最近運よく日曜が休みの際、段々とビルド視聴(鬼太郎録画)が鬼太郎視聴(ビルド録画)へとシフトしている。思い入れもあるんでしょうが、今の鬼太郎は人間の業を巧みに使っての話が面白すぎる…
ニチアサはともかく、110話をどうぞ!
死徒 ネロ・カオスの残滓であった混沌を強引に融合させた事によって誕生した謎生物。
色や性格はともかく、なぜアルクェイド・ブリュンスタッドに類似しているのかと自身の内にいる者達…碧月とアンリマユに尋ねた月影信彦。
「あれは何だ?なぜ猫とアルクェイドが混ざったようなものが生まれる?」
信彦は融合させた混沌を身体の持ち主である山瀬舞子でも制御できるような知能指数の低い、大人しい生物をイメージさせるつもりであったが、誕生したのがアレだ。既にキングストーンの光を浴びていた影響で舞子と同じく、吸血衝動はない事も確認済みではあるのだが、あのような珍種が出てくるとは想定外過ぎなのである。
『えっと…最初はアンリに言われて猫の姿を思い浮かべたんだけど…』
深層意識の中で問い詰める信彦に視線を泳がせて答える碧月は申し訳なさそうに答える。
数百いた混沌の因子を融合させ最後の仕上げに何をイメージしていいか躊躇した碧月はアンリマユの助言で猫をイメージしたが、その時にボソリと発案者の声を耳にしてしまった。
『そーいや真祖の姫ちゃんも猫っぽい性格だわなぁ…』
結果、猫とアルクェイドを同時に思い浮かべた碧月のイメージをそのまま反映されキングストーンの力を混沌に注いだ結果、誕生したのがあの謎生物なのであった。
「貴様が元凶ではないかこの大馬鹿者」
『ちょっ!?無表情で蹴り続けるの止めて!アウチッ!?痛い痛いマジでマジで!!』
『ふ、2人とも。喧嘩はダメよ!』
表情筋がまるで機能せず、黒い影を顔に覆わせた信彦による制裁を受けるアンリマユの悲鳴が木霊する中、オロオロと仲裁を開始する碧月…
以上の月影信彦の深層意識で行われた緊急会議(?)をわずか数秒で終わらせた結果、生まれてしまったものは仕方がないという結論に至り、もし何かあった場合には今度こそ自分でどうにかすればいいと自身を納得させた信彦へ不安混じりに名を呼ぶ少年の方へと振り向いた。
「あの、月影さん」
「言っておくが、あれは俺のイメージでは―――」
「えっと、ネコカオスの話じゃなくて…」
ネコカオス
どうやらあの謎生物の名前はそれで決定したようだ。
当初は色以外あまりにも特徴がアルクェイドと酷似していたので『ネコアルク』と命名されようとしたがアルクェイドが断固拒否。唯一ネコらしき特徴である耳とあの混沌から生まれたという事をかけてネコカオスとなった。まんまである。
しかし当のネコカオス本人は気に入っているらしく、早くも宿主である舞子に『カオちゃん』なる愛称を付けられ、『吾輩に触れちゃ火傷するぜ…』と無駄にダンディなセリフを吐きながら顎を撫でられ恍惚としている姿を見てどう反応すればいいか判断の付かない信彦へ、志貴は真面目な顔で話を続けた。
「あいつの…マキュリアスとか言いましたっけ?あいつと戦っている時に…視え、たんです」
歯切れの悪い言葉は、はっきりと見たわけではないという自信がないのか、それとも視えてしまったモノに心当たりがあり、そうでなくて欲しいのか。
志貴の反応からして、恐らく後者であろう。
「月影さんがここに現れるまで、俺は無我夢中でアイツの身体に走る線を切ろうとしました。頭痛なんかに構わず、線と点がはっきり見えようと構わず…そんな時でした」
「アイツの身体に…腹の部分に死の点とは違う、丸くて、『青い石のようなモノ』が視えたのが…」
後にシエルから聞き出した事だが、マキュリアスに肉迫した志貴の両目が直死の魔眼を発動させた時に見せる青色ではなく、緑色に染まった直後に志貴はあり得ないモノを目撃した表情を浮かべたという。
そして、マキュリアスは去り際にこうも言っていた。
『彼女の持つ気配と魂は間違いなく同胞であり敵であった者…ワタシやジュピトルス達を倒す為、共に死んだ『月の星騎士』のものだからだ』
碧月とマキュリアスが同じ存在。そして、志貴が視たという『石』を考えると、一つしか思い浮かばない。
