三解の顔無し   作:逸環

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一ヶ月も放置してすいませんでした!


哄れる笑い。

その翌日、一夏とオルコットさんの試合をモニター越しに見ていたけど、あれは笑えた。

一夏の装備は近接装備が一つだけで、終始オルコットさんが優位に進めていたけど、土壇場で一夏の機体が一次移行(ファーストシフト)してからが違った。

本来は二次移行(セカンドシフト)からであるはずの単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)に覚醒してオルコットさんを圧倒。

ビット四機を全て撃墜()とし、止めを刺すその瞬間。

 

一夏のISのエネルギーが切れた。

 

どうやら、単一仕様能力を発動しっぱなしだったのが原因らしい。

ざまぁ、とでも言ってやるべきかな?

でも、まあ、

 

 

「流石と言えば、流石かなぁ?」

 

 

実質初めてのIS搭乗で、代表候補生を追い詰めるという成果と才能。

教科書と電話帳を間違えるようなバカだが、頭のキレも悪くはない。

 

 

「流石、主人公だよ」

 

 

口の端が引き攣るのが分かる。

身体が震えるから抱きしめる。

笑い出すのを全身を使って抑え込む。

 

嗚呼、嗚呼!!

実に君は素晴らしい!

それでこそ僕が望んだ存在だ!

未熟でありながら、人々の眼を、心を惹きつけてやまないその姿!

 

 

「アハハハハハハハハハハハッッッッ!!!!!」

 

 

抑えていた笑いが、哄笑となって口から咽喉から溢れ出る。

世界最強の『ブリュンヒルデ』たる『織斑 千冬』が騎士だとするならば、さしずめ彼は王に、民に懇願され奮起し立つ勇者といったところ。

それこそが、僕の望む存在。

 

 

「ハハハッッ!!………だけど、まだだ」

 

 

まだ機も彼も熟していない。

まだ待つんだ。

まあなんにせよ、まずは、

 

 

「…明日が楽しみだよ。一夏ぁ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セシリアに勝ったからって、俺にも勝てると思うなよ!」

 

「オルコットさんに負けたからって、僕にも負けると思わないでよ?」

 

「ぐはぁっ!」

 

 

試合前の更衣室。

僕たちは男同士でこの学校の男子更衣室は一つしかないため、必然的に対戦相手同士だというのに一緒に着替えることになる。

ちなみに、一夏のはなかなか逞しかった。

 

 

「まったく、一夏が僕に口で勝てるわけないじゃないか」

 

「俺は別に舌戦をする気はなかったし、そもそも一撃死だったけどな!」

 

「アハハッ!」

 

「笑って誤魔化すな!」

 

「僕に笑うなと言うか」

 

 

それは無理な相談だ。

僕は笑うのも笑わせるのも好きなんだから。

それにしても、

 

 

「…二日連続で試合って、正直しんどくない?」

 

「…あぁ、正直な。お前は1日おいてるけど、どうだ?」

 

「逆にしんどい。中途半端に間が空いたからこそ、身体が疲労を訴えてる」

 

「「…はぁ」」

 

 

連日戦闘。

そりゃあ溜息も出るさ。

疲れだって出るさ。

 

そんなことを話していると、

 

 

コンコンコン

 

 

ノック三回で、扉の向こうから声がかけられる。

 

 

「そろそろ時間ですけど、二人とも着替えと準備は終わりましたか?」

 

 

真耶ちゃん先生だね、この声は。

 

 

「二人ともできたよ」

 

 

扉を開けて真耶ちゃん先生に声をかけると、それに続いて一夏も部屋から出てくる。

…なんかヘタレな顔で。

オルコットさんと戦ったときの、男の子な顔はどこに行ったんだい?

 

 

「…なんか、凄え緊張してきた」

 

「まあ、気持ちは分からないでもないけどね」

 

 

だからってそこまでヘタレるかい?

 

 

「大丈夫ですか?織斑君。学生だった時に私が使っていた、緊張をとる方法がありますけど…。試してみますか?」

 

「是非」

 

 

…即答かよ。

もっと見栄を張ろうぜ、男の子。

 

 

「いいですか?まず大きく息を吸ってー」

 

「すぅぅぅ」

 

 

大きく息を吸い込む一夏。

かつてこの男が真耶ちゃん先生の言うことに、ここまで従順だったことがあろうか。

いや、あったか。

先生と生徒だし。

 

 

「ゆっくり大きく吐いてー」

 

「はぁぁぁぁ」

 

 

おや?

