三解の顔無し   作:逸環

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はい、もはや月刊になるんじゃないかと危惧している『三解の顔無し』、更新です。


背後を抉り斬る。

それぞれの干渉によって空気が関わる能力を同時に使うのが難しいなら、単純にその干渉が起きないように能力を使えばいいだけのこと。

パンタローネの能力である『深緑の手』は、掌の吸排気口から空気を取り込んで圧縮、それを弾として放つことができる。

その吸気の能力を使い、白式の背部装甲とパンタローネの掌の間に存在する空気をなくして真空状態にする。

すると、掌と装甲が大気圧によりくっついて離れなくなる。

その状態で無理やり手を引けばどうなるか。

 

 

そう(・・)なるってわけだよね」

 

「クソッ!」

 

 

それ(・・)が行われ、急速離脱した一夏の背中は、背部装甲が大きく抉れてISスーツが見えているという、実に無様な状態になっていた。

 

 

「…マズイな」

 

「うふふ。そんな背中をバックリ開けて、男の僕を誘っているのかな?」

 

「そっ!?そんなわけないだろ?!」

 

「そんなわけあったらやだよ」

 

 

必死に否定する一夏と、それを冷めた眼の笑顔で見る僕。

そして、

 

 

「織斑君の誘い受け!?」

 

「やっぱり件×一なのね!」

 

「件×一が公式だったわ!」

 

「違うわよ!一×件でしょ!?」

 

「そうよそうよ!」

 

「違いますわ!一×セシ×件が公式ですわ!」

 

「「「「「「「「それは貴女の願望じゃない!!」」」」」」」」

 

 

僕らのやり取りで騒然とする観客席。

何故うちの学校の女子たちは、こうも腐っているのだろうか。

そしてチラッと告白紛いの言動が聞き取れたよ、お嬢様。

まあ、どうせ、

 

 

「…そんなわけ………ないだろう……………」

 

 

このあまりの惨状に打ちひしがれている朴念仁には、聞こえるわけがないだろうけど。

後オルコットさん、君の頭の中で、いったいどんな理想(妄想)が繰り広げられているんだ。

ほら、見てよ君の隣の侍娘を。

周りが何を言っているのか分からな過ぎて、頭の上に『?』のお花畑ができてるよ。

あれが正しい姿なんだよ。

いや、実際何が正しくて何が間違っているかなんて分からないけど。

 

 

「まあ、今がチャンスだということは分かるけどね」

 

「『深緑の手』!」

 

「『緋色の手』!」

 

「うおぉっ!!?」

 

 

一夏の意識が観客席に向かった隙に、パンタローネとアルレッキーノで背中から攻撃する。

そのため、アルレッキーノの炎をパンタローネの空気弾が纏い、世にも珍しい炎の弾丸となったがギリで避けられてしまった。

これで装甲が失われた部分に中れば、ISの絶対防御が作動して白式のエネルギーは0。

僕の勝ちになったというのに。

白式の速度と一夏本人の反応速度は、実際事実おかしいと思う。

 

 

「決まらないものだねぇ」

 

 

大仰に肩をすくめ、呆れを示す。

二体で一夏を追撃するも、どうせ中てることは叶わないだろう。

これが彼の初戦であれば違ったんだろうけど、如何せん彼は前日にオルコットさんと戦っている。

元々の彼の資質、素質と合わせて多対一の経験。

それが今、彼が僕と戦えているという状況を作り出している。

それが今、彼が僕が思考をしている間に二体を切り伏せ、僕に向かっているという状況を作り出している。

 

…まったく、これだから主人公って奴は。

 

 

「ま、なんにしろ君が勝つところは、(ここ)じゃあないよ」

 

「ウオォォォォオオオォォォォォッッッ!!!!!」

 

 

一夏が全速力で突っ込んでくる。

手にした雪片二型が輝き、僕を斬ろうと肉薄する。

その剣が僕に触れる間際、余りの速さに、分解すら届かぬその刹那。

 

 

ザンッ!

 

 

「…え?」

 

「アハハッ!」

 

 

僕は正面から一夏に、一夏は後ろからカボチャ頭の懸糸傀儡(マリオネット)に、同時に切り裂かれた。

だけど、それ以上に違うこと。

それは、

 

 

ビィィィィィーーーーーッッッ!!

 

 

「【そこまで!勝者、『刀形 件角』!!】」

 

 

一夏が負け、僕が勝ったということ。

 

 

 

 

 

 

 

 

試合が終わって、また男二人の更衣室。

 

 

「…俺さぁ、凄く頑張ってビットを三機も倒してお前を追い詰めてたんだよ」

 

「そうだねぇ」

 

「…お前に負けないように、って頑張ったんだよ」

 

「そうみたいだねぇ」

 

「…だけどさぁ、だけどなぁ………」

 

 

俯き、訥々(とつとつ)と喋っていた一夏が、言葉を切る。

 

 

「何でお前はまたビットを戦わせて、自分は実は観客席で見物してるんだよ?!」

 

「アハハ!誰だって同じ手を二度使うとは思わないでしょ?特にあんな奇策は。だからこそ、さ」

 

 

一夏の言葉に、舌を出して笑いながら応える。

そう、僕はずっとオルコットさんと戦ったときと同じように、僕の姿をしたビットをアリーナに出し、自分は観客席に座って戦っていた。

あんな馬鹿な真似(・・・・・)を、二度もやると思う人は誰もいないから。

もしいたとしても、それでどうなるわけでもないから。

それに、いざとなったら時のために指の動きに反応するセンサーで操作する、ワイヤレス懸糸傀儡も用意していたし、僕の準備はどこまでも万全だったと言えよう。

 

まあ、なんにしても、

 

 

「今度はちゃんと勝ってよね?」

 

 

オルコットさんにも、僕にも負けてんだから。

これで今のところの戦績は全敗じゃないか。

 

そんな僕の言葉に一夏は、

 

 

「ああ!もちろんだ!次はお前に勝ってやるぜ!!」

 

 

ニカッ!と、眩しいほどの笑顔でそう言った。

 

 

「…ただ、もうビット(身代わり)出場()るのはやめてくれ」

 

 

最後に、余計な一言と共に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、食事に行く一夏と別れ、一人入ったシャワールーム。

タイルに()ぜるシャワーの音をBGMにしながら、ただこの身に湯を被り続ける。

頭の中を流れ駆け巡るのは、一夏の言葉。

 

 

「次はお前に勝つ、か………」

 

 

鏡に映る、まともに筋肉の付いていない華奢な身体。

一夏の程好く筋肉の付いた、均整の取れた身体とは大違いのこの身体。

 

 

「アハ…、アハハ」

 

 

お前()に勝つ。

お前(刀形件角)に勝つ。

あの一夏の言葉が、ひたすらに再生(リピート)される。

 

 

「アァッハハハハハハハハハァァァァッッッッッ!!!!」

 

 

鏡に映る相貌は、歪んだ笑顔に見える表情をしている。

そう、これが僕。

この表情()こそが僕。

 

 

「ハハ…ッ。…お願いだよ、一夏。その時が来たら、ちゃんと僕を」

 

 

 

 

 

 

 

 

負かし(殺し)てくれ。

それが、僕の願い(望み)なんだ。

 

 

 

 

 




妄想が露見してしまったお嬢様。
これからも妄想していきます(?)。
そして壊れ尽くしているこの主役。
次回はそんな主役の、ちょっとした過去話を予定。

次回の更新を、お楽しみに!
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