コードギアス -覇道のセリエル-   作:夏期の種

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才能は スザク>ファンナ でも 現時点の力関係は ファンナ>スザク。
詰んできた経験が、大きなアドバンテージとなっています。


TURN06「水面の波紋」

「セリエル・エル・ブリタニア……これは随分と大物が釣れたじゃないか。すぐに殺すのか? それともギアスを仕込んで皇帝への暗殺者にでも仕立て上げるのか?」

「あいつには利用価値がある、処分は後回しだ」

「ほう?」

「奴は独自のルートで母さんの暗殺事件について調査を進めている。下手に手を出すよりも内偵を進めさせ、情報を引き出させる方が俺の利になるだろう」

「それならば、やはりギアスを使うべだ。一言 “忠誠を誓え” と命令するだけで従順な奴隷の出来上がりだぞ。何を躊躇っている? まさか友情とやらで見逃すとでも? それとも兄弟への意地か? プライドか?」

「……全部だ」

 

 共犯者は ”またそれか” と非難の視線を浴びせてくるが、たとえ弱さと蔑まれようと譲れる部分ではない。

 かつて絶対の自信を持っていたチェスにおいて完全敗北を喫し、生まれて初めての恐怖を感じさせられたライバル。それがセリエルだ。

 利用できるものは何でも容赦なく使う徹底的な合理主義は、俺も同類なので理解できる。

 しかし、奴と俺は決定的に違う点があった。

 それが発覚したのは……そう、あれは忘れもしない母さんの葬儀の時だ。

 軽く錯乱状態にあった俺を呼び出し、何を要求するのかと思えばチェスを指せという。

 俺はあの時の目を一生忘れない。

 感情を一切込めない冷徹な瞳で観察され、交わす事柄は事件関連のみ。

 まるで現実を再認識させるかのような淡々とした口ぶりが印象的だった。

 当然、心が散り散りだった俺は敗北。しかも惨敗という有様で。

 当時の俺たちは、まだ10にも満たない子供だった。

 そんな幼少期に身近な人間の死を、ゲームに利用しようと思うに至る精神は狂気の部類だと思う。

 

「私には関係の無いことだ。好きにしろ」

「俺はあの男に勝ちたい。スザクとは違う意味で大きな重みを占める仇敵を超えられた時、違う景色が見えるはずだからな。その為にも黒の騎士団……必ず成立させなければならん。お前も力を貸せ、魔女」

「いいだろう。契約は守れよ童貞君」

「黙れピザ女!」

「私は寝る。チーズ君抱き枕は絶対に譲らんからな」

 

 くそっ、布団に潜ったなC.C.。

 この部屋の主は俺だ。それを忘れるなっ!。

 

「ゼロとして、ルルーシュとして俺はお前を超える」

 

 敗戦の異国で地獄を味わったこの俺と、本国でぬるま湯に浸かっていたお前。

 今度は俺がお前に未知の恐怖を教えてやろう。

 

 

 

 

 

 TURN06「水面の波紋」

 

 

 

 

 

「これからも稼がせてくれよな!」

 

 紙幣の束を数えてご満悦なリヴァルは、ホットドッグを口へ運ぶセリエルにサムズアップ。小遣い稼ぎの非合法賭けチェスで、貴族相手に快勝してくれた友人に惜しみの無い賛辞を送っていた。

 いつもなら悪友を打ち子に立てるのだが、どうにも最近付き合いが悪い。

 そんな中、ルルーシュに勝るとも劣らぬ人材が現れた。

 それがセリエルである。

 

「こちらとしてもスリリングな体験が出来て実に楽しい。タネ銭に余裕がないなら僕が出そう。だから、もっとレートの高い勝負のセッティングを頼む」

「ギャンブラーだなぁ。今日の稼ぎでも俺のバイト三ヶ月だぜ? 小遣いにしちゃ多すぎないか?」

「僕が欲しいのは、金よりもヒリつく様な賭場の空気。そうだね、チェスじゃイカサマ分が足りない。高レート麻雀を打てる場は無いのかな?」

「放蕩貴族の考える事ってわっかんねえ。知らないとは言わねぇが……マジで危ないぜ?」

「それは暴力的な意味で? それともお縄になる的な意味で?」

「どっちも」

「前者は完全無欠に大丈夫。な、ファンナ」

 

 傍らで頬を膨らませる少女は露骨に不満顔。支払いを渋った貴族相手に大立ち回りをやってのけ、大の男を捻り潰したのがつい先ほどの出来事だった。

 荒事への自身はあるが、そもそも鉄火場に護衛対象を連れて行くのは不本意なファンナさん。

 なのに愛しの殿下は、ホイホイと自称友達の誘いに乗って危険地帯へレッツゴー。しかも止めるどころかさらなる深みを目指すらしく、そりゃ不機嫌になるのも当然だろう。

 

「アグレスティアとは言いませんが、せめてサザーランド……グラスゴーでも構いません。お出かけの装備として、KMFを持ち込んでも宜しいでしょうか?」

「さすがに難しい」

「では対物ライフル所持の承認を。ハンドガンだけでは心許ないのです」

「まぁ、それくらいなら」

「待てぇ!?」

 

