三解の顔無し   作:逸環

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今回でセシリア戦、閉幕です。


分解。

さて、オルコットさんのビットの数は四機。

対する僕のビットも四機。

本体も含めて五対五なら、

 

 

「ビット対ビット、操縦者対操縦者がスジってもんだよねぇ?」

 

「お生憎ですが、そんな言葉でわざわざ戦力を分散させたりなんてしませんわよ?」

 

「それは残念」

 

 

宙を高速で飛ぶオルコットさんにプライベートチャンネルで呼びかけるも、ふられちゃった。

まあ、そんなことを言われても、

 

 

「こっちから勝手にやるんだけどね。行きな、お前たち」

 

「「「「ハッ!」」」」

 

 

『ブルー・ティアーズ』の四機のビットそれぞれに、僕のビットたちが人の目に映る程度の高速で(・・・・・・・・・・・・)相対する。

まあ、『自動人形(オートマータ)』を模しているだけのビットだから『黄金律(ゴールデンルール)』なんてものは無いけども、そこは見てくれている観客たちへのサービス精神。

あとは、まあ、

 

 

「いや、今はいいか」

 

 

今は戦い(舞台)に集中しよう。

ビットたちにはビットの相手をさせ、僕はオルコットさんを追いかける。

右に、左に、縦に、横に、まさに縦横無尽に。

オルコットさんが機動している間は、ビットの動きが不自然に止まる。

逆にビットが動いている間は、オルコットさんの動きが不自然に止まる。

時折オルコットさんのビットがボクに狙いをつけるも、それは相手をしている僕のビットに阻まれる。

 

 

「クッ!なんてやっかいなんですの!?」

 

 

自分が劣勢にあることに、苦しそうに言葉を発するオルコットさん。

本来、一人の人間が自分を含めて五人分の肉体を動かすだなんて、とてもじゃないけどできない。

だけども、僕のビットたちはISの異常なまでに高度な演算能力を使うことで、自立AIとまでは言わないがある程度までの操作補助が成されている。

そこが僕とオルコットさんの最大の違い。

オルコットさんの『ブルー・ティアーズ』は、その制御はISの演算能力を使用していても操作全般はオルコットさんの意思で行われる。

そのため、まだ操作技術が未熟なオルコットさんでは、ビットを動かしている間は自分が動くことができない。

なぜなら、それほどまでの集中が、ビットの操作には必要だから。

これまでオルコットさんは、競技的な一対一の状況でしか戦ったことが無かったのだろう。

それが今回、僕みたいな一人で数人分の能力を持った相手と戦うことになった。

一対多に向いているとされるイギリス製第三世代機『ブルー・ティアーズ』だけども、それは搭乗者の技術がキチンと伴えばの話。

今回みたいに、まだまだ未熟なオルコットさんではその性能を活かしきることはできない。

それが、今のオルコットさんの劣勢の理由。

 

だが、それが決定打になるというわけではない。

 

 

「『深緑の手(レ・マン・ヴェール・フォンセ)』!!」

 

 

パンタローネが掌から大量の空気を吸い込むことで、一機のビットの動きがグラつく。

そのまま吸い込んだ空気を圧縮して打ち込むも、ビームで相殺される。

 

 

「『緋色の手(レ・マン・スカラティーヌ)』」

 

 

アルレッキーノが高温の炎を放つも、搭乗者のいないビット相手では効果が薄い。

 

 

「『純白の手(レ・マン・ブランシュ・ジマキュレ)』!!」

 

 

コロンビーヌが灼熱の手で触ろうにも、高速で飛ぶビットにはなかなか触れられない。

 

 

「グワアアァァァァァァアァァァァアァァァッッッ!!!!!」

 

 

ドットーレが…………ドットーレ?

あれ?『紺碧の手』は?

え?叫び声?

