コードギアス -覇道のセリエル-   作:夏期の種

26 / 28
以降のオリジナルキャラの名前は飲み物で統一。
次はコーラかメロンソーダか。

ちなみに次回か次々回は、ついにルルさんのターン。
負けっぱなしの王様の逆襲に乞うご期待です。


TURN26「遥か遠き理想郷」

「ラモラック、アグレスティアの搭載完了。続いてガウェインの移送を開始します」

「サマセットとブラッドフォードは?」

「シュタイナー卿とゴットバルト卿が、アヴァロンからの発艦及び着艦テスト中です」

「了解、作業を続けて」

「イエス、ユア・ハイネス」

 

 オペレーター席に座る黒髪の少女の報告を受け、セリエルは時計を確認する。

 ここまでは全て順調、予定通りのスケジュールだ。

 さすがは帝国最高頭脳が集めた人員。今日が初顔合わせの面々に一抹の不安は抱いていたが、示された実力を目にしてそれも払拭された。

 これならば、一から十まで指示しなくとも大丈夫。

 指揮官研修の一環として、部下に仕事を投げても問題あるまい。

 

「エリスは忙しそうだから、ええと……君は?」

「エリシア・マルコーア戦略オペレータですぅ」

「ではエリシア、僕は少し席を外す。以降の指揮権はマリーカに委譲するので、何かあれば彼女の判断に従うように」

「イエス、ユア・ハイネス」

「ファンナは僕のお供を」

「はいっ」

 

 セリエルが陣頭指揮を取り、発艦準備を進める船の名は ”アヴァロン” 。

 伝説に残る楽園の名を冠したこの船は、全てが規格外の化け物である。

 全長200mの巨体に詰め込まれた力は、都市の一つや二つを灰燼に帰すことの出来る多様な最新鋭KMF群と、それを運用可能な指揮・管制能力だけに留まらない。

 目玉の一つは大型化することで、諸々の問題を解決したフロートユニット。

 KMFサイズでは実用できなかった飛行モジュールを搭載した結果、このサイズにも関わらずテスラドライブ真っ青の機動力で空を舞うことを可能としているのである。

 そしてもう一つは、艦船で初となるブレイズルミナス。

 ベースとなったランスロットの物でさえヴァリスを弾くというのに、アヴァロンに搭載された新型は出力比で約三倍。障壁を抜けという方が無理な代物だ。

 攻撃面にも抜かりはなく、KMF射出ランチャー、76mm単装砲、各種ミサイル、と隙のない武装が目白押し。

 次のアップデートで検討されている大型ハドロン砲を積めば、いよいよ攻防揃った単艦で戦況を左右する動く城となることだろう。

 

「まさか帰りの便として、こんな物が用意されているとは……」

 

 そう、アヴァロンの存在はセリエルにとっても寝耳に水だった。

 いよいよ試験日が迫りエリア11への帰還を決めた直前、突然シュナイゼルにプレゼントがあるとキャリフォルニアにある機甲軍需工廠に連れてこられてみればコレが待っていた。

 確かに航空戦艦は次世代の主力なので機密性が高く、技術畑の皇族といえど本国に居ない人間に情報を回せないのも分かる。

 しかしこれほどの超高性能艦をいきなり座乗艦として使えと渡されても、さすがに準備不足で困惑せざるを得ない。

 幸いにして乗組員は訓練を繰り返した熟練揃いらしいが、肝心の頭脳が体のことを何一つ知らないのでは宝の持ち腐れ。

 アヴァロンのポテンシャルを活かすには、今しばらくの時間が欲しいところである。

 

「ここで愚痴っても仕方がない。用事もあるし、船の中を視察しながら兄上の元へ行こうか」

「はい、殿下っ!」

「ご機嫌だね」

「恥ずかしながら、三人でジェミニ宮を探検して遊んだことを思い出していました。兄さんは不在ですが、知らない場所を一緒に歩けるだけで楽しい……と言うのは子供っぽいですよね」

「いやいや、好奇心は決して悪いことじゃないよ。無関心より余程好感が持てる」

「えへへ、褒められちゃいました」

「それに僕だって新居の間取りには興味があるし、わくわくもしている。さすがに何事も起きないとは思うけど、冒険の護衛を宜しく頼むよ騎士様」

「イエス、ユア・マジェスティ」

 