 さらっと交わされた応酬に、賭場で培った危険センサーが警鐘を鳴らす。

 リヴァルは思った。

 ひょっとして自分はとんでもない化け物を引き込んでしまったのでは、と。

 

「何を問題視してるんだい?」

「そもそも銃は駄目だろ!」

「え、標準装備の護身具では? わたし、寝る時も離しませんよ?」

「ねぇよ! 何処の国の標準だ!?」

「ブリタニア」

「ああ、そうだろうさ!ラウンズ様の妹だもんな!」

「そもそもわたしは護衛です。武装しない理由が見つかりません」

「正論だなぁチクショウ!」

 

 一本筋の通った言い分だが、一般学生にしてみればたまったものではない。

 

「と言うことで身の安全はパーフェクト。そして官憲はもっと怖くない。何故ならこのエリアで権力を使わせたら、僕の右に出る者はそう居ないからね。それこそ一心不乱の大虐殺でもしない限り、何をしたって無罪放免だ。その気になればそこいらの貴族の一人や二人、簡単に消せるから安心してくれ」

「お前は何様だよ!?」

「ここだけの話で、口外しないと約束できる?」

「あ、ああ」

「こ、う、ぞ、く」

「や、やだなあリエル君。冗談でも止めようぜ? な? な?」

「はっはっは、ブリタニアンジョークさ」

「ですよねーっ!」

 

 露骨に胸を撫で下ろしたリヴァルを見て、セリエルの悪戯心に火が付いた。

 この少年は、ルルーシュの数少ない悪友らしい。

 ならば、からかいついでに弄り倒すのも一興。

 

「時に、週末の予定は?」

「おう、バイトも休みで暇だぜ」

「河口湖でイベントを開くんだけど、暇なら覗きに来ない?」

「へー、何すんの?」

「サクラダイトの生産国会議」

「はぁ!?」

「主催側としては、休暇中でも出席しなきゃなのが面倒なところ。公務だし、給金は弾むよ?」

「ちょ」

「僕はリヴァルのバイトに付き合った。なら、次は君の番だろ?」

「冗談だよな? これもかるーい冗談だよな?」

 

 しかしセリエルは無言。全力で清々しい笑顔を浮かべるだけ。

 そんな主を見守るファンナは、溜息を吐いて諦めムード。

 妙な緊張感が、事の重大さをひしひしと伝えてくる。

 

「さあて、どうだろう。休みを楽しみにしているがいい。もしも僕の話が本当なら、拒否した場合は不敬罪で相当の罪になるんじゃなかろうか」

「待てーっ、何だよその説得力ある言葉!」

「信じるも信じないも自由」

「もう許して、俺のライフはとっくの前にゼロよ!?」

「さらばっ!」

 

 迎えの車の到着に合わせ、何やら必死の形相であたふたするリヴァルを放置。

 振り返ることもせず、仮の住まいである政庁へと向かうセリエルだった。

 そして迎えた週末。一時は本気でドッキリを仕掛けようと思った悪魔も、さすがにやりすぎだと自重。ネタだったとメールを送り、当初の予定に従い副総督のユーフェミアを伴って会議に参加していた。

 今回ばかりはファンナも入場を許されず外で待機している。

 今頃は湖の上に立てられた超高層ホテルを、湖畔から眺めている頃だろうか。

 しかし、と少年はため息を一つ。

 互いの立場から表立っての蜜月は無理にしても、どうせリゾートに来るのなら可愛い女の子と一緒に穏やかな余暇を過ごしたいものだ。

 全ては仕事を放棄し、謎の遺跡発掘に生きるベリーメロンが悪い。

 キャッチマイハートするのは、ファンナだけで十分だと思うセリエルだった。

 一方その頃のファンナはと言うと、こちらはこちらで大忙し。

 脳をフル回転させ、己の存在を賭けた戦いに挑んでいたりする。

 

「次に勝てばイーブン。さあ、もう一戦行きましょう」

「いやいや、僕が勝ち越せている理由は機体性能の差です。少し落ち着きましょう」

「……むー」

「そもそも未完成の機体を駆りながら、既に完成系のランスロットと互角の時点で僕の負け。ファンナさんには教わるばかりで、申し訳ないとすら思っています」

「上手く誤魔化された気もしますが……まぁ、いいでしょう。ですが、スザクは自分に自信を持つべきです。控えめに言ってラウンズ級だと太鼓判を押せる腕前ですよ?」

「光栄です」

 

 さりとて警備の任務も貰えない外様な特派のお仕事は、セリエルの帰りを近場で待つことだけ。

 時間を有意義に使おうとトレーニングに精を出す2人は、会議が始まる前からトレーラーに備え付けられたシミュレーターに掛かり切りだった。

 