って、

 

 

「ドットォォォォレェェェェッッ?!」

 

 

他の三体に思考が行った一瞬。

補助操作では反応しきれないその僅かな隙を突かれて、ドットーレはオルコットさんのビームに貫かれた。

それも滅多撃ちに。

修復不可能なレベルで。

叫び声じゃなくて、断末魔だった。

だが、ドットーレもただでやられてはいなかった。

ビームに貫かれる一瞬、ドットーレが投げたツバが刃になったシルクハットは敵ビットに向かい、自分が破壊された直後にオルコットさんのビットを破壊。

まるで『本物』のような最期を遂げた。

でも、本物と違いその最後は絶望に塗り固めてなどはない。

 

まあそもそも、僕が操作しているんだから絶望もクソもないんだけれどもねー。

 

 

「お互いに、一機づつですわね」

 

「そうだね」

 

 

飛び回りながら、撃ち合いながら、ビットを操作しながら会話する。

 

 

「いつまでも遠くから撃って来てないで、たまには手を取って円舞曲を踊ろうよ」

 

「失礼。わたくしは今舞台の華ですけど、同時に奏者なんですの」

 

 

十年来の友のように、

 

 

「あらら、またフラれちゃった」

 

「身持ちは固いんですわ」

 

 

血を分けた同胞(はらから)のように、

 

 

「そんな人ほど、落としたくなるんだけどね」

 

「二つの意味ででしょう?」

 

 

焦がれる恋人のように、

 

 

「そのとおりさ」

 

「では、わたくしではなく貴方が落ちてくれませんこと?」

 

 

そして、

 

 

「君が落ちてくれ」

 

「貴方が落ちなさい」

 

 

親の敵のように。

 

 

「オオオオォォォォオオォォォオォォォォォッッッ!!!!」

 

「この急加速…っ!『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』!?」

 

 

瞬間的に爆発的な加速と推進力を出す『瞬時加速』。

突如使ったそれは、これまでになく近い、お互いが触れ合える距離まで僕を導いた。

 

 

「これで閉幕(フェルメール)だ!」

 

「甘いですわ!」

 

 

『ブルー・ティアーズ』のスカート部分から分かれた、二機のビット。

 

 

「『ブルー・ティアーズ』は、六機ありますわ!」

 

 

それは弾頭を持った、ミサイルビットで。

それが両方とも、接近しすぎてがら空きの僕の懐に向いていた。

 

 

「これで終曲(フィナーレ)ですわ!」

 

 

勝ち誇ったオルコットさんの顔。

確かに、この状況ならば負けるだろう。

 

だが、言っただろう?

終曲(フィナーレ)じゃない。閉幕(フェルメール)さ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『分解』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆発することなく、まるで綻びていくかのように、部品ごとに分かれて落ちていくミサイル。

綻びは徐々に、『ブルー・ティアーズ』本体にも伸びて行きオルコットさんを宙に投げ出させる。

その(表情)は、悔しそうで、辛そうで、だけど晴れ晴れとしている。

 

…ハハッ!

 

落ちていくオルコットさんを抱き留め、声をかける。

 

 

「気分はどうだい?」

 

「…最低に、最高ですわ」

 

「そう」

 

 

なら、

 

 

「この大歓声はどうだい?」

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「「ワアアァァァァァァアアァァアァァァァッッッッ!!!!!!!」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

「二人とも凄かったよー!」

 

「男もやるじゃん!」

 

「オルコットさん、格好良かったわー!!」

 

「今度ISの乗り方教えてよ!」

 

 

観客全員分の、万雷の拍手と大歓声。

オルコットさんを抱えながら、観客席全部が見えるように回りながら少しだけ上昇する。

 

 

「…そうですわね」

 

 

闘いの名残か、アリーナ内を吹く風に(なび)く髪を押さえながら、オルコットさんの小さく、ふっくらとした唇が動く。

 

 

「華やかな舞踏会(バール)もいいですが、煌びやかな丸舞台(サーカス)も悪くないですわね」

 

「だろう?」

 

「【『セシリア・オルコット』対『刀形 件角』戦、『刀形 件角』の勝利!】」

 

 

僕の勝利を告げる千冬先生の声と、高く鳴り響くブザー。

 

 

「…貴方の言葉を借りるなら」

 

「ん?」

 

 

ふいに、オルコットさんが口を動かす。

抱きかかえる形のため、高い位置にある僕の顔を見上げながら。

 

 

「これで閉幕(フェルメール)ですわ」

 

 

少し朱色がかった、彼女の勝ち誇ったかのような笑顔は、とても綺麗だった。

 

 

 

 

 




出ました分解。
原作でジャコのミサイルが分解されたことから、今回のこの展開を思いついたという経緯があったり。

セシリアさんの喋り方が地味に難しい。
お嬢様言葉って、なんと言うかバランスが取り辛いです。

では、セシリア戦はここまで。
次回の展開を、お楽しみに!





………ドットーレェ…。
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