 かくして王と騎士の長い旅が始まる。

 先ず訪れた居住ブロックで宮殿と見紛う豪勢な貴人用プライベートルームに驚き、再生治療さえ可能な医療体制を見て感嘆したのは序の口。

 研究室、リラクゼーションルーム、食堂と順繰りに視察を続け、ついに辿りついたのは本命の格納庫だ。

 セリエルの来訪に気付いた部下達が一斉に作業を止めようとするのを手で制し、ハンガーに収められたKMFの数々を眺めながら歩いていく。

 一芸特化の実験機がこれだけ並ぶと壮観のひとこと。

 これだけの最新鋭機を揃えている騎士団は他に類を見ず、アヴァロン込みで戦えば世界中のどんな軍にも負ける気がしない。しないのだが―――

 

「幾らなんでも趣味に走り過ぎた。アグレスティアとラモラックは共通部品が多いからまだしも、ブラッドフォード、サマセット、そしてガウェインと、各KMFのパーツに互換性が皆無なのは如何な物か」

「ひょっとして俺……じゃない、自分に仰ってますか?」

「そう、君に言っている。あと慣れない敬語は使わずとも結構。普通に喋って構わない」

「は、はぁ」

 

 セリエルが声をかけたのは、周囲に檄を飛ばしていたリーダー各の男だ。

 年季の入ったツナギは熟練の証。いかにも現場主義と言った雰囲気にも好感が持てる。

 話すならば彼しか居ない。そう判断したセリエルは、気軽な口調で続けた。

 

「これは質問なんだけど、運用側から見てこの艦のKMFはどう思う?」

「性能は凄いでしょうよ。但し殿下も呟かれていた通り各KMF毎にマニュアルは違うわ、予備部品は各機毎に管理しないとマズイわで、整備面の非効率は否めません」

「やはり単発任務なら兎も角、連戦に継ぐ連戦となれば100%稼動は保障できないか……」

「はい。整備班一同死に物狂いで最善を尽くす覚悟はありますが、削り合いの持久戦に持ち込まれると物理的に難しいと思われます」

「必然的にそうなるよね」

 

 何でもかんでも十把一絡げに対応出来ない以上、その点は致し方ないところ。

 世の中には製作側さえ良く分かっていない謎の塊なゲッターだろうと、勇気とかいう根性論を主動力に据えているガオガイガーだろうと、はたまた文明をサクっと滅ぼすイデオンを含む多種多様な戦闘兵器の群れを、涼しい顔で何とかしてしまうアストナージとかいう人外が居るが、アレを標準に考えるのは人類に対する冒涜だ。

 

「ま、どうせウチの騎士団は一撃必殺の短期決戦が得意分野。だらだらと消耗戦に付き合うつもりはないから大丈夫さ」

「であれば、助かります」

「なので僕が君達に求めるのは、多少時間が掛かってもクオリティー優先の仕事だということを忘れないで欲しい」

「お任せを。嬢ちゃんの機体が面倒なのは、今に始まったことじゃねぇ。こうして再び巡り会ったのも何かの縁、他の騎士様のKMFも含めて完璧に仕上げると保障してやりますよ」

「良い感じに砕けてきたじゃないか。ところでファンナ、彼とは知り合いなのかな?」

「顔見知りです。実はメッツさんとはエリア8で同じ部隊でした」

「嬢ちゃんはグラスゴーに電磁ランスを持たせる無茶なセッティングを試させられたり、制御プログラムの部分修正を頼まれたりで手間のかかる騎士だったなぁ」

「ラ、ランスを勧めてきたのは整備の皆さんでしたよね!?」

「それはそれとして、だ」

「最近その言葉を立て続けに聞かされている気が!?」

「落ち着け落ち着け。とにかく何の因果か整備の多くは、あの基地で嬢ちゃんをエースとして認めていた面子だ。あの頃の活躍がまぐれじゃないことを証明してくれないと、俺たちは愛想をつくかもしれん」

「はい」

「ここには足を引っ張る馬鹿も居ねぇんだろ? 伸び伸びやって、結果を出せよレストレス卿」

「頑張ります」

 

