ついに100話到達です。
シャドームーン
暗黒結社ゴルゴムの支配者である創世王の跡を継ぐ者として、同じく世紀王であるブラックサンと共に生み出された存在。
だがシャドームーンは創世王へ反旗を翻し、ブラックサン…仮面ライダーBLACKと共闘、激戦の末に創世王は倒された。しかし、その戦いの中でシャドームーンは命とも言うべき月のキングストーンの力を制御するベルトを傷つけられ、命は風前の灯となりながらも仮面ライダーBLACKへ一騎打ちを申し出る。
壮絶な戦いの中で全力をぶつけ合った結果、立っていたのは太陽のキングストーンを持つ者、仮面ライダーBLACK。
力を使い果たし、倒れたシャドームーンは崩れ落ちる大空洞でその姿を消した。
これが、マリバロンの情報網で知り得たシャドームーンの最期であったはずだ。
だがシャドームーンは生きており、クライシス帝国の秘密基地を襲撃。壊滅させた姿をはっきりとモニターへと映し出していたのだ。秘密基地に配備されていたサイボーグシカ怪人10体に雑兵チャップが20人。サイボーグシカ怪人はガテゾーンの調整により、放電による攻撃力が30%も上昇しているにも拘わらず、その全てが全滅。
しかも映像では一瞬しか姿は確認できなかったが、シャドームーンの装甲は傷おろか汚れ一つ見られない。
基地を壊滅させたシャドームーンの調査を直ぐにでも始めなければならぬと拳を強く握るマリバロンなのだが映像が消えて以降、沈黙を続けていた男の放った怒声に思わず振り向いてしまった。
「これはどういう事だジャーク将軍ッ!?なぜ秘密基地が見つかっただけに飽き足らず、壊滅などしているのだッ!!」
「…………………」
「貴様の不十分な指揮の結果がこの有様だ!それにあのように直ぐ倒されてしまうガラクタ共を警備にあたらせるなど、どう責任を取って―――」
なんと言う言いがかりであろう。
確かに結果としては秘密基地の一つが壊滅という手痛い結果となってしまった。だが原因があるとすれば、壊滅した基地で隊長たちどころかジャーク将軍ですら知り得なかった魔術の研究を行った事がそもそもの発端ではないのか。
生きていたシャドームーンはこれまでクライシス帝国の作戦に一度たりとも干渉を行っていない。だとすれば、どのような経緯があったかは不明だがダスマダーが持ち込んだ魔術を追ってあの秘密基地に行き着いたという可能性が十分に考えられる。
だというのにダスマダーがジャーク将軍に対しての糾弾はただの八つ当たり。子供の癇癪にすら近い。しかし秘密基地の場所が知られ、敵の手によって堕ちてしまった事実は間違いなく、ジャーク将軍の責任。地球侵略作戦の司令官として、ジャーク将軍はあえてダスマダーの罵声を浴び続けている。それこそが自分の責務であると口を噤み続けたが、ガテゾーンはその姿勢が気に食わなかったのだろう。さらに声を荒げる姿ダスマダーの暴言に、ついに我慢が出来ず口をはさんでしまった。
「よく言うぜ。そもそもお前さんが妙な術の解読なんざ押し付けなきゃ、こんなことにはならなかっただろうによ…」
マリバロンだけでなく、ほとぼりが早く冷めるよう願っていたゲドリアンとボスガンの背中が凍り付く。このような暴言を平然と述べられる者など、隊長陣の中でただ1人しかいない。
「…何か言ったか、機甲隊長ガテゾーン?」
「聞こえてなかったってんなら何度でも言ってやるさ…テメェの不始末をこっちに押し付けんなって言ってんだよこの黒ヘル野郎がッ!」
背後でゲドリアンのか細い悲鳴が聞こえるが、マリバロンは悲鳴すら忘れる程の驚愕が襲う。ガテゾーンの性格を考えれば、この激情に任せての発言は大いにあり得ただろう。彼自慢のサイボーグ怪人達の主導権を勝手に奪われ、そして無残にも破壊された。いや、それ以上にただのロボット兵に過ぎない彼の腕を買い、隊長にまで推薦したジャーク将軍を責め続けるダスマダーをこれ以上許せなかったはずだ。
しかし今回は相手が悪すぎる。クライシス帝国の支配者にて絶対である存在、クライシス皇帝直属の査察官。本人の言葉を借りれば、皇帝本人と言っても過言ではないのだ。
「…ジャーク将軍、貴様は部下に対して教育が行き届いていないようだな」
