コードギアス -覇道のセリエル-   作:夏期の種

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TURN14「女神の寵愛」

 これから始めるのは国外へ逃亡を図る日本開放戦線の救出と見せかけた合法的排除だが、良い機会なので後回しにして来た別件も纏めて片付けてしまおうと思う。

 それはナリタで失った、大切な忘れ物の回収。

 この際、妥協はしよう。

 理想ではクロヴィスと同様にギアスを用いた尋問をコーネリアに試みたいが、目の前の小火を甘く見て大火事に発展させては目も当てられない。

 多少の損切りは、自分で巻いた種の刈り取りと諦めるしかあるまい。

 今は最善を追わずに金星を挙げ、明日の安定に投資すべきだ。

 

「不確定要素の排除は出来なかったが……やらねばならん」

 

 三日三晩徹夜をして計画の問題点を洗い出し、打てるだけの布石は打った。

 メインスポンサーのキョウトに日本開放戦線の必要性を説いて支援を引き出し、失った戦力の拡充も速やかに済ませた。

 頭脳担当の俺が海に潜り、機雷敷設までやった。

 後は状況が予測した最悪を上回らない限り勝てる。勝てる筈である。

 

『ゼロ、このままでは手遅れになる! まだ動かないのか!?』

 

 落ち着け扇。そもそも国外への敵前逃亡を選んだ旧体制の化石を、危険を犯してまで助ける意義を本当に感じているのか?

 確かに纏まった数の職業軍人は欲しいことは認めよう。

 だが、既に存在しない軍の階級制度を笠に場をかき乱す邪魔者など要らん。

 仮に黒の騎士団に迎え入れたとして、連中は百害あって一利なし。

 どうせ対ブリタニアよりも組織の実権を奪い取ろうと注力し、やっと確立したトップダウン体制へに亀裂を入れてくる未来が易々と想像出来る。

 さらに言えば仏心を出して逃がしてやっても、明日のビジョンさえ持たない老害は同じことを繰り返すだけ。

 つまり助けるだけ金と時間の無駄。それくらいは自分の頭で理解してくれ。

 

『ナイトメアが船に取り付いた!早くしないと―――』

 

 先を見据えず目の前の出来事に一喜一憂する扇の報告に苛々を募らせつつ、雑音を無視しながらタイミングを図る。

 どうせ使い捨ての囮。せめて撤退時に障害となる海兵隊を道ずれにして、水中戦力を排除しておかねば割に合わん。

 ……いいぞ、その調子だ。もう少し……よし、ここだっ!。

 害悪一行を乗せたタンカーに群がったポートマンがデッキへの上陸を果たし、制圧の為に動きを止めた瞬間を見計らって握り締めていたスイッチを押す。

 すると、即座に起きたのは大爆発だ。

 予想通りのルートを進んだ船の真下。そこに設置されていた機雷の一つが引き金となり、逃亡先への手土産として満載されていた流体サクラダイトに引火。衝撃波だけでなく大地震が齎す大津波にも匹敵する大波が生まれたのを見計らうと、俺は舞台の幕を開ける。

 

「さすがは日本最後の侍、虜囚の辱めを受けるより自決を選んだか。彼らの死を無駄にしない為にも、この好機を逃すな!」

『じ、自決? そんな馬鹿なことが―――』

「目の前の事実を受け入れろ。我々はこの好機を逃さず、混乱に乗じてコーネリアの本陣強襲を行う。雑魚には構うな、一撃必殺の奇襲を仕掛けるぞ!」

『そ、そうだな』

「黒の騎士団、全軍出撃! 上陸後はP1、P2、P3で格納庫を狙い、パイロットが乗り込む前のKMFを全て破壊しろ。Z1、Z2は予定のポイントで私の指示あるまで待機。E1は私に続け!」

 

 ここまでは計画通り。むしろ最大の障害として考えていた白兜はタンカー制圧の陸戦部隊として遠方に配置され、予想通りファンナと羽付きの姿も見当たらない。

 かつては無神論者だった俺も、ギアスと言う超常の力を得て以来方針が変わった。

 敵対するならば神魔だろうと捻じ伏せるつもりだが、俺の積み上げた血の滲む様な努力を幸運の女神が認めて微笑んでくれるなら話は別だ。

 それこそ優先的に加護を与えてくれると言うのであれば、毎日の礼拝さえ捧げてやる。

 