「キングストーン…もしくは似た何かという事か」
本当に、マキュリアスの言う通りに碧月は星騎士と同じ存在。だとすれば様々な疑問が思い浮かぶが、それは後に考えればいいと思考を切り替えた信彦は俯く志貴の頭を軽く小突く。
「つ、月影さん?」
「お前が悩むような事ではない。奴の言う事が真実だろうが、奴が俺の敵である事には変わりない。再び目の前に現れるような事があれば、今度こそ引導を渡すだけだ」
「…はい」
「それよりも、今は自分の心配だけしておけ」
「え…?」
相変わらず無表情ながらもこちらを気遣ってくれる信彦の言葉を受けて先ほどの緊張がほぐれた志貴であるが、信彦の視線の先にある公園内の時計が指す時刻を見て硬直してしまう。
使用人である翡翠が起こしに部屋へとやって来る時間をとうに過ぎているではないか。
「……………………………………」
ダラダラと脂汗を流す志貴の脳裏に嫌な予感がどんどん膨れ上がる。
部屋を訪ねたら自分の姿がない事を不審に思う翡翠は当主である秋葉へと報告は確実であろう。そして…
『兄さん、ちょっとお話しマショウカ?』
満面の笑みであるはずなのに段々と声に重みが増していく秋葉の姿が目に浮かぶ。髪の毛が赤く染まり、ユラユラと黒いオーラを纏っていると思えてしまうのは気のせいなのだろう。そうに違いない。
「後生だアルクェイド!家まで運んでくれ!!」
「別にいいけど、どうしたの急に?」
だが、受ける罰を一秒でも減らす為にも早く帰宅しなければならない志貴は普段子猫でも抱く要領で志貴を連れ出すアルクェイドの移動方法が一番早いと判断し、普段は嫌がるくせに…と頬を膨らませるアルクェイドをどうにか説得する志貴を後目に、信彦は変わらずネコカオスと戯れる順応性が意外に高い山瀬姉妹へと顔を向けた。
「邪魔をするようだが、今後の話をしたい」
信彦の呼びかけにハッと我に帰った姉妹はいつの間にか手にしていた猫じゃらしを収納し、信彦の声に耳を傾けた。
離れた場所で険しい視線をぶつけるシエルに振り向くことなく・・・・
そんな回想を終えた志貴の耳に引き戸を開けた音と共に現れた教員の声が教室内に響く。
「みんなおはよー!次はお昼だからもうちょっとの辛抱だよー」
「はーい舞子せんせー!頑張りまっす!」
「こらこら乾くん?いくらボクの妹が同じ学校の生徒にいるからって下の名前を呼ぶのは感心しないよ?ちゃあんと『山瀬先生』って呼ぶように!」
「はいっす!」
有彦の元気良すぎる返事にクラス一同が苦笑し、志貴も釣られて笑ってしまう。こんなにも早く馴染んでしまうという事は、以前の学校でも生徒との仲も良かったのだろう。
数日前、突如として美咲高校に美人教師が赴任したとの噂は瞬く間に広まった。
それが山瀬舞子である事を知った志貴は驚愕し、事の真相を突き止めようと休み時間に信彦の携帯電話へと連絡。するといつもに増してあっさりとした回答が待っていた。
『行方不明扱いの為、以前の学校では既に除籍扱いであったのでな。そしてかつてゴルゴムのメンバーだったそれなりの権力者を脅して志貴の学校で採用するよう采配した』
「で、でもなんでいきなり…?」
『その方が色々と都合がいいからだ』
何が!?と質問を続けようとしたがそこで始業のチャイムが鳴ってしまう。この続きはまた後に聞くとして、一番の不安材料である舞子へと注意を向ける志貴ではあったが、それが杞憂で終わる事はこの数日間で理解した。
先ほどの生徒達との交流もそうだが、教員達とも既に打ち解け、既に複数の部活動から顧問として勧誘を受けているようだ。ただ、昼食の際は必ず鯖缶を一緒に食すという変わった所もギャップがあっていい!と一部の生徒達を盛り上げている…
シエルならばともかく、まさか信彦までにもこのような裏工作ができるとは思いもよらなかったと胸の内を語れたのは、昼休みの時だ。
「本当に、色々と出来過ぎて驚きですよ」
「だよね。ボクも突然この学校で働けって言われた時はびっくりしたよ…」
昼休み。
特に待ち合わせの約束を交わした訳でもなく志貴と舞子は屋上で鉢合わせし、昼食を同伴していた。かつて同じ肉体を共有した故か、互いの思考が何となく理解できるのかも知れない、というのが信彦の見解である。