ただの深呼吸なのかな?

 

 

「あ、織斑先生」

 

「千冬姉?!」

 

 

吐ききった頃合で放たれた真耶ちゃん先生の言葉に、ビクンッ!となる一夏。

ああ、なるほど。

だったら、僕も協力しよう。

 

 

「織斑先生だ」

 

「う、うわぁっ!!」

 

 

千冬先生の声に、出席簿攻撃が来ると思ったのか頭を抱えて蹲る一夏。

だが、それは僕の声真似だ。

 

 

「あ、あれ?」

 

「どうですか?」

 

 

予想していた攻撃が来ないことに、キョロキョロと周りを見渡している一夏。

そんな一夏に、屈んで視線を合わせて訊ねる真耶ちゃん先生。

ちょっとした恋愛物の一幕にも見えないこともないこともない。

 

 

「…あ、もう、大丈夫です」

 

「ふふ、そうでしょう?織斑先生に比べたら、だいたいのことが怖くなんてありませんからね」

 

「はは、本当ですね」

 

 

にこやかに笑いあう二人。

だが、君たちは自分たちが何を言っているのか分かっているのだろうか?

それを聞くべき人が聞いたとき、君らの頭には出席簿が降りかかってくるというのに。

 

ま、いいや。

痛いのは僕じゃないし。

僕はその時が来たら、それを見て笑うだけさ。

 

さあ、試合だ。

 

 

 

 

 

 

 

「【織斑一夏対刀形件角、始め!】

 

「『深緑の手』!!」

 

「中るかぁっ!」

 

 

千冬先生の号令と同時に『最古の四人』の内、オルコットさんに壊されなかった三体を展開、一夏を包囲して攻撃する。

しかし、いつの間に覚えたのか『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』でその包囲を抜けてくる。

 

 

「オオオオオォォオォォォォッッッ!!!」

 

「アハハハハハハハハハハハッッッ!!!」

 

 

迫り来る一夏が咆えて、後退する僕が笑う。

傍から見れば、実に対称的な表情をしているんだろう。

だけど、その実まったく同じ表情だったりするんだろう?

ねえ?

 

 

「君も笑っているんだろう!?ねえ!一夏ぁぁぁっっ!!」

 

 

君の咆哮は、僕の笑いのようだよ?

この戦いが楽しいんだろう?

力を得たことが嬉しいんだろう?

望みが叶いそうなんだろう?

 

 

「ほら!コロンビーヌが追いついたよ!」

 

「ッ!?クソッタレ!!」

 

 

コロンビーヌがオルコットさんの時には見せなかった、本来の速度で一夏に肉薄する。

 

 

「ねえ、貴方?私の夢は人間の男に抱きしめてもらうことなの」

 

「だからなんだよ!?」

 

「貴方、私を抱きしめてくれる?」

 

 

そう言いながら、その手を真っ白に発熱させて一夏に触れようとするコロンビーヌ。

だが、

 

 

「悪いな」

 

「…あら?」

 

 

一夏の雪片弐型がコロンビーヌの肩口に食い込み、

 

 

「俺はそういうガラじゃない」

 

 

その細い身体を両断した。

地に落ちて行くコロンビーヌの目と、一夏の目が合う。

リンクしたコロンビーヌの視界から見えた一夏の顔は、辛く苦しそうだった。

 

 

「「コロンビィィィヌッッ!!」」

 

 

パンタローネとアルレッキーノが激昂し、一夏に襲い掛かる。

だけど、この二人の組み合わせは最悪だ。

炎と音を操るアルレッキーノと、周囲の空気を吸い込み圧縮して弾にするパンタローネ。

アルレッキーノもパンタローネも空気に依存した能力であり、お互いの能力に干渉し合ってしまう。

だったらどうするか。

 

 

「そもそも、干渉させなければ良い」

 

「『緋色の手』!!」

 

「クッ!?」

 

 

アルレッキーノの炎で目をくらまされ、一瞬動きが止まった一夏。

その一瞬が、命取りだというのに。

 

 

「終わりだ、人間」

 

 

一夏の背に添えられた、パンタローネの手。

そして、

 

 

「『深緑の手』」

 

 

ボゴンッ!

 

 

と、いやに響く大きな音がして、白式の背部の装甲は抉り取られた。

 

 

 

 

 




そういえば、今の内に言っておくことが一つ。







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