「結果は全てに優先する。各員、奮起せよ。ナリタの借りを今こそ返すぞ!」

 

 人事を尽くして天命を待つ俺は、荒れた海を進む高速KMF輸送艇に揺られながら小さなガッツポーズを取るのだった。

 

 

 

 

 

 TURN14「女神の寵愛」

 

 

 

 

 

 コーネリアと親衛隊の駆るグロースターは、対KMF戦にウエイトを置いた近接格闘機だ。

 しかし、今回の舞台は洋上。いかに皇族最強のコーネリアでも水の中では主兵装の電磁ランスも振るえず、水密性を保障されていない陸戦兵器でまともな槍働きは不可能である。

 一応は岸壁に並べた後詰の狙撃仕様サザーランド部隊に混じり、遠距離からタンカーを狙い打つ程度の働きは可能だが、それは総督の仕事ではない。

 あくまでも今回の主役は、水中専用KMFを専門運用する海兵騎士団だ。

 現場に華を持たせ、手柄を得るチャンスを与えることも上の義務。

 大した戦力も持たない敗残兵の処理など、部下に任せずどうする。

 たまには普通の指揮官と同じく、KMFを降りて采配を振るのも悪くない。

 そう決めた女帝は、仮設の後方陣地に構えて朗報を待っていた。

 

「情報通り、獲物が網にかかりました。しかし、黒の騎士団の姿はありません」

「うむ、そうだろうよ。奴は己の利を最優先に行動する男だからな」

 

 懸念は神出鬼没が持ち味の黒の騎士団だったが、金も人も潤沢なブリタニア軍すらナリタの致命的な痛手から立ち直っていない以上、同等以上の被害を負ったテロリストが行軍可能なレベルにまで実働部隊を回復済みの可能性は極めて低いと結論付けられていた。

 それに加え、ゼロにはナリタで日本解放戦線を生餌にした実績がある。

 つまりその程度の価値しか認めていない敗残兵の為にリスクを負う義理もなければ、手札に加えた後の利も特に見当たらないとコーネリアは確信済み。

 余計な手出しさえなければ、後は消化試合だ。

 これでやっと仕事が一つ片付く。そう思い、笑みを浮かべた瞬間だった。

 夜の空が赤く染まり、続いて衝撃波が埠頭全体を襲う。

 一瞬で木っ端微塵にされた陣地の天幕から抜け出したコーネリアの目に飛び込んできたのは、混乱の坩堝と化した港と、一直線に本陣目指して向かってくるKMFの群れが上げる土煙。自らの判断ミスに舌打ちしつつ、同じく這い出てきたギルフォードに指示を与え、即座に目指すは愛機の眠る格納庫である。

 

「ギルはこのまま防衛線形成の指揮を執り、部隊を立て直せ。敵の数すら把握できない現状は、どうにもならんぞ」

「しかし姫様から離れる訳にはっ!」

「お前の主はそれほど柔ではない。私も騎乗次第、直ぐに後を追う。早く行け!」

「イエス、ユア・ハイネス」

 

 これで通算三度目となる戦略の敗北に、戦乙女の怒りは限界を突破していた。

 こうも毎度毎度、第一ラウンドを取られ続けては矜持が傷つくというもの。

 それほど直接対決がお望みであれば、今日こそ雌雄をつけてやろうではないか。

 

「日本解放戦線共々、誰一人として生かして返すな! 塵一つ残さず殲滅せよ!」

 

 奇しくも同様の決意を抱いた姉と弟の戦いの火蓋が、切って落とされるのだった。

 

 

 

 

 

 一方コーネリアが怒りに打ち震えて檄を飛ばす中、ルルーシュも忙しさで首が回らない。

 元々、数で劣る長期戦は死亡フラグ。戦場が混迷している僅かな隙間を縫い、一撃離脱の奇襲を成功させなければ全滅は必死である。

 特別に選抜した虎の子のP小隊を全て混乱増長の為に暴れさせ、敵戦力の組織的運用を阻害。幸いにして各小隊は訓練以上の結果を出しているらしく、現れる敵KMFの数は想定よりも余程少ない。