肉体と人格は異なるが精神のみ限りなく同一体に近い…なんて小難しい補足がアルクェイドから言われたような気がしたが、こうしてかつて助けられなかった人と肩を並べて食事を取る事は奇跡に等しい。その奇跡を噛みしめながら志貴は購買で購入した焼きそばパンを口に運び、舞子は胸元からひょっこりと顔を出したネロカオスに切り分けた鯖缶の切り身を分け与えながらも、志貴に尋ねた。
「あの、志貴くん。物は相談なんだけど…」
「相談、ですか?」
普段ならば遠野君と教員らしい態度で接しているのだが、あの事件のみ知る人物のみになると舞子は志貴を下の名前で呼んでいる。特に抵抗はなく受け入れている志貴であるが、舞子の言う相談の内容と、口にする際の表情を見て、ある程度察しがついてしまった。
「その…信彦さんにお礼をしたいんだけど…志貴くん、彼の好きなものとか…知ってる?」
頬を赤らめて言う主の姿を見て、ネコカオスは確信する。
「ラブコメの波動を感じる…」
同じ頃、アルクェイド・ブリュンスタッドは上機嫌のまま待ち合わせの喫茶店へと向かっていた。
一週間前、志貴の要望通りに彼を家まで送った見返りとして、学校帰りにデートの約束を交わしたのだが、余りにも待ちきれず待ち合わせまで5時間以上あるにも拘わらず、こうして来店したのだ。
志貴から教わった通りに入店して、先日試しに注文した店自慢のブルーベリーパイを摘まみながらゆっくりと待つとしようと席まで移動するアルクェイドであったが…
「げ…」
思わず口からそう漏らしたアルクェイドの視線の先…窓際のテーブル席で見覚えのある人物がコーヒーカップを片手に何かファイルらしきものに目を走らせている。爪先まで黒で統一された衣服とあの黒髪、間違いなく月影信彦だ。
幸いこちらには気づいておらず、席も間仕切りがある為目が合う事もないだろう。
しかし、志貴と待ち合わせしている時はいつも新聞に目を通しているのに今回はファイル…間仕切りから顔を覗かせてよく見てみれば他にも数冊のファイルが並んでいるようだ。あの資料に集中して自分の存在に気が付いていないのかは分からないが、このまま気づかれないというのも少し面白くないので何か悪戯でもしてやろうか考えた矢先、またもや面倒な人物が現れる。
(今度はシエルだ…)
未だ変装で利用している志貴の通う学生服姿のシエル。表情はこちらでは見えないがその目は今でも資料に目を見つめる信彦へと向いていると分かる。そして無言のまま信彦の対面である席へと座る姿を見たアルクェイドは、やっぱりノブヒコの事を好きなんじゃんと勘繰りを始めるが。
「今回は随分と残酷な手段を選んだものですね」
普段と声色は変わらないのに、シエルの冷たい言葉にアルクェイドの思考は止まる。一体、彼女は何を言っているのか…
パタリ…とファイルを閉じた信彦はようやく自分の目の前にシエルが現れた事を認識したかのように顔を上げる。彼の表情は、変わらない。
「いきなりなんの話だ」
「一週間前のお話です。忘れたなんてオチはないようにして欲しいですね」
「………………………」
言い逃れは許さない。そう目で訴えるシエルを前にした信彦はゆっくりと瞳を閉じ、ガクリと首が項垂れてしまうが、信彦の身に何が起きたか理解しているシエルに取っては特に驚くべきではない。
こうして、すぐに彼の『代わり』が表に出てきたのだから。
「たーっく。なぁにが『お前の方が適任だ』だよ。体よく押し付けちゃってもー」
文句を言いつつ表に出たアンリマユはやる気なく頬杖で顔を支え、未だにこちらに鋭い目を向けるシエルを視る。
「さぁてカレーのお姉ちゃん。ウチの信彦君に随分と辛辣なお言葉を浴びせたようだけどよ。誰1人欠けることなく救われたハッピーエンドだったんじゃないかねぇ今回は?」
「…ものは言いようですね。ならば、こちらもはっきりと言いましょう」
「あの場で、貴方達は全員を救ってなどいない。救ったとすれば…それは遠野君1人だけではないですか」
シエル先輩の言い分は、また次回
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