自爆スイッチ。LPに7000以上の差があるとき、互いのLPを0にし勝負を引き分けにする罠。
「悪いな、でもこれで命令はなしだ」
「ううん、面白かった! がっぴーはいつも思わぬ方向に成長するよね。デュエルおつかれ、ありがとう!」
遊樹は、全力で戦うのが好きだ。当然、相手にもそれを求めてきた。俺の戦いはどう見えただろう。わずかなターン数だったが、少なくとも遊樹は本気だったはずだ。俺は? 本気とは言えなかったと思う。
「」
「
いつの間にか、1人増えていた。白いスーツに身を包んだそいつは、俺に鋭い視線を投げつけてくる。ストレートだ。
「途中からだったが、デュエルを見ていた。随分と変わったな」
「かもなぁ」
遊士も随分変わったけどな。なんか強そうになった。あと無駄にでかい。成長期ってこわいな。
「でもすごく楽しかった! がっぴーに命令できないのは残念だけどね。がっぴーとデュエルするときは絶対勝って言うこときかせるって決めてたから」
「なにをさせるつもりだったんだよ……」
「高級菓子店のすごく高いプリン買ってもらおうかなって。3個」
悪魔の所業だぜ。もともと金欠の呪いにかかった人種じゃないか俺たちはよ。
「破産するって」
「海馬コーポレーションのくせに」
「下っ端はお金持ちじゃないんだぜ」
パック買わなくなったけど、それでもそんなお金あるわけじゃないしなぁ。
「がっぴーはそんなじゃらじゃらしてるから金ないんだよー」
「そ、そんなにじゃらじゃらしてないし、しょっちゅう買ってるわけじゃないぜ!」
大体、じゃらじゃらってなんだよ。お前らだってカード以前にデッキケースに相当な金出したり、白スーツでキメたりしてるくせに。
「デュエリストやめたから少しくらい余裕あるはずだよー」
「高級菓子は無理だって!」
だってそのプリン有名だし。値段も人気もとんでもねえ。
「お前デュエリストやめたのか」
「あー、うん。向こうでサポートやるようになって、なんかそっち専門になっちゃってな」
サポートっていっても、デュエル見てるだけとかそういうのばっかだったけどな。あとデッキ調整の手伝いで軽くデュエルしたりとか。あとはまあ、雑用だな。サポートって呼べばいい感じだけど、パシリだよな。
「いいよね、サポート。僕たちのサポートもお願いしちゃおっかな!」
「いいぜ。まあ、過労死しない程度にな」
「そうだな。……明日もここに来るか?」
まあ、俺は家近いし、遊樹も帰り道だから、ここには寄るだろう。
「なら俺も明日ここに来よう」
「じゃあねしーたん!」
「僕も疲れたから帰ろうかな。がっぴー、またね! 明日の朝来るから。あ、あと放課後教室にいてね」
「うぇ? あ、ああ。また明日」
まあ、なんでもいいか。ただ張り合う関係でもないんだし。もう張り合えないし。
『なあ、ご主人様』
決闘城の向かい、俺の家に入ってすぐに右耳から少し離れたところでカードの声がする。なるほど、その辺にいるのか。
「どうした。ご主人様って呼ぶのやめようぜ。遊雅でいいって」
俺のカードの精霊は、誰かがいるときは話しかけてこない。出てきてても俺にはわからないけど、話しかけてこないっていうのは混乱を招かなくていいなぁと思っている。
『あの緑のと白いのが仲間なのか?』
緑のっていうのが遊樹なんだろうなぁ。で、白いのが遊士か。
「遊樹と遊士な。いい奴らだ」
『……3人が知り合ったのは運命かもしれないな』
「運命とは、また大きく出たな」
町のデュエル大会で知り合っただけだけどさ。
『そう感じさせるほどの何かを持っているんだろう。大切にすることだ。仲間がいることで越えられる壁がある』
「誰の名言だ、それ」
『ご主人様の最初の相棒だな。違ったかもしれないが』
ごめん誰それ。心当たりが全くないんだけど。いや、こいつが知ってるということは人間じゃないかもしれないな。
『彼からいろいろきいている。たまには連れ出してやったらどうだ。寂しがっているんじゃないか。ご主人様の大切なデッキと仲間のはずだろ』
「だからご主人様って呼ぶなよ」
初めて話したときはなんて言ってたっけ。今よりひどかったのは確かだけど。本人は俺を持ち上げた呼び方をしてくれてるつもりなんだろうから、あんまり細かいこといえないか。
「遊雅って呼ぶのそんなに不満?」
『確かにご主人様らしくはないがな。ほら、遊雅様っていうのも何か違う気がするだろう』
何言ってるかよくわからないけどな。ご主人様らしくってなんだよ。
「俺はそんなにお前らとの関わり方を間違えたのか」
『とりあえず俺以外のカードともしっかり話したほうがいい』
今まで我慢していた分も、溜息が出る。俺のカードはいつでもフリーダムだぜ。
「お前以外は滅多に出てこないだろうが」
『寂しい人だな。いつでも相談に乗るぞ』
「覚えてたら相談することもあるかもしれないな。今はカードに戻ってくれ」
わりとカードを酷使する人っているけど、俺はいつか酷使される側になりそうだ。あいつ、持ち歩くのやめようかな。意志疎通ができるカードを持ち歩くとかよ。
『ご主人様よ、よからぬことを考えるのはやめるんだ』
「破り捨てるとか考えてないからいいだろ」
そんなことしたら遊樹がキレるけどなぁ。遊士も普通に怒る。多分。
『デュエリストとしてどうかと思うぞ』
「誰がそんなことすんだよ」
『いるだろ、カード破る人くらい。捨てる神あれば破る神ありだ』
そんな諺は初めてきいたな。拾えよ。
「デュエリストは神じゃないぜ。あと俺はデュエリストじゃない。あとカードに戻れ」
『本当に俺をカードに戻していいのか?』
「戻らなくていいのか? お前がいない間に効果を書き換えるかもしれないぞ。リバースとかに」
喜んだらどうしよう。いやさすがにそれはないか。
『リバースか。悪くないがしょうもない効果だったら自ら風にでも飛ばされるかもしれないな』
ケースはちゃんと閉めておくことにしよう。自分の意志で飛ばされるとか、どうやったらそうなるのかさっぱりだけどな。
「その先拾われたり破られたりするんだな」
『明日、あの建物に行くんだろう。決闘城と言ったか』
「ああ、それがどうかしたか? 普通の家だぞ」
ところどころおかしいし、2階は立ち入り禁止って言われてるからその辺はわからないけど、少なくとも1階は普通の家だと思う。
『それは見ればわかる。だが、不思議な建物だ。多くの心や魂が集まる家だと言えるだろう』
「何それ、わけがわからないぜ。何か大事な場所ってことか?」
大切な場所だからずっと残ってるんだろうけどな。
『さあな。それは俺にもわからない。ご主人様の幼少期には毎日ここでデュエルしていたのなら、そのせいかも知れないな』
ああ、確かにデュエルしてると人集まることあるし。そんな感じに集まるのかもしれないな。
「で、お前いつカード戻るの」
『夜型のご主人様が夜更かししすぎないようにするのも俺たちの仕事だ』
「初耳だぜ。今日ははやく寝るから大丈夫だ」
夕食、風呂などを終えて、9時頃から自分の部屋に入った俺だが、実際に寝たのが2時頃だったのは言うまでもない。もちろん、怒られた。