 仲良きことは美しきかな。

 嫌いな上司の為に仕事と割り切って働く部下と、上司の手助けをしたいと思いながら働く部下なら、常識的に考えても後者の関係が望ましい。

 結局、戦争の行方を左右するのは何時の時代も人間の質なのだ。

 誰の差し金かは知れているが、この一体感は武器になる。

 

「正式に名前を聞いておこうか」

「自分はメッツ・リトンサ。拝領した役職は整備士長で、騎士の皆様を万全の状態で送り出すことが使命であります」

「ファンナが君達に見限られないよう努力するなら、君達もまた僕にマイナス査定を付けられないよう頑張ってくれたまえ」

「イエス、ユア・ハイネス」

「さて、これ以上は仕事の邪魔だよ。そろそろ最終目的地へ向かうとしよう」

「は、はい。ではメッツさん、出航後にでもまた」

「その時は他の騎士様方も連れてきてくれ。各々の癖や好みを把握させて欲しいんでな」

「了解です」

 

 かくして格納庫を後にしたセリエルが向かったのは、アヴァロンを係留している工廠側の建物だ。

 館内地図を見ながら歩くことやや暫く。貴賓室の一角にある執務室を守る騎士へ対し取次ぎを命じ、中に居るシュナイゼルの許可が下りたところでくるりと反転。

 追従していたファンナに向き合い、ここで待つよう告げておく。

 何故なら、ここから先の話を絶対に聞かせてはならないから。

 これから兄に対して投げかける問いは、色々な意味で今後に影響する重大事項なのである。

 願わくば杞憂であって欲しい。そう思いながら意を決して扉の先へと進むのだった。

 

 

 

 

 

 TURN26「遥か遠き理想郷」

 

 

 

 

 

「兄上、お聞きしたいことがあります」

「何かな?」

 

 問いかけに応じた兄は、何時もどおりの悠然とした態度で仕事中。

 邪魔をするのは不本意だが、疑問を疑問のまま残すのは性に会わない。

 答えを求めるセリエルは、覚悟を決めて口を開いた。

 

「アヴァロンの人員が原則としてエル家派閥、もしくは好意的な中立派から厳選されていることは視察して理解しました」

「その通り。補足するなら人種や性別よりも能力を尊ぶタイプを集めているからファンナへの風当たりも弱いし、例え君が他国の人間を騎士団に迎え入れることがあっても問題視しない人間で固めているね」

 

 ここまでは予想通り。

 

「その上で聞きます。乗組員に女性の姿が多いのは何故ですか?」

 

 そう、セリエルが抱いていた疑念はまさにこれ。

 ここまで艦の中を歩き回って気付いたのは、異様なほどの女の子の多さ。

 おかしいと思って調べてみると、アヴァロン乗組員の約三割程度が見目麗しい乙女達で占められていて愕然としてしまった。

 女が長を勤めるコーネリアの親衛隊でさえ従騎士を含めても女性はほんの一握り。何か裏があると勘ぐらない限り、とても納得できる数字ではない。

 

「彼女たちは優秀で、しかも将来性のある背後関係も真っ白な人材だよ?」

「そこを疑うつもりはありませんが……」

 

 何か、とてつもなく嫌な予感がした。

 

「ははは、いまさら外聞を取り繕わなくても大丈夫。ちゃんと女好きな君の為に方々手を尽くしたから、平均値としてかなりの水準を達成出来ている。特に顔を合わせることの多いオペレーターには気を配らせてもらったとも」

「え?」

「私の一押しは現役アイドルだったエリシア・マルコーア君。職業病なのか敬語は怪しいけど、裏表のない明るく気さくな性格は二重丸。過去に歌手や役者が皇族の目に留まり、愛妾として召し上げられた事例があることもお勧めの理由だね」

 

 脳裏に浮かんだのは、別れ際に気安く突き出されたVサイン。

 言われてみれば万人受けする溌剌とした金髪ツインテール美少女だったが、基本的に部下を駒としてしか見ないセリエルには寝耳に水の話である。

 誤解だ。そう口を開こうとするも、シュナイゼルのターンはまだ終っていない。

 

「次点は黒髪が美しいエリス・クシェシスカヤ君かな。容姿はファンナと似ていても、性格は冷静沈着で間逆という面白さ。ロジックを重視する君とウマが合うと思うよ」

 