 厳しい状況下ではあるが、ルルーシュは笑いが止まらなかった。

 甘く見積もって、今回の作戦の成功率は五分五分。コーネリア本人は無理でも、屋台骨を支えるダールトン、ギルフォードと言う両翼の片割れを排除出来れば御の字程度だった筈が、知らぬ内に本命へ手が届く大穴の目さえ見えてきたではないか。

 そして格納庫へ飛び込んだコーネリアをファクトスフィアに捕らえた瞬間、勝利を確信したルルーシュは反射的に叫んだ。

 

「条件は全てクリアした。死ね、コーネリアァァッツ!」

 

 壁を突き破り格納庫へ突入すると、狙うは起動が間に合わず立ち往生しているコーネリア専用機だ。

 ここに至って躊躇や躊躇いは捨てた。

 ルルーシュは随伴させた味方と共に隙を与えず、アサルトライフルによる一斉射撃を敢行。MBTだろうと簡単にスクラップへと変える銃弾がツインホーンの悪魔を爆発に追い込んだ末路を見て、異母弟が感じたのは万感の思いである。

 富、権力、兵、あらゆる面で己を上回る女帝を、ついに何も持たない貧者が正攻法で超えたのだ。

 次のターゲットは、最大の障害となるシュナイゼル。コーネリア亡き日本を手中に収め、遠くない未来には必ずペンドラゴンにまで攻め上る日も遠くあるまい。

 そんな満足感に浸っていると―――

 

『だから貴様は甘いのだっ!』

 

 突如動き出したのは、ハンガーに固定されていた通常型のグロースターだった。

 爆発の影響で弾き飛ばされていたランスを拾い上げ、ゼロ機を守るように布陣していた無頼を一撃で粉砕すると、咄嗟にバックしたルルーシュには目もくれず随伴機をスラッシュハーケンで粉砕。

 続いて押っ取り刀で銃を構えた最後の護衛を返す刀で葬り、読みの抜けていた対戦相手を追い詰めるべくランドスピナーを起動させて爆走を開始する。

 

「謀ったな、コーネリア!」

『わざわざ棺桶に飛び込む訳がなかろう。しかし注意深く観察されれば見破られる以上、私としても賭けだった。見え透いた身代わり人形に引っかかてくれて感謝するぞ、ゼロよ』

「おのれぇっ」

 

 完全に盲点を突かれた格好だった。

 ナイトメアとは、名が示すとおり騎士にとって唯一無二の愛馬である。

 まして専用機の名を冠するカスタム機は一心同体の半身。そんな己自身とも言える愛機をあえて囮として利用し、繋がれた他の駄馬に騎乗する騎士などルルーシュは聞いたこともない。

 しかし、それ故に効果的だった。

 緊急時だからこそ、単純な罠が効果的と言う実例を見せられた気分である。

 

『……思い返せば貴様との戦いは、常に狐と狸の化かし合いだったな。だがゼロよ、お前も騎士団の長を名乗るのであれば、一度くらいは正々堂々と戦え!』

「望むところと言いたい所だが、私は騎士などと言う前時代的な称号には興味が無い。ゼロの流儀は結果こそ全て。相手の得意分野で競う愚考は犯さん!」

 

 チェックメイト寸前ではあるが、まだルルーシュには余裕があった。

 最初から失敗も視野に入れていた以上、これは最悪の一歩手前に過ぎない。

 予定通り会話で時間を稼ぎ、即応部隊として温存していたZ小隊を呼び寄せて撤退を―――

 

「……どうした、何故誰も反応しない? Z1? Z2? 扇? 玉城っ!?」

 

 通信機が返す砂嵐の音は、一体何の冗談なのか。

 ルルーシュは天国から地獄に叩き落された現実を悟り、掌を返して嘲笑しているであろう女神への呪詛を零す。

 技量に天と地ほどの差がある時点で、尋常なKMF戦では絶対に勝てない。

 このままでは撃破された後、確実に無頼から引きずり出され仮面を剥ぎ取られてしまう。

 そうなれば、いよいよ詰みだ。

 

