょっと浅すぎだぜ!!神様!!」

 

 ザップさんは半神の攻撃に合わせ、太刀を振るう。

 

大蛇薙(おろちなぎ)!!」

 

 振られた太刀が半神の5本指を両断した。半神は指を切り落とされた痛みからか、それとも驚愕からか叫び声を上げた。

 

「走れ!!クソ餓鬼!!」

「...はいっ!!」

 

 僕はすぐさま駆け出す。だが相手は神様...ダメだ...桁が違う!...あっという間に再生してしまう...!!

 

 

 

 

「おい!少年ヤバイぞ!!アレの動きを止める術は...!!」

「それならばこれが適切だろう」

 

 本がバラバラとページを捲る。先ほどより後ろの頁。そこに記された物は処刑法。確実に対象の命を絶つすべだった。

 

「ええっと!!ブルートグリモワール式血戦魔術! 聖血処刑術(ハイリゲンブルートヒンリヒトゥング)!!」

 

 剣、槍、斧槍。多くの血でできた武器が半神の足元から現れ、半神を串刺しにしてゆく。

 一瞬だけ動きが完全に止まる半神。

 先ほどまで半神相手に大立ち回りしていた銀髪の男性がそれを見逃すはずがなく。

 

「誰だか知らねえが…十分すぎるぜ」

 

 男性は手から赤い糸を出し、半神を雁字搦めにする。

 

「――・七獄」

 

 赤い糸にジッポの火を近づけた途端、糸は激しく燃え、まるで導火線のように半神へと迫った後、爆発した。

 

「マジで導火線かよ!?」

 

 バラバラになる半神。その隙をついて少年が猿へ迫る

だが、少年は手にしている銃の引鉄を引かず、猿の頭の上で、二本指で何かを摘まむように、潰した。

 

                    プチッ

 

 そんな漫画の様な、聞こえるはずのない小さな音がHL中に響いた気がした。

 

 □ ■ □ ■ □ ■ □ ■

 

 さて、半神か消滅してから数十分後の話をしよう。結果から言うと、HLと世界は救われた。だが、オレは救われていなかった。

 半神が消滅した後、赤毛の大男と顔に傷がある男、顔に包帯を巻いた老人、黒髪の女性が半神がいた場所に駆け付けた。

 オレはその場からこっそりと親父さんとビビアンさんを連れて逃げようとしたんだ。2人とも本の力で救出したし、傷の手当てもした。だけど本が...

 

「ほう...クラウス・フォン・ラインヘルツか...久しいな」

 

 本が赤毛の大男に話しかけやがった。そのせいで、大男はこちらを向いてしまう。

 

「なぜ、なぜ貴方がここに?」

「ふむ、何故と問われれば...我を唯の本と思った馬鹿者がHLへ我を連れてきたからであろうな」

「貴方ほどの方が.........」

「まぁ、我も四六時中覚醒しているわけではない」

 

 大男が目を見開いたりしながら驚いている。ていうかあの人、本と知り合いかよ...絶対普通じゃない...。HLの普通って何だっけ?

 

「そういえばお主、ライブラとかいう組織の長をしておったな?」

「ええ、仰る通りです」

「では、我もその組織に入れぬか?」

 

 ん?この話の流れは...?

 

「それは此方としても有難いのですが...」

「使い手なら居る。ヨハン!!」

「ハイィッ!!...あ」

 

 しまった!そう大きな声で呼ばれると無意識に立ち上がってしまう!

 全員の視線がオレに向く。えっ?ナニコレ地獄?というか何で名前知ってるの?契約?ああ、そうですか。

 

聖血の魔導書(ハイリゲンブルートグリモワール)の使い手。ヨハン・ブランケンハイムです!」

 

 そして、何故オレは自己紹介をしているのだろう。

 

 

 

 こうしてこの日、ライブラメンバーが2人と1冊増えた。




 読んでくれてありがとう。
 うん、ここから先は事細かな設定なんだ。見たくないという人は飛ばしてくれて構わない。
 あと、取り敢えず続くかどうかは評判次第。

ヨハン・ブランケンハイム
 ドイツの大学で平和な日々を送っていたものの、恋人の姉の失踪事件が起こり、悩みぬいた末、大学を休学してHL入りを決意する。
 中肉中背の平均身長。モデルは夢喰いメリーの飯島良太。髪は黒の目は緑。体力が無いのが悩みであり、50m走ですらレオに負ける。

聖血の魔導書
 赤い表紙に、銀の金具がついた本。表紙の中央は人の顔が書かれており、視覚情報などはそこから取り入れる。文字は聖人の血液で書かれている豪華な本。取り敢えず寿命はないが切られたり、燃やされたりすると死んでしまう。
 モデルはニーアレプリントの紅の書だが性格と声は白の書。

聖血槍(ハイリゲンブルートシュペーア)
 元ネタは黒の槍。元ネタより少し細め。それ以外の違いは無い。

聖血処刑術(ハイリゲンブルートヒンリヒトゥング)
 元ネタは黒の処刑。元ネタとの違いは、ほぼオールレンジで一体に集中して放つことができる。威力が高いが燃費が悪いの典型
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。