試作小説保管庫   作:zelga

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決着と一応の終結




試作その5 第8話

 

 

「-------ッ!!」

『ハハ、イイゾ!』

 

 

ネフィリムの攻撃を避け、黒き怪物は反撃する。背部から小型ユニットが射出され、次々にネフィリムに突き刺さる。

 

それを受けたネフィリムは体を大きくよじらせ、コードでつながっている黒き怪物は壁に叩きつけられる。

 

強い衝撃でぶつけられたのか、壁は崩れガレキが次々と落ちる。それを見て、ネフィリムは勝ち誇っているかのように咆哮する。

 

 

「------ッ!」

「っ、今ですセレナ。そこから離れなさい!」

「え?あ、はい!」

「今、あれらは間違いなく互いの意識が互いに向いており、安全に退避できるはずです」

 

 

その言葉を聞きその場から離れ始めるセレナを確認し、そう指示した女性はほっと息を吐く。そして暴走しているネフィリムとガレキの中にいるであろう存在のことを考える。

 

 

「しかしネフィリムと互角に戦うとは、あれは一体……?」

『ナメルナァ!!』

 

 

その言葉の直後、ガレキの中から飛び出した怪物が武器を構え突貫する。それに反応しネフィリムは避けようと動き出すが、それよりも早く剣が胸部を貫く。

 

 

「-------ッッ!!!」

『キエサルガイイ……!』

 

 

その言葉とともにネフィリムの胸部、というよりは突き刺さっている剣が光り出す。そしてそこから黒い球体が発生し、二つの怪物を飲み込んでいく。

 

 

「巨大なエネルギー反応!」

「すべての機能を防御に回しなさい!」

「きゃあああああぁぁぁぁ!?」

 

 

それの余波だろうか、凄まじい衝撃がセレナを襲う。防御に集中しているのか吹き飛ばされることはなかったが、それでも大分後ずさる。

 

そして球体が消失した時、先ほどと状況が変わっていた。

 

 

「----------ッ」

『タエキルカ……ダガ、ゲンカイガチカイヨウダナ』

 

 

ネフィリムは健在だが、声に力がない。それに対して黒い怪物はまだ余裕がありそうだ。そして動きが鈍っていることを確認したのか、剣を両手で持つ。

 

 

『デハ、イタダクゾ。キサマノチカラヲッ!!』

「-----」

 

 

その言葉の後、剣が刺さっている所から結晶が生え始める。抵抗しているだろうが、結晶はゆっくりとだが確実にネフィリムを浸蝕していく。

 

それを見ていた大人たちはどことなく理解してしまう。

 

あの黒い怪物は文字通り、ネフィリムを喰らおうとしているのだということを。

 

 

「彼女に止めさせろ! ネフィリムがなくなれば、我々は……!」

「無駄です、止められる相手ではありません。それに下手に刺激すれば、奴の意識がこちらに向く可能性があります」

「しかし!」

「黙りなさい!」

 

 

そんな言い合いとは裏腹に、浸蝕は進む。そしてついに結晶は胴体を覆い尽くし、頭部へと進み始めた。

 

 

『キサマヲクライ、サラナルチカラヲ……!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー悪いけどここまでだ。これ以上は彼がいなくなってしまうからね。

 

 

『ナニ?……コレハッ!?』

 

 

中性的な声が怪物の頭の中で響いた直後、突如黒い怪物を鎖が縛り上げる。先ほどまでは黒い怪物の武装と思われていたそれだが、現在は確実に黒い怪物の行動を阻害していた。

 

 

「あれは一体……?」

『やぁ、ボクの声が聞こえるかな?』

「えっ!?」

 

 

その様子を茫然と見ていたセレナの頭に声が響く。周囲に人はいないうえに、このような声は聴いたこともない。何事かと混乱している彼女に対し、今度は笑い声が聞こえてくる。

 

 

『ハハハ、ごめんごめん。まさかそんなに驚かれるとは思わなかったんだ』

「えっと、あなたは……?」

『時間がないから説明はまた今度。今はとにかく、あの暴走している連中を抑えるのに協力してほしい』

「私が?」

『そうだよ。君の持つ聖遺物の性質はわかっているね? 僕が手助けするから、奴らをまとめて沈静化してほしい。できるかな?』

「っ、はい!」

 

 

声の主は誰なのか、なぜ今の状況をわかっているのか、どうして手を貸そうとしているのか。

 

いくつもの疑問が頭の中を走ったが、それよりも目の前の状況を解決すべきだとセレナは判断する。そのために立ち上がり、再び歌いはじめる。

 

徐々にフォニックゲインが高まっていく中、不意に鎖の一部がセレナの右手を纏い始める。

 

 

「これは……!?」

『落ち着いて。ボクの機能の一部を使って、君の負担を肩代わりする。だから君は遠慮なく、全力で歌い上げてくれ』

「……はい」

 

 

その声とともに、鎖が形状を変えていく。まるで粘土の様に崩れ、白い短剣へと姿を変えたそれをセレナは握った。

 

 

「セレナ……まさか、歌うのですか?」

「逃げて、セレナ!」

「大丈夫だよマム、姉さん。……わたし、歌うね」

 

 

そして鎖に縛られている黒き怪物と、浸蝕が止まっているがダメージからか動けない白き怪物の前に立ち、短剣を両手で持ち、目を閉じる。

 

そして歌を紡ぎ始める。それとともに彼女が纏う鎧と短剣、怪物を縛る鎖が輝き始めた。

 

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzlーーー」

『ヤメロ……ヤメロオオオオォォォォ!!』

「---------ッ!」

 

 

そして彼女は紡いでいく。怪物を鎮める、優しき歌を。

 

 

 

 

 

「ーーーGatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl」

 

 

 

 

 




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次はこんな感じ。

はよ無印編行きたい()

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