「投降する素振りを見せて、ジュレミアと同じくギアスで起死回生……は無理だ。怪しい素振りを見せた瞬間、あの女は迷わず射殺を選ぶ」

 

 辛くも電磁ランスを回避したが、追撃のハーケンに右腕を持っていかれる。

 果たして、後どれだけ持ちこたえられるやら。

 破滅へのカウントダウンは、刻一刻と時計の針を進めるばかりである。

 

『しかし、基地全体への通信妨害とは手の込んだことをする。まさか共を連れていなければ、この私を倒せるとでも思ったか?』

「なん、だと?」

『私も甘く見られたものだ。敵の力量も正しく読めないとは、失望したぞ』

 

 ルルーシュの頭に浮かぶのは?マークだった。

 虚言を吐く必要の無いコーネリアの口から零れた情報である以上、それは疑いようの無い真実なのだろう。

 そして、ルルーシュにとってもこの話は寝耳に水。

 つまりこれは、両軍も把握していない第三勢力がこの場に存在している明確な証だ。

 ならば、とルルーシュは回避行動に専念しながら思考を加速させる。

 装備も、人材も、旧式揃いの日本解放戦線に為せることでは無い。

 仮に最新の機材を持っていたとして、キョウトが直接動く可能性は極めて低い。

 欧州は対ユーロブリタニアで手が回らず、直接対決を望まない中華連邦も麻薬や諜報員を送り込む間接的な攻撃で精一杯。第三国の介入も、選択肢から外すべきだ。

 そもそも目的が読めない。

 何の為に、どうして、このタイミングでジャミングを仕掛けたのかさっぱりである。

 

『まぁ、良い。短い付き合いだったが、そろそろお別れだな』

「逸るな。まだサイコロは回っているぞ?」

『ならばその数字、この手で選んでくれようぞ!』

 

 コーネリアの度重なる猛攻により、慢心創痍の無頼の中でルルーシュは考える。

 軍事技術で最先端をひた走るブリタニアの軍回線に対する干渉を、遠距離から行うことは物理的に不可能だ。

 つまり誰の仕業かは知らないが、強力なECMをこの港に持ち込んでいることも必然。

 

「ゼロの命が目的なら、致命的なチャンスは何度もあった」

 

 電子戦さえ可能な組織が、狙撃用装備を持ち込んでいない訳が無い。

 つまり積極的に攻撃を受けていない時点で、潜在的な味方であることも確定。

 ルルーシュが思うに、仮称Xはゼロの力を見定める為にこの状況を作り出したのではなかろうか? 

 

「どうせ見ているのだろう? 利害が一致するのであれば、早く手を貸せ!」

 

 ルルーシュの目が扇とディートハルト率いる偵察隊なら、Xも自前の目でモニタリングを行っている.

 大方この瞬間も、安全地帯から高みの見物を決めている筈だ。

 日本解放戦線が滅びた今、反抗の旗頭はキョウトの承認も取り付けた黒の騎士団である。

 飾りとして担ぐにせよ、ポジションを奪い取るにせよ、世論操作の為にはゼロと言う偶像に貸しを作って損は無い。

 だから必ず動く。動かなければならない。

 顔も知らない誰かの才覚に賭けたルルーシュはあえて動きを止め、命を担保にしたチキンレースに身を投じる覚悟を決める。

 

『そろそろ ”手を貸せ” とでも叫んでいる頃合かな?』

 

 こちらの周波数に通信が割り込んできた瞬間だった。

 アラート音と共に背後から伸びてきた銀の爪が迫り来るコーネリア渾身の一撃を力強く掴み取ると、そのまま勢いを殺さずに一本背負い。

 格納庫の残骸にグロースターを投げ捨て、ルルーシュを守るように前に立つ。

 その後姿は、かつて絶対の信頼を置いた炎の化身。カラーリングと全体的なシルエットに手を加えられているが、決して忘れることの出来ない機体が何故かそこに居る。

 しかし、感慨に耽っている暇は無かった。

 博打に勝ったルルーシュは、状況確認よりも先に操舵スティックを操作して逃げの一手を選択。紫の悪魔から距離を置き、そこで始めて通信に応じる構えを見せた。

 

