かつて、決闘王と呼ばれた者がいた。
彼が去った後も、彼の強さに憧れる者たちがいた。彼らは、剣を鍛え、戦いを繰り広げてきた。……だが、時が流れ、決闘王の記憶も、人々から薄くなりつつあったこの時代。
今、ここに一際「変わった」決闘者たちがいた。カードに魂を与え、本物の力を与え、それを打ち消すことを可能とした者たち。彼らは、まるで王の声を届けるように剣を鍛え、支えあうように寄り添い、城を守るように戦い続けた。
人々は、彼らを魂の番人と呼んだ。
「……そんなに、あの町に戻るのが嫌なのか?」
車の中、前の席から父の声がする。正直、長時間の車移動でかなり消耗している……というか酔っているから話しかけてほしくない。
「はぁ……。別に嫌じゃないぜ」
「乗り気でもなさそうだがね」
「……まあ、うん。せっかく受験に受かって入学した身としては」
中学からの友人は少ない高校だったとしても、慣れ始めたところだったわけだし、デュエルのサポーターとしては人生で一番輝いてただろう。童実野町でサポーターしたことないけど。
「それは悪かったな。でも、こっちにも友達はいるだろう?」
「……どうせデュエルアカデミアだろ。あいつらは優秀なデュエリストだ」
父さんの言う、友達。誰を言っているのか、わからないではないけど、あれだけ優秀なデュエリストがデュエルアカデミアに行かないわけがない。
「いや、どうだろうな。片方くらいは残ってたりして。父さんは何か知らないのか?」
「全くわからないな」
「えぇ……。海馬コーポレーションだし、大会とか詳しいと思ったのに」
まあ、そのへんは後でゆっくり調べるしかないのかな。この町に残ってたとしたら、再会するほうがはやそうだけど。
「仕事には役割というものがあってだな」
「はあ」
誕生日にカードくれたくらいだから詳しいと思ったのになぁ。やっぱり、そういうわけにもいかないか。
「そうそう、お前の部屋片づけるの大変だった」
「それ毎年言ってる。ゴミはなかったはずだぜ」
そもそも部屋にゴミ箱がなくて不便だったのは覚えている。いや、ゴミ袋で足りてたけど。
「カード出しっぱなしだっただろ」
「あー、あのときは大会が近かったんだっけ。ぎりぎりまでデッキで揉めて」
使いたいデッキと使えるデッキの違いを思い知る大会だったけど、あの頃に比べたら自分らしいデッキを作れるようになったと思う。
「そうだったのか。結果はどうだったんだ?」
「さあ、覚えてない。そろそろ童実野町?」
座席にちゃんと座り、窓の外を見る。この辺はあまり来なかったからよくわからないけど。
「そうだな、さっき童実野町に入った」
窓の外は、だんだん見覚えのある風景に変わっていった。
「変わらないな」
6年たつっていうのに、家の周りは驚くほど変わっていなかった。ほっとしたような、がっかりなような。
「なにしてるんだ、はやく荷物をどうにかしないといけないだろう」
「あ、すぐ行く」
父さんの声にはっとして、家の中に駆け込んだ。