 落ち着け。

 

「待って、ちょっと待って兄上」

「ちゃんと君の性癖を考慮して、二人ともティーンエイジだよ?」

「何時の間に僕の女癖が陛下並の大食漢で、しかも年下属性持ちになったんですか!?」

「ちゃんと統計データを分析した結果さ」

「えっ」

「君が自主的に選んだ女性は、揃って低年齢層の綺麗と言うよりは可愛い子ばかりだ。ファンナ然り、マリーカ然り。特に後者はリーライナという選択肢があったにも関わらず、あえて彼女を本国に同行させる騎士として選ぶ徹底っぷり」

「黒の騎士団に対する潜入任務には、社交的なリーライナが適任だっただけです。色仕掛けの一つも出来ないマリーカを獣の巣窟に放り込む訳にはいきません」

「本当に?」

「我が祖国に誓って」

 

 身近なところでは美人のお姉さんなアンヌや、若干年上で豊満な体つきのリーライナも魅力的だと感じるし、KMFのつっこんだ話の出来るセシルなども違う意味で大変好ましく思っている。

 ほら、やっぱり僕はノーマルだ。

 たまたま好きな女の子が年下で、今はまだ手を出すのが憚られる年齢なだけ。

 

 ”俺はロリコンじゃない。たまたま好きだった女がロリだっただけだ!”

 

 の名言を残した変態とは違う。

 誤解されるだけでも極めて遺憾の意を表明させて頂きたい。

 

「じゃあ、直近で配下に加えたゴットバルト家の令嬢は? 彼女もまた条件に該当する少女だったと記憶しているけど?」

「彼女は兄上が推薦した人員で、僕が手ずから拾ってきたわけではありません。採用したのも本人の力であり、決して見た目が好みとかそういう理由では……」

 

 例え必然と偶然からハーレム気味になっていても、結果的には仰るとおり。

 統計と言うには判例が足りないと反証したいが、どうせ傍に置くなら美少女の方が好ましいと考えてしまう男の性を否定しろと言う方が無理なのだ。

 まして相手は感情などと言う不確定要素を信じないシュナイゼル。

 自分の推論を疑っていない鬼才に対し明確な物証を示せない以上、説得は不可能といえよう。

 

「照れ臭いのは分かるけど、愛妾を持つのは血を残す義務を持つ皇族の嗜みだ。アヴァロンの女の子は政争の火種にならない人選を済ませてあるから、遠慮せず陛下に負けじと励んで構わないよ」

「……もういいです、僕なりに頑張ります」

「ちなみに私は独り身で天寿を全うする。つまり、エル家の血筋は君が本流となる。故に私は君に告げる。直系男子の製造だけは、何が何でも必ず成し遂げるようにと」

「……分かりました。僕は発艦準備がありますので、これにて」

 

 肩を落とし、逃げるように部屋を出る。

 薄々感づいてはいたが、現実を突きつけられると辛いものがあった。

 世界最高の頭脳を持つ天才が、ここまで盛大に読み違えると誰が予測できるのか。

 この世に完璧は存在せず、聖人も神の権化たる皇帝さえも必ず過ちを犯す。

 鬼の霍乱、河童の川流れ、格言の正しさを身に染みて実感したセリエルである。

 

「そのご様子、さぞ重要な案件だったと察します。お時間があれば、少し休むわけにはいきませんか? 暖かいお茶を飲むと元気が出ますよ?」

「……そうしようか。場所はアヴァロンの僕の部屋。準備は任せるよ」

「はいっ!」

 

 二人でお茶会、お茶会と嬉しそうに口ずさむ少女を眺めて思う。

 やはり自分にはこの娘一人で十分。将来的には立場的にどうなるかは分からないが、心を許せる正室はファンナ以外にありえない。

 

「どうせ公認なんだし、口付けの先を考える頃合が来たと捕らえるべきか……」

 

 曰く、世の学生と言うものは試験明けに遊びに繰り出すもの

 わざわざ高校に通っているのだから、お約束事を見過ごしては勿体無い。

 どうせ出かけるならデートだ、デートをしてみよう。

 

「時にファンナ、クロヴィスランドって施設を知っているかい?」

 

 首を傾げた愛しい少女に対し、人差し指を立てるセリエルだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。