「存外に遅かったじゃないか」

『主人公は遅れて現れるものさ。ここぞと言うタイミングで現れ、最小の労力で最大の旨みを得るのが余の主義でね』

「その考え方には全面的に頷こう。但し、使われる側でなければ……の話だが」

『言いたいこと、聞きたいことは山積みだと思う。だけどそれらは、無事に撤退を完了させてからにしよう。異論は?』

「猶予がないことは理解している。しかし、一つだけ聞かせて欲しい」

『どうぞ』

「私を窮地に追い込み、しかし救いの手を差し伸べる君の名は?」

『余の名はペリノア。君のセンスを借りるなら、リスティス白騎士団を束ねる白の王と言った所かな』

「ほう」

『さしあたってはそちらと似たような立場な、反ブリタニアを掲げる義勇の徒と思って欲しい」

「……黒の騎士団に触発され産まれた、後進組織の人間か」

『概ね正解。但しウチは大手の黒の騎士団と違って、人も金も不足する新進気鋭の零細下請け騎士団。今回も資金援助の見返りに、君達の支援をキョウトから受注した身でね。ま、組織力はどうであれ、与えられた仕事はキッチリ果たすよ。後のことは大船に乗った気分で任せて貰いたい』

 

 Xの紡いだ単語は、聖杯伝説を尊ぶブリタニア人なら誰もが知る著名人の名だった。

 何せペリノアは万全のアーサー王と戦い、聖剣を折った上で正々堂々と勝利した唯一無二の騎士だ。

 しかも彼は円卓の中でたった一人だけしか居ない、騎士王と同じ身分を持つ絶対者と三拍子揃い踏み。

 他国ではランスロット、ガウェイン、パーシヴァル等の有名な騎士の影に隠れて目立たない存在かもしれないが、ブリタニアにおいてはメジャーな存在なのである。

 が、そんな事情を知る故に偽名であることも承知済み。

 今この胸に渦巻く最大の疑問は、目の前でコーネリアを圧倒する真紅のKMFにある。

 

『ちなみに君を助けた機体は ”TYPE-02RA インフェルノ” 。コネで入手したKMFを独自改修して産み出した、白騎士団最強の旗機さ。元の持ち主ならベース機のスペックは知ってるだろ? 後は安心して彼に任せ、撤退を急ぐんだ。展開済みの歩兵についても回収はこちらで請け負うので、指定したルートを使いポイントA8まで来て欲しい』

「……よかろう」

『それではご対面を楽しみにしているよ、せ・ん・ぱ・い』

 

 ランドスピナーをフル回転させて退却を始めて背後。そこでは撃墜寸前のコーネリアの元にギリギリ間に合った白兜が、インフェルノと壮絶な一騎打ちを始めている。

 ルルーシュは思う。

 何故、ブリタニアに奪われた紅蓮が白騎士団の手中に収まっているのか。

 ペリノアとの会談は、如何なる化学反応を引き起こすのか。

 そして、何処でボタンを掛け間違えたのかと言うことを。

 しかし考えてみれば、これは絶対遵守のギアスを持つ者にとってまたとないチャンスだ。

 黒の王すら手玉に取る洞察力を備えた白の王。

 白兜と五分の戦いを演じられる最強クラスの騎士と、ナリタで無くした宝物。

 喉から手が出るほど求め続けて来た有能な人材が獲り放題のボーナスステージに突入したと思えば、最終的に全体の失態を補ってお釣りが来る計算になる。

 

「俺を先輩と呼ぶのであれば、後輩としての自覚をその身に刻んでやる。先ずはお手並み拝見。果たしてこちらの用意した撤退プランを、貴様は上回ることが出来るかな?」

 

 奪われたものは、手柄を含めて全て取り戻す。

 そう、利息をつけて元本以上の払いを要求してやる。

 コクピットの中で不敵に嗤うルルーシュは、無頼を操りコンソールに示されたルートをひた走るのだった。

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