「でも気になる点が幾つか。例えば悪天候や、イレギュラー発生時の脆さ」

「自分が受けた訓練は、KMFの基本操作だけでして……申し訳ありません」

「イレブンがKMFに乗れること自体が奇跡ですもんね。まぁ、その辺はおいおい教えてあげます」

「是非に」

 

 教え子の技量は素晴らしい。しかし、圧倒的に経験が足りていない。

 彼が無類の強さを発揮するのは、万全の機体、不確定要素の少ない環境時だけ。

 四肢が欠落した状態や、雨でぬかるんだ地面への対応がイマイチなのだ。

 が、それも仕方の無いことかもしれない。

 聞けば正規のパイロット用カリキュラムを受けたことも無ければ、実機に触れたのもランスロットが初めてだと言う。

 よくぞ我流でここまで練り上げた。末恐ろしい才能だとファンナは思う。

 

「それと、グラスゴーやサザーランドの操縦が0点」

「……思い通りに動かないものでして」

「その気持ち、よーく分かります。でも、一番普及しているのはあの子達です。まさか有事の際に “専用機以外は乗れません” なんて泣き言が通じるとでも?」

「精進します」

「人が機械に合わせることも大切です。目をかけてくれているユーフェミア様に恥をかかせない為にも、先ずは苦手意識を克服しましょう。いいですね?」

「イエス、マイ・ロード」

「では次の想定はポートマンを用いた水中戦を。負けたらセシルさんのグロ不味いお握りの刑です」

「え」

「さて、シミュレーターの設定変更まで休憩としましょうか。出番は無いと思いますけど、万が一に備えて―――」

 

 鳴り響くアラート音と、ホテルより上がる黒煙。飛び交う怒声に耳を傾けずとも、漂う緊迫感が有事の発生を伝えてくれる。

 こうなればファンナの反応は、スザクを置き去りにするほど早い。

 鎮座するアグレスティアに飛び乗り、迷う事無くファクトスフィアを起動。

 ホテルの状況を最大望遠で確認しつつ、無線に全神経を集中する。

 断片的に聞こえる情報を統合して分かったのは、テロリストがホテルの人間を人質に取り篭城を始めたということ。

 各国の要人に加えて一般の宿泊客も相当数が身柄を抑えられているらしいが、そんなことは知ったことではない。

 

『こちらファンナ。アグレスティアは出せますか?』

『機体の整備は万全ですけど……』

『なら、出ます。状況報告は以後この秘匿回線にて』

『ダメ、ダメですって! 今、コーネリア皇女殿下がこちらへ向かっています。指示を仰がなければ軍法会議物ですよ!?』

『特派に命令出来るのはエル家のみ。殿下の危機と知れば、宰相閣下も温情措置を取ってくれるでしょう。問題ありません』

『そのセリエル殿下も人質に取られているのに、迂闊な行動は危険過ぎます。ファンナさんの行動で殿下を失うようになったらどうするの? 貴方はそれに耐えれるの?』

『くっ』

『政治的に解決される可能性も十分に考えられます。少しは冷静になりなさい!』

『……今はセシルさんに従いましょう』

『よかったわ』

『但しコーネリア皇女殿下が人質を軽視した場合、命令違反に問われようと出ます。止めようとするなら、誰であろうと殺す。宜しいですね?』

『本当にセリエル殿下が大事なのね』

『はい、わたしの全てです』

『その気持ちは総督も同じ。あの方の妹姫へ注がれる愛情は、貴方が殿下に抱く思いと同じなの。ユーフェミア様が捕まっている限り、徹底抗戦はおそらくあり得ません。分かりましたか?』

『……コクピットからは出ませんよ』

『かまわないわ』

『コーネリア皇女殿下ではなく、セシルさんを信じましょう。こちらでもモニターしますが、新たな情報が入ったなら回して下さい。お願いします』

『了解』

 

 通信が切れると同時、小さな騎士は苛立ちを隠さずコクピットの壁面を殴りつける。陰に日向に守り続けてくれた最愛の人が窮地に立たされているのにも関わらず、何も出来ない自分が腹立たしい。

 やはり自分が側に控えて居ればよかった。

 今後は何を言われようと、警護を他人任せにしないことをファンナは心に決める。

 

『スザク、聞こえますか?』

『はい』

『責任は全て私が負います、力を貸しなさい』

『イエス、マイ・ロード』

『随分とあっさりOKしましたね……』

『ファンナさんは僕の上官、従うのも当然ですよ』

『ロイドさん、ランスロットの準備も並行して進めて下さい。出来ないとは言わせませんよ』

『どうしよっかなぁ』

『喉から手が出るほど欲しい実戦データを得るチャンス、まさか逃しませんよね?』

『おっめでとう、実はそう来ると思って準備は万端。罪は半分背負ってあげるから、思う存分やっちゃって。限定環境における第七世代の同時運用、冒険するだけの価値はあると思うんだよね、僕は』

『ああもう、馬鹿ばかり! 私は知りませんからっ!』

 

 自称真人間のセシルだけが気勢を上げるが、やっている事は侵入ルートの下調べ。

 ストッパー不在の特派は暴走を始めるのだった。

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