ジャーク将軍へ向けていた怒りが消え、無表情となったダスマダーは腰に携えた剣の柄へ手を伸ばす。
「私相手に言い度胸だ…この場でガラクタにしてくれるわ!」
「上等だ…返り討ちにしてやるぜ!」
ガテゾーンも負けじとホルスターに収納された愛銃を手に取り、いざ照準をダスマダーの眉間へと向けようとしたその時だ。ガテゾーンを引き留めようと手を伸ばしたマリバロンよりも早く、ジャーク将軍が臨戦態勢となったダスマダーとガテゾーンの間へ割って入る。途端に動きを止めた2人に対し、ジャーク将軍はゆっくりと口を開いた。
「双方武器を収めよ。ここは敵味方に分かれ戦う場所ではなかろう」
「黙れジャーク将軍!私への侮辱は皇帝への侮辱と同義!この反逆者をこの場で処刑しなければならんのだ!」
「ならば、余の首を取るがいい」
「ジャーク将軍…!?」
ジャーク将軍の仲裁に耳を貸そうともしないダスマダーはやはりクライシス皇帝の名を使い処刑を執り行おうとしたが、自らの首を差し出すと言うジャーク将軍の発言にガテゾーンは息を飲む。ガテゾーンだけではなく、マリバロン達も同様だ。
目を細めるダスマダーは抜刀はせぬものの、未だ殺気を収めないままジャーク将軍へ問いただす。
「正気かジャーク将軍?そのような無礼者を庇い、自ら命を捨てるなど正気とは思えんな」
「貴公も言ったであろう。基地を一つ失ったのは余の失態。ならばその責任を負うのは当然の事だ」
「馬鹿馬鹿しい。あの木偶の坊共を作ったガテゾーンの身一つを切りすれてばいいものを…」
「ガテゾーンが…ここにいる者たち全員いなければ、地球征服は成し遂げられんからだ。余が亡き後でも、この者達の力があれば必ず地球征服は成し遂げられ、クライシスに栄光を与えるであろう」
言葉がでなかった。庇われたガテゾーンや元よりジャーク将軍に忠誠を誓うマリバロンとゲドリアン、そして将軍の地位を狙う野心を抱くボスガンでさえ息を忘れるようにジャーク将軍の背中を見る。
特にボスガンは将軍に従う他の者は寛容であり、将軍を出し抜こうとした自分をぞんざいに扱うとばかり思い込んでいた。だが、将軍の言葉を聞いた今となっては如何に自身が如何に矮小な展望を持ちこの場に立っていたのだろうと胸に手を当てる中、ただ1人冷めた表情を見せるダスマダーは柄から手を離し、ワザとらしくジャーク将軍の肩に己の肩をぶつけ、その場を去っていく。
「興ざめだ。今回だけは将軍に免じて不問としてやる。だが、次はない。重々にそこのロボットに教育しておくことだな」
「貴公の配慮に感謝する…」
「そして次の作戦も私が立案する。文句は言わせんぞ…」
頭を下げるジャーク将軍に横目で言うダスマダーはやはり苛立ちを隠せないのか、靴底を床へ叩き付けながら指令室の外へと向かっていく。そして自動ドアが閉じる寸前、ダスマダーが呟いた、ほんの些細な言葉がマリバロンの耳へと届いた。
「此度も邪魔をするか、■■■■■■…」
「…?」
ジャーク将軍やガテゾーンへと向けた以上の怒りを込めて誰かの名を呟いたようであったが、その名を聞き取る事が出来なかった。
「ジャーク将軍、俺は…」
「もうよい。ガテゾーン、貴公はしばらく頭を冷やしているがいい」
「ですが、あの野郎はジャーク将軍を…!」
「良いと言っておる。要は結果を出せばいいのだ。わざわざ査察官が来るまでもなかったという事を本国へ、そしてクライシス皇帝に分かってもらえればそれでいい」
ガテゾーンに背を向けたまま受け答えをするジャーク将軍。ガテゾーンは今更ながら自身の失言によって、どれほどジャーク将軍の名を汚したかを思い知る。ガテゾーンにとって自分の開発した怪魔ロボットや基地のセキュリティは、自身の分身に近い。それをまるで消耗品のように扱うだけでなく役立たずという烙印を押したダスマダーへの怒りは勿論だが、将軍への侮蔑は絶対に我慢できないものだった。
だが、その矛先は結局ジャーク将軍の首を絞める結果に繋がってしまう。言うべき言葉が浮かばないガテゾーンに変わり、どうにか話題をすり替えようとするゲドリアンが口を開く。
「そ、そう言いましてもジャーク将軍!ダスマダーの奴、またも自分が指揮を取ってRXを倒すなど」
「放っておけ。報告したデータを閲覧しているだけの者に、我らの敵に敵わぬと知るだけだ」
「奴を…仮面ライダーBLACK RXを討ち取る事が出来るのは我らなのだ」
別世界
再生怪人であるズノー陣を打倒した間桐慎二は変身を解除し、未だ不振の目を向けるサーヴァントとマスター達へ自分の変身は別世界で流行りの魔術礼装であると誤魔化しながら自分が陥っている状況を伝えた。稀代の魔術師であるキャスターの説明によれば、並行世界から一方的に送られる魂に出来る処置など何一つない、と言い切られてしまった。それをどうにかして欲しいと反論しようとした慎二であったがら、彼の身体に異変が起こる。
「これは…?」
「それが答えよ坊や。どうにか原因を排除した者達に感謝しなさいな」
戦闘により汚れてしまった髪を手で払うキャスターはさも当然だと言わんばかりに、慎二の肉体から漏れる細かな粒子を見つめた。淡く青色に輝く粒子が天へと上り、遥か頭上で形成された空間の歪みへと吸い取られている。これは、慎二の身体から魂が離れ、元の世界へと戻る現象のようだ。
キャスターが言う処置はない、というよりも処置する必要が無かったという事。現実に元の世界では慎二の魂を剥がし続けていた怪魔ロボットが間桐光太郎によって破壊されている。ならば、魂は元ある場所へと還るのみ。
では自分は大人しく今という結果を待っていれば良かったのかと、慎二は大きく溜息を付いてしまうが、それは隣に立つサーヴァントが首を横に振る事で否定された。
「そんな事はありません。貴方が動いてくれなければ、この聖杯戦争に仕組まれた事を我々は知る事無く踊らされていたのですから」
「確かにね。それに間桐のご老体にいい様に使われるなんて面白くないわ」
微笑むライダーと苦笑する遠坂凛。聖杯戦争に隠された本来の儀式、それを企てた間桐蔵硯の野望を慎二は戦いが始まる前に凛たちへと打ち明けていた。そして慎二の望みを叶えるという条件付きで、知る限りの情報をこの場にいる者達へと伝えてある。
未だ目撃されていないランサーとバーサーカーの真名とマスター、そして10年前から潜んでいる8体目のサーヴァント。
情報を共有し、協力体勢を取ればこの陣営が負けることはないだろう。聖杯も、キャスターがいれば穢れたものであっても正常に使いこなせるはずだ。
慎二が懸念していた聖杯の所有権に関しては、意外も問題はなかった。元よりアーチャー、ライダー、アサシンには願いはなく遠坂凛は聖杯戦争への勝利にしか興味はない。残るはキャスターが好きに使うという事になりそうあが、当の本人も自分であれば使えると分かっただけで乗り気ではない。
それはそうだろう。これは慎二のみが知り得ることだが、彼女の願いは、今叶っているのだからとマスターである葛木宗一郎を見る。この世界であっても、彼は変わらず無表情のようだ。
「それで、帰る前に聞いておきたいんだけど、セイバーのマスターって誰な訳?」
「あー…」
この質問はある意味微妙だ。慎二の良くしる人物がこの世界でも聖杯戦争に参加するという事ならば、この場で黙っていた方か得策だ。恐らく凛は桜の為を思って巻き込まぬようあの手この手を尽くすだろうし、アーチャーも賛成しかねない。本心から言えば慎二自身も自分が目に届かない所で殺し合いに参加はして欲しくないが、あの愚直なまでに誰かを守ろうとする知人は、必ず切り札となる。
なので、慎二はお茶を濁す事にする。
「…何もかも知った後だと面白くないだろ?扱いやすい奴だから心配すんなって」
「あら、それはいい事を聞いたわね」
「失態だな小僧。この女狐にそのような事を聞かせてしまうとはな」
「お黙りなさい!」
この関係も変わらないなと、自分の後に怪しく目を光らせるマスターへ苦言をようするアサシンに同意する慎二に、今度はライダーからの疑問が届いた。
「シンジ…『貴方』はどうしますか?」
「…………………」
ライダーが尋ねたのは、この身体の持ち主。この世界の慎二の事だろう。彼は代理マスターとしてライダーを従えていたが、あくまで仮のマスターだ。ライダーの話を聞く限り、ずいぶんと好き放題やっていたようだが、慎二はしばし考えた後に、アッサリと答える。
「僕の事は放っておいてもらえると助かるよ」
「…良いのですか。そうすればまた彼は…」
「多分、そんな事する気にもならないだろうさ」
これは精神世界で対面した際に思えた事。
怪人への恐怖に抗いながらも戦うと決めた慎二の行動にまるで理解できないまま、拒絶したこの世界本来の間桐慎二。
ただサーヴァントを使役できるというだけで喜び、ライダーに人を襲わせる光景をニヤニヤと見てた彼であるが、仮面ライダーに変身して戦っている間はずっと震えていたのだ。
本当の戦い…否、本当の殺し合いを見て。敵に対し、躊躇なく止めを刺す為に引き金を引いた違う自分を見て、恐怖を抱いてしまったらしい。おかげでどんなに呼び掛けても、彼は全く答えてくれない。
だが、これで知ったはずだ。自身で戦う事とはどういう事かを。その為に自分の命すらかけなければならないという事を。
この世界を去った後、当面は戦いの恐ろしさから聖杯戦争に関しては耳にすら入れたくなくなるのではないかというのが、慎二の予測だ。
「だから、もう僕は何もできないし、動けない。その代わり、というよりも押し付ける形になっちまうけど…」
「はい…サクラは、必ず御守りします」
ライダーが頷くと、同盟となったアーチャーとキャスターが続いて言葉を送る。
「間桐桜に関しては心配いらん。いや、どの道あんな話を聞いた後ではマスターが放っておかないだろうからね」
「そうね。身体に潜む蟲如き、私の術で綺麗さっぱり駆除しておくわ。これで貸し借りなしよ」
そいつは頼もしい。
そう言いかけた直後、この世界での間桐慎二の肉体へと張り込んだ別世界の間桐慎二の意識は、唐突に暗闇へと落ちた。
「三日ぶりね、慎二」
「美綴か…」
早朝
学校へと続く坂道の途中で、慎二は後から追いかけてきた美綴綾子の声に振り向くと、ぶっきら棒にそう告げた。
「聞いたわよ、学校にはインフルエンザって事になってるらしいけど、魂剥がされてたんだって?ほんと、聞けば聞くほどすごい事に巻き込まれてんのね~」
「…頼むからもっと声を小さくして言ってくれませんかね」
健全な高校生2人が朝早くからする会話ではないだろうと話題を切り替える慎二であったのだが、実は魂が別世界に飛ばされたと聞いても全く見覚えがないのだ。
目を開けると、慎二は間桐家主治医が主である診療所のベットに寝かされており、身体を起こした直後に桜が泣きながら飛びつき、ベットの足もとではガロニアがワンワンと泣いている。
オマケに窓の外を見れば何と戦ったのであろうか、疲労困憊の光太郎がメドゥーサと武の肩を借りて、自分が目を覚ましたことに安堵した表情を見せていたのだ。
その後の診断の結果、メディアによれば別世界に行っている間の記憶は消えてしまっていたとの内容だ。あちら側で知り得た情報と経験は、あくまで本来の肉体と魂へと記憶されるもの。言うなればハードディスクレコーダーに突然入れた覚えのなく、フォーマットされていないDVDへ録画は不可能だという事らしい。
なので慎二に異世界で別の自分になったという記憶は全くない。しかし、なぜだか桜に大変申しわけないと思い、退院後少し高めのアイスを買った事は記憶に新しい。
「ねー、だからどうだったのよ」
「だから覚えてないって…」
隣を歩きながら顔を覗き込んでくる綾子の顔をジッと見る慎二。別世界での記憶はないというのに、桜へ何故か詫びなければならないという脅迫概念じみたものと同様に、綾子の顔を見ると何かが頭を過った。
今見せる綾子の穏やかな表情とは真逆である嫌悪、軽蔑と言った負の感情。それが自分へと向けられていたような気がしていたのだが…
「な、何よ人の顔ジロジロ見て…」
「いや…やっぱりこっちの方がいいなってね」
「はぁ?」
「いいから朝練行くぞ部長」
何となくはぐらかせた慎二は足早に学校へと向かっていく。後ろで何やら叫んでいる綾子に耳を貸さずに歩き続ける慎二はふと思った。
ようやく戻ったのだなと。
次回は久々に彼等のターンとなります。1年以上たってますかね…?
お気軽に感想等頂けたら幸いです。