そんなに大したことは書いていないというのに。
「いただきます」
一夏と共に一晩を明かした昨日が明けて今朝。
食堂の一角で手を合わせて、食前の挨拶をする。
一夏はまだ寝ていたから、起こさないで放置しておいた。
遅刻して
「ククク」
「おい、件角」
「ん?」
想像し、思わず笑いが漏れてしまった僕に、誰かが声をかけてきたから振り返る。
そこには、
「何で起こさなかった」
「おや、一夏じゃないか」
何とかギリギリで自力で起きたらしい一夏がそこにいた。
「箒に起こしてもらわなかったらやばかったんだぞ!」
「自力じゃなかったのかい?」
そして何で起こしてもらえたんだろうか。
箒は確か、一夏の幼馴染の女の子だったはず。
いつだったか、新聞で剣道の全国大会優勝の記事を見た気がする。
彼女はどうやって、一夏がまだ寝ていることを知ったのだろうか。
部屋は違うんだぞ。
「気配で寝ているのが分かってくれたから良かったけどよ!」
「武人?!」
こんなやり取りをしながらも、食べる手は止めない。
なぜなら、
「うるさいぞ!食事は迅速に効率よく取れ。遅刻をしたらグランド十周させるぞ」
「げぇっ?!千冬姉っ?!」
「織斑先生だ」
バシィィィィッッッ!!!!!
「こうなるからねぇ」
あー、このお味噌汁、良いお出汁。
そして、だいたい一週間が経ち、僕とオルコットさんの戦う時が来た。
「おい、本当に大丈夫なのか?相手はイギリスの代表候補なんだろ?」
この一週間で一夏は、代表候補生がどういうものなのかを、ちゃんと理解したらしい。
そんな風に僕の心配をしてくる一夏に、舌を出して笑いながら言う。
「大丈夫だよーん。それより、僕のことじゃなくて自分の心配をしたらどうだい?」
「確かにそうだけど、今から戦うのはお前だろ?だから、心配と応援くらいさせてくれ」
僕の言葉に対し、真っ直ぐ光の灯った眼で答えを返す一夏。
まったく。
「…君は本当に、主人公なんだなぁ」
だからこそ、僕の計画のためには君が必要なんだけどね。
「ん?何か言ったか?」
思わず漏れた言葉。
どうやらそれは、一夏の耳には届かなかったらしい。
「ううん、なんでもないよ。じゃ、いってくるよ」
「ああ!勝てよ!」
一夏の声を背に、カタパルトの射出口のヘリまで歩いて行き、
「あはは!あんなライミーに勝つぐらい、わけはないさ」
笑いながら飛び降りた。
「ちょっと待てぇぇ?!お前まだIS展開してなかっただろおおぉぉぉぉぉ…………」
背中、というか頭上から聞こえる一夏の声が、どんどんフェードアウトしていく。
その代わりに、地面がどんどん近づき、
すたんっ
と、そこそこの高所から落ちた割には軽い音が足元から聞こえ、無事に着地できたことを知らせる。
すると、
「「「「「「「「ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇええぇぇぇえぇぇぇぇっっっ!!!!!??」」」」」」」」
「今飛び降りてたよね?!」
「生身だったわよ?!」
「けんけんすごいねー」
数秒遅れて
気持ち良いは良いけど、正直うるさいね。
そして最後のは絶対にうちのクラスののほほんさんこと、『
あ、オルコットさんだ。
先にピットから出てたんだね。
「おーい、ヤッホー」
「いや?!何なさってますの?!」
「格好良い登場だったでしょ?」
驚いたという表情のオルコットさんに、どやっ、と胸を張って答える。
「そうではありませんわ!?何で生身でピットから飛び降りたんですの?!」
「チッチッチ、これが生身じゃないんだなぁ」
右手の人差し指を左右に振り、彼女の言葉を否定する。
「僕のIS、『フェイスレス』は偏光による透過性とステルス性に特化した機体でね。ハイパーセンサーにも映らないほどステルス性が高いんだけど、なんと偏光性が高すぎて搭乗者が見えてしまうんだ」
「凄すぎてダメになってますわ!!」
ビックリだよねぇ。
そんな会話をしていると、
「【いつまでも話しているな!『セシリア・オルコット』対『刀形 件角』、試合開始だ!!】」
どうやら千冬先生の我慢に限界が来たらしく、試合開始の号令がされた。
せっかちだねぇ。
「さぁ!わたくし『セシリア・オルコット』と、『ブルー・ティアーズ』の奏でる
言うと同時に、高く飛翔するオルコットさん。
四機のビットも展開され、その周囲に漂っている。
それにしても、ふむ、円舞曲ね。
「ヴェニーズワルツでよければ、ご一緒させてもらうよ」
「おや、それでは殿方からお誘い頂きたいですわね」
「ハハ!それでは、Shall we dance?」
「Yes! I'll lead you!!」
自分がリードするとな。
誘えと言ったくせに、自分がリードするとな。
「じゃ、お願いしてみようかな?」
「余裕ですわね?それでは、いきますわ!!」
展開されていた四機のビットと、オルコットさんの銃から放たれる五つの光線。
それらは真っ直ぐに『フェイスレス』へと進み、
「え?」
まるで生身の人間に当たったかの様に、その肉体を引き裂いた。
ちなみに私は、祭りの盆踊